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《最初の魔法使い》 REMAKE  作者: コトワリ
第一章 番外編
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空理・其之五

 今すぐにでもこの場所から逃げた方が良いか、それともこの目の前の綺麗な女性を吹き飛ばすか私は悩んだ。何を求めているかと思ったら私?無理無理無理。私そっちの気ないし。やっぱ変な人なんだ!変な人!よく見たらこの部屋窓ないし!!窓ないよ!この部屋!


「おっと、別に変な意味じゃない…いや私の言い方が悪かったね。もう少し詳しく言えばここに住んでくれないかいと言う意味なんだ。」

「いやあんまり解釈の幅広まってないんですけど…。」

「その対能力者組織と言うのも、まだできたばっかりという話じゃないか。それならまだ決まった拠点もないんじゃないかい?」


それは…その通りだ。人数集めの事ばかり気にしてそういう方面へ頭が回っていなかった。


「だったらここを拠点にすれば良い。」

「え、良いの?」

「もちろんだ。作ったのは良いがちょっとテンション上がりすぎてね。部屋が無駄に多いんだよ。もったいないしほかにメンバーが増えるなら全然ありがたい。」


願ってもない話だ。それにその話だと確かにここに住む必要ができる。できる限りメンバーは一緒の場所にいたほうが良いと私も思う。さらに言ってしまえば、ここの立地が良すぎる。ジェネシスシティという最近できたばかりの『常に進化』を目標とした期待のニュータウン。そんな場所にあるのなら色々と便利だろう。


「うん…いいね。でもそれじゃあ私はもらってばっかりだよ?」

「…この部屋の惨状を見れば、私が何を求めているかは一目瞭然だろう?」


なるほど、つまり家事をやれと言ってるのか。ここまでの好条件で求められてるのは人手。私も人手が欲しい。これはウィンウィンってやつでは!?


「ドクさん…いい人?」

「逆になんだと思っているんだ…。まぁ確かに今までの職場ではよく変人だけどいい人ではあるって言われていたけれども。」


おお、完全に私のドクさんに対する意見と一致するではないか。

まだ完全に信頼したわけでもないが、とりあえず私はこのドクさんの提案を飲んだ。


そして次の日から私はこの拠点に住む…いやその前にお掃除だ。


「おじゃましまーす。」

「他人行儀だな。これからここに住むというのに。明月さんはなんて言っていた?」

「好きにすると言いって。でももしドクさんが何かしたらすぐ言えって。」

「なんで私って初対面の人からの信頼度0から始まるんだろう…。」

「美人なのにね。」

「そうだろう?昔は夜の街で一番の…こほん。」

「え?何?今…え?」

「…また今度話そう。」

「えー…教えてよ!」


私がそう言ってドクさんの背中をポンと叩いた。すると…


「!?」

「え」


ドクさんはまるで驚いた猫のようにビクついて私から一気に離れて行った。


「え…っと…。」

「あ、その…すまない…。私は…少し人に触れられるのが苦手なんだ。すまない。」


こうも謝られて、しかも突然の出来事。私の頭は困惑しきっていたが…すぐに空気を入れ替えた。誰にだって嫌な事、者、物はある。私だって昔の人に合わせることしかできない自分自身が嫌いだ。けれど、実はぬいぐるみが好きでその趣味を表で隠している『私』は、好きだ。好きになったのだ。


「わかった!わかったよ!…えーと…博士!」

「は、博士?」

「えへへ、最初見た時から博士みたいな人だなぁって。そう呼んでもいい?」

「…まぁいいか。」


対能力者組織の骨組みができた瞬間だった。

私の想像を絶する汚さだった部屋を片付けていると、博士が聞いてきた。


「そういえばそのチームの名前とかって考えているのか?」


私が運ぶには少々重たいものを博士は運んでくれた。ほんとに重たいのは私の能力+博士の腕力でなんとかした。この人意外と力あるな…。


「『ノマド』って言うの。考えてたや…ごほっ。埃ひどすぎる…。」


さっきからずっと空気の能力で換気してるのにどこからか埃がはい出てくる。なんで窓ないんだこの部屋は…。窓ない!!


「ノマド…って言うと遊牧民とか放浪者とか…そういう?」

「うん。私達は能力っていう不思議な力を得て。さも誰かを救ったり何かすごい事をしなきゃいけない…みたいな使命があるように考えちゃうけどさ。やめたくなったらやめてもいいんじゃないかなって。自由気ままに、気が向いたらちょっとした困りごと…迷子の子供とか重い荷物を持っているおばあちゃんを助けたりだとか。とにかくそういうのを意識してやっていけたらなって思って『ノマド』にしたの。どうかな。」

「…グラは私が考えないような驚くことを思いつくんだね。感心してしまったよ。うん、とてもいいと思う。『ノマド』か…。理系の私には一生思いつかないな。」

「そんなに褒めてくれるならあとでお菓子でも出してくれていいんだよ?」

「掃除してくれてるし良いだろう。コーヒーでいいかい?」

「お・か・し」

「わかったわかった。そうだね…じゃあ駄菓子買ってこようかな。」

「種類による。」

「ブラック太陽。」

「採用。」


そんなこんなで、『ノマド』の初任務は拠点のお掃除+駄菓子パーティーとなった。

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