第48話【サイリス、海賊島を制圧する】
潮風が吹き抜ける海辺で、山田とサイリスが海辺に並んで立っている。
「……サイリス、ブルーネの現地総督をやってみないか?」
不意の提案にサイリスが目を丸くする。
「……え? 私が……? どうして……?」
山田は海を見ながら小さく笑う。
「正直に言うとずっと一緒にいたいんだけどね」
「でしたら――!」
山田が軽く手を挙げる。
「聞いて欲しい。サイリスは構わないと言ってくれたけど、やっぱり今のままだと駄目だと思うんだ。それに、サイリスが好きだからこそ存分に力を振るう姿を見てみたい。我が儘かな?」
「そんなこと……」
「ブルーネは今後、ボルドア大陸攻略の最重要拠点になる。俺は大陸を西へ、サイリスは海を東へ。対等なパートナーとして二人で世界を征服しよう」
サイリスは何かを決意したように顔を上げる。
「……わかりました。でも……離れるのは寂しいです」
「俺も寂しいから時間を作って会いに行くよ。仕事を投げ出してでもね」
「駄目ですよ」
山田とサイリスが楽しそうに笑う。
「……いずれ全部話そうと思ってる。でも――時間をくれないか。不本意だと思うけど、今は話すにはリスクが高すぎるんだ」
「わかっています。そのときまで……ずっと待っていますから」
「ありがとう、サイリス」
山田はその場で軽く背伸びをしてからサイリスに向き合う。
「さて、そんなサイリス総督の初仕事として、今回の海賊討伐は完全に任せようと思うんだ。全滅させるなり従わせてこき使うなりサイリスが決めてくれ。俺は後ろで見守ってるよ」
* * *
海賊島――
島は地獄の様相を呈していた。
「このクソがぁ!!」
海賊たちがサイリスに斬りかかるが、闇の刃が次々と彼らを切り裂いていく。
サイリスは冷静なまま言い放つ。
「早く頭領を呼んできなさい」
ひるむ海賊たちの中へ静かに歩み寄る。
「ひっ……」 恐怖に引きつる海賊たち。
空から山田が降りてくる。
「船で逃げ出さないように優しく脅してきたぞー」
サイリスは山田に軽く会釈する。
「ありがとうございます。わざわざお願いしてしまって」
「遠慮するなって。他にもある?」
「それでしたら……始末した海賊たちを埋めて頂いてもいいでしょうか?」
「お安い御用だ」
山田が地面を操作し、次々と死体を埋めていく。海賊たちは恐慌状態になる。
やがて、海賊たちの後ろから2人の大男が出てくる。
「おい、てめぇら! こんな2人ごときになにやってる!」
「頭……この女、尋常じゃない強さで……」
サイリスが静かに言う。
「あなた達がデクス兄弟ね」
「なんだてめぇは」
「島にいる手下を全員ここに呼びなさい」
「はぁ? 誰に向かって言ってやがる」
サイリスは一歩踏み出して冷たく見据える。
「見せしめに痛めつけてあげるから、かかってきなさい」
「死ねや!」
デクス兄が突進してくる。
その鳩尾に闇の玉が突き刺さり、悶絶して倒れる。
「兄貴! くそったれが!」
デクス弟が魔法を使おうとした瞬間、こちらにも闇の玉が突き刺さる。
二人の身体を闇のオーラが包み、締め上げていく。絶叫が響く。
(魔法で締め上げてるのか。プレス機みたいでおっかねー)
山田は埋めた土を足で均しながら見ている。
「このまま死ぬか、従うか。早く決めなさい」
デクス兄は激しく痙攣し、泡を吹いている。
「兄貴! わかった! 従う!」
「駄目よ。心の底から服従しなさい」
さらに魔力を込めて締め上げる。
「従います! 従いますから! 許して! アアアアアア!」
しばらくしてサイリスが魔法を解除すると、デクス弟は慌てて手下を呼びに走る。
「サイリスは魔法の操作が本当にうまいな。俺なんて道路作るのも四苦八苦してるのに」
「ありがとうございます」
しばらくして――海賊全員が土下座していた。
「あなた達は財貨を船にすべて積んでブルーネまで持ってきなさい」
「はい!」
「余計なことをしたら……」
サイリスがデクス兄を再び魔法で締め上げる。絶叫が響く。
「がっ……た、たすけ……」
「こうなりたくなかったら一刻も早く持ってきなさい」
「すぐにお持ちします!」 失神した兄を見て弟が叫ぶ。
サイリスが山田のところに歩いてくる。
「山田様、終わりました」
「お疲れ。じゃあ、みんな待ってるし帰るか」
【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】




