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第25話【魔王山田、あちこち飛び回る】

王都郊外。


「おはよう、レイラ王女」


山田が声をかけるが、レイラ王女は沈黙を貫いた。


「無視かよ」


サイリスが一歩前に出る。


「サイリス、いいっていいって」


山田が手を軽く振って制する。


「私をどうするつもりですか」


ようやく口を開いたレイラ王女が、震える声で問いかける。


「悪いけどじっくり話し合いしてる時間もないんだ。おーい、こっちだ」


山田が手を振ると商人ギルドのバルガス、イリヤ、ライラの三人が歩いてくる。


「おはようございます、魔王様」バルガスが挨拶する。


「まさか……レイラ王女かい?」


イリヤがレイラ王女を見て驚く。


「あぁ、まとめて連れて行く」


「嫁か愛人にでもする気かい?」


その言葉にレイラ王女がぶるっと身を震わせた。


「そんなわけないでしょ。魔王様とは到底釣り合わないわ」


サイリスが否定する。


「ふうん。まぁ確かに昨日アンタのドレス姿に見惚れてたし、王女様は趣味じゃないかもね」


「なっ……!」


サイリスが顔を赤らめて睨み返す。


「サイリス様。この者は常識というものをゴミ箱に捨てた愚か者ですので、何卒お許しください」バルガスが頭を下げる。


「なんだって?!」


「朝から元気だなぁ。サイリス、ちょっとついて来てくれ」


「は、はい……」


山田とサイリスが建物に入ると、ワーグが控えていた。


「ワーグ、準備は?」


「ご命令があればすぐにでも」


「第3軍と連携して、王都から逃げ出そうとしてる貴族を優先的に叩け」


「はっ、速やかに実行します」


「手を出すなという伝言はライエル王に届いているはずだから徹底的にやって構わない」


「承知しました。では」


ワーグが去っていくのを見送りながら、山田はふっと息をついた。


「さーて、サイリス。今日は忙しいぞ」


「はい、魔王様」


 * * *


グランデ平野・第4軍陣地。


山田達が地上に降り立つと、待機していた兵士たちが一斉に敬礼した。


「魔王様。お待ちしてました」


ダリスが前に出てきて頭を下げる。


「わざわざ出迎えご苦労。この四人を頼む」


「用意しています。おい、連れて行け」


兵士たちがレイラ王女たち四人を連れていく。


山田とダリスは並んで司令部の方へと歩き出す。


「あれが例の?」


「おう」


「王女なんか連れて行ってどうするんです? また悪巧みですか?」


「またってなんだ」


二人は軽口を交わしながらサイリスと3人で司令部へ入る。


「伝令から聞きましたが、王都の方は問題なく?」


「ライエル王は従えた」


「さすが魔王様。私からの報告ですが、グランデ平野は問題なく制圧しました。各村も特に反抗はなかったです」


「よくやった」


そこで山田が腕を組んで考え込む。


「魔王様?」 サイリスが心配そうに声をかける。


「ずっと悩んでるんだ、地方都市をどうしようかなって」


「ライエル王は降伏したんですよね?」 ダリスが尋ねる。


「あぁ。でもライエル王が地方の貴族に"魔族の支配下に入ったから武装解除しろ"って命令して、素直に聞くとは思えないだろ?」


「でしたらライエル王と同じように直接貴族を締め上げるとか」


「私は断固反対だわ。すべての都市を魔王様が回るなど。魔王様に負担をかけすぎよ」


「ありがとう、サイリス。全部回ってもいいんだけど、今後反乱が起きるたびに殴りに行くってのも面倒だしな」


「でしたら第4軍で順番に制圧してきますよ」


「うーん、そうだな、今回は任せることにしようかな。具体的なことは考えておくからひとまず第4軍はこのまま王都まで軍を進めて、このあたりで拠点構築を」


山田が地図を指して示す。


「了解しました」


「第4軍単独ではなく、他の軍や王国軍と合同になると思うから兵たちにも伝えてくれ」


「はい」


「拠点構築が終わったらダリスは一度魔王城に戻ってくれ、あと作戦が始まったらずっと前線に張り付いて指揮してもらうことになる。しばらく帰れないだろうから家族にもちゃんと会っておけ」


「わかりました。家族のことまでありがとうございます」


「あ、せっかく招待されてたのにバタバタして結局行けてなかったから俺も戻ったら顔を出すよ」


「え、いやいや、魔王様も忙しいでしょうし。構わないですよ」


「遠慮するな。なんとか時間作るよ」


「そうですか、ありがとうございます。 妻に伝えておきます」


「では頼んだぞ」


山田とサイリスは司令部を出て兵士についていく。


「悪いけど12人分のメシ頼めるか?」


兵士が敬礼して走っていった。


テントに入ると、山田が声を上げる。


「メシにするぞー」


ほどなくして兵士が食事を配りに入ってくる。


「すぐに出るのかい?」


イリヤが声をかける。


「あぁ、ちょっと寄り道してそのまま魔王城だ」


「運んでいただくばかりで申し訳ないんですけど、正直空飛ぶの最高です」


ライラが目を輝かせる。


「そりゃ良かった。レイラ王女、ボーっとしてないで早く食べてくれ。出発するぞ」


山田に急かされるとレイラ王女が慌てるように食べ始めた。


 * * *


モルテル採石場・ロックフォール実験場。


山田たちが地上に降り実験場に向かって歩いていくと、責任者のボルドが出迎えに現れた。


「魔王様。お待ちしておりました」


「ボルド、この四人を実験場に」


「了解です」


ボルドが指示を出すと、兵士たちが四人を連れて行く。


「魔王様、こちらです」


案内された先には、丸みを帯びた大きな石が整然と並べられていた。


「お、いいじゃないか」


「魔王様の指示通り丸くしてみました。この形ならそれほど時間もかからないですな」


「あんまり丸くしすぎると落としそうだしな」


「縄で縛るのもいいかもしれませんな」


「なるほどね」


「そういえば、最近セラ様がよく実験場に来られてますよ。この前は障壁の貫通テストで地面に大穴をあけられて」


「また今度進捗を聞いておくよ」


山田が実験場に着くと、待機していた兵士が近づいてきた。山田が指示を出す。


「さて、四人ともよーく見ておいてくれ」


しばらくすると轟音が鳴り響き、あちこちで砂煙が巻き上がる。


「一体なんだい?!」


イリヤが驚いて声を上げる。


音が止むと、バルガスが息をのんで呟いた。


「これはまさか……」


「空から岩を落としたんだ。当たれば即死」


レイラ王女の顔色が青ざめる。


「王国が余計なことをしたら、王都に雨のように降り注ぐってわけだ」


「噂では聞いておりましたが、勇者スランもこれで……」 バルガスが続ける。


「あぁ、あいつもビビって逃げていったぞ」


山田がレイラ王女を見ると何も言わず震えていた。


(そういやあのクソ勇者、王女放置して逃げたんだよな。最低な野郎だ)


「お前らもちゃんと納品しなかったら、商会の建物にいっぱい落とすからな」


「えっ……」


ライラが思わず声を上げる。


「冗談だよ」


「冗談に聞こえないよ」


イリヤが不満そうに睨んだ。



【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】

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