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明智学園裏クラブ  作者: 涼
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如月瑠衣の依頼

■ 盗難事件の謎


すっかり肌寒くなった10月下旬、学園祭が終わって生徒会の仕事も落ち着いていた。そんなある日の放課後、生徒会室には裏クラブのメンバーが集まってまったりしていた。影郎アカウントに新しいダイレクトメッセージが届いたわけでもなかったのだが、今後の裏クラブの活動方針について話し合っておこうということで集まっていたのだ。ところがメンバー全員は琴宮梓颯が説明した活動方針に納得したので、特に話し合うことはなかった。堀坂向汰はいつものようにソファーに座りながらスナック菓子をボリボリ食べて暇そうにしていた。


琴宮梓颯「向汰君、暇そうね。たまにはまったりしながら世間話でもする?」

堀坂向汰「世間話といってもねえ・・・毎日同じことの繰り返しだから話すことなんてないよ」

琴宮梓颯「たしかにそれは言えるわね」

堀坂向汰「影郎アカウントにメッセージが届かないってことは、この学園が平和だってことなんだけどね」

琴宮梓颯「そういえば、白石先輩はあと半年で卒業ですね」

白石由希「うん。なんだか淋しいけど、わたしの行く大学には麻雀部があるみたいだから楽しみなんだよね」

堀坂向汰「へえ、麻雀部なんてあるんだ。白石先輩、即効で入部ですね」

白石由希「即効じゃないよ。まず見学させてもらうつもりだよ。部員が変な人達だったら嫌だもん」

堀坂向汰「白石先輩とはやっぱり麻雀の話になるか・・・じゃあ如月さん、何か面白い話題はない?」


生徒会副会長の席に座ってノートパソコンを操作していた如月瑠衣が「え?」という表情をしながら振り向いた。


堀坂向汰「如月さんって1つのことに集中してると周りのことが見えなくなるタイプだよね。何か面白い話題はないかって聞いたんだよ」

如月瑠衣「そうですわね・・・面白い話題ではありませんが、わたくしのクラスでちょっとした盗難事件がありましたの」

堀坂向汰「ほう、盗難事件ね。それで何が盗まれたの?」

如月瑠衣「昨日の話なんですが、女子生徒の体操服が盗まれましたの。しかし、すぐに犯人が見つかったので解決しましたわ」

堀坂向汰「どうしてすぐに犯人が見つかったの?」

如月瑠衣「学級委員長が先生から許可をいただいて、生徒達の所持品チェックをしましたところ、ある男子生徒のロッカーの中からその女子生徒の体操服の出てきましたの」

堀坂向汰「その男子生徒が犯人だったってこと?」

如月瑠衣「はい。その男子生徒は今でも否認していますが、犯人であることに間違いありませんの」

堀坂向汰「うーん、なんか引っかかるね。如月さん、その話を詳しく聞かせてもらえるかな?」

如月瑠衣「わかりました」


如月瑠衣の話によると、体操服が盗まれたのは葉月穂香という女子生徒で、一昨日の放課後に盗まれたのだと推測しているらしい。その日の5限目、体育の授業が終わった後、葉月穂香は制服に着替えて、大き目の巾着袋に体操服を入れた。そして机の横にあるカバン掛けフックにその巾着袋とカバンをかけていたらしい。ところがその日、葉月穂香はその巾着袋を持って帰るのを忘れてしまったとのことである。次の日の朝、登校すると机のフックにかけておいたその巾着袋がなくなっていた。そこで学級委員長が生徒達の所持品チェックをしたところ、柴崎和真という男子生徒のロッカーの中からその巾着袋が出てきた。そのことについて柴崎和真は「僕は何も知らない。盗んでない」と否認し続けている。しかし、柴崎和真が犯人だと確定された理由は他にもあるという。まず、以前から柴崎和真は葉月穂香に好意を持っていて、1年2組の生徒達はそのことを知っていたようだ。そして、盗まれたと推測されてる一昨日の放課後、柴崎和真が1年2組の教室に入っていくのを他のクラスの生徒が目撃していたのだという。そのことに関して柴崎和真は「図書室で課題をしていて、ノートを忘れたことに気づいたから教室に取りに戻っただけだ」と言っているが、その言葉を誰も信じていない。柴崎和真には盗む動機もあり、チャンスもあったということから犯人だとされているのだ。担任の先生からは「柴崎君、素直に認めて葉月さんに謝りなさい」と言われているが、柴崎和真は「僕じゃない」と否認し続けて、未だに謝罪していないのが現状とのことである。


