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第43話【魔王山田、娯楽を広める】

王城・会議室。


山田、サイリス、ライエル王、レイラ、ジーナスが集まっている。


レイラが王女の名前を使った商品販売について説明する。


(魔王グッズを参考に王女のブランド化を思いついたのか。商売センス抜群だな)


「レイラ、素晴らしいぞ。私は誇らしい。山田殿の元で修行した成果だな」 ライエル王が絶賛する。


(前から思ってたけど粛清マニアになってから、記憶回路おかしくなってないか?)


「ありがとうございます、お父様」 レイラが笑顔になる。


するとジーナスが進み出る。


「恐れながら私は反対です。レイラ様のお名前、引いては王家の名を利用して金銭を得るというのは」


(お? 面白い展開だ)


「ふむ。ジーナスの言うことも一理あるかもしれんな」


レイラが助けを求めるように山田の方を見る。


(おっと、ここで手助けしてはいけない)


山田が素知らぬ顔をする。


それを見てレイラが意を決して口を開く。


「魔王様はすでに同じ形で商品を販売されています。今やペンダントは誰もが身につけ、カバンだけでなくパンやケーキなども国民に大人気です。その結果、魔王様への恐怖心も薄れ、イメージも向上しています」


「レイラの言う通りだな。私もペンダントを10個持っていて、毎日磨いておる。ほらこの通り」


(は? 気持ち悪いからやめろ)


「確かにそうですが……」 ジーナスが食い下がろうとする。


「ですから適切に販売すれば王家のイメージ向上につながると考えています」


「ふむ。ジーナス、ここはひとつ折れてレイラの話を進めてくれないか? お主の王家への忠誠心は私が誰よりも理解しておる」


その言葉にジーナスは感動した表情になる。


「身に余る光栄です。承知しました。それでは進めさせて頂きます」


「山田殿、よろしいかな?」


「軍事以外は任せるといっただろ。みんなで相談して報告だけしてくれたらいい」


「ありがとうございます」


「ありがとうございます!」 レイラも勢いよく頭を下げる。


「あ、ひとつだけ助言がある」


「是非ご教示を」 ライエル王が真剣な表情になる。


「俺の場合は勝手に魔王の名前を使って商売するような命知らずはいなかったが、レイラの場合はそういう輩が出てくるかもしれない。認可と処罰は厳格にしないと収拾がつかなくなるぞ」


「確かに……そうですね」 レイラが考え込む。


「皆が好き勝手にレイラ様の名前を使って商売をするのは絶対に避けなければなりません」 ジーナスが続けた。


「当然だ。民のために尽力するレイラの思いを踏みにじる輩は私自らが処断せねばなるまい」


(こいつ、隙あらば処刑しようとするな。まるで反省していない)


「まぁ……鞭打ちぐらいにしておけ」


「いや、しかし……ふむ、鞭打ちもいいかもしれませんな」


(なにがいいんだ、このサディスト)


「ご助言ありがとうございます。周知するようにしますね」 レイラが山田に言った。


「おう、頑張れよ」


「はい!」


 * * *


5人が話していると、ドアがノックされる。


「入ってくれ!」


山田が呼びかけると一人の眼鏡をかけた男性が入ってくる。


「今日は頑張っているみんなに贈り物がある」


「ほう! なんでしょうか?」 ライエル王が目を輝かせる。


「この男はチェイスといって王都で雑貨を扱っているんだ。チェイス、持ってきてくれたか?」


「はい、魔王様。皆様、チェイスと申します。今からお配りしますね」


チェイスがカバンからカードの束を取り出し全員に配る。


「これはなんでしょうか?」 レイラが不思議そうに尋ねる。


「"トランプ"といってカードを使った娯楽だ」


全員が珍しそうにトランプを手に取る。


「遊び方がかなりあって子どもから大人まで楽しめるんだ」


「王国でも娯楽は色々ありますが、このようなカードの束は初めて見ますな」 ライエル王が興味津々で眺める。


「まだ完成したばかりだけど遊び方はいくつかチェイスに教えてある。また近いうちにみんなに資料を持ってこられるか?」


「もちろんです。商会を挙げて取り組んでいますので」


「娯楽だけでなく教育にもいいから、魔王国でも積極的に普及させようと思ってるんだ」


「例えばですが、どのような遊び方が?」ジーナスが尋ねる。


「試しにちょっとやってみるか」


 * * *


会議室では"神経衰弱"で熱戦が繰り広げられていた。


「3……は、ここでしたね」


レイラが次々とカードをめくる。


(なんとなく思ってたけどレイラってめちゃくちゃ頭いいな)


「このような感じでよろしいのでしょうか?」


サイリスが淡々と手元にカードを増やしていく。


(うん、サイリスは知ってた)


「すでに3回目ですが、サイリス様とレイラ様がほとんど取っていますね」


ジーナスが感心したように見守る。


「これ、面白いです!」


レイラが満面の笑みを浮かべる。


「山田殿は……手を抜かれてるのでしょうか?」 ライエル王が山田に尋ねる。


「ん? ちゃんとやってるぞ? 苦手なんだ、これ」


「そうなんですね、意外です」 レイラが言った。


隣にいるサイリスも不思議そうに山田を見ている。


「山田殿も不得意なものがおありなのですな」 ライエル王が冗談混じりに笑う。


「そりゃそうだろ。遊び方によっては結構自信あるけどな」


(天才と思わせておいた方がなにかと都合がいいんだろうけど、どうせすぐボロが出るしダメージデカいし)


「魔王様から遊び方をお聞きして豊富さに驚きました。皆様にもなるべく早く資料をお持ちしますね」 チェイスが興奮した様子で説明する。


「チェイスに優先的に情報を伝えているけど、大々的に普及させたいから魔王国で大量生産する予定だ」


「それほどの価値が……」 ジーナスが考え込む。


「魔王様から最初にそのようにお聞きしていますし、うちの商会では製作量も限界がありますので」


「気に入ったみたいだし、王国ではレイラの認可商品にするか?」


「本当ですか?! 是非、検討したいです!」 レイラが目を輝かせる。


「じゃあ、チェイスと相談してくれ。チェイスには他にも相談したいことが多いから早めに商会デカくしてくれ」


「ありがとうございます!」


チェイスが嬉しそうに頭を下げた。



【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】

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