表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/70

第51話【魔王山田、焼肉パーティーを開催する】

魔王国・魔王城。


会議室には大勢が集まっている。


「皆、よく集まってくれた。今回は重要な議題なので幹部には全員来てもらった。ガイア、王都からわざわざすまないな」


「なにをおっしゃいますか。いつでも参りますぞ」


「ダリス、王国の地方征伐ご苦労だった」


「はっ! ありがとうございます!」


山田が全員に向き直る。


「それでは早速本題だ。これまではヘラン地方防衛に専念するため第1軍は歩兵中心、第2軍は魔法兵中心などとしていたが、領土拡大に伴い各拠点に軍を割り振る形で大幅に再編する」


「まず、首都マギア防衛を担う第1軍。軍団長はギギだ」


「拝命いたします」


「次に王国に駐留し、大陸中央への最前線になる第2軍。ガイアに任せる」


「承知しました!」


「大陸東、海の玄関口になるブルーネの総督にサイリス。頼む」


「承知しました」


「同じくブルーネに駐留し、新大陸侵攻の主力となる第3軍。ネイに任せる」


「全力で務めさせて頂きます」


「現在の第3軍からの飛行兵振り分けについては早々に頼む」


「了解しました」


「現在財務大臣のキンバリをサイリスの直属としてブルーネに派遣する」


「承りました」


「新しい財務大臣は、シシリア」


「謹んでお受けします」


「そして新たに俺直轄の禁軍を創設する。総司令はダリスに任せたい」


「俺が……全力で務めさせて頂きます!」


「最後にアイラ。新たな親衛隊長として頼んだぞ」


「はいっ! 全力を尽くします!」


「以上だ。かなり大掛かりな再編になるが、なるべく迅速に進めて欲しい」


室内には短く力強い同意の声が返る。


「さて、実際に取り掛かってもらう前にこれまでの働きを労わせて欲しい。食堂に移動するぞ」


 * * *


魔王城・食堂。


全員が席につき、料理人と給仕たちが慌ただしく動いている。


山田が食堂の奥に声を飛ばす。


「ポンス! 準備できたか!」


「はい! いつでも!」 ポンスが元気よく返す。


山田が全員を見渡す。


「よーし、全員席についたな。堅苦しい挨拶は抜きだ。俺から焼肉のプレゼントだ。遠慮せず食いまくれ!」


大歓声が上がり、次々と肉と料理が運ばれてくる。


「ガイア、遠慮するなよ」


「今日は人生最良の日ですな!」


「魔王様についていって良かったです! うめぇ!」 ダリスが次々口に運ぶ。


「アイラ達もどんどん食べろよ。俺の護衛は後でいいぞ」


「はいっ!」


「こんな日が来るなんて……泣きそう」 ミリトンが感極まった様子で言う。


「泣いてる場合じゃないでしょ!」 リューシーがミリトンの背中を叩く。


「ワーグも満喫してるか」


「魔王様、私がこのような場に……」


「たまにはいいだろ。今後も頼りにしてるぞ」


「はっ!」


「セラ、ブルーネではありがとな」


「は、はい……私はあまりお役に立てず」


「そこまで謙遜すると嫌味だな。殲滅大臣に改名しようか?」


「えっ?! それだけはやめてください!」


「セラ様、魔王様の冗談ですって。ほら、どんどん食べましょう」 ベリアムがにこやかに促す。


「お、早速3人で集まってるのか」 山田がサイリス達のテーブルに近付く。


「はい」


「次回もパーティーができるかはサイリスとキンバリ次第だから頼むぞ」


「責任重大ですね」 キンバリが微笑む。


「ネイにはずっと頼りっぱなしだったから存分に食べてくれ」


「ありがとうございます」


「ダリオも楽しんでるか」


「ええ、このような光景が見られただけで頑張ってきた甲斐がありました」


「最近は魔王国も食料問題は大幅に改善したからな。引き続き頼むぞ」


「もちろんです」


「シシリアも財務大臣として期待してるぞ」


「ありがとうございます。必ずやご期待に応えます」


「ギギ、楽しんでるか?」


「はい。これほどの肉を調達されたのですね。さすがは魔王様です」


「キンバリは渋い顔をしてたけどな。ポンス! どんどん持って来てくれ!」


「はい! ただ今!」


 * * *


数日後。山田がサイリスを見送っていた。


「そろそろ出発か」


「はい」


「ヘラは後から向かわせる」


「無理を言ってすみません。彼女が補佐になってくれると非常に助かるので」


「なんなら親衛隊全員サイリスにつけてもいいぞ? その方が俺も安心だ」


「気持ちだけ頂きます」


二人は笑い合う。


「山田様、レイラのことは気にかけてあげてください。私もなるべく会う機会を作りますので」


「レイラ? なんで? 元気にやってるじゃないか」


「彼女にはまだ支えが必要です」


「そうだな。わかった」


山田が腕輪を取り出す。


「これ、よかったらつけてくれ」


「これは?」


「プロテクトの効果がついた魔導具を作らせたんだ。お守り程度だけどな」


「ありがとうございます。これからはずっとつけておきますね」


サイリスが腕輪をつける。


「しばらく大変だろうけど困ったことがあればすぐに呼んでくれ」


「はい。その……いつでもお待ちしています」


「あぁ、会いに行く」


言葉を交わしながら、ふたりの間に静かな時間が流れる。


「それでは行って参ります」


サイリスが兵士たちとともに飛び立つ。山田はその小さくなっていく背中をしばらく見送っていた。



【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