如月瑠衣「好きな女子生徒の体操服を盗むなんてかなりの変態としか思えませんわ」

堀坂向汰「実に興味深い事件だね。本当にその柴崎和真という生徒が犯人なのかわからないよ」

如月瑠衣「それはどういうことですの?」

堀坂向汰「この盗難事件の話にはおかしな点がある」

如月瑠衣「おかしな点ですか?」


堀坂向汰はペットボトルのコーラーを一口飲んで、おかしいと思う点について説明しはじめた。


堀坂向汰「体育の授業は5限目にあったということは、葉月穂香は制服に着替えて体操服を巾着袋に入れて机のフックにかけた。フックには既にカバンがかけられていて、その上にその巾着袋をかけたことになる。帰宅の際、カバンは巾着袋の奥にかかっていたはずだから、まずフックから手前にかかっている巾着袋を取って、それからカバンを取ったはず。その話だと葉月穂香はカバンを取った後、再び巾着袋をフックにかけたことになる。どうして持って帰るものを、わざわざフックにかけ直したのか、それが1つ目の謎。そして、柴崎和真が犯人だとすれば、どうしてロッカーの中に巾着袋を隠したのかが2つ目の謎。下心があって体操服を盗んだのなら、カバンの中に入れて家に持って帰るはずだよ。ロッカーの中に隠しておく意味なんてないからね。この2つの謎を解かないと犯人は断定できないよ」


この話を聞いた如月瑠衣は「なるほど」と呟きながら少し考えていた。


如月瑠衣「たとえば、制服に着替えた後、フックからカバンを取って奥に巾着袋をかけて、手前にカバンをかけ直したというのは考えられませんの?」

堀坂向汰「そうだったとしても、どうしてわざわざカバンをかけ直したのかという謎がでてくるよ」

如月瑠衣「6限目の授業で使う教科書やノートを取り出したという可能性はありますわよね?」

堀坂向汰「そんな手間のかかることをする理由がない。普通に考えると、その日に使う教科書やノートは登校した時に、カバンの中から取り出して机の中に入れておくでしょ」

如月瑠衣「たしかにおっしゃる通りですが・・・堀坂先輩は別に犯人がいるとお考えですか?」

堀坂向汰「そうだね。柴崎和真がどういう人間かは知らないけど、調べればすぐわかるようなことをするようなバカはいないでしょ」

如月瑠衣「もし真犯人がいるのであれば、柴崎君がとても可哀そうですわ。今回のことでクラスの生徒達から変態扱いされてますのよ」

堀坂向汰「担任の先生にも言えるけど、表面的な部分だけで判断して犯人と決めつけるのはよくないんだよ。よく調べて判断しないと落とし穴にハマってしまうからね」

如月瑠衣「堀坂先輩、この盗難事件の真犯人を見つけることはできますでしょうか?」

堀坂向汰「どうだろう。まあ暇だし、如月さんから依頼ってことで調べてみてもいいけどね」

如月瑠衣「わたくしの依頼ということで是非お願いしますわ」

堀坂向汰「依頼料は如月さんにメイド服を着てもらうってことでいいかな?」

如月瑠衣「わたくしがメイド服を着るって・・・堀坂先輩こそかなりの変態ですわね」

堀坂向汰「あはは、冗談だよ。じゃあ早速調べてみようか」


その話を聞いていた琴宮梓颯が笑いながら話に入ってきた。


琴宮梓颯「うふふ・・・たしかに如月さんはメイド服が似合いそうね」

如月瑠衣「琴宮会長まで何をおっしゃっているのですか!」

琴宮梓颯「向汰君、これも裏クラブの活動と言えるから、必ず真犯人を見つけてあげてね」

堀坂向汰「わかった。今回、梓颯の出番はなさそうだけどね」

琴宮梓颯「今回のことも記録に残しておきたいから、何か判明したら、報告だけはするようにしてね」

堀坂向汰「梓颯、早速だけど1年2組の座席表をプリントアウトしてもらっていい?」

琴宮梓颯「わかったわ」


琴宮梓颯は1年2組の座席表をプリントアウトして堀坂向汰に手渡した。


堀坂向汰「よし。早速、1年2組の教室に行ってくるよ。如月さん、一緒にきてもらえる?」

如月瑠衣「わかりました。では、わたくしも一緒に行ってまいります」


今回の盗難事件に関する依頼は直接現場に行って調査をするという異例な形ではじまった。堀坂向汰は他の生徒に気づかれないようにマスクをしながら廊下を歩いて行った。



■ 現場調査からの推理


堀坂向汰と如月瑠衣が1年2組の教室に入った時は17時を過ぎていた。教室内はすっかり薄暗くなっていて、残っている生徒は1人もいなかった。如月瑠衣が教室の明かりをつけようとすると堀坂向汰が「明かりをつけると怪しまれるからつけなくていい」と言った。座席表を確認すると、まず1列目の前から3番目である柴崎和真の席へ行ってみた。机の中を覗いてみると、数冊の教科書やノートが入っていた。堀坂向汰はその席から葉月穂香の席のほうを見てみた。葉月穂香の席は4列目の後ろから2番目の席だった。次に葉月穂香の席へ行ってフックの位置を確認した。フックは机の両側についていたが、左側のフックが少しさびていて使用感があった。そして堀坂向汰は教室の後ろに設置しているロッカーを見ていた。


