5.休日
「セ、ン、パ、イ!今日、終わったら飲みに行きません?」
出勤して早々に綾真が話しかけてきた。
「…無理。」
刹那は速攻で返した。
「そんなこと言わずに〜。センパイが酔い潰れても、俺がお持ち帰りしま…いだっ!」
思い切り綾真の足を踏んだ後、足早にその場を去った。
「も〜!つれないなぁ」
死刑囚はそんなに沢山いるものではないため、最近はレポート以外にやることがそこまでない。
だからこそ、後輩の綾真のレポートの手伝いや、事務の仕事をするときもある。
(明日はやっと休日か。何しようかな…)
刹那には趣味が沢山あった。
アニメ鑑賞、お菓子作りにショッピング…。
刹那は普通の女の子なのだ。
「…洋服でも、買いに行こうかな」
そう決めた途端やる気が出て、急いで資料を作り終えて帰宅した。
次の日、メイクを済ませたあと、ルンルンでショッピングモールに向かい、お気に入りの洋服店で買い物をしていた。
そのときだった。
近くで銃声のような音が聞こえたのだ。
様子を見に行ってみると、モールに仕掛けられていた爆弾が爆発したらしい。
テロだ。
(まずい、私も含めて全員人質か…)
モールの扉は全て施錠され、外には出られない。
警察に連絡しようとするが、ネットに繋がらない。
(テロリストは中にいるか…いや、まずは怪我人がいないか確認しないと…)
刹那も混乱していた。
そうこうしているうちに、どこかから怒声が響いた。
「金を出せ!そうじゃなきゃこいつらを殺すぞ!」
野太い男の声が響いた。
男の周りには手を縛られて動けなくなっている人たちが10人ほどいた。
(金を出したら相手の思う壺…。でもここで人が死んだら、それこそ死刑になる…。)
思考を巡らせ、打開策を考えたが、良い案が生まれず、どうしようもなくなってしまった。
そして、考えを巡らせていたそのとき、銃声と共に悲鳴が聞こえた。
テロリストが人質の頭を打ったのだ。