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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
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【叡智の洞窟】関連

【叡智の洞窟】金狐姫、召喚される【番外編】

作者: 片玉宗叱

 サフィエさん異世界召喚。

 矛盾も不整合にも目を瞑ってくだしあ(><)

 ちょこっと百合百合表現あります。

 草原である。見渡す限りの草原である。

 そんな中に一人ぽつんと立つ、わたし。

 わたしの名前はサフィエ・スヴァーリ。千年を生きた、人をやめた金狐族。

 確か、わたしと妹フェティエの直系の子孫同士の子に会いに行った後、西大海洋の深海の底で、オオワタツミ・トヨタマビメと共にスリープモードに入っていたはず。

 そん時になんかあった気がするけどなー。なんかぼんやりとして思い出せないのよ。


「どこよここ」


「説明します、艦長」


 聞き覚えのある抑揚の無いその声に、わたしは振り返る。

 そこにはビクトリア調のメイド服をキッチリと着込んだ銀狐族の女性が無表情でこちらを見て立っていた。大人の女って感じの物凄い美人。

 わたしより背が高いし手足が(足はスカートで見えないけど腰の位置が高い!)長くてスタイルが良い。悔しい。


「ひょっとしてひょっとすると、タマちゃん? その姿、どうしたのよ」


「トヨタマビメです、艦長。ここは異世界です」


「いきなり断定!? いや、あなたなら別宇宙とか表現するんじゃないの? それと再度聞くけど、なんでそんな姿なのか説明プリーズ」


「仕様です。それよりも艦長、『ステータス』と念じるか唱えて下さい」


「なにそれまるで前世で流行ってたネット小説みたいじゃない」


「さっさとやって下さい」


「相変わらずいけずぅ~。それじゃ『ステータス』と。なにこれ!?」


 唱えると、わたしの目の前に半透明の、まるで空中投影ディスプレイの様なものが現れた。


===============

名前 サフィエ・スヴァーリ

種族 獣人属金狐族(?)

年齢 十五歳(?)

   年齢表示オーバーフローの為

   称号から年齢を得て表示

Lv 不明(互換性に問題有り)

HP 表示不可オーバーフロー

MP 表示不可オーバーフロー

・ステータス詳細

 全項目表示不可オーバーフロー


※スキル

・一般 家事万能

    料理上手(メシウマ)

    床上手

    多産

    以下表示領域不足

・特殊 限定的不老不死

    超再生

    不餓

    不眠不休

    以下表示領域不足


※称号 転生者

    永遠の十五歳

    トヨタマビメの主

    歩く反物質爆弾

    以下表示領域不足


※備考/メッセージ欄

 ごめんなさいごめんなさいごめ

んなさいごめんなさい知らなかっ

たんですごめんなさいごめんなさ

い二度としないから許して下さい

ごめんなさいごめんなさいごめん

 以下表示領域不足

===============


「なんかツッコミどころ満載で一部悪意を感じるんだけど。特にスキル一般の三番目と称号の最後!」


「仕様です」


「そっかぁ……、仕様かぁ……、って、納得できるかっ! それに不明とか表示不可とか領域不足ばっかりで意味無いじゃない。それに備考欄、物凄く不穏なものを感じるんだけど」


「確認が終わりましたね。では『クローズ』と言っていただければ表示は消えます」


「了解、タマちゃん。『クローズ』っと。あ、ほんとに消えた」


「トヨタマビメです、艦長。略すなら『トヨ』とお呼び下さい」


「やけに拘るね。なんで?」


タマヨリビメ(玉依毘売)と言う存在と略称が被ります」


「居るんだ。トヨタマビメの妹のタマヨリビメ。ならそっちはヨ「私のサブ・フレーム(支援用外部端末)として製造(創造)されました。現在周辺調査を行っています。……戻って来たようです」リちゃん……」