堀坂向汰「如月さん、柴崎和真のロッカーはどれかわかる?」

如月瑠衣「向かって左側から2列目・・・」


如月瑠衣はロッカーのほうへ走っていき、2列目の真ん中あたりを指さしながら「これですわ」と言った。各ロッカーには名前の書かれたシールが貼ってあった。


堀坂向汰「ありがとう。ところでこの教室から図書室に行くのであればどっちの入口から出れば近いの?」

如月瑠衣「前の入口から出たほうが近いですわ。出て左にいくとすぐ階段がありますから」


堀坂向汰は後ろのドアのほうへ歩いていき、ドアを開けて左右を確認した。そして柴崎和真のロッカーを開けて中を確認すると、国語辞典と和英辞典が置かれていた。


堀坂向汰「柴崎和真が放課後、1年2組の教室に入っていたのを目撃したのは何時頃のことだったかわかる?」

如月瑠衣「目撃した生徒は1組の教室で明かりをつけて学園祭の集計をしていたようですので、このくらいの時間だったのではないでしょうか」

堀坂向汰「なるほど。1組の教室ということは階段のあるほう側だから、柴崎和真はその教室の前を通っていったことになるね」

如月瑠衣「そういうことになりますわね」

堀坂向汰「後ろ側の入口を出てずっと右に行っても階段はあるよね?」

如月瑠衣「ありますわ。そっちの階段を使うのは体育館に行く時くらいですの」

堀坂向汰「わかった。じゃあ生徒会室に戻ろうか」

如月瑠衣「もう調査は終わりですの?」

堀坂向汰「うん。ある推理を立てることができたし、もうこれ以上調査してもわからないよ」


堀坂向汰と如月瑠衣は1年2組の教室を出て生徒会室に戻っていった。そして、生徒会室に入ると琴宮梓颯と白石由希がパソコンの画面を見ながら笑っていた。


琴宮梓颯「おかえりなさい。調査してみてどうだったの?」

堀坂向汰「ある推理を立てることはできたよ。まだ謎は残っているんだけどね」

如月瑠衣「堀坂先輩、その仮説を早く教えていただけませんか?」


堀坂向汰はソファーに座ってペットボトルのコーラーをゴクリと飲むと立てた推理について話しはじめた。


堀坂向汰「まず、柴崎和真が犯人でないことはわかった。なぜなら葉月穂香が巾着袋を置き忘れたことを柴崎和真があらかじめ知っていたとは考えられない。巾着袋は机の左側にあるフックにかけてあったわけで、柴崎和真の席からは離れていて見えない。そもそも放課後の薄暗い教室の中で巾着袋の中身を確認してロッカーの中に隠すのには時間がかかる。隣の教室は明かりがついていて生徒が残っていたわけだから、そんな時間のかかることすれば、目撃される可能性があることくらい誰にだってわかる。それと、柴崎和真は前の入口から教室に入って、前の入口から教室を出て図書室に戻っていったはずだから1組の生徒に2回目撃されてるはずだよ。それに対して真犯人の行動だけど、誰にも目撃されてないということは、後ろの入口から教室に入って後ろの入口から教室を出て行ったことになる。行きも帰りも体育館側に下りるほうの階段を使った。まさに計画的犯行だったのは明らかだね。そこでここが重要なポイントなんだけど、計画的犯行だったわけだから真犯人はあらかじめ巾着袋の中に体操服が入っていることを知っていたということになる。どうして知っていたのかというと、葉月穂香が着替えているところを見ていたからだよ。そして、その着替えを見ることができたのは女子生徒だけ。だから真犯人は女子生徒ということになる。あと、ここからは俺の想像になるけど、真犯人の席は葉月穂香の席から近くて巾着袋が目撃できる場所だと思う。それと、体育館側に下りたということは、裏門から校外へ出て行ったんじゃないかと思う。つまり、真犯人は裏門からでも帰宅できる人物ではないかと思う」


堀坂向汰の話を聞いた如月瑠衣は驚愕していた。まさか真犯人が女子生徒とは誰も思いつかなかったことだったのだ。


如月瑠衣「真犯人が女子生徒だなんて思いもしませんでしたわ。しかし、なぜそのようなことをしたのか全くわかりませんわ」

堀坂向汰「犯行の動機はおそらく柴崎和真を陥れることだったんだろうね」

如月瑠衣「柴崎君が犯人ではないことはわかりましたので、堀坂先輩の立てた仮説をクラスの生徒達に話してもよろしいですか?」

堀坂向汰「それは真犯人を見つけてからのほうがいいよ。今の段階で公表すると真犯人も警戒してしまうからね」

如月瑠衣「では、どのようにして真犯人を見つけ出すのでしょうか?」

堀坂向汰「まず、如月さんには3つのことをしてもらいたい。1つは目撃したという1組の生徒に柴崎和真は大体何分くらい教室にいたのか確認してほしい。それと2回目撃したはずだから、それも確認しておいてね」

