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地球連邦戦記  作者: かたな
第一章 接触、迫る危機編
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第7話 平和の終わりを告げる砲火  前編

第7話 平和の終わりを告げる砲火


 第219深宇宙探査船団が消息を絶つ、その数時間前に時を戻す。


 第38中継ワープステーションから1200光年の位置にある恒星系、第219深宇宙探査船団は地球連邦宇宙軍や政府からの警告を受けてその地点で資源の調査中だった惑星から撤収作業を進め、第38中継ワープステーションへ引き上げるための行動を開始していた。


 しかし、その行動は順調とは言えない状態であった。


 船団全体の指揮と護衛隊の指揮、両方を担当する第219空間護衛隊の旗艦、巡洋艦C241 艦橋にその原因となる人物たちが押しかけており、指揮官や空間護衛隊の幕僚たちの表情を引きつらせていた。


 「政府の警告?そんな脅威があるかどうかも不確定なものより、今目の前にある未知の鉱石の採掘、調査をこそ優先するべきではないのかね大佐!」


 「博士の言う通りです、地球連邦の未来に大変に役立つであろう発見になるかもしれないのですよ!?それをこんな警告があったとか軍から探査活動停止の命令が出たからとか、そんな理由で調査を止めたら連邦の損失です!現場判断でどうにでもなるでしょう!?」


 そう司令官に詰め寄っているのは深宇宙探査船団に所属する物理学者の一人であるクワメイ博士と同じくこちらは鉱物、地質学にも精通する科学者であるリー博士、この二人の老人が唾を飛ばす勢いで撤収を命じた指揮官に抗議の声を上げていた。


 無論、彼ら以外にも数十人の科学者や専門家、そしてそれぞれの学者に従う千人程の研究スタッフや調査船の船員達もいるが、彼らは、一部ではこの二人の博士に賛同する研究者たちも出たが、他の良識ある研究者たちに抑えられていた。


 だが、抑えられないグループもいた。


 老人二人とその直属の研究グループである。


 この老人二人の地位がその良識ある研究者たちが彼ら老人二人とその部下たちを抑えられなかった原因だった。


 この二人、深宇宙探査船団の探査研究主任と副主任、つまり、船団の指揮権を持つ軍を除いて、探査局側の船団での№1と№2だったのである。


 そんな二人は、自分たちの研究チームのスタッフに撤収作業を妨害させ、自分たちはこうして指揮官を説得しに来ているというわけであった。

 

 「わしゃあ勝手に撤収なんぞさせんぞ!あの鉱石を採掘するまでは撤収作業なんかさせんからな!何とか言わんか若造が!」


 そうクワメイ博士が一向に自分たちの思い通りの返答をするでもなく黙っている指揮官に対して顔を赤くして怒鳴る。


 流石に隣に立っているリー博士はまずいと思ったのかクワメイ博士を落ち着かせようとするが、おろおろするばかりで余計にクワメイ博士をイラつかせてしまっていた。


 そして、クワメイ博士の矛先はリー博士にも向けられる。


 「リー博士!おぬしはどうしたいのじゃ!こんな若造の命令に従って宝の山をみすみすどぶに捨てるつもりではあるまいな!?」


 「あ…いやそれは、まあ、わしもクワメイ博士に同意じゃが…」


 二人がそこまで言ったところで、それまで黙っていた指揮官が口を開く。


 「お二人は船団の指揮官である私の命令には従う意思がなく、あまつさえその命令遂行の妨害行為を正統な行為と主張するわけですな?」


 指揮官の口調は静かであった。


 その表情も、真剣ではあったが、その目は冷めきっていた。


 老人二人はそれに気が付かない。


 「ほう、ようやく分かったか。分かったのならほれ、やることがあるじゃろう?」


 クワメイ博士が指揮官に対して馬鹿にするようなしぐさをしながらそう発言すると、艦橋にいた幕僚やオペレーターなどのブリッジ要員の連邦士官たちがイラつきと怒りを含んだ視線を老人二人に向ける。

 

 しかし、指揮官は冷静に、冷徹に二人の老人を見つめている。


 

 そして静かに告げた。


 「保安要員は直ちにクワメイ博士並びにリー博士、そして撤収作業を妨害しているその部下を拘束、証拠の音声は録音できているな?では告げる、以上のものは深宇宙探査規定第1項の2および連邦宇宙保安法だい28条の探査船団の指揮官への意図的な正統性のない命令不服従及び、船団の安全に重大な危険を及ぼした罪によりその権限のはく奪、及び連邦宇宙保安法13条、連邦宇宙軍による警察権の行使に関する規定を適応し逮捕する」