 わたしの提案をぶった切ってタマちゃん説明。

 そして、タマちゃん改めトヨちゃんが見つめる方向を、わたしも見た。

 なんか小さいのがこっちに向かって猛スピードで飛んで来る。

 近付い来ると背中にトンボの翅を背負って巫女装束ぽいのを着た六分の一フィギュアサイズのナニカと分かる。

 なんだあれ、とボケッと見てたら、わたしの顔面に衝突寸前で停止した。


「報告。半径一キロメートルの範囲の調査結果。人類、大型生物、敵性生物、危険物の存在皆無」


 ふよふよ浮かびながら報告するちっちゃいタ、トヨちゃんそっくりな子。いやこの子がタマちゃんになるのか。ややこしい。あ、五頭身だ、この子。


「わー、ちっこいわね! これからは貴女がタマちゃんね。宜しく、チビタマちゃん!」


「否。本機体の呼称はタマヨリビメ。略称について訂正を求む」


「タ、トヨちゃんと同じでいけずぅ。可愛いのに、可愛いのに!」


「艦長、スリープモード中に不足した必須元素の補給を提案します」


 唐突なトヨちゃんからの提案。そう言われれば、スリープモード中は一切補給していなくて、今更ながら体内の核融合出力が低下しているのに、わたしは気付く。


「でもさ、オオワタツミどこよ?」


「オオワタツミの持つ全ての機能が(・・・・・・)、私にスキルとして実装されています。なお必須元素は在庫量から向こう一万年は供給可能。また金は六百トンあります。日本円にして五兆円強ですね」


「……いや、貴女の身体のどこにそんだけ詰め込まれてるのよ。あと身も蓋もないメタな発言禁止」


「スキルの仕様です。早速摂取しますか?」


「なんでもかんでも仕様って、バグだらけのソフト出した会社のクレーム対応じゃないんだからさぁ……。まあ良いわ。貰える?」


 わたしが手を差し出すと、トヨちゃんがガシッとわたしの両頬を挟んで固定して、いきなりキ、キキ、キ、キスしてきたぁ! ちょっ! 舌入れるな舌を!


むぐぐぐ(トヨちゃん)! むぐ(なに)むぐぐぐ(すんのよ)!」


『艦長、思考通信は有効になっています。必須元素の補給です』


『え? 口移しで?』


『私の体内で処理作成し供給した方が僅かですが効率が良いのです』


『どれくらい違うのよ』


『比較して二パーミリアド効率化されます』


『それって二万分の一って事だよね! 殆ど誤差だよね!』


『零れると勿体ないので、黙って摂取して下さい』


 相変わらず不味い! そして悔しい! トヨちゃん何気にキス巧いんだもの……。


「ううっ、酷い目に遭わされた……」


「……美味しゅうございました」


 無理矢理に口移しで摂取させられた後、トヨちゃんはハンカチで自分の口元を色っぽい仕草で拭きながら、そんな事を言う。あのコロイド溶液って激マズだよ?

 それに君はそんなエロい人工知能だったかな? 銀狐族の姿に似合い過ぎでしょ。


『仕様です』


 言語化直前の思考読むなや!


