遊戯
『ノマド』のメンバーは基本ゲームと言うものをしない。カルタとかオセロとか、そういう物ではなく、所謂電子ゲームと言うものをやらないのだ。だがしかし、俺はバリバリの電子ゲームっ子。前は冬矢と一緒にできたものだがここだと一緒にやってくれる人がいない。
「それだけが『ノマド』の残念な点だ…。アムは筋トレしかしないし、グラは忙しいし、博士は世代がおかしいし…。」
ボタン二つに十字キーしかないコントローラしかしらない博士とどう一緒にゲームをやれというのだ。なんならあの人自作する可能性まである。
「そうか、博士に頼めばいいのか。」
困った時の博士えもん。俺はさっそく博士の部屋へと向かった。
だが、四次元的博士は不在。そこにはグラがいた。
「グラ、博士知らないか?」
「今日は確か学会のなんとかさんのとこ行ってるって言ってたよ。夜帰ってくるってさ。」
そういうグラは汗だくで、結構目のやり場に困る恰好をしていた。グラって『ノマド』だとめちゃくちゃ気抜くんだよなぁ…。
「トレーニングルームに入り浸ってたのか。」
「うん。だから早くお風呂入りたい。」
「あ、すまん。」
「んや邪魔とかそういう意味で言ったんじゃないから。…そういえばユラ君は博士に何用?」
「なんかゲーム作ってくれないかなって。」
「…暇なの?」
「ひま。」
「言い切ったね…。すごろくとかトランプとか?」
「いや電子ゲームだ。ほら、『ノマド』のみんなそういうのやらないだろ?だから博士が作ったゲームなら一緒にできるなぁって思ったんだ。」
「なるほど…。私とやろうよ。」
「グラが?なにかできるやつあるのか?」
「あれ、車のやつ。なんたらカート。あれならできるよ。学校行ってる頃にやってた。」
そういえば前誘った時は忙しいと断られたができないとは言ってなかったか。
「じゃあやろうぜ。」
「お風呂入ったらね。部屋で待ってて。」
グラはなんだか別の意味も含みそうなことを言って俺の横を通って行き、部屋から出て行った。俺はグラに言われた通り自分の部屋で待つ。
そこまで時間もかからずグラは帰ってきた。服が変わっても変わらず目のやり場に困る恰好だ。
「お、懐かしい。でもこれ最新のじゃなくない?」
「グラがやったことあるくらいのやつにした。合ってたみたいでよかったよ。」
「変な優しさだ。じゃやろう!」
グラはゲームを前に少しテンションが上がったのか、元気そうに俺からコントローラを受け取った。グラはゲームでも要領が良いのかすぐに操作を思い出す。
そして一時間ほどエンジョイしていたら、グラがこんなことを行ってきた。
「よし、本気で勝負しようぜ。ユラ君。」
「もう慣れたみたいだし、やるか。」
「なんか賭けよ。勝った方が負けた方になんでも言う事聞かせるやつ。」
「定番だな。」
「イエスと受け取った!いざ勝負。」
「待て待て、イエスってない。」
「えー…ノリ悪い。」
「いやいいんだが、そういうのはお互い何を命令するのか決めてからだろ。」
「え、そう?…まぁどっちでもいいけど。私はそうだな…」
グラは顎に手を当てて悩みだす。なんだろう、一日家事交代?いやグラは別に嫌がってるわけではないし…。
「今日のお皿洗い手伝って。」
「そんなんでいいのかよ…。」
「良いの。で、ユラ君は?なんでもいいよ。」
なんでも、と言われれば男として少し、いや大量に思いつくがそういうのはお互い望んでいない。
「じゃあ週末デートしようぜ。」
「了解。ご褒美じゃん。良いの?」
「罰ゲーム決めてるわけではないし。後グラと遊びに行きたい。」
「それは同感!じゃいざ尋常に。」
俺とグラは真剣勝負を手のひらサイズの物で行った。ここはゲームをやりつくしているものとして負けるわけにはいかない。
「…負けた。」
「やったぁ!私の勝ち~。…でもデートなしか。」
「それはそれで行けばいいだろ。」
「だね。じゃ今日お皿洗いお手伝いね!」
その夜、俺は言われた通りグラと一緒に夕飯の皿洗いをした。俺は少しもやもやしていたことを聞いてみた。それは「グラって俺の事ちゃんと好きなのか」と言うもの。
いや、わかってる。これを聞くのは相当めんどくさく、大分ダメな男がやることだと。信じていないという事になるからだ。だがしかし、このところのグラの態度と俺の性格上、どうしても…どうしても聞きたかった。言いたい欲が貯まるダムは簡単に決壊した。
「グラさん。」
「…何改まって。そこの洗剤とって。」
「はい。一個聞きたいことがある。」
「なぁに?なんでも行ってみんさい。」
「…俺の事ちゃんと好きなんです…よ…いや、好きなんですかね。」
すっっっごい気持ち悪い聞き方になってしまった。
「うわ、めんどくさ。」
「…スイマセン。」
言わなきゃよかった…。第一グラは嫌いなら嫌いとはっきり言うではないか…。これで嫌われたらどうしよう。
「あのねぇ…ちゃんと好きだから。…恥ずかしいからあんまり言いたくないんだよ、もう…。」
「え、グラ大好き、可愛い。」
「なんでそんな簡単に言えるの!?」
「好き。」
「わかったから!私も好きだよ!あー…汗かいちゃったよ、さっきお風呂入ったのに。もうヤダ…。」
「じゃあ一緒に入るか?なんて…
流石にこれ以上はやめようと思った矢先だった。
「…入る。」
「へ?」
「ほら行くよ。」
「ちょちょちょちょちょ!?!?!」
意地悪が過ぎたとなんとか風呂場で土下座して許してもらえた。
グラを怒らせちゃだめだな…。




