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地球連邦戦記  作者: かたな
第一章 接触、迫る危機編
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第5話 会議

 地球連邦第36中継ワープステーションにて第3救難群がフィル公女の救助を行ってから数日。


 地球連邦第8居住惑星管区 ローレンス星系 惑星ローレンス 地球連邦において、居住惑星管区の星系、惑星への命名基準はシンプルであり、開拓団の団長の名前を付けることになっている。


 その第8居住惑星管区の行政庁があるのが惑星ローレンスにある第8居住惑星管区のいわば首都ともいえる都市、エイト・フロンティア市(開拓時に公募で決定)そこの管区行政長官官邸に一室にて、第8居住惑星管区の首脳陣10名程が集まり会議を行っていた。


 集まった人物たちの目の前の机にはそれぞれ資料が置かれており、各自がそれに目を通している。


 そして、初老の白髪の男性が部屋に入ってきて席に着いたところで声がかかる。



 「では、全員集まったので、先日の第36中継ワープステーションにおける仮称、異星文明遭遇事案について、管区防衛軍の方から報告をお願いします。ああ、軍部との顔合わせが初めての方もいるので自己紹介もお願いします」


 管区行政長官(以降行政長官と呼ぶ)に促され、老齢のしかしそれを感じさせないほどの威厳をもつ軍服を着た男性が立ち上がり、老齢さを感じさせない確りとした口調、声で報告を始める。


 「分かりました。第8居住惑星管区防衛軍司令長官を拝命しているランハルト・タイラーです。軍の階級では大将の階級をいただいております。先日の事案に関してこの私から報告させていただきます。まずは相手側の正体ですが、当第8居住惑星管区からオリオン座方面に約24000光年の位置にあるコーネリアという惑星が母星であり、国の名称はコーネリア公国であるということが相手側への事情聴取にて判明いたしました」


 「ちょっと待ってもらいたいのだけれど、異星人からどうやって事情聴取できたの?言語体系は多分私たちとは違うわよね?」


 一人の初老の女性が手を上げ、首をかしげながら質問する。


 それに対しタイラー大将は、横合いから資料を渡そうとしてきた副官を手で制しながら真剣な表情で答える。


 「それについても説明いたしますが、まずは説明をすべて聞いていただきたい、よろしいですかな?」



 「ええ、話の腰を折って申し訳なかったわ、続けて頂戴」


 「まず、幸運だったのは我々の使用している言語翻訳装置が彼らの言語の解析と翻訳に問題なく対応できたことです。これは全くの偶然というしかありません、ただ問題はこの後です……彼らからの情報が正しければ、この第8居住惑星管区から僅か24000光年の距離に侵略的異星文明の勢力圏が存在するということが確認されました」


 その言葉に会議室にざわめきが起きる。


 「静かにしてください。とりあえず説明を聞きましょう」


 「しかしアンダーセン行政長官、これは大問題ですよ、会議をしている場合ですか?」


 行政長官が話を続けさせようとしたとき、口をはさんできたのは頭髪が禿げ上がった小太りの中年男性である。


 「……ピーター警察局長、この情報共有も重要なんです。そして、情報不足が何をもたらすか、30年前の太陽系で起きた事件をお忘れですか?情報収集よりも速さを優先し、情報不足によって誤った対応をした結果、400万人が犠牲になったんですよ」


 行政長官の言葉にピーター警察局長は黙り込む。そして、行政長官の言葉によって顔色を悪くした人物がいた。


 