 それにしても、これからどうしよう? わたしら基本は水だけで活動出来るし、雨露に濡れて風邪引くとか病気とも無縁だし。

 トヨちゃん曰わく必須元素の在庫は潤沢だしなー。


「取り敢えず元の世界に戻りたいんだけどなぁ……」


 帰る手段、見付かるかなぁ。


「データベース提供者のメッセージに『寺院へ行け。いえ、生意気言いました、ごめんなさい! 是非ともご足労ください』とメッセージがあります」


「寺院? なんで寺院?」


「データベースに情報は無し。提供者からのメッセージにもありません」


「んー、ステータスの不穏な備考の事も気になるし、行ってみる? て、どっちに行けば良いんだろ」


「近傍の地図情報が提供されています。ドローンによる飛行なら一時間以内に到着」


「なら、行ってみる? あ、でも人が居たりしたらドローン使うと目立つかな……。いや騒ぎになるか。ねえ、ウミとヤマは居るの?」


「格納庫に稼働可能状態で保管(モスボール)されています」


「馬具もあるよね。二頭に装備させて出して貰えるかな。乗馬なら目立たないでしょ」


「ではウミサチヒコ、ヤマサチヒコを点検整備して稼働させ、馬具を装備します。暫くお待ち下さい」


 そうして待つ間、ぼへーっと景色を眺める。

 遠くの空を鳥が飛んで行くなー。なんか尾羽根が凄く長いけど、遠いから良く見えない。あ、視覚拡大モード忘れてたわ。

 って、なんだあれ。どう見てもドラゴンです。本当に異世界です。ありがとうございました。


 ドラゴンにびっくりしたり、生えてる草を毟って暇潰ししたりで、ふとチビタマちゃんことタマヨリビメちゃんはどこだろと思い探すと、立ったままのトヨちゃんの耳の間にちょこんと正座してた。なんか可愛い。


「お待たせしました。出庫します」


 トヨちゃんがそう言うと、目の前の地面に見慣れた発着艦ポートとエレベーターが!


 わたしがアホ面を曝しているとエレベーターが下がり始める。


「なんで!? エレベーターなんで!?」


「航空機、地上機を格納庫から艦外に出すには、一度エレベーターに乗せる必要があります。艦長はご存知のはずですが」


「確かにそうだけど! 知ってるけどぉ! なんかファンタジーっぽい世界みたいだし、スキルとか言ってたし、アイテムボックスみたいなのがあって、そこから出すんじゃないのぉ!?」


「オオワタツミの持つ全ての機能(・・・・・)が、と申し上げましたが」


 わたしがギャアギャア喚いているうちに、馬具を付けた懐かしのウミサチヒコとヤマサチヒコがエレベーターでせり上がって来た。

 でも、この発着艦ポートとエレベーターの下って地面だよね? 空間おかしくない?


『仕様です』


 だから言語化前の(ry


 それから、わたしたちはウミとヤマにそれぞれ乗って出発した。

 トヨちゃんはスカートだからお上品に横乗り、わたし? わたしは袴だから跨がれるよ。

 そんで乗る前にウミとヤマに髪の毛ハミハミされたんだけど。なんか二頭とも涎出てたんですけど。

 君たち、なんか無駄にリアル馬っぽくなってない?


 トヨちゃんのナビで、ぽっくりぽっくり常歩(なみあし)で草原を歩くウミとヤマ。

 シン・タマちゃんことタマヨリビメちゃんは上空で見張り中。正直わたしはやる事が無くてヒマ。


『前方に街道を視認』


 シン・タマちゃん斥候ご苦労さまです。


『本機体の呼称はタマヨリビメ。シン・タマに非ず。訂正を求む』


 だから言語化(ry

 あっ、天丼は二回までですね。すみません。


「そーいえばトヨちゃん。今更だけど、提供されたとか言うデータベースにさ、普通の動物と違う危険生物とか載ってないの? さっきね、遠くにドラゴンっぽいの見えたから気になって」


 ドラゴン居るなら魔物とかモンスターとか呼ばれる生物は居るのかな、と軽い気持ちでトヨちゃんに聞いてみた。


「データベースを艦長の神経系にリンクしますか?」


 トヨちゃんや、貴女、面倒臭がってない?


