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第56話【サイリス、海賊に契約させる】

ブルーネ総督府。


総督のサイリス。側近のキンバリとヘラ。それに四大ギルド長と海賊のデクス兄弟が一堂に集まっている。


「集まったわね。それじゃ始めるわ」


「サイリス総督、そいつらはまさか……」赤ギルド長のライオネルがデクス兄弟に疑いの眼差しを向ける。


「海賊の頭領、デクス兄弟よ」


「どういうことだい?」 黒ギルド長のフェーネンが口を挟む。


「今後この兄弟と手下の海賊は私が雇って働かせます。そこで港での補給や積み下ろしでトラブルにならないよう、四大ギルドと取り決めをしてもらいます」


「ちょ、ちょっと待ってください! 何を!」 青ギルド長のザックスが慌てる。


「こいつらは全員処刑するんじゃないのかい?」 フェーネンも納得がいかない様子で尋ねる。


「航海に長けた戦闘員として使えると判断しました」


「馬鹿な! こいつらに殺された奴は大勢!」


声を荒らげたザックスの体が急速に凍りついていく。ザックスの顔が苦痛で歪む。


「サイリス総督のご判断に異議が?」 ヘラが冷たく告げる。


「い、いえ……くっ……うぅ……」 ザックスがかすれた声で呻く。


「ヘラ、死んでしまうわ」


「失礼しました」 ヘラが魔法を解除する。


「これは決定事項よ」


「承知しました。しかし、恐れながら総督。こいつらは本当に約束を守るのでしょうか」 ライオネルが必死に食い下がる。


「あなた達は本当に信用がないのね」


サイリスが呆れた様子でデクス兄弟に言った。


「すいません……」


兄のデクスラが力なく頭を下げる。


「総督に従ったフリをしているんじゃないのかい」 フェーネンが厳しい視線を投げる。


「仕方ないわね」


サイリスがデクス兄弟に闇魔法を発動させて締め上げていく。


「や、やめてください! アアアアアア!」


「またこんな……ぐがあああああ!」


2人は激しく痙攣し、白目を剥いた。


ギルド長たちが恐れ慄く。


「あなたたちは約束を守るわね?」


「もちろんです! 許して! 助けてください!」 弟のデクスリが必死で叫ぶ。


「これでわかったかしら?」


「はい……よくわかりました……」 ライオネルが青ざめたまま答える。


サイリスが魔法を解除する。


「ヘラ、ヒールしてあげて」


ヘラが2人にヒールをかける。


兄は失神し、弟は床で震えている。


「では私は用事があるから詳しい取り決めは頼んだわ、キンバリ」


「承知しました」


キンバリが引き受けると、サイリスとヘラは部屋を後にした。


 * * *


ブルーネ総督府・執務室。


山田がサイリスのもとを訪れていた。2人は人気のない執務室で談笑していた。


「海賊を雇って制服。さすがサイリスだな」


山田が楽しげに笑う。


「まずかったでしょうか?」


「いいんじゃないかな。サイリスの好きなように進めたらいい」


「ありがとうございます。神聖国に動きがあるとのことなので、しばらく北部諸国は攻めずに打撃を与える方針にしますね」


「助かる。さすがに王国駐留の第二軍は動かせないし」


サイリスの視線が書棚の地図に向かう。


「落ち着いたらボルドア大陸攻略を見据えて海軍の創設と造船を進めます」


「魔族の人口にも限りがあるから順番に固めていかないとなぁ。以前ジーナスに聞いたんだけど、ボルドア大陸にはドラゴンもいるらしい」


山田が楽しそうに話すとサイリスが驚く。


「名前は知っていましたが、実在するのですか?」


「たまに目撃されてるらしいよ。一番高い山にいるとかって」


「それでしたら空の戦いになりますね」


サイリスが少し考え込む。


「そうだな。同じように岩だのを落としてくるかもしれないから、こっちも地上の防備が必要になるな」


「ネイ軍団長にも伝えておきます」


「うん。あ、そうだ。実はレイラに魔力譲渡をしたんだ。サイリスに言っておこうと思って」


不意の話題に、サイリスが怪訝な顔になる。


山田が慌てて言い訳を口にする。


「いや、なんかサイリスみたいになりたいって切実に頼んできたから特別に譲渡したんだ」


「そう、でしたか……」


サイリスが考え込む。


「どうした? レイラは人間だから譲渡できるのかって思ったんだけど、問題なかったし」


「山田様からレイラに魔力譲渡したら、人間のレイラも《フライ》が習得できるようになるのでしょうか?」


山田が一瞬言葉を失う。


「あっ! 考えてなかった! どうなんだろう? 話したときには言ってなかったけど」


「レイラなら気付いているはずですが……もし習得できたら前代未聞ですね」


サイリスが真剣な面持ちになる。


「人間が空飛んだら神聖国あたりに神敵認定されそうだし、習得する気がなくて黙ってたとか?」


「そうかもしれませんね。いずれにしても占有が大きいフライを新しく習得できるほどの強化は山田様の譲渡だけなので魔族の脅威にはならないかと」


サイリスが微かに口元を緩める。


「そうだなぁ……習得できた場合に子孫にも引き継がれるのかとか気になる点が多いけど、今度レイラに聞いてみるよ」


「来週レイラがこちらに来るので、私も相談しておきますね」


「頼んだ」


サイリスがゆっくり立ち上がる。


「山田様、続きは食事をしながらいかがでしょう? ギルド推薦の店で予約をしていますので」


「お、行こうか。楽しみだなぁ」


2人は明るい表情で執務室を後にした。



【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】

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