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第71話【魔王山田、やりたい放題する】

ファーレン王国・マーレーン平野。


ファーレン王国軍を山田と禁軍総司令のダリスが観察している。


「ダリス、やっぱり少ないよな。伏兵でもいるのかな」


「空の偵察兵からも迂回の報告は来ていませんので山岳地帯で防衛に徹する気では?」


「どの程度対策してるか見てみるか。”ロックフォール”開始だ」


山田の命令に、ダリスが禁軍へと指示を飛ばす。


「セラ。特製の魔導球は支給したんだよな?」


すぐそばにいた魔法大臣のセラに、山田が声をかける。


「はい。数が限られていますので、なるべく回収された方が……」


「了解だ。ダリス、制圧したら禁軍に銀色の球の回収を指示してくれ」


「承知しました」


やがて敵軍に障壁が展開され、上空から岩が降り注ぐ。


「んー……おっ! いくつか本当に貫通してるな。凄いぞ、セラ」


「はい。ありがとうございます……」


爆発が地表を走り、いくつかの障壁は粉砕されていた。


「特に反撃もしてこないな。アイラ、出るぞ」


「はい!」


山田と数名の親衛隊が上空へ舞い上がる。


「魔王様、どうぞ」


アイラから鉄球を受け取り、山田は《インパクト》を叩き込む。


親衛隊員が次々と鉄球を手渡すたび、山田は少しずつ位置を調整しながら地表に投じていった。


やがて地上の司令部に戻ると、ダリスが迎える。


「お疲れ様です、魔王様。敵軍は半壊して敗走中です。追撃されますか?」


「進軍だ。追い回すフリだけでいいぞ。道は俺が作る」


外に出て手をかざすと、平野に真っ直ぐな道路が出現する。


その上を禁軍が整然と進軍していった。


 * * *


レッドロック要塞。


「魔王様。どうされますか? 敵は籠城していますが」


ダリスの問いかけに、山田は軽く頷く。


「あんな立派な要塞、壊すともったいないよな。要塞の外に軍がいるはずだから空から索敵して禁軍で殲滅してくれ。要塞は俺がやる」


「承知しました! ご武運を!」


ダリスが走り去り、山田は親衛隊に声をかける。


「さて、行くか。親衛隊は半分残って要塞の観察と周囲の警戒だ」


「承知しました!」


アイラの号令で隊が動き出す。


山田は上空から要塞の背後に回ると、谷の入口に向けて手をかざした。


「《アース》。ついでに《ソイルフィックス》っと」


地面から巨大な壁がせり上がり、谷の入口をふさぐ。


「す、すごい……」


近くにいたリューシーが思わず声を漏らす。


「俺が作業してる間に要塞から攻撃が来たらアイラ達は反撃してくれ」


要塞がにわかに騒がしくなる。


「さて、どうしようかな……地面を掘って……こうかな?」


山田が手をかざすと、轟音と共に要塞の周囲が陥没しはじめた。


やがて全体の三分の一ほどが、深い谷のように姿を変える。


「ちょっと魔力回復も兼ねて休憩するか」


司令部に戻ると、親衛隊員が報告に現れる。


「魔王様、敵軍は恐慌状態で要塞から逃げ出す者も増えていますが谷の入口で立ち往生しています」


「ご苦労。監視を続けてくれ。さーて、交代でメシにするか」


食事をとりながら山田がつぶやく。


「しばらく味気ない糧食かと思ったけど、昨日の村で売ってもらえたから美味しいな」


「怯える村長さんに無理矢理お金渡してましたよね」


リューシーが苦笑まじりに返す。


「略奪なんかしたら今後前向きに働いてくれなくなるだろ? 権力を振りかざしたらダメだぞ、ミリトン」


「え?! 自分はそんなこと!」


突然振られたミリトンが焦る。


「禁軍も俺の言いつけを守ってるみたいだし。ダリスがちゃんと監督してるんだな」


「禁軍は超エリート扱いされているのでそんなことで地位を台無しにする人はいないと思います」


リューシーが説明する。


「そうか。ただ、あまり捕虜を取らずに追い込んでるから敵の後方の村はひどいことになってるだろうなぁ」


「今回の作戦では仕方がないかと思います」 隣に座っていたアイラが言った。


「短期間でケリをつけて被害は最小限にするぞ。さて、再開だ」


山田が作業を再開すると、ついに要塞の周囲すべてが陥没する。


「アイラ。誰か行かせて投降勧告してきてくれ」


指示を受けた親衛隊員が要塞に向かい、しばらくののち戻ってくる。


「うーん。動きがないな。なにしてるんだ? 全員飛び降りるのか?」


「再度勧告されますか?」 アイラが尋ねた。


「全く往生際の悪い連中だ。ちょっと揺さぶってやるか」


山田が要塞の地盤に腕を向けると、要塞が揺れ始める。


ほどなくして、白旗が揚がった。


 * * *


地方都市ドーシャ郊外。


「さて、ここを落としたらいよいよ首都を含めた山岳地帯の攻略だな」


山田とダリスが地図を囲んでいると、セラが兵士を伴って現れる。


「魔王様。少しよろしいでしょうか」


「どうした。なにかあったのか」


セラの指示で兵士たちが大小さまざまな魔導球をテーブルに並べていく。


「急いで制作を指示していたのですが、先ほどこちらに届きました」


「これは……もしかして俺専用か?!」


山田の表情が一気にほころぶ。


「は、はい。魔力を調整して頂いたら恐らく魔王様の《インパクト》にも耐えられるかと思います」


「これは上から落とす用途ではないんですね」


ダリスが興味深げに見つめる。


「はい。魔王様の魔法はどれも強大すぎて調整が難しいとおっしゃっていたので《インパクト》に絞っています」


「この魔導靴といい、セラ大臣の才能は末恐ろしいですね」


ダリスが魔導靴に目を落としながらつぶやく。


「靴の発案は魔王様ですので私は少しお手伝いしただけです……」


セラが照れたように俯いた。


「ダリスも要望があったらどんどんセラに言うといいぞ。早速試し撃ちしてくるか!」


山田は満面の笑みを浮かべて外へ飛び出した。


どこに撃とうかと迷っていると、伝令が駆けてくる。


「敵襲です! 北からおよそ二百騎!」


兵士たちが慌ただしく動き出す。


山田が空に舞い上がり、敵影を視認する。


「あれか。ちょっと撃ってみるか……いや、投げた方がいいか?」


魔導球を手に取り、振りかぶったその瞬間、山田の手から《インパクト》が放たれる。


球はビームのように飛翔し、敵騎兵の足元で爆発を起こす。


さらに数発を投げ込むと、敵は完全に足を止めた。


「ダリス。練習がてら撃退しといたぞ」


司令部に戻って山田が軽く告げると、ダリスがやや複雑な表情で口を開いた。


「あの……魔王様。敵の騎兵ですが偵察の報告で“黒曜騎士団”だったようです」


「え? 敵の精鋭の? 倒してしまったぞ。あ、それより球の回収にいかないと。ミリトン、リューシー、探すの手伝ってくれ」


山田の背を見送りながら、ダリスとアイラが顔を見合わせて苦笑した。



【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】

作品を気に入って頂いた方のために、イラストやBGMも用意しています。

詳しくは 作者ページ → ポータルサイト に置き場所をまとめていますので、ぜひ覗いてみてください。


また、物語の舞台をよりイメージしやすいように、地図も作っています。

こちらもポータルサイトに掲載しています。


■ヘラン地方マップ:第2話~第10話対応

■魔王国周辺地図:第2話~第81話対応


異世界の旅をお楽しみください。

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