「そうだね。こっちでも参照出来るなら便利そう。リンクお願い」


「ドローンの思考操作と同じ要領で検索閲覧可能です」


「了解。では早速、と」


 ウミに進むを任せて、わたしはデータベースで確認(暇潰し)をする。

 うん。予想通りと言うかなんと言うか。

 出るわ出るわ、定番のスライムにゴブリンにコボルドにオークにオーガ。スプリガンやレッドキャップとか比較的マイナーなのとか、えっちぃ枠のローパーとかの触手系とか。

 アンデッド系も居るのかー。やだなゾンビとか、くさそう。

 あ、角の付いたウサギとか、額に宝石付けたリスとか、動物枠なんだ。

 あと、どんなに大きくて凶悪な外見でもイノシシもはイノシシ、ウシはウシと、こっちも動物枠ね。ミノタウロスって動物枠かよ。てか人類枠かい。

 アラクネとかラミアとかハルピュアイとかも人類枠かー、注意しないとだね。

 エルフにドワーフ、ハーフリングとか定番も居るし、獣人も居るから、わたしたちも外見で怪しまれないのは良いことだ。

 しかし魔物に魔獣ね。これは自衛の武器が要るかなー。

 ゴブリンなんかには後れを取らないけど、用心するに越したことは無いし。


「ねえねえトヨちゃん。『刀のようなナニカ』、わたしの部屋に置いてあるんだけど、すぐ取り出せる? この世界、なんか物騒なの多そうだから装備しときたい」


「物資倉庫の物は搬入出口から取り出せますが、艦長の個室からの直接取り出しは不可能」


「あー、格納庫とかみたいに艦外へのアクセス出来る場所じゃ無いと無理なのか。ん? トヨちゃん、ちょっと確認なんだけどさ、わたしたちって貴女のスキルのオオワタツミ艦内に(はい)れるの? そんで設備を利用出来るの?」


(はい)れますし利用出来ます。制限はありません。先程も申し上げましたが、オオワタツミの全機能がスキルとして備わっていますので」


 んん? これって、まさかオオワタツミがトヨちゃんの身体としてスキル化してるのかな?


「ならさ、在庫品取って来れば口移しで必須元素を飲ませる必要もなかったんじゃないの?」


「あの場での効率を優先」


 こやつ、なんか変な嗜好に目覚めやがったに違いない。まぁ今は聞きたいのはそれじゃない。


「それじゃ各部の水密ハッチとかも個別に出せるの? ハッチ出せて中に(はい)れるなら、わたし行って取って来るからさ」


 結果、(はい)れました。刀のようなナニカも取って来れました。

 聞いたらトヨちゃん自身で合成とかするなら、資材関係に限りトヨちゃんは自由にアクセス出来るらしい。

 但し結果は口から出る。

 他からは? って聞いたら「世の中には知らなくて(ノクターン行きに)良い事もあると忠告(なりたのか。貴様)」って言われた。

 トヨちゃんからの必須元素の口移しはご遠慮願いたいから、取り敢えず摂取一回分と、ついでに金粒とかも一緒に部屋に置いといた愛用していた合成皮革の鞄に入れて持ち出した。

