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君にほんの少しの救済を  作者: 海月
テロリスト編
9/13

8.再会

(今日はあのテロリストのカウンセリングか…)


久々のカウンセリング、相手は自分たちを人質にとっていたテロリスト。


もう事件からはだいぶ経っていたが、やはり自分も被害者の一人なので、危害を加えられることがなくても少し不安だった。


「おはようございます、センパイ。これからですか?」


出社すると、綾真がコーヒーを飲んでいた。


「ええ。…ちょっと緊張する」


普段自分の気持ちをあまり言わない刹那が、珍しく気持ちを吐露したので、綾真は驚いていた。


「だっ大丈夫ですよセンパイ!俺もついてますから!ね!」


かなり驚いてテンパっている綾真の様子を見て、刹那はふっと吹き出した。


「わ、笑わないでくださいよぉ。…いや、笑った顔の方が100倍可愛い…」


「馬鹿なこといわないの」


そんなことを言う綾真のおでこを軽く突いて、デスクに資料を取りに行った。



「十六夜、今日の奴のリストだ。時間まで、楽にしとけ」


望月がリストを渡してくれた。


『名前:藤木フジキ タスク、性別:男性、年齢:32歳、配偶者:あり、罪状:人質殺害罪(刑法第4条)、判決:死刑』


「こいつ、過去にも犯罪歴があるらしい。奥さん、子供もいる。…はぁ、どうしたもんかね」


望月はため息をつくと、少し悲しそうな顔をした。


「お前も色々辛いだろうが、奴に会うことはもうない。気張らず頑張れよ」


精一杯の励ましとともに、限定シュガーサンドをくれた。


「ありがとうございます。無理はしませんから」


軽くお辞儀をしたあと、化粧を直しにお手洗いに向かった。



「失礼します、十六夜です」


時間になり、部屋の前まで来た。


ドアが開きカウンセリング室に入ると、ガラス越しに男が座っていた。


その顔をみて、思わず寒気がした。


ショッピングモールで見た、殺人犯の顔。


「っ!…こんにちは、藤木さん」


最初言葉に詰まったが、平常心を取り戻し、笑顔を作って挨拶をした。


「私は十六夜刹那と申します。今日はよろしくお願いしますね」


刹那が言うと、嘲るように藤木が鼻を鳴らした。


「警察の奴らは仏様気取りか。さっさと殺さず最後のお説教ったぁ、いいご身分だな、クソが」


全く反省していないようで心が痛んだが、笑顔で話を切り出した。


「安心してください。私は貴方のカウンセラー、お説教なんてするつもりはありません。楽しい話でもしましょうよ」


自分でも顔が引き攣っているのが分かった。


全然綺麗に笑えない。相手がやはり怖くて、許せなかった。


「楽しい話だぁ?舐めてんのかテメェ!」


拘束していた椅子がガタンと揺れた。


「落ち着いてください。私も貴方も、30分間はこの部屋から出られないんですから、退屈しないように会話をするだけです。」


深呼吸をして、改めて藤木に向き直った。


「さて、今日は何をお話ししましょうか」






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