如月瑠衣「わかりました。明日の朝にでも確認しておきますわ」

堀坂向汰「もう1つは明日の昼休み、柴崎和真を生徒会室に呼び出して、クラスの女子生徒との間で何かトラブルがなかったか聞いてほしい。それと話をする前に柴崎和真が犯人だとは思っていないと言ってあげるといいよ」

如月瑠衣「明日の昼休みですね。琴宮会長、生徒会室に呼び出しても大丈夫でしょうか?」

琴宮梓颯「呼び出して構わないわ。わたしは話だけ聞かせてもらうわね」

堀坂向汰「最後の1つだけど、盗難事件のあった日の放課後、葉月穂香がどこで何をしていたのか調べておいてほしい」

如月瑠衣「わたくし、葉月さんやその周りにいる人達とはあまり話したことがありませんので、聞き込み調査は難しいですわ」

堀坂向汰「クラスにいる帰宅部の女子生徒全員にちょっとしたアンケート調査だとか言って『最近、学校帰りにどこか行きましたか』と聞いてまわればいいよ。俺の推理が正しければ、盗難事件があった日、葉月穂香は学校帰りにどこかに行ってたはず」

如月瑠衣「なるほど。わかりました」


堀坂向汰は今回の盗難事件の真犯人が女子生徒であるなら、その鍵を握っているのは柴崎和真だと確信していた。真犯人を見つける第一歩として、柴崎和真から何かしらの情報を得ることからはじめることにしたのだ。



■ 真犯人の調査


次の日の朝、如月瑠衣は1年1組の教室へ行き、盗難事件のあった日に柴崎和真を目撃したという生徒から話を聞いた。その生徒の話によると、柴崎和真は1組の教室の前を通って2組の教室に入り、1分から2分ほどして再び1組の教室の前を通って去っていったという。やはり堀坂向汰の推理したとおり2回目撃されていたのだ。


その後、如月瑠衣は1年2組の教室へ戻ると、帰宅部の女子生徒達に「ちょっとしたアンケート調査なんだけど、学校帰りにどこか行かなかった?」という質問をしていた。そして、葉月穂香とその友達2人にも同じ質問をすると、ちょうど盗難事件のあった日の放課後、3人で隣駅のショッピングモールへ買い物に行ったという情報を得ることができた。これも堀坂向汰の推理したとおりだったのだ。


1限目の授業が終わって休憩時間になると、如月瑠衣は柴崎和真の席へ向かった。今では1年2組のクラス内の生徒達から軽蔑の眼差しを向けられている柴崎和真は1人で席に座りながら暗い表情をしていた。


如月瑠衣「柴崎君、ちょっといい?」

柴崎和真「いいけど・・・」

如月瑠衣「今日の昼休みに生徒会室にきていただけない?聞きたいことがあるの」

柴崎和真「もしかして葉月さんの体操服を盗んだこと?」

如月瑠衣「その盗難事件に関することなんだけど、ここでは話せませんの」

柴崎和真「もうその話はしたくないよ。どうせ、僕の言ってることなんて誰も信じてくれないから・・・」

如月瑠衣「わたくし、今回の盗難事件には疑問を持っていますの」

柴崎和真「疑問って?」

如月瑠衣「それもここでは話せませんので、昼休みに生徒会室まできていただきたいの」

柴崎和真「わかったよ。昼休みに生徒会室に行けばいいんだね?」

如月瑠衣「はい。では、お待ちしてるので必ず来てください」


生徒会室に来るように伝えた如月瑠衣はさっさと自分の席へ戻っていった。そんな2人を見ていた周りの生徒達は、盗難事件のことで生徒会まで何か動き出したのではないかと思っていた。そして、如月瑠衣の周りに2人の女子生徒が近づいてきて「如月さん、あんな変態と何の話してたの?」、「もしかして生徒会で何かするつもりなの?」などと質問された。しかし、如月瑠衣は「別に大したことではありませんの」と答えて誤魔化しておいた。


昼休みになり、如月瑠衣はさっさと生徒会室に行って琴宮梓颯と一緒に昼食をとっていた。昼食を終えると、琴宮梓颯は生徒会長用の大きな椅子に座り、如月瑠衣は副会長用の椅子に座って待っていた。それから5分ほどすると生徒会室のドアからノックする音が聞こえた。琴宮梓颯は「はい。どうぞ」と言うとドアが開いて柴崎和真が入ってきた。


柴崎和真「あの・・・1年2組の柴崎です」

琴宮梓颯「あなたが柴崎君ね。ドアを閉めてそこのソファーに座ってもらえる?」

柴崎和真「わかりました」


柴崎和真は生徒会室のドアを閉めると生徒会室の中央にある右側のソファーに座った。如月瑠衣は席を立って「お待ちしていましたわ」と言うと、柴崎和真の向かい側のソファーに座った。