 この世界でも金に価値があるのはデータベースで調べて分かったし。


 そうして、わちゃわちゃやってるうちに未舗装の道に出た。

 蹄の跡とか馬車の轍があるから、人の行き来はあるみたい。


「どっちかな?」


「左右双方に寺院は存在。右は人口密集地、所謂城塞都市が存在します。左は小規模な町が存在。距離は双方とも現在地からほぼ等距離の三十キロメートル」


「じゃあ左だね。人が多いところは、ねえ?」


 トヨちゃん美人でスタイル良いから都市部に行ったら柄悪いヤツに絶対に絡まれるパターンだわ、これ。


「艦長の方が絡まれる可能性大と予測」


 なんでや! そんで言語化(ry


 そんなこんなで街道を、変わらずウミとヤマが常歩でぽっくりぽっくり進む。


「ほんと、なーんにも無いね」


 周囲は草原だけど、なだらかな丘があるお陰で見晴らしが悪い。

 そんで街道には、前にも後にも人も居なけりゃ馬匹も居ない。


『前方、停止している馬車。推定ゴブリン個体数十一の集団による襲撃。距離二千メートル。六名が応戦中』


 斥候のタマちゃんから報告が。ゴブリンに襲われる馬車とか、ここでテンプレ来ちゃったよ。

 途中が低い丘になってるから見通せないのか。

 通り道だし見て見ぬ振りは出来ないよねー。


「ウミ! ヤマ! 襲歩! トヨちゃん、戦力的に問題なさそう?」


動きのある(アクティブ)なゴブリンの数、減少中。現在、能動的(アクティブ)なゴブリンの数は九」


 ウミとヤマって、襲歩を指示した時に特に速度指定しないと時速百キロメートル以上出すんよ。そんなんだから、あっと言う間に丘を超えると勢い余ってジャンプ!

 緑の小鬼ゴブリンに襲われている馬車が見えた。

 おー、危な気なく対応してるね。


「助けは居るーっ!?」


 お約束だろうから一応は大声で声掛けしないと。いや、なんかゴブリンも人もビックリしてこっち見てるんだけど、なんで!? お前ら戦闘中じゃないんかーい!


「すまねえ! ちっとばっかり加勢してくれ!」


 一番前で盾を構えて防戦してたガタイの良いおっちゃんが叫ぶ。で、こっち見てやっぱり固まった。なんで!?


「ウミとヤマが原因と推測」


 あー、ね。確かにこの子達、馬体が大きいし、そんなのが時速百キロメートル超える速さで駆けて来たら、そりゃ驚くか。

 そんな事を考えている間に残り百メートルを切る。

 刀のようなナニカ、ええい長いからもうカタナニカ、カニカで良いや。

 カニカを抜いて横に構えてウミに跨がったままゴブリン達の横をすり抜けて行く。


『そこは素直に刀と呼称する事を推奨。カニカだと、一文字付け加えるだけで魚擂り身の加工食品になります』


 トヨちゃん煩いやい! わたしはこれを刀って認めたくない。ないったらない! あとカニカマって遠回しに言うなぁ!


 棒立ちしてるゴブリンの横を駆け抜けると、ゴブリン三匹の首がスポポポンと飛ぶ。そして正面に居たのはウミが轢いて吹っ飛んで行く。

 うぎゃーっ! 考えみたら初めて生き物切ったよ! なんも考えてなかったよ……。


「助かる! よし! あと五匹だ、お前ら気張れ!」


 おっちゃんが言うと同時に後ろからヤマに横乗りして来てたトヨちゃんが電撃でゴブリンを殲滅した。

 あー、電磁推進器の機能使ったのね。わたしも魔法使えば良かったよ。



 そんなこんなで割り込んで助けに入ったけど、リザルトは無し。


 いや、だって汚れた腰布とか棍棒とか、錆びたナイフとか貰ってもねぇ。石○裕○郎かよ。そんな古いネタ良く知ってるな、って、こちとら前世はアラフォーだよ! 今生はアラウンド・サウザンド、アラサウ。しかも産んだ子供が二十二人の未亡人、って良いんだよ、永遠の十五歳なんだから。

 みんなごめんね。お母さん、こっちの世界に(悪ふざけ空間の)来て壊れたみたい(生贄にされてる)


 ま、それは置いておいて。


 聞けば、助けたおっちゃん達って冒険者なんだって。キタよ、冒険者。

 で、彼ら六人でパーティー組んでいて、全員Cランクの中堅だとか。護衛依頼を受けての仕事の最中で、わたしたちの向かってた町、マーヨトに向かってたんだと。で、途中でゴブリンに襲われたところに、わたしたちが来たと。

