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魔王山田、誠実に異世界を征服する  作者: nexustide400
第一部《魔王VS勇者》編
15/100

第15話【魔王山田、食べ物を大事にする】

廊下を皆がぞろぞろと歩いていく。


(急に戦術変えると混乱するからバルト要塞では使わなかったけどやっと実戦投入だな)


(魔族飛べる、人間飛べない。この時点でもう設定ミスだろ。勇者チートとバランス取ってるつもりなのかな。あの変態女神ならありえるな)


(GPSはないけどAI搭載ドローンみたいなものだし、これじゃ一方的すぎて緊張感がないなぁ。これからは経営シミュ寄りにしようかな?)


そこで一旦思考を切ると、山田がダリオに話しかける。


「ダリオ、会議でずっと黙ってたな。幹部なんだからもっと発言していいぞ」


「いやー何度も言いますが私は場違いじゃないですかね?勉強にはなりますが」


「何を言ってるんだ。メシがなきゃ軍も民も動けないだろ、そうだろ、ガイア?」


「おっしゃる通りですな」


「いやーそうですけどね……」


「ガイアと食糧配分で大喧嘩してもらうぐらいじゃないとな」


「はっはっはっ!」とガイアが笑う。


「勘弁してください、魔王様」


そう言いながら、一同は食堂に入っていった。


 * * *


魔王城食堂。


空気が張り詰めている。魔族たちは全員が固まったまま、食事の手を止めていた。


山田はテーブルにつくと、辺りを見回す。


「……なんだ、なにかあったのか?」


ダリスがやや苦笑気味に応える。


「いや、さすがにこのメンバーが全員揃うとこうなりますよ」


山田はふと自らのテーブルを見回す。幹部たちが全員同じテーブルについていた。


「みんなが同じテーブルに集まってるからだろ。バラバラにするか?」


べリアムが慌てたように口を挟む。


「いやいやいや。魔王様、余計に混乱しますって!っていうか、なんで自分も……」


そんなやり取りの最中、ガイアがゆっくりと立ち上がる。


「まったく、だらしない連中ですな」


そして食堂全体に響くような声で怒鳴った。


「貴様ら!魔王様に気を使わせるな!普通にしろ!」


びくっと肩をすくめた魔族たちが、少しずつ動きを取り戻し、恐る恐る食事を再開する。


そのとき、厨房側から二人の影が近づいてきた。


「魔王様、少しよろしいでしょうか」


ダリオが丁寧に頭を下げる。


「どうした?」


「料理長のポンスが、相談があるようで」


山田が頷くと、ポンスと呼ばれた料理長が前に出る。


「実は……最近、魔王様が気に入られている“魔キノコのふわふわリゾット”を皆が食べたがりまして。本日、魔キノコを切らしておりまして……」


「なんですって?」


静かな怒気を孕んだサイリスの声が響く。


「今すぐ取ってきなさい」


「おい、サイリス?」


「魔王様の食事を満足に用意できない料理長など――」


ポンスの肩が小刻みに震え始める。


「やめんか、馬鹿者」


「っ……失礼しました」


山田は溜息をつきながら言う。


「在庫切れなら、メニューに線を引いておけばいいだろ。まぁ、悪かったな。最近あればっかり食ってたからな」


「申し訳ございません!明日からは大幅に在庫を増やしますので……」


「いや、俺が毎回違うものを食べるようにするよ」


「魔王様がそのように気を使われる必要は……」


サイリスが口を挟むが、山田は首を横に振る。


「フードロスはダメだ。ただでさえメシ足りないのに」


「フードロス……?」


ギギが聞き返す。


「あと、在庫さばきたいメニューがあったら俺に言え。みんなに宣伝するから」


「寛大なお心に、感謝いたします……!」


ポンスが深く頭を下げ、ギギも胸に手を当てながら言った。


「魔王様のお慈悲に、私は感動しております……」


山田はリゾットの味を思い出しながら、心の中で呟いた。


(あのリゾット美味かったから残念だが、仕方ない……あー、ラーメンとか食いたいなぁ)


 * * *


「この魔草のシチュー、美味しかったな」


山田がそういってスプーンを置くと、隣のサイリスが頷いた。


「はい」


「……サイリスって、いつも俺と同じもの食べてないか? 気を使わなくていいぞ」


その言葉に、サイリスが少し慌てる。


「い、いえ。私は親衛隊長として……」


「私はやはり肉をたらふく食べたいですなぁ。贅沢は言えませんが」


ガイアがしみじみと言った。


「それは同意だ。豊かになったら盛大に焼肉パーティーだ」


「そりゃ最高ですね!」


ダリスが声を弾ませる。


「そういえば、4軍の奴から聞いたけど……ダリスって子煩悩らしいな」


「え、まぁ……最近は、あいつら“魔王様に会いたい”って、そればっかりで」


「いいぞ」


「えっ?」


「会いたいんだろ?メシでも呼んでくれ。ダリスの奥さんがよければ、だが」


「いやいや、冗談ですって!」


ダリスが手を振って否定する。


「せっかく魔王様がこうおっしゃってるんだ、お招きしたらどうだ?」


ガイアがダリスの肩を叩く。


「じゃあ日取りは決めてくれ」


山田が軽く言うと、ガイアが少し躊躇いながら口を開いた。


「魔王様……厚かましいお願いですが、私ももうじき孫が生まれるので……よろしければ、会ってやって頂けませんか?」


「おーそれはめでたいな。おめでとう。都合つけば行くぞ」


「ありがとうございます!」


ガイアが深々と頭を下げる。


「さて……そろそろ会議に戻るか」


山田はゆっくりと立ち上がり、幹部たちを引き連れて食堂を後にした。



【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】

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