 「な、なんじゃと!?」


 クワメイ博士がそう叫ぶのと、保安要員が彼らを拘束するのほとんど同時だった。


 何事かをわめきながら保安要員に無理やり引きずられていく二人の老人に対して既に興味を失った指揮官は撤収を急がせるよう指示を出す。


 その時である、レーダーを監視していたオペレーターが緊張した様子で異常を知らせた。


 「司令!レーダーに正体不明の反応あり、14時の方向、ポイントD210Aより接近中、数は30、大型の反応4中型10、小型反応16・・・これは明らかに隊列を組んで接近してきてます!」


 オペレーターの報告に指揮官は血の気が引くのを感じた。


 撤収作業がまだ終わっていない。


 妨害の影響で機材の撤収作業ができず、その作業を担当していた200人ほどが撤収できていなかったのだ。


 指揮官は決断する。


 「撤収作業に当たっているスタッフへ、機材をその場に放棄、直ちに探査船へ撤収せよ!補給艦E333及びE298はスタッフの撤収を支援せよ!護衛隊は全艦戦闘態勢!連中の詳細を知りたい・・・駆逐艦 丙626 丙631は分隊を編成、626が指揮を執りアンノウンを偵察せよ!他の艦は防御陣形にて待機!」


 

 指揮官の命令により迅速に陣形をくむ護衛隊、その動きには無駄がなく、練度の高さを物語る。


 そして、偵察の任務を受けた駆逐艦二隻は即座に本体と別れアンノウン集団へ向かっていく。


 丙型駆逐艦 全長140m 全幅30m 武装4連装ミサイルランチャー2基、12㎝連装衝撃砲2基、20ミリ機関砲4基 レーダー性能と航続力、居住性に重点を置いている設計のこの船は、戦闘を前提としているのではなくあくまで、護衛対象を危険から遠ざける。危険回避と長距離航海に重点を板設計であり、その索敵と速度能力には定評があった。


 丙626艦長は、アンノウンを補足、それを確認した瞬間息をのんだ。


 そして間を置かずに絶望的な報告が耳に届く。


 「・・・明らかに武装した艦隊だ・・・戦艦クラスもいる。すぐに本隊へ報告を・・・」


 彼は言葉を最後まで言い切ることはできなかった。


 オペレーターの叫ぶような報告にがそれを遮ったためである。


 「艦長!!アンノウンより熱源、無数に発生!熱反応こちらに向かってきます‼」


 艦長は咄嗟に回避の指示を出すが、その指示もむなしく駆逐艦 丙626は無数の光の矢に貫かれ爆散、僚艦の丙631は辛くも撃沈は免れたが機関部に被弾し行動不能に陥ってしまった。


 その丙631はそれでも使命を果たそうとできる限りのことをした。


 ≪こちら丙631!アンノウンによる攻撃を受け本艦は機関部損傷につき行動不能!僚艦丙626は轟沈、敵艦隊は戦艦クラスを含む有力な艦隊と確認!本艦これよりできる限りの遅滞戦闘を試み、連邦宇宙軍兵士の本懐を果たさんとす≫


 その通信を送るとともに、丙631は残ったスラスターを使いどうにか姿勢を制御、敵艦隊に対し主砲、ミサイル、機関砲、艦に搭載されているすべての武装を乱射した。


 敵艦隊はそれに意表を突かれた形となる。


 まさか単艦で、さらに被弾までしているのに逃げることをせずに攻撃をしてくるというのは彼らからしたら予想外であったのだ。


 それでも彼らは反応し、回避運動を取りながらその生意気な駆逐艦を滅多打ちにし撃沈すると、目的の資源がある惑星を目指し前進を始めるのだった。


 この時の戦闘により、駆逐艦 丙626 丙631 この2隻が地球連邦宇宙軍の最初の戦没艦となった。

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― 新着の感想 ―
かたなさん、こんにちは。 「第7話 平和の終わりを告げる砲火  前編」拝読致しました。  撤収作業を妨害する、偉い科学者と、船団の総司令官の対立。  こういう組織内で起こりえるもめごと争いごとの描写…
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