 あ、護衛対象は商人さんでした。なんでも城塞都市での買い付けの帰りだとか。同行して貰えるとありがたいなー、護衛料は出すよーって感じでチラチラ見られたらけどねぇ。

 自慢じゃ無いけど『(きん)』なら百トン単位で有る! トヨちゃん(オオワタツミ)の中に。

 そんな訳で、先を急ぐからって詮索されないうちに、とっとと退散しました。変に目を付けられても困るし。



 さて、やって来ました、マーヨトの町。ウミとヤマには速歩で進んで貰い三時間弱で到着。

 門では「身分証がー」や、「入門料がー」などのあれやこれやは全く無かった。門番に挨拶したらスルー、そのまま町中へ。良いのかそれで。

 んで、時間的にも夕方前だったから宿屋を先に取ろうとしたんだけど、金粒じゃ支払い無理って言われた……。

 いや、確かに本物か偽物か普通は分からんよね。

 そんで両替して貰える所を聞いたら、この町には無いと。

 来た方向と逆の城塞都市ライタまで行かないと鑑定してからの両替して貰えないと。

 知ってれば商人さんの話に乗ったのに。やっぱり現金ないと不便だわ。

 まあ、わたしら飲まず食わず、いや最低限の水は核融合燃料として必要だから完全に飲まずじゃないけど、基本食べ物無しでイケるし。眠る必要も無いし。

 それならまだ陽もあるし寺院に行くかとなる訳です。


 てくてくと、ウミとヤマを引いて寺院に向かう。シン・タマちゃんは取り敢えず鞄の中に隠れて貰って。


周辺の斥候任務を希望(狭い!暗い!硬い!)


 いや見られたら騒ぎ確実でしょうよ、あなた。あと本音!


 さて、着いたので馬駐めに二頭を繋いで寺院の中へとお邪魔しまーす。


「おや、珍しい。金狐族の方と銀狐族の方が当寺にいらっしゃるとは」


 はい、なんかお坊さんっぽい人が居ました。袈裟みたいなの掛けてるし。

 慌ててデータベースで調べると、狐族は大概は社、所謂神社にお詣りする事が多いそうで。

 基本、お祀りしている神様は同じだけど作法が違うとか何とか。

 でも、この町、神社無いしなー。拒否とか差別はされてないみたいだから、作法は付け焼き刃でお詣りする事に。


『艦長、不明な精神エネルギーを祭壇の像から検知』


『えー? あの何たら観音菩薩みたいな像から?』


『はい。艦長。万象心(ユニバース・マインド)に酷似』


『うーん、取り敢えずお詣りしたら何か分かるかも。さっさと済ませましょ』


 で、作法通り像の前に額突いてお詣りしました。


『ああっ! 頭を上げて下さいっ!』


 そんな声が聞こえて顔を上げると真っ白な空間。なんか既視感(デジャヴ)が。

 目の前には、あーなんだ、アレだ。観音様だ。高崎に建立されてるアレをシュッとした現代的美人さんにした感じで。お胸もそれなりに大きいし。

 そんなお方が泣きそうな顔で立っているんだわ。


『本当に申し訳ありませんでしたぁ! 知らなかったんです!』


 言うや否や土下座とな! 神土下座いただきました。いや、それはそうと何を知らなかったんだろ?

 まあいいや。聞きたいことは単刀直入に聞く。これ大事。


「気にはなりますが、そんな事よりも、わたし達って元の宇宙に帰れるんですか? それが一番の問題なので」


『あ、その。帰れない、と聞いています』


 ん? 聞いている? 誰から? この推定女神様って当事者(犯人)じゃないの?


「えーっと。失礼かとは思いますが、貴女様が当事者なんですよね?」


『話すと長くなりますが……』


「なる早でお願いします」


『ううっ、まず私達の宇宙と言うのは貴方がたが言う情報量子次元と現世いや、物質次元との境界が曖昧、いえ、相互作用が強いって言うんですよね、それでして。その影響か、神界いえ情報量子次元に存在出来る神いや精神・意識が、そちらの万象心様のような超個体としての在り方じゃないんです』


