第46話【魔王山田、海賊退治に乗り出す】
ブルーネア・ギルド会館。
「戻ったぞ。話は終わったか?」
山田が入ってくると、会場が一斉に静まる。
「はい、レイラ様から王国の状況を教えて頂きました。レイラ様が始められる事業のお話など、どれも画期的でした」
ライオネルが報告する。
「早速宣伝してたのか。レイラも積極的になってきたな」
「ありがとうございます」 レイラが恥ずかしそうに微笑む。
「それで……結論は出たか?」
「はい。ブルーネは降伏し、以後魔王山田様のご命令に従います。何卒寛大な処置をお願い申し上げます」
「わかった。以後よろしく頼む」
その時、ザックスが声を上げる。
「ひとつ魔王様にお伝えしなければならないことがございます」
「ん? 何だ?」
「実は近年、海賊の被害に悩まされておりまして。デクス兄弟率いる海賊団が勢力を増しております」
(海賊……銃持ってないファンタジーな海賊か? やっぱりいるんだなぁ)
「悩んでるってことは苦戦してるんだな」
「はい。大きな島に拠点を築いて沿岸部を荒らし回っているのです」
(海賊島かぁ……あ、そういえばこっちだと適当に無人島とか自分のものにできそうだな。プライベートビーチとか。サイリス誘うか……サイリス……そろそろハッキリしないとなぁ……)
「あの、魔王様?」
「あぁ、すまん。状況はわかった。俺がなんとかする」
* * *
山田たちが集まっている。
「サイリス、ちょっといいか?」
「はい」
「神聖国の警戒もしないといけないし、海賊はさっさと討伐しようと思うんだ。場所も聞いたし」
「それでしたらネイ軍団長を呼びましょうか?」
山田が少し考えてから口を開く。
「いや、俺とサイリスの二人で行かないか? フライも二人のスピードなら二日もあれば行けるし」
「えっ……魔王様と私で、ですか?」
サイリスが目を見開く。
近くで聞いていたレイラも驚いた顔をする。
「あの、魔王様の護衛は……」
アイラが控えめに口を挟む。
「ちょっと大事な話もあるから護衛もなしだ。もしサイリスが嫌なら……」
「いえ! 魔王様と参ります!」
「良かった。じゃあ早速相談なんだけど……」
イリヤが場の空気を察して口を開く。
「私はあっちでギルドの連中と話してくるよ。ほら、レイラ」
「えっ……あの……」
イリヤ達はその場を離れていった。
* * *
イリヤがフェーネンのもとへ歩いてくる。
「ちょっといいかい? フェーネン」
「なんだい? もう小言は腹いっぱいだよ。ライオネルたちにたっぷり食わされたからね」 フェーネンが不貞腐れる。
「自業自得だろ。こっちもヒヤヒヤしたよ」
「で、なんだい?」
「予想通りあっさりブルーネも落ちたから、私もこっちに手を広げようと思っててね」
「アンタも魔王の手先ってわけかい」 フェーネンが嫌味っぽくイリヤに言う。
「婆さん、そんなことばかり言ってたらレイラ王女になにされるかわからないよ」
「誰が婆さんだ。心はアンタより若いよ。しかしレイラ王女は以前の噂とは随分印象が違うね」
「魔王の魔に魅入られたんだよ。ありゃ恐怖よりタチが悪いからね」 そう言って笑う。
「そういうイリヤも随分楽しそうじゃないか」
「正直楽しいよ。私もすっかりやられちまったんだろうね」
「話に聞いた天からの攻撃、アンタらが手掛けてる魔王商品、果ては道路建設まで。一体あの魔王はなんなんだい?」
「こっちに来る途中でブルーネ軍を壊滅させた攻撃を見たんだけど、あんな力を持ちながら金にうるさいし、よくわからないけど常識がどんどん変わっていく感じで楽しいよ」
「勇者と魔王、桁外れに強大な力の謎。私らには知る由もないって気に食わないね」
「ま、フェーネンもあの魔王様についていけば楽しい世界が待ってるさ。というわけで情報が欲しかったら私にどんどん貢いでくれていいからね」
「馬鹿言うんじゃないよ。私が魔王の側近になってアンタは蚊帳の外さ」
【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】