第3話 意見交換
「空から聞こえた声が言ってたことは本当なのかな?
本当に5人は生き返らせてもらえるのかな?
それより、本当にみんな死んじゃってるのかな?」
「空からの声の言葉が全て真実だという証拠はありません。
ただ私たちが死んでいると言うことだけは事実だと思います」
「え? でも、生き返らせるって話を疑うんなら、うちらが死んだってのも疑おうと思えば疑えへん?
死ぬような目にあったって記憶も、神様かわからんけど空からの声の主がすごい力を持ってるんなら、そう信じ込ませることもできそうやん? ほら、うちらの頭の中に能力に関する情報が入ってたみたいに」
「もし、私たちが死んでいなくても、空からの声の主が帰らせれてくれる気がないなら、どうしようもないでしょう?」
「それはその、みんなで力を合わせたらなんとかならないかな?」
「人知を超えた超常的な力を持っているだろう相手に? 向こうがその気になったらオレたちなんて一捻りじゃないか?
向こうが姿を現す気があるのかさえわからないんだぞ」
「真実は確かめようがないし、ほかに方法もない以上、空からの声の言葉にすがるしかないでしょう」
「空からの声の正体が、神様どころか悪魔だってこともないわけじゃないけどな」
「……」
「結局、空からの声が言っていたことは、どういうことだと思う?」
「……」
「話し合えということじゃないでしょうね」
「……」
「だな。生き返りたいなら、25人で戦い合えということだろうな」
「でしょうね」
「本当にそう思うん?」
「逆に聞くけど、そう思わないのか? オレはそうとしか思えないが。お前はどう思う?」
「そう思いたくないけど、そう考えるしかないよな」
「……」
「で、どうする」
「……」
「チームを組むべきです。
生き返れるのは5人。つまり5人までなら、協力関係を築ける余地があるんです。
6人以上で協力できないわけでもないですが、後々揉めるだろうことを考えると、基本的には5人。
そして、ここにいるのも5人」
「それって、うちらはラッキーやったってこと?」
「いえ、この5人だけがたまたま固まった場所に配置されていたわけではないと思います。
ほかの20人も、それぞれ5人ずつに振り分けられているんじゃないでしょうか」
「5人チームを作らせるために?」
「5人チームを作るチャンスを25人全員に与えるためと言った方が正確かもしれません。チームは作れるけど、作れと言われたわけではありませんし。
空からの声の主はある程度、生き返られるチャンスが誰にでもあるように、バランスを調整しているんじゃないでしょうか。
それぞれに異なる能力を与えたというのも、その一環なんだと思います」
「どういうこと?」
「素手での戦いや、全員が同じ能力だと、単純に体力や運動能力の高い者が有利になってしまいます」
「殴り合いだったら、女子は特に不利だろうからな」
「そうですね。体力、運動能力の優れた者と劣った者が渡り合うためーー渡り合える可能性を与えるため、それぞれ別々の能力が与えられた。そういうことなんじゃないかと思いいます」
「単に面白がっているだけじゃないか?」
「残念ながら、その可能性も捨てきれません。もしかしたら、空からの声は私たちを戦わせてーー戦う様を見て楽しもうとしているのかもしれません。
観戦が主たる目的ならば、素手での戦いや、同じ能力での戦いよりも、全員に違う能力を与えた方が面白い。そう考えても不思議はありません。
できれば、そんな想像は否定したいですけど」
「生き返らせてくれるって話も信用できなくなるもんな」
「いえ。空からの声が楽しむために戦わせられるというのが不快なだけです。
観戦が大きな目的だとしても、生き返らせくれるのは本当ということはあります。
戦わせるだけ戦わせて嘘でしたということも考えられますが。
でもーー」
「結局、生き返りたいなら話に乗るしかないか」
「はい。本当に生き返られるかどうかは、5人まで残らない限りはわからないでしょう」
「……」
「話を戻しましょう。25人が、5人ずつ振り分けられているという予想が正しいとして、その振り分けに意図はあるのか? それともランダムなのか?
意図があるとしたら、それは振り分けられた5人でチームを組んだ場合の戦力をなるべく均等にするためでしょう」
「なるほど」
「一方で、ランダムな振り分けの方が公平だと、空からの声が考えている可能性だってあります。結局生き返りの真偽と同じで確かめるすべはありません。
もし、五グループの振り分けと25人の能力全てが確認できたら、どちらなのか推測できるでしょうけど。でも、それはまず間違いなく無理です。
戦力が均一になるように振り分けられているなら、この5人で組むのが得策です。結局、戦力は拮抗することになりますが、戦力でほかのグループに劣るということもなくなります。
戦力に偏りがあったとしても、どっちみち組むべきです。ここにいる人以外と組んだ方が強いチームを作れるかもしれないと考えても、ほかのところが全て5人で組んでしまえば、仲間にしてもらえる可能性はまずないのですから」
「それはそうだな」
「チームを作るなら、ここにいる5人で作る。それが一番確実です」
「……」
「でもさーーチームを組むってことは、戦うってことはつまりーー」
話し合いの最中ふと、空を見上げた。
「あ」
空に浮かぶ残り人数を示すカウントが25から24に減った。