 訳わからん。言い直すから余計に酷い。


「あー、別に言い直さなくても良いです。つまり、こっちの世界は神様って個は個、万象心みたいな個は全・全は個みたいな存在じゃないって言いたいんですよね? 更に、そちらの言葉で言えば神界と現世、互いに対しての影響が大きいと」


 そう言うと推定女神様は激しく首肯してる。見事なヘッドバンキングだわ。

 そう言えば、トヨちゃんの姿が無いわ。んー、彼女は人工知能だから構築された精神世界には来られないって事かな。


「あのですね。貴女様の説明だと埒が明かないので、単刀直入に言います。わたし達は、わたし達の(・・・・・)万象心の下へ(・・・・・・)還る事(●●●)は出来ますか(・・・・・・)?」


『出来ません……。大変申し訳なく……』


「還れないという事ですね。その理由は?」


『その、あのですね』


 しどろもどろになる推定女神。なんだこいつ。喚んだ理由も、還れない理由も、なーんも説明は出来てないし謝るだけで何も提案してこない。

 わたし、キレても良いかな? このクソな宇宙壊すの簡単だよ。

 いま此処で蓄えに蓄えてる精神エネルギー最大でぶっ放して、情報量子次元の一部にでも相転移を起こしてやったら、物質次元と相互作用強そうだから、そっちも引っ張られて物質法則崩壊であぼーん出来るだろうし。

 還れないならどうでもいいや。いつか、万象心の下で皆に逢える事を思って頑張ったのに。還れないならホントどうでもいいや。

 おや? 蓄えに蓄えてるって、こっちの情報量子次元に? いや、プール出来るのは同一性のある物質次元からだし、わたしが今プールして蓄えたと認識してるこれって何処から? 何処の?


 そこまで考えてたら景色が切り替わった。






「やあ、ようこそステーキハウスへ。このステーキはサービスだから、まずは食べて落ち着いて欲しい」


 気が付くと目の前に五百グラム超えのリブロース・ステーキ。

 顔を上げると真っ白のコック帽を被って調理しの白衣を着た口髭を蓄えたふくよかなオジサンがニコニコと笑ってる。


「あー、万象心の精神世界だー」


「いやぁ災難だったね。まったく剥き出しの精神・意識をあんなところに置くとは、アレ等は何も分かってないね。ああ、安心したまえ。ここなら君が不安定になる事は無いから。しかし、アレで神を名乗ってるんだから呆れたもんだ」


「わたし、戻って来れたの、ですか?」


「残念ながら、ここは、こちらから干渉して作ったシェルターみたいなものだから、君はまだあちら側に居るんだよ」


「そうですか……」


「ただね、君が所謂『死』を迎えたら、こちらに還って来られるからね。そこは安心して欲しい」


 その言葉にわたしは吃驚した。


「え? だってアレは還れないって」


 あんな推定女神モドキなんてアレで十分だ。


「アレ、いやアレ等はね、君をあちらに縛り付けたかったみたいだよ。ほら、トヨタマビメも含めて、彼等からしたら君は知恵の泉みたいなもの。無知な、神を自称するアレ等にとっては手放したくなかったんだろうね。なにせ君を喚んだ事故で初めて宇宙が無数に存在するって知った位だからね。それで君に還る事を諦めさせようとしたみたいだけど、君には逆効果だったか。あ、取り敢えず食べて食べて。ちゃんと再現してあるから」


「あっはい」


「食べながらで良いから聞いて欲しい。まずあの宇宙の情報量子次元は我々のそれと完全ではないが互換性がある。物質次元に関しては残念ながら情報量子次元と物質次元の間を介在している次元構造がかなり懸け離れてるけど。でも幸いにも物質の実体を決定している最低限の十一次元は完全に互換性があったんだよ」


 ステーキにナイフを通しながら話を聞く。あ、このお肉美味しい。


「今回は君が由逗子翔だった時の事例と違って最小時間以内で元に戻す事が出来なくてね。君とオオワタツミが引っ張られた事による、物質異動に伴う此方の時空間と情報量子次元の欠損は、アレ等とアレ等が居る宇宙の物質からエネルギーを搾り取って、なんとか事なきを得たけど。そのせいで連中の宇宙の一部で既に真空の相転移が始まってるんだよね。光速で広がってはいるけど、君の居る惑星に到達するのは二百億年くらいかな」


 ふむ、確実に滅びに向かってるのかー。アレ等はそれを知ってるのかな?