 タイラー大将である。


 「行政長官、あの事件の話は……」


 タイラー大将の様子を見てアンダーセン行政長官は何かを察したようにハッとし、そしてすぐに申し訳なさそうに目を伏せる。



 「すまないタイラー大将、あの事件で家族を失った貴方への配慮を失していた。報告を続けてくれ、改めて、もうしわけない」


 そう言って行政長官がタイラー大将に対し頭を下げようとするが、タイラー大将はそれを制する。


 「頭を下げる必要はありません行政長官、あの時は政府も軍も時間がなかった。せめてもう少し猶予があればと今でも思いますが、もう過ぎたことです。では説明を続けます」


 そう言って、タイラー大将は一度深呼吸をしてから再度口を開いた。


 「では、その情報をうけ軍の方では既に太陽系の連邦本国、軍司令部に対し緊急の報告を行いました。現在は国防省の方から太陽系外深宇宙探査局に対し探査活動の無期限休止と、現在探査活動従事中の第181、195、215、216、219,238,239、246の8つの船団に対し帰還指示を出すよう協議中です。その他に、コーネリア公国側から、避難民の受け入れの要請がありました。それと、コーネリア公国の艦隊ですが大型輸送艦5隻と戦闘用の艦艇が約10隻、どれもこれも損傷がひどく、一時的に第36中継ワープステーションのドックに入れてます。それと第3救難群が救助した女性がコーネリア公国の公女殿下ということも判明し、現在重傷者と合わせてこの惑星ローレンスへ移送させております」


 そこまで説明し、タイラー大将は席に腰を下ろす。


 次に挙手し発言を求める人物がいた。


 「行政省のコバヤシ管区支局長、何か?」


 「はい、行政長官……意見具申と取っていただいてもかまわないのですが……オリオン方面に最も近い位置にある第38中継ワープステーションは直線距離で資料から見ると惑星コーネリアから15000光年、探査局の船団は確か219船団と239船団がそのステーションを中継拠点にしてオリオン方面に探査に行っているはずだ。危険な勢力がいると分かった時点で、管区防衛軍の管轄にある方面空間護衛総隊司令部から警告か貴官命令は出せるのではないのか?」


 その言葉にタイラー大将が答える。


 「既に警告は送ってます。探査船団も指揮権は軍にありますから…しかし、護衛隊はともかく探査局所属の探査船などに対し勝手に命令をすることは難しいのです。一応彼らも護衛隊指揮官の命令に従うことにはなっておりますが、帰還に関しては探査局本体から要望があり、帰還命令は事前に協議をしたからにしてほしいと…半ば圧力に近い状態で、軍本部からは帰還命令は現場護衛隊指揮官に一任するようにと通達がありまして、一応警告と、ワープステーション近傍に留まるようには伝えてます」


 「なるほど、ところで、その公女殿下の容体は?管区行政省本体からも問い合わせが来ていてね…」


 その質問に答えたのはタイラー大将ではなく、先ほどの初老の女性であった。


 「そこについては保健衛生局支局長の私が管轄なので説明しますわ、まずは容体、こちらは今現在は安定しているけどまだ意識は戻っていないと軍から報告されてるわ。私が報告する理由は検疫について説明しないといけないからなんだけど、まず1つ目、採取した血液から遺伝子情報とか諸々救難艦内の設備で解析してくれたみたいで、地球人に有害なものはなかったわ、ただ、送られてきたサンプルを専用の施設でより詳しく解析した結果、地球の薬品類が彼らの肉体には効きすぎてしまう可能性が確認されたので、これは要注意、あと驚いたのが、内臓の配置とかがいくつか差異はあるけど地球人と近いという点ね、それとこれはコーネリアの人に聞いてみないとだけど、他種の異星人とも交配可能みたいなのよ、そこがよくわからなくって、次回の聴取時にでも聞いてみてほしいわ、それと、コーネリア人の血液についてなんだけど、サンプルを元に人工血液の大規模生成が可能になりましたわ」


 彼女が説明を終えて席に着くのと同時に、会議室の内線電話が鳴り、行政長官の補佐官が受話器を取り何事かを話したのち、行政長官に耳打ちする。


 「コーネリア公国の公女殿下の意識が戻ったそうだ、とりあえず今日の会議はここまでにしておこう、公女殿下から情報を聴取出来たら再度会議を開くことにする、市民への情報開示はそれまで待つように、以上」



 その言葉を受け、その日の会議は終了した。

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かたなさん、こんにちは。 「第5話 会議」、拝読致しました。  理路整然と状況が共有されていく様子が伝わりました。  登場人物、関係者に対しての形ですが、読者も作品世界や状況を共有できました。  会…
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