菓子
ノマドのお菓子事情
キッチンには基本お菓子カゴがあり、グラが日によって違うお菓子を入れてくれている。何をするにも甘いものは必要だというグラの考えからできたものらしい。たまに何も入っておらず、金色の折り紙が入っている時がある。そういう時は冷蔵庫を開けてみる。そこにはグラ手作りのケーキやアイスがあったりして、毎日のちょっとした楽しみだったりした。
ただ、例外的な日もある。グラがお菓子を用意してくれない日があったのだ。朝っぱらからグラがトレーニングルームに籠ってしまった日の事。
「と、いう事で各々お菓子持参しよう。」
「賛成だ。」
「了解!なんでもいいのか?」
「食べられるものにしてくれ。」
俺と博士とアムはお菓子がないという緊急事態の為、キッチンに集まっていた。
こんな日も中々ないのでせっかくならみんなで違う毛色のお菓子をカゴに入れようと決めたのだ。
「生ものは良いのか?」
「なんでもいいだろ。ケーキとかグラも用意してるし。」
「あれは美味い。ほっぺたが南半球までこんにちはしに行くくらいには美味い。」
「わかる。」
「私は買いに行くとするかな。…にしてもグラにはほんと頭上がらない。」
「家事も分担するって決めたけど結局今まで一人でやってもらってたし…。」
「そんじゃあ、一個ルールをつけようぜ!」
アムがそんなことを言い出した。
「グラを一番喜ばせたやつが勝ちってのはどうだ!」
「おお、良いかもな。博士には勝てそうだ。」
「ほう?言うじゃないか。なんだかんだ私が一番グラとは長いのだよ。」
「博士常に部屋に籠ってるから関係ないんじゃねぇか?。」
「一理ある。」
「頷いちゃうんかい。」
という事でグラが一番喜ぶであろうお菓子を求め、俺達三人は一度解散した。
正直、楽勝である。グラが好きなものなんてあれしかない。
一時間後、みんなお菓子を持ち寄ってキッチンにまた集まった。
一人異質な奴がいることは明白だった。
「…アム、それなんだ。」
「見たらわかるだろ。プロテインクッキーだ。」
「わかるか。色がおかしいのになんか良いにおいするの反則だろ。」
「…これ喉乾いちゃうんじゃないか?グラはそういうのキライそうだと思うぞ。」
「博士はわかってねぇなぁ。そんな時は、これさ!」
「…一応聞くがなんだそれ。」
「見たらわかんだろうがよ!プロテインさ!プロテインでのどが渇くなら、プロテインで潤すしかねぇだろう?」
「はは……プロテインに『潤す』なんて単語が繋がる瞬間が人生で来ようとは思いもしなかったよ。」
「おい博士、なんでそんな呆れた目なんだ。名案だろ。」
「本当にその通り、迷案だ。」
…アムってこんな脳筋だっけ。
「そういう博士はそれなんだよ。」
「太郎に棒、それとガムにメン。あとラムネに…ブラック太陽。」
「なんだブラックさんって…。」
「美味いんだぞこれ。子供の頃よく食べたもんだ。」
博士は駄菓子チョイス。まぁ予想してはいたけども。
「で、ユラは…饅頭?」
「おう、グラは饅頭好きだぞ。」
「そうなのか?博士。」
「し、知らなかった…。」
博士は両手を床につけ、本気でがっかりしだした。落ちた駄菓子がなおダサい。
結局、優勝者は俺だった。
「ユラ君、私がおまんじゅう好きなのよく覚えてたね。言ったっけ?」
「買い出しの度に饅頭への視線の熱さ異常だったからな。」
「…わすれて。」
グラは恥ずかしかったのか顔を真っ赤にして饅頭を食べだす。
ちなみに博士の顔は真っ青。
「おい、アム…このクッキーほんとにプロテインだけか…?味がちょっと…。」
「…?おう、プロテイン『だけ』だ。」
「……なるほど、私が悪い。」