如月瑠衣「柴崎君、こちらは生徒会長の琴宮先輩よ」

柴崎和真「うん。琴宮先輩は学園のアイドル的存在で有名だから知ってる。近くで見ると男子生徒から人気があるのがよくわかるよ」

如月瑠衣「今日は琴宮会長もいらっしゃるけど、気にしないで話してほしいの」

柴崎和真「わかったよ」

如月瑠衣「まず、話を聞く前に伝えておきたいことがありますの。ここだけの話、わたくしはあの盗難事件の犯人が柴崎君とは思っていません」

柴崎和真「え?如月さんは僕のことを信じてくれているの?」

如月瑠衣「信じる信じないでいえば、信じているということになりますわね」

柴崎和真「ありがとう!そう言ってくれるのは如月さんだけだよ」


柴崎和真は唯一信じてくれる人がいたことが嬉しくて涙目になった。


如月瑠衣「わたくしだけではなく、ここにいらっしゃる琴宮会長もそう思っていらっしゃるの」

柴崎和真「琴宮先輩にまで・・・でも、どうして僕のことを信じてくれるの?」

如月瑠衣「もし柴崎君が犯人だとすれば、いくつかの疑問点が浮上しますの」

柴崎和真「いくつかの疑問点って?」

如月瑠衣「たとえば、どうして盗んだものをわざわざロッカーの中に隠したのか、そもそもどうして袋の中身が体操服だと柴崎君が知っていたのか・・・」

柴崎和真「そう言われてみればそうだよね・・・なるほど」


如月瑠衣の話を聞いた柴崎和真はすこし難しい表情をしていた。


如月瑠衣「それより柴崎君が犯人でなければ、別に真犯人がいるということになるわけです。そこで柴崎君に聞きたいのは、最近、クラスの女子生徒との間で何かトラブルはありませんでしたか?」

柴崎和真「うーん・・・トラブルかどうかわからないけど、城戸さんと少し口論になったことがあったくらいかな」

如月瑠衣「城戸さんって、うちのクラスにいる城戸紗耶香さんのことですよね?」

柴崎和真「うん。城戸さんから女々しい男だって言われたので、つい僕も熱くなってしまって・・・」

如月瑠衣「何の話をして、女々しい男だと言われましたの?」

柴崎和真「葉月さんのことだよ。城戸さんは僕の気持ちを知ってたんだ。それで葉月さんに早く告白しようって話になったんだけど、僕にはまだ告白する勇気がないって言ったら女々しい男だって言われたんだよ」

如月瑠衣「その口論のあと、城戸さんとはどうなりました?」

柴崎和真「お互いに言い過ぎたって話になって仲直りはしたと思うんだけど、あまり話さなくなったかな」

如月瑠衣「わかりました。その他には何かありませんでしたか?」

柴崎和真「他にはないよ。そもそも僕はクラスの女子と話すことなんてあまりないから」

如月瑠衣「それでは最後に聞いておきますが、柴崎君は葉月さんのことを本当に好きなのですか?」

柴崎和真「うん。本当に好きだけど、今回のことで僕は変態扱いされて、かなり嫌われてると思う。どうせ告白する勇気もなかったわけだし、これをキッカケに諦めようって思ってる」

如月瑠衣「諦めるかどうかは無実を証明してから決めればいいことではありませんの?」

柴崎和真「それはそうなんだけど、如月さんは僕の無実を証明できるの?」


柴崎和真の質問に対して如月瑠衣は少し言葉を考えた。あまり余計なことを言ってしまうと、内密に調査していることがバレてしまうからだ。


如月瑠衣「正直にいいますと、柴崎君の無実を証明することはできます。しかし、今の段階で無実を証明すると、真犯人を見つけることが難しくなってしまいますの」

柴崎和真「如月さんは真犯人を見つけるつもりなの?」

如月瑠衣「もちろん見つけるつもりでいます。そのために柴崎君から話を聞いていたのです」

柴崎和真「どうやって真犯人を見つけるの?」

如月瑠衣「それは秘密です。でも、真犯人を見つけて柴崎君の無実を証明したいと思っていますわ。そのためにも、わたくしが盗難事件の真犯人をみつけようとしていることは誰にも言わないと約束していただきたいの」

柴崎和真「わかった。誰にも言わないと約束する」

如月瑠衣「では、これで話は終わりです。わざわざ昼休みに来ていただいてありがとうございました」


如月瑠衣はソファーから立ち上がると生徒会室のドアの前まで歩いていった。そしてドアを開くと、柴崎和真もソファーから立ち上がってドアの前で一礼して生徒会室から出て行った。その後、如月瑠衣はドアを閉めると難しい表情をしていた。


今回、真犯人の調査をするために柴崎和真を呼び出して話を聞いてみた。しかし、如月瑠衣はこれといった情報を得ることはできなかったように思えた。この調査結果に対して堀坂向汰はどう推理するのだろうか。



