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地球連邦戦記  作者: かたな
第一章 接触、迫る危機編
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第4話 救援

コーネリア艦隊は、多数の艦が損傷を受け傷ついていたが、中でも旗艦プリンセス・コーネリアは、ワープ直前に受けた被弾が当たり所が悪く、機関部を直撃しておりさらにワープ時の負荷によって被害が拡大したことで最も酷い損傷を受けており、大破状態…轟沈一歩手前という状態であり辛うじて通信回線が生きてはいたが、機関部やその他主要箇所は爆発と火災で機能を停止、そしてフィル公女が味方艦隊に通信した直後に予備電力も停止してしまったことで、艦のすべての機能が喪失され、地球軍の警備艇の消火活動にもかかわらず、いつ爆発、轟沈してもおかしくない状態であった。



 第10警備隊や集結したその他の艦隊も消火活動に参加するが、他のコーネリア艦隊への警戒も解いたわけではなく継続されており、消火活動に参加した艦艇は少数にとどまった。


 増援として到着していた防衛艦隊、警備艦隊は防衛艦隊がコーネリア艦隊の監視を行い、警備艦隊は半数が防衛艦隊と同じく監視活動、もう半分が損傷を受けている艦艇へ接近、接触を図り、一部がプリンセス・コーネリアの消火活動に参加しているという状態だった。


 幸運だったのが、地球軍側の言語翻訳装置がコーネリアの言語を解析、翻訳できたことでコミュニケーションに問題が起きなかったことだろう。



 第272警備艦隊がコーネリア艦隊に接近し、会話を試みた際に判明したことだが、地球の翻訳機は一定の法則があれば他の惑星の言語も翻訳できることが確認された。


 コーネリア艦隊宇宙巡洋艦サーラがの艦長が地球人と最初に会話をした人物となる。


 ≪こちら、地球連邦宇宙軍第36中継ワープステーション所属、第44警戒群第272警備艦隊、所属不明艦隊へ、応答されたし、貴官らは地球連邦の領宙域に侵入している、目的、及び所属を明らかにせよ≫


 巡洋艦サーラ艦長は通信を受信すると、すぐに返答した。


 彼の表情には焦りが見られ、藁にもすがる思いで地球軍艦隊へ自分たちの窮状を訴え、大破しているプリンセス・コーネリアに取り残されているフィル公女の一刻も早い救出を求めようとした。


 「こちらコーネリア公国近衛艦隊巡洋艦サーラ!第272警備艦隊へ聞こえるか!?私は艦長のアセム・ルー中佐だ!我々に敵対の意思はない!」


 すぐに第272警備艦隊から返答があった。


 ≪こちら第272警備艦隊、旗艦巡洋艦C371 私は指揮官のロバート・デュラン大佐だ。何があったのか状況の説明を≫


 デュラン大佐の言葉にかぶせるように、ルー中佐は叫ぶように訴える。


 「大佐、殿下を我が艦隊の大破した旗艦に我が国の公女殿下が取り残されておられるのです!お願いです!助けてください!我が艦隊の事情については後程必ず説明いたしますから」



 少しの間をあけ、デュラン大佐も返答する。


 大佐もルー中佐の訴えに、状況をすぐに理解し対処の必要性と切迫性から焦りのが芽生える。



 ≪中佐、貴官らの事情は理解した、こちらの救難艦にも連絡した。安心するといい、すぐに救助が開始される≫


  

 「大佐…感謝します」


 ルー中佐は初めて会う異星の軍人に感謝を伝え深く一礼した。

 




 そして、消火活動の指揮を執る第10警備隊司令に、第272警備艦隊からの情報共有がなされる。


 「生存者?あの状態の艦内にか!?救難群が救助に入るって言ったって、あの状態の艦だぞ…仕方ない、各艦、救難艦が安全にあの艦に接近できるよう、サポート体制に入れ、障害になりそうなデブリは可能な限り排除!消火活動にあたっては継続し、該当艦の誘爆の抑制を念頭に行動せよ!駆逐艦以上の艦艇にあたっては、該当艦以外の損傷艦の負傷者の収容作業に入っていただきたい」


 ≪こちら第12救難群、該当艦は損傷が激しく、我が隊の装備では救助困難と判断する。我が隊は第3救難群のサポートに入る≫


 ≪こちら第3救難群、了解した。サポートは頼む。これより本艦、救難艦イナヅマが該当艦へ接近し救助を試みる。他の艦艇は誘爆の抑制のため、消火活動を継続されたし≫


 


