表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/73

第54話【王国参謀長ジーナスの日常】

 

 

 

「ジーナス、地方都市の行政官は決まったのか?」


「はい、魔王様。過去に貴族との関係が浅く、優秀な官僚を選んでおります」


「私腹を肥やす真似をしたら燃やすと言っておけ」


「はい。それは陛下自らが1人1人に厳命しておりますので」


「どうせ裏切ったら自分が斬り捨てるとか言ってるんだろ?」


「え、えぇ……おっしゃる通りで」


「最近はマシなのか?」


「え? な、なんのことでしょうか?」


「わかってるだろ。まぁいいや」


(魔王との対話にも慣れてきたが、毎回胃がキリキリする……もう寿命が半分以下になっているのではないか……)




「ジーナス、今日も朝早くからすまない。剣を振るのが日課になってしまってな」


「おはようございます、陛下。皆、陛下の剣捌きに感嘆しております」


「それは嬉しいな。ジーナスもたまにはどうだ? 書類仕事ばかりは退屈だろう」


「はい! それでは未熟ですがお相手をさせて頂きます」


(レイナード将軍の一件から陛下はすっかり変わられてしまった……しかし、兵や民の評判はかつてないほど高い……が、恐ろしくて仕方がない……私は馬鹿か! そんなことを考えていたら顔に出るだろうが! 考えるな!)




「ジーナス、各農村の代表の方々との会合はいかがでしたか?」


「レイラ様の増産案に応じる長が多かったので税の優遇なども含めて調整できそうです」


「それは良かったです! 来週ブルーネの四大ギルドから交渉団も来ますので歓迎の手配もお願いしますね」


「承知しました。レイラ様も近々ブルーネに行かれるのですよね?」


「はい。サイリス総督にご挨拶に伺う予定です」


(魔王城から戻られたレイラ様は以前とは別人のように活発だ……元々聡明な方ではあったがここまでとは……私も奮起せねば立場が……あぁまた胃が……)




「レイラ様! 先ほどのご提案は感動しました!」


「私もです。ブルーネの交渉団とも堂々と交渉されていましたし尊敬します!」


「ありがとうございます。皆さんに支えられているおかげです」


「レイラ様がいれば王国は安泰ですね!」


(官僚はすっかりレイラ様の支持者になってしまった……魔王とやりとりしていることも大きい……王国の土台を支えてきたのは私だというのに……見苦しい嫉妬だな)




「あなた、これを見てください」


「それはライラ商会の」


「そう! レイラブランドのカバンが手に入って! 早速友人に自慢してしまいました」


「良かったじゃないか。欲しがっていたよな」


「毎日レイラ様と仕事をしているあなたがうらやましいわ。噂ではライラ商会主催のお茶会にレイラ様が参加されているって。私と友人も参加できるようにお願いできない?」


「無茶を言うなよ。参加希望が殺到していると聞いたぞ」


「そこをなんとかあなたの力で! お願い!」


(レイラ様は妻の心まで持っていってしまった……服に香水にカバン……娘もレイラ様に夢中で毎日新聞を読んでいる……教育にはいいが……はぁ)




「ジーナス、少しいいですか?」


「はい。なんでしょうか?」


「あまりこういうことは良くないのですが、ジーナスにはいつも助けられているので新聞社の方に少しお願いをしておきました」


「なにを、でしょうか?」


「ふふ、楽しみにしていてください」


(レイラ様は魔王が得意な新聞社の工作をすっかり身につけておられる……一体なにを……あぁまた胃が痛む……帰りに薬屋に寄っていこう)




「ジーナス様、新聞を見ましたよ」


「なんだ? 今朝は忙しくて読めていないんだ」


「"王国を支える優秀な頭脳!ジーナス参謀長"という特集が載ってましたよ」


「えっ?!」


「やっぱりジーナス様のような方の支えがあって王国は平和なんだとよくわかりました」


(レイラ様が……いかん、目頭が熱く……頑張ってきた甲斐が……今日は帰りに子ども達が好きな魔王ケーキを買って帰ろう)




【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