■ 謎の解明と犯人像


如月瑠衣が全ての調査を終えた日の放課後、生徒会室には琴宮梓颯と如月瑠衣が話をしていた。


如月瑠衣「わたくし、今朝から盗難事件に関する調査を行いましたが、真犯人に関する情報は得られませんでした」

琴宮梓颯「そんなことはないと思うわ。あとは向汰君に任せればいいのよ」

如月瑠衣「いくら堀坂先輩でも、この情報量だけで真犯人を見つけるのは難しいのではないでしょうか」

琴宮梓颯「とにかく向汰君が来るのを待ちましょう」


しばらくすると生徒会室のドアからノックする音が聞こえた。琴宮梓颯は「はい。どうぞ」と言うとドアが開いて堀坂向汰がのろのろと歩きながら生徒会室に入ってきた。堀坂向汰はドアを閉めて鍵をかけると、そのままソファーに座ってカバンの中からスナック菓子とペットボトルのコーラーを取り出した。


如月瑠衣「堀坂先輩、一応、おっしゃられた通りの調査を行いましたが、これといった情報は得られませんでした」

堀坂向汰「そうなんだ。とりあえず、調査結果を聞かせてもらえる?」


如月瑠衣は調査した内容とその結果について全て話した。


堀坂向汰「やっぱり俺が推理した通りだったか。まず、柴崎和真は1組の生徒に2回目撃されていて、その間はわずか1分から2分ほどだったわけだね。これで柴崎和真が犯人でない確証を得ることができたよ。なぜなら今回の犯行を2分程度で行うのは不可能だからね」

如月瑠衣「たしかに、それで柴崎君の無実を証明することはできますが・・・」

堀坂向汰「これも俺が推理した通りだったんだけど、盗難事件があった放課後、葉月穂香は学校帰りにショッピングモールへ買い物に行ってたんだね。これでフックの謎が解けたよ。葉月穂香は体操服を入れた巾着袋をわざと置いていったんだ。買い物に持って行くのは邪魔になるからね。だから持って帰るのを忘れたっていうのは嘘だよ」

如月瑠衣「しかし、それはただ葉月さんが嘘をついたというだけではありませんの?」

堀坂向汰「真犯人はそれが嘘だと知ってるはず。つまり葉月穂香が学校帰りにショッピングモールに行くことを知ってた人物ということだよ」

如月瑠衣「なるほど」

堀坂向汰「そして、柴崎和真がクラスの女子生徒との間にトラブルがなかったということだけど、これこそ真犯人の情報を得てることになるんだよ」

如月瑠衣「どういうことですの?」

堀坂向汰「何のトラブルもなかったってことは、犯行の動機は怨恨ではないってことになる。そこで考えられる動機は1つで、柴崎和真と葉月穂香の関係を完全に壊してしまうことが目的だったんだよ。つまり、真犯人は柴崎和真が葉月穂香に好意を抱いていることが気に入らない人物ということになる」

如月瑠衣「そのような人物がいるとしても、特定するのは難しいのではありませんの?」


如月瑠衣は難しい表情をしながら考え込んでいた。


堀坂向汰「ここまでわかればあとは簡単な消去法で特定できるよ。まず、如月さんのクラスにいる女子生徒の人数はわかる?」

如月瑠衣「わたくしを含めると15名いますわ」

堀坂向汰「その15名の中で部活をしているのは何人いるの?」

如月瑠衣「確認しますので少しお待ちください」


如月瑠衣はパソコンで1年2組のクラス名簿を見て確認をした。


如月瑠衣「部活をしている女子生徒は8名のようです」

堀坂向汰「だとすれば帰宅部は7名ってことになって、そのうち葉月穂香とその友達2名、それと如月さんの4名を省いたとして、残りは3名になる。ちなみに、柴崎和真が口論したという城戸紗耶香って女子生徒は部活してるの?」

如月瑠衣「城戸さんも部活はしていないようです」

堀坂向汰「それなら城戸紗耶香さんも省くと残り2名になるね。つまり、その2名のどちらかが真犯人ってことになるわけだよ」

如月瑠衣「なるほど!さすがですわ!!」


如月瑠衣は消去法によって絞り出された2名のうちどちらかが真犯人だとわかってホッとした。


琴宮梓颯「向汰君、横から話に入って悪いんだけど、最初からこの消去法で真犯人を絞り出すことはできなかったの?」

堀坂向汰「もし、犯行の動機に怨恨の可能性が含まれている場合、この消去法を使っても確実には真犯人を絞り出せないんだよ。なぜなら怨恨の場合だと複数人による犯行もありえるからね」

琴宮梓颯「たしかに、いわれてみればそうよね」

堀坂向汰「如月さん、あとは絞り出した2名の女子生徒を調べればいいだけだよ」

如月瑠衣「絞り出した2名の女子生徒は富樫芽依さんと麻生真希さんになりますが、どちらも真犯人である可能性がありますわね」

堀坂向汰「その2名のうち、どちらかが柴崎和真に対して何かしらの感情を抱いているはずだけど、今回は真犯人ではないのはどちらか調べたほうがいいね。つまり犯行の動機がない人物の特定だよ」