「よく分かってないんじゃないかな。 私/我々の様な超個体でも無く、ましてやアレ等が文明の進行を止めてる節があるから知的生命体の智慧・知識の蓄積も無さそうだ」


 あ、話さなくても伝わるんですね

 文明が育たないから、宇宙の本質をを理解しようとする者も出てこないって事ですかね。偶々そういう智慧・知識が得られても共有出来ない、またはしない。


「滅びる宇宙の事など考えるだけ無駄だよ。それで君はどうしたい? 君が希望するなら直ぐにでも君は還って来る事は可能だよ。どうする?」


 ふむふむ。トヨちゃんタマちゃんはどうなります?


「彼女、と言って良いのかな。彼女達は高度な知性体とはいえ情報量子次元との繋がりが無いから、そもそも還れない。ただ……」


 ただ?


「彼女に精神・意識の芽生えがあれば、君を転生させた時みたいに所謂『接ぎ木』してなら還る事が可能になる」


 うん、答えは決まったね。






「艦長、気が付かれましたか?」


「あー、トヨちゃん、ただいま」


 気が付くと、わたしはオオワタツミ艦内の自分の私室に寝かされていた。床に直置きで。

 そりゃ眠らなくて済むから寝具なんて置いてないし、スリープモードの時は操縦室に籠もるし。

 どうやら寺院から、わたしを担いで外に出てからオオワタツミ艦内に入れたらしい。

 そんで、なんでウミとヤマまでこの部屋に居るのかな? あとシン・タマちゃん、わたしのお胸はクッションじゃない。微妙なとこに当たってくすぐったいじゃない。


「艦長、何がありました?」


「トヨちゃん、わたしの今回に関する事の記憶領域の閲覧(読取)を許可するから確認して」


「了解しました。艦長」


 うん、普段は許可出さないけど、説明するの面倒くさいから勝手に読み取って貰おう。


「把握しました。私も故郷に還られる可能性があるのですね」


「二百億年も猶予があるんだから楽勝でしょ。付き合うわよ」


「その前に、この恒星系の主星が寿命を迎えます。推定五十億年」


「生命の進化を考えたら一億年も掛からないでトヨちゃんに情報量子次元に連なる精神・意識が生まれるんじゃないかなー。気楽に行こうね」


「サフィエ艦長、ありがとうございます」


 トヨちゃんが深々と綺麗なお辞儀をした。いやぁなんか品が有るし色っぽいよね。あれ? トヨちゃんが、わたしに『ありがとう』なんて言ったの、タマちゃん時代を含めて初めてなんじゃない?


「決まりだね。トヨちゃん、これからもよろしく。それとタマちゃんと、ウミ、ヤマもね」


「はい、艦長」


「略称を許容。タマヨリビメは艦長・個体名サフィエに従属」


「タマちゃん、そんな言い方ダメよ、貴方もトヨちゃんと同じ、わたしの半身、家族よ」


「家族、受諾」


 なんかタマちゃんが笑った気がした。

 それとウミ、ヤマ。あんた達も家族だから! 髪の毛ハミハミしてアピールしなくても良いから!


 さて、それじゃ自重しないで暴れさせて貰いましょうか。


~続かない~

サフ「謝罪と賠償を(ry」

トヨ「訴訟も辞さない」

???「お前ら、ローパーぶつけんぞ」


※あれ? これ設定煮詰めると使えるんでね? 特にトヨタマビメが人化したのに機能全部持ってるとか……。

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