第30話【レイラ】
「おはようございます、アイラさん」
「おはようございます。今日も頑張りましょうね」
(相部屋と聞いたときは不安だったけど、アイラさんがいい人で良かった)
「おはようレイラ。みんな集まったらすぐ出かけるぞ」
「おはようございます。大丈夫です」
(この人は魔王なのに誰よりも働き者だ。なぜ人にやらせないのだろう)
「魔王様、ダリオ大臣との協議の報告書です」
「ありがとう。喧嘩しなかったか?」
「魔王様への態度について少し教育しておきました」
(サイリス様……魔王の腹心中の腹心……恐ろしいけどあの強さには少し憧れる)
「レイラ。この前作ってもらった王都の食文化のレポート、なかなか良かったぞ」
「……ありがとうございます」
(人質を働かせるなんて滅茶苦茶だと思ったけど、最近は慣れてきた……褒められるとちょっと嬉しい)
「魔王様! お疲れ様です!」
「おう、訓練頑張ってるか?」
「はい! いずれ私だけで勇者を撃退できるように頑張ります!」
「はは、期待してるぞ」
(スラン様……今なにを……私を捨てて……でも最近思い出すことが減ってきた気がする)
「魔王様! 一緒に遊ぼう!」
「すまん、ちょっと急いでるんだ。レイラ、子どもたちと遊んでやってくれ」
「は、はい」
「ほら! こっちきて!」
(子どもたちとの触れ合いは本当に楽しい。もっと城の外に出れば良かった)
「レイラ、お疲れ。また明日な」
「あの……」
「なんだ?」
「これ、王国で流行っていた料理をまとめてみました。もしよければ……」
「お! それはいいな。ありがとう」
「い、いえ……」
(人質だけど……この人について回ってもっと勉強しよう)
【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】