如月瑠衣「わかりました。真犯人である可能性がないのはどちらか調べてみますわ」


次の日の朝、如月瑠衣は富樫芽依と麻生真希に関する情報調査を行っていた。1年2組の座席表を確認してみると、富樫芽依は柴崎和真の斜め後ろの席で、麻生真希は葉月穂香の2つ前の席だった。席順から考えると麻生真希であれば体操服の入った巾着袋を簡単に目撃できたはずなのだ。しかし、聞き込み調査を行った結果、麻生真希には2つ年上の兄がいて、その兄の友達にかなり好意を抱いているという情報を得た。それに麻生真希はクラス内の噂話には全く興味を持っていなかったようで、柴崎和真とは話したことすらないという。それらのことから麻生真希には犯行の動機が全くないことがわかった。そうなると富樫芽依が真犯人ということになる。ところが富樫芽依はクラス内の生徒達とあまり話をするようなタイプではなかったので、とても柴崎和真と接点があるようには思えなかった。それに富樫芽依に関する聞き込み調査を行った結果、これといった情報を得ることができなかった。いつも無口で大人しい性格の富樫芽依が真犯人だとは考えられなかった。結局、如月瑠衣の調査により判明したのは、麻生真希が真犯人である可能性はないということだけであった。


その日の放課後、琴宮梓颯と如月瑠衣、堀坂向汰の3人が生徒会室に集まっていた。そして如月瑠衣は調査結果の報告と富樫芽依の性格について説明した。


如月瑠衣「富樫さんの性格を考えると、とても真犯人だとは思えませんの」

堀坂向汰「如月さんの言ってることはわかるけど、真犯人は富樫芽依という女子生徒で間違いないよ」

如月瑠衣「とても信じられませんが、やはりそうなりますか・・・」

堀坂向汰「富樫芽依は柴崎和真に対して何かしらの感情を抱いていることを隠しているわけだから、何の情報も得られなくて当然だったわけだよ」

如月瑠衣「富樫さんは柴崎君に好意を抱いているのでしょうか?」

堀坂向汰「それは直接本人から聞いてみないとわからないよ」


そこに黙って聞いていた琴宮梓颯が口を開いた。


琴宮梓颯「横から話に入ってごめんなさいね。みんなに真実を打ち明けるにしても、富樫芽依さんという女子生徒が真犯人だという確実な証拠が必要になるんじゃないの?」

堀坂向汰「それはもちろん必要になるんだけど、この際、本人に証拠を持ってきてもらって自白してもらおうと思ってる」

琴宮梓颯「向汰君には何か考えがあるのね?」

堀坂向汰「うん。1つ簡単な罠を仕掛ける」


堀坂向汰が仕掛ける罠とはどういったものなのか、如月瑠衣には全くわからなかった。果たして、富樫芽依が真犯人であるという確実な証拠を得ることができるのであろうか。そして、真犯人であると素直に自白するのであろうか。



■ 予想外の解決


次の日の朝、富樫芽依が登校すると下駄箱に四つ折りにされた白用紙がが入っていた。開けて読んでみると次のように書いていた。


『盗難事件のあった放課後、あなたが1年2組の教室に入って行くのを目撃しました。このことは誰にも知られていないでしょう。そのことについてお話したいことがありますので、今日の放課後に2階の美術準備室に来てください』


このメッセージを読んだ富樫芽依は少し動揺した。


それから放課後になった。富樫芽依は下駄箱に入っていたメッセージが気になっていたので美術準備室へ向かった。美術準備室の中に入ると白いマスクをしてネクタイも外していた男子生徒が立っていた。そこにいたのは変装した堀坂向汰であったのだ。


堀坂向汰「ようこそ美術準備室へ。よく来てくれたね」

富樫芽依「あの・・・下駄箱にメッセージを入れたのはあなたですか?」

堀坂向汰「そうだよ。聞きたいことがあるんだけど、まずは落ち着いて、そこの椅子に座ってもらえるかな?」

富樫芽依「は、はい・・・」


富樫芽依は恐る恐る目の前に置いてあった椅子に座った。


堀坂向汰「さて、下駄箱に入れたメッセージを読んでここに来たということは盗難事件の犯行を認めるってことでいいよね?」

富樫芽依「そ、それは、その・・・それより、あなたは誰なんですか?1年生ですか?」

堀坂向汰「僕が誰であるかはこの際どうでもいい話だと思う。まずは富樫さん、君こそが葉月穂香さんの体操着の入った巾着袋を柴崎和真のロッカーに入れた真犯人だよね?」

富樫芽依「もうわかっていらっしゃるみたいなので正直に言います。あなたの言う通りです」

堀坂向汰「やっぱりね。素直に認めてくれてよかったよ」


そこに美術準備室のドアが開いて、如月瑠衣が入ってきた。


富樫芽依「き、如月さん・・・」

如月瑠衣「富樫さん、あなた自分のしたことで、どういうことになったのかわかってますの?柴崎君がクラス内の生徒達からどういう目で見られているのか考えたことあります?」