 プリンセス・コーネリアに接近するアカツキ級航宙救難艦三番艦イナヅマ その艦橋は緊張に包まれていた。


 「総員気合を入れろ!本艦の初陣だが、諸君らは精鋭だ!この艦の能力を十全に出し切り、救助を完遂できると確信している。該当艦への接弦を開始せよ」


 指揮官の命令を受けイナヅマはゆっくりとプリンセス・コーネリアに近づいていく。


 「生体反応スキャニング開始……艦橋付近に微弱な生体反応2、艦体部分、前方にも複数の反応、これも微弱です。詳細な位置は艦の内部情報不測のため不明」


 「了解、ドッキング位置、艦橋部、艦首付近の2か所に設定、一番、六番艦体固定用アーム展開、接近する。一番アーム、該当艦艦首部をホールド、続いて6番アーム艦橋部ホールドに成功」


 イナヅマは、プリンセス・コーネリアの艦橋部と艦首部にアームを接続し斜めになるように自艦とプリンセス・コーネリアを固定した。


 そして次の工程に入る。


 「続いて、延焼防止のため、艦尾消火剤散布装置起動、該当艦の火災発生部へ消火剤散布開始、救助用アーム展開開始…アーム内、レスキューチームはスタンバイ、接続まで10秒、接続固定、気密用ジェル展開、接触まで5・4・3・2・1接続、ジェル固定化まで5秒4・3・2・1ジェル固定化完了、アーム内気圧システム作動レスキューチームは救助作業に入れ」

 


 アーム内 レスキューチームは艦橋部への突入のため、プリンセス・コーネリアの外郭装甲に超高出力レーザーカッターを用いて穴をあけていく。この装備は従来の救難艦にも同様の装備はあるものの、装甲版を切断するほどの威力はない。イナヅマに搭載されているレーザーカッターはその威力の問題を解消した新型レーザーカッターのため、難なく艦橋部に穴をあけることに成功した。


 「良し、穴が開いた、突入する!」


 突入したレスキュー隊達は、艦橋内の惨状に一瞬唖然としたが、すぐに我に返り要救助者の捜索に入る。


 そして、すぐに発見する。


 「いたぞ、あれだ…酷いけがだ……止血と応急処置、こりゃここでの処置は無理だ。一旦艦内へ収容しよう。報告を頼む」


 レスキューチームのリーダーは部下に報告を任せると手早く要救助者の出血個所に止血を施し、他の部下とともに艦内へ収容する。


 「こちらレスキューチーム1 要救助者を発見、一名は男性、意識不明でかなり危険な状態、もう一名は女性、意識はこちらも微弱、ここでは処置ができないため艦内へ収容する」


 ≪艦橋了解、収容後血液サンプルを採取、解析にかけ人工血液の生成を開始、肉体構造も不明なため一旦検査を優先する≫


 

 ≪こちらレスキューチーム2、こちらも生存者3名救助、撤収する≫


 ≪艦橋了解≫


 イナヅマはプリンセス・コーネリアから接続を解除し、距離を取る。そして他の艦艇も消火活動を中止し離れると、プリンセス・コーネリアは、まるでフィル公女が自分から離れるのを待っていたかのように爆発、轟沈した。


 

 救難艦イナヅマ 医療ブロック 


 医療スタッフ達がドーム大佐とフィル公女を懸命に治療していた。


 「内臓の配置は地球人と構造が近い、解析の結果血液は我々の薬剤で使用可能なものをリストアップ!データをそちらに転送した」


 「了解、受け取った!二人ともかなり危険な状態だ。人工血液は生成完了したものからすぐに輸血に回せ!」



 その会話の中でドーム大佐の心電図がフラットになるのに気づいた医師がすぐに対処を始める。


 「また心停止だ!電気ショックを行う!離れろ!」


 戻らない


 「クソ、戻ってこい!もう一回!」


 戻らない


 戻らない


 



 「くそ、だめか……」

 

 「こっちの少女はまだ助かる!内臓が傷ついているが……血液解析の結果はその男性の内臓は適合しそうだ。使わせてもらおう……すまない」


 

 こうしてコーネリア公国公女フィルは一命を取り留めた。


 公女フィルを守り、補佐してきたコーネリア公国近衛艦隊旗艦プリンセス・コーネリア艦長 ラム・ドーム大佐が死してなお、フィル公女の命をつないだのである…。

 

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かたなさん、こんにちは。 第4話 救援 拝読致しました。  緊迫した状況の中での、必死の救援活動の様子が伝わりました。  いつ爆発するか分からない中での活動ですから、まさに命がけ。  しかも、見知ら…
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