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第7話【勇者、無双する】

バルト要塞。


断崖と渓谷に囲まれた天然の要害に築かれたその砦の塔の頂には魔族の軍旗がはためいていた。


谷の先には、陽光の中に広がる巨大な連合軍の陣地があった。


それは四万にも及ぶ布陣であり、地平線の果てまで続く軍旗と、黒く蠢く兵の列が山中の静けさを押し返すような圧を放っていた。


司令室の扉が乱暴に開き、兵士が駆け込んでくる。


「動きがありました、進軍してきます!」


「勇者は?」


「先陣を切って向かってきています!」


(……目立ちたがりめ。だが乱戦より叩きやすい)


山田は心の中で笑みを浮かべた。


「ガイア。奴の砲撃が要塞に届く前に叩け」


「承知しました! 必ずや!」


 * * *


渓谷の向こう側。勇者スランは軍の先陣を切って馬を駆けていた。


右手には、女神の名を冠した聖剣──アリアンデ。


(まずはフレイムキャノンの射程まで突っ込む!必ず要塞にぶち当てる!)


その瞬間、前方から魔軍の大部隊が押し寄せてくる。


(来たな……!)


スランが叫ぶ。


「ファイア!」


巨大な業火が魔軍に向かって襲いかかる。


しかし兵士たちは氷の盾を掲げて備え、何人かが倒れたものの、そのまま突撃を続けてくる。


(くっ……魔法は対策済みってことか。それなら……)


「アイスブラスト!」


無数の氷の槍が魔軍へと飛ぶが、2列目から現れた兵士たちが光る盾を構えて防御する。


幾人かが倒れたが、なおもスランに向かって殺到してくる。


「くそっ!」


飛びかかってきた兵士をアリアンデで次々に切り捨てる。更に剣が眩い光を放ち、敵陣を貫いた。


しかしそれでも兵士は怯まず、さらに押し寄せる。


「ええいっ……!」


スランの体が青く光り始める。すると敵兵たちは剣を地面に突き立て、距離を取る。


「ライトニングバースト!」


連続して雷鳴が鳴り、兵士たちを焼き払うが、地面に刺さった剣にも降り注ぐ。


雷が止むと再び兵士たちが突撃を開始する。


(こいつら……俺の行動パターンを読んでる……? なら覚えたばかりのこれで!)


「カオスディバイン!」


無数の光の玉が荒れ狂い、周辺の敵兵をなぎ倒す。


「よしっ!」


次の瞬間、上空からひときわ大きな氷の塊がスランへと飛来した。


気配に気づいたスランがすかさず構えを取る――だが、



巨大な氷塊は彼の目前で音もなくかき消えた。



(……なんだ?消えた?)


困惑したスランが空を見上げる。そこには黒いマントを翻した男――山田が、無言のまま宙に浮かんでいた。


その右腕が、スランを指す。


立て続けに放たれた業火が、凄まじい熱と共にスランを襲う――だが、それらもまた寸前で霧のように掻き消えた。


(この強大な魔力……!あいつが魔王……!?)


スランの瞳に、警戒の色が浮かぶ。


(だとすると……これが先代が言っていた“無効化”……)


その間にも、山田は一言も発さず、淡々と腕の向きを変えた。


轟音と共に巨大な氷塊が連合軍の左翼・右翼を貫く。続けて炎の奔流が襲いかかり、地を割る爆音が辺りを震わせた。


しばらく戦っていると兵士が駆け寄ってくる。


「勇者様! 先ほどの攻撃で左翼と右翼が突破されそうです!」


「俺が中央を食い破る!持ちこたえろ!」


「アースブラスト!」


スランが地面を叩くと、無数の石柱が現れ、敵兵を突き刺す。


囲みが一時的に崩れた隙を突き、スランは前へと突き進む。


(きた……射程内! 魔王か……いや、先に要塞だ!)


体が赤く光り始めたそのとき、第1軍団長ガイアが猛然と襲いかかる。


「させるかあ!」


「邪魔だ!」


アリアンデが振るわれ、ガイアの腕が切り飛ばされる。


腹部に蹴りを叩き込むと同時に――


「インパクト!」


ガイアの体が砲弾のように吹き飛んでいった。


スランの体が再び赤く光を放つ。



「フレイムキャノン!!」



スランの両手から放たれた激しい業火の螺旋が要塞に突き刺さり、上部を丸ごと吹き飛ばす。


連合軍から歓声が上がり、突撃を開始する。


スランが膝をついた。


「くそっ……魔力を使いすぎたか……」


兵士が駆け寄る。


「勇者様!一度陣地に戻って回復を!」


「……わかった。あとは頼む!」


「はいっ!」



【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】

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