その言葉を聞いた富樫芽依は涙を流しながら口を開いた。


富樫芽依「そのことについて、柴崎君には本当に申し訳ないことをしたと思ってる。わたし、こんなことになるなんて思ってなかった・・・本当にごめんなさい」

如月瑠衣「わたし達に謝られても困りますわ」

富樫芽依「で、でも、仕方なかったのです。わたし、柴崎君に好意を持っていたわけじゃないんだけど、葉月さんに対する気持ちは知っていて・・・でも、葉月さん、柴崎君に告白されても笑いのネタしかならないって言ってて・・・」

如月瑠衣「それと盗難事件とどういう関わりがありますの?」

富樫芽依「柴崎君があまりにも可哀いそうに思えて、葉月さんのことは諦めてもらうためにどうすればいいのか考えて、思いついたのが今回の盗難事件を起こすことだったの。そうすれば自然に諦めざるを得なくなると思って・・・でも、結果的には柴崎君には大迷惑をかけてしまうことになってしまって・・・」


富樫芽依は泣きながら話しているため、ほとんど何を言ってるかわからないほどにまでなっていた。


堀坂向汰「富樫さん、1つだけ教えてほしいんだけど、あの盗難事件のあった放課後、柴崎和真が1年2組の教室を出入りしたことを知っていたんだよね?」

富樫芽依「は、はい・・・それは知っていました。わたしはその後に盗難事件の犯行をしました」

堀坂向汰「富樫さんは、その日、葉月穂香さんが体操着の入った巾着袋を置いて帰ったことを知っていた。そして犯行時は体育館側の階段側から1年2組の教室に入り、帰りに同じで裏門から校外へ出て行ったんだよね?」

富樫芽依「はい。あの日、葉月さんが買い物に行くという話をしていて、体操着を入れた巾着袋を置いて帰ったことを知っていました。あとはおっしゃる通りです。わたしの家は学園の裏門から帰ったほうが近いのです」


そこで少し沈黙が続くと如月瑠衣が口を開いた。


如月瑠衣「どういう理由であっても、柴崎君の無実を証明していただかないといけませんわね」

富樫芽依「わたしが正直に言わないと・・・ですよね?」

如月瑠衣「そうです。当たり前のことですわよ」


そこで堀坂向汰が如月瑠衣の肩を軽く叩いた。


堀坂向汰「富樫さん、もうわかったから帰っていいよ」

如月瑠衣「帰っていいって、どういうことですの?」

堀坂向汰「如月さん、もういいんだよ。富樫さん、もう何もしなくていいからこのまま帰ってほしい」

富樫芽依「は、はい。わかりました・・・」


そして富樫芽依はドアを開いて美術準備室を出て行った。


如月瑠衣「堀坂先輩、どういうことですの?」

堀坂向汰「如月さん、あんな子をクラスのさらし者にしたらもう立ち直れなくなるよ」

如月瑠衣「だからといって許してしまわれるのですか?」

堀坂向汰「俺は先生でもなければ警察でもないんだ。真実さえわかればそれでいいんだよ。それに柴崎和真の無実はもう証明できるでしょ?」

如月瑠衣「無実は証明できますが、真犯人についてはどのように説明すればよろしいのです?」

堀坂向汰「真犯人については謎のままでいいと思う」

如月瑠衣「堀坂先輩がそうおっしゃるのであればそういうことにしておきますわね」


次の日、1年の2組のホームルームで如月瑠衣からの連絡事項として柴崎和真の無実を証明した。最初は誰もが疑っていたが、如月瑠衣の調査報告と柴崎和真には犯行は不可能という説明を聞いて、クラスの生徒は納得した。これで柴崎和真の疑いはなくなったのだ。


その日の放課後、如月瑠衣は柴崎和真に呼び出された。


柴崎和真「如月さん、本当にいろいろありがとう」

如月瑠衣「結局、真犯人は見つけることはできませんでしたが、無実は証明されたと思いますわ」

柴崎和真「お、俺・・・葉月さんに好意を持ってたけど、今回のことで如月さんのことが・・・」

如月瑠衣「わたくしのことがどうかしました?」

柴崎和真「いや、ただ、如月さんも素敵な女性だと思っただけだから気にしないでほしい」

如月瑠衣「ありがとうございます。ただ、わたくしは頭のキレる人が好みだったりしますの」


如月瑠衣は頭の中で堀坂向汰の推理力を思い浮かべていた。


今回は裏クラブの活動というより、如月瑠衣の依頼という形ではあったが、見事に誰も解決できなかった盗難事件の真相を明らかにできたのだ。今後、こういうこともあるだろうと生徒会長である琴宮梓颯も思っていた。


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