1.面会
「失礼します。心理カウンセラーの十六夜です。」
ドアの前に立って名乗ると、自動でドアが開いた。
ガラス越しには死刑囚。
『名前:上山 慶、性別:男性、年齢:35歳、配偶者:なし、罪状:児童虐待及び殺害(刑法199条)、判決:死刑』
リストの情報はこれだけ。あとは自分で聞き出すしかない。
「こんにちは、上山さん。はじめまして」
刹那はにっこりと笑い、挨拶をした。
「私は、貴女の心理カウンセラーの十六夜刹那といいます。本日はよろしくお願いします」
すると、上山は口を開いた。
「…俺にはカウンセラーなんていらねぇ。どうせこのあと殺されるんだろう。今カウンセリングなんてしたって、意味ねぇんだよ」
そっけなく返されてしまった。
「貴方が要らないと言っても、これが私の仕事です。」
刹那は優しく言った。
「見た目は若造かもしれませんが、これでも沢山の死刑囚を相手にしてきています。彼らも皆、最初は貴方と同じことを言っていた。または、私に命乞いをしてくる人もいましたね。それでも彼らは、私がこの部屋を出る頃には、すっかり普通の“人”になっていましたよ」
「人は皆、平等です。この世に産み落とされた人間ならば」
刹那は椅子に座って上山と向き合った。
「さて、今日は何をお話ししましょうか」