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第39話【魔王山田、道路を作る】

首都マギアからグランデ平野へ向かう道。


山田は無言で手を突き出した。


(まずは《アース》っと)


視界のはるか先まで土が盛り上がり、道路が伸びる。


(最初は難しかったけど、慣れてくると楽しいな)


もう一度、手を前に突き出す。


(次に《ソイルフィックス》……固めすぎないように……)


盛り上がった土が固まり、滑らかな道が完成する。


(これ、俺以外に撤去できないよな……ま、いいか)


「お疲れ様です、魔王様」 見守っていたサイリスが声を掛ける。


「順調に伸ばしてきたけど魔力も結構使ったから休憩にしようか」


2人は見学しているバルガス達の方に歩いていく。


「魔王様。私はもう驚きすぎて……これはまさしく流通の革命です」バルガスが感嘆する。


「昨日ちょうど雨が降ってくれたからテストできて良かった。最初の方はガチガチに固めてしまったから滑るかもしれないな」


「いえいえ! ぬかるんだ街道に比べれば何倍も早く移動できます」


「気長につなげていくよ。ちょうどいい時間だから飯にするか」


「お持ちしますね!」 アイラが駆けていく。


「アイラさん、私も行きます」 レイラも後を追う。


「今日はポンスが作ってくれたカツサンドかな。肉は高いけど、王国で荒稼ぎしてるしちょっとぐらい贅沢してもいいよな」


「魔王様がそのように遠慮なさる必要はないと思うのですが」 サイリスが苦笑する。


「たまに贅沢するぐらいが一番だよ」


やがてアイラたちが食事を持ってくる。


山田は道路と同じ要領でその場に土の椅子とテーブルを作り出した。


「これはそのままにして休憩所みたいにしてもいいかな」


「確かに便利かもしれません」


「ついでにあとで小屋みたいにしておくか」


全員が座って談笑しながら食べ始める。


「美味い! 天気もいいし最高だなぁ。ミリトン達も食べてるか?」


「はい! 美味しいです!」


リューシーとアイラは夢中でカツサンドを食べている。


「あなた達は食べ終わったらすぐに周囲の警戒を」 サイリスがアイラ達に言った。


「はい!」


「こんなところに誰も来ないと思うけどなぁ」 山田が遠くを見ながら言った。


「そうは参りません」


「わかった、頼むよ。ダリス達は順調かな?」


「伝令の話では順調に降伏させているとのことです」


「フーシアを落とせば他の貴族もあきらめるかな。大隊長で活躍してる奴いる?」


「報告では第1軍のドリス大隊長と第2軍のジーグ大隊長が目覚ましい活躍をしているそうです。ジーグは私が軍団長をしていたときも優秀で重宝していました」


「嬉しいね。領土広げたらどうしても人手が足りなくなるし」


「そうですね」


「次にどこか支配下に置いたらサイリスが統治してみる?」


唐突な提案にサイリスが驚く。


「い、いえ……私などに……それに私は魔王様の親衛隊長ですから」


「サイリスなら問題ないと思うんだけど。なにかと適当な俺よりしっかりしてるし」


サイリスは首を横に振った。


「魔王様は誰よりもしっかり行動されています。私はついていくので精一杯です」


「謙遜するなぁ……あ、そろそろレイラに今後のことを伝えようと思うんだけど、どう思う?」


「頃合いかと」


「そうだな。おーい、レイラ! ちょっと来てくれ!」


レイラが駆け寄ってくる。


「ご用でしょうか」


「ちょっと大事な話があるんだ。座ってくれ」


レイラが座って真剣な表情になる。


「最近随分頑張ってるな。ジーンさんが感謝してたぞ」


「ありがとうございます。子どもたちと遊ぶのは楽しいので」


レイラは笑顔で答えた。


(なんか褒めるとやたら嬉しそうにするな)


「イリヤも孤児院のことについて熱心に聞かれたって嬉しそうに言ってたぞ」


「はい。今後の役に立つかもしれないと思い……人質なので難しいですけど」


「喜べ。人質は終わりにする」


「え……?」


「なんだ? 人質続けたいのか?」


「い、いえ……いきなりでしたので……」


「研修は終わりだ。後は実践あるのみ。ジーナスと一緒に頑張れ」


レイラが目を見開く。


「私が……国政を……?」


「そうだ。あの王様、最近張り切りすぎだし、なにかあったらレイラを女王にするからそのつもりで」


「女王……? でも兄たちが……」


「あんな連中いらん。レイラの方が優秀だし、俺の勘は正しかった」


レイラは戸惑った様子から次第に嬉しそうな表情になる。


(なんだ? 兄妹仲悪かったのか?)


「今度ブルーネに挨拶に行く予定だが、王の代理として同行してもらうからよろしくな」


「はい! 頑張ります!」


元気よく答えるとレイラは戻っていく。


「なんかやけに嬉しそうだったな。人質から解放されるから当然か」


「そうではないと思いますよ」 サイリスが微笑みながら言う。


「ん?」


「魔王様の側にいたからでしょうね」


「意味がわからん」


サイリスがふふっと笑った。



【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】

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