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0.プロローグ
「十六夜、次の死刑囚だが…」
先輩である望月に呼び出された。
「今回の奴は、元小学校教師だ。児童虐待、及び殺害で死刑囚になったらしい。」
望月は少し暗い顔をした。
「皮肉だなぁ。これから未来があるはずの子供を、導く側の人間が殺しちまうってのは」
十六夜刹那、23歳、独身。
死刑囚専属心理カウンセラー、配属一年目。
「そういえば十六夜、お前は何で自ら死刑囚専属にしたんだ?他にももっと色々あっただろう?」
望月はパソコンと向き合いながら刹那に聞いた。
「さぁ。自分でもよく分かってないですが…強いて言うなら、“救済”でしょうかね」
望月はよく分からないと言いたげな顔をしたが、すぐにパソコンに向き直った。
「奴が来るまで、あと一時間だろ。一階のパン屋の限定シュガーサンド、買っといたぞ」
望月は刹那にパンを渡して、タバコを吸いに外に向かった。
「私がこの限定シュガーサンドを食べるのも、死刑囚が殺されるのも、皆、平等の上に成り立っていますからね」
刹那は独り言のように呟き、化粧を直しにお手洗いに向かった。