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明智学園裏クラブ  作者: 涼
16/16

女子生徒達の嫌がらせ行為

■ いやがらせのはじまり


4月の下旬、1年2組のクラス内では既に生徒同士のグループができていた。とはいえ、人間関係のコミュニケーションが苦手だったり、大人しい生徒に関しては一人で孤立している。そんな孤立した生徒の一人の中に黒髪で少し短めのポニーテールに黒縁メガネをかけている小顔で、いかにもひ弱そうな表情をしている早川那奈という女子生徒がいた。その早川那奈の席は真ん中あたりの前から二番目にあったのだが、最近はそこから斜め右上の席に座っている少し茶髪で目が吊り上がって、見た目は強気な女子高生ギャルといった新井絵里からいつも睨まれるようになっていた。そんな新井絵里の視線を感じていた早川那奈は目を合わせないようにして、休み時間は自分の席で俯いているようにした。ところがある日の朝、新井絵里が早川那奈の机の机の脚をわざと蹴とばして、机の上に置いてあったペンケースやノートが床に落ちた。


新井絵里「あら、ごめんなさい。つい足が当たっちゃった」

早川那奈「あ、いえ・・・大丈夫です」

新井絵里「早川さんって影薄いから気づかなかった」

早川那奈「ご、ごめんなさい」

新井絵里「それ認めちゃうんだ。あははは」


しかし、このようなことが3日間続いたのだが、それをずっと見ていた早川那奈の後ろの席に座っていて、黒髪でショートカット、小顔で身長が低い森本早苗という生徒が立ち上がった。


森本早苗「新井さん、いい加減にしなよ!わざとやってるのみんなわかってるんだよ!!」

新井絵里「はぁ!?あんた何言ってんの?」

森本早苗「どうしてこんなことするの!?早川さんに何かされたわけでもないでしょ?」

新井絵里「あたし何もしてなーい・・・ねっ!加奈、雫、麻実」

坂下麻実「そうだよ。森本さん、何か勘違いしてるんじゃないの?」

遠藤加奈「うんうん、それだとまるで絵里が悪いみたいじゃない」

木ノ川雫「森本さん、何様のつもり?絵里はただ机の脚に当たっちゃっただけじゃない」

森本早苗「あなた達こそ何様のつもりよ?やってることイジメじゃない」

新井絵里「あたしら別にイジメてるつもりもないし、変なとばっちり辞めてくれない?」

森本早苗「わたし、新井さんのやってること絶対に許せない!」

木ノ川雫「森本さん、正義の味方にでもなったつもり?超ウケウケなんですけど」

坂下麻実「そうだね、マジでウケる・・・あははは」


こういうやり取りがあって以来、今度は森本早苗に対するいやがらせがはじまった。ちなみに遠藤加奈、木ノ川雫、坂下麻実は新井絵里と仲良くしていて4人グループになっていたのだが、それぞれが毎日何度か森本早苗の机を蹴とばすようになっていた。それに対して森本早苗が毎回怒りながら「いい加減辞めてよ!」と反抗していたが、それでもいやがらせは続いていた。それを見ていた早川那奈は「私のせいです。ごめんなさい」と言っていたが、森本早苗は優しく「早川さんのせいじゃないから気にしなくていいよ」と何度も言っていた。ところがゴールデンウィークに入る直前の日、森本早苗のカバンがカッターナイフで切り裂かれていた。それを実行したのは間違いなく新井絵里グループの誰かの犯行であるのだが、決定的な証拠がないため森本早苗は反抗できなかった。


早川那奈「森本さん、そのカバン・・・やっぱり新井さん達にされたんだよね?」

森本早苗「そうかもだけど、新井さん達がやったという証拠がないの」

早川那奈「私のせいで本当にごめんなさい!」

森本早苗「早川さんのせいじゃないから、もう本当に気にしなくていいよ」


ところで森本早苗は別にクラス内で孤立しているわけではなく、仲良くしている2人の女子生徒の友達がいる。新井絵里の件について、その2人の友達からは「早苗ちゃんのやっていることは間違いじゃない!」や「私達は早苗ちゃんを応援するから」などと励ましの言葉をもらっていた。今回のカバンの件に関して、その2人の友達は森本早苗を助けたいと思っていたが新井絵里を含むそのグループに何も言えずにいた。そしてゴールデンウィークに入ったのだ。早川那奈は森本早苗に対する新井絵里グループのいやがらせはゴールデンウィークを挟めばおさまると思っていたのだが、それとは裏腹に、いやがらせ行為はますますエスカレートしていた。



■ もう影郎を頼るしかない・・・


5月10日の昼休み、琴宮梓颯と如月瑠衣は生徒会室で昼食をとっていた。最近は影郎アカウントに依頼が全く届いてなかったこともあって裏クラブとしてはのんびりしていた。ところがこの日、たまたま琴宮梓颯が影郎アカウントにログインすると、一つの依頼が届いていた。その依頼文章を読んだ琴宮梓颯は、その文章を開いたノートパソコンを如月瑠衣に見せた。


琴宮梓颯「如月さん、この依頼文章に対してどう思う?ちょっとわけがわからないんだけど」

如月瑠衣「うーん・・・事実関係がよくわかりませんが、久しぶりに裏クラブのメンバーを集めたほうがよろしいのではないでしょうか?」

琴宮梓颯「それでもいいんだけど、この依頼文章って中途半端じゃない?」

如月瑠衣「たしかにそうですが、それでもわたくしは依頼として受けるべきだと思いますの」

琴宮梓颯「そうね。じゃあ、今日の放課後に集まってもらうわ」


そう言って琴宮梓颯は裏クラブのメンバー全員に『依頼が届いたので今日の放課後に生徒会室集合』というメールを送った。


その日の放課後、生徒会室には裏クラブのメンバーが集まっていた。楠円香の依頼は別として、新学期に影郎アカウントに依頼が届くのははじめてのことであったのだ。それに楠円香は裏クラブのメンバーとして参加するのはこれがはじめてのことである。メンバー全員が集まったところで琴宮梓颯が「如月さんお願いね」と言った。如月瑠衣はノートパソコンにプロジェクターを取り付けていて、生徒会室の明かりを消すと「それでは昨晩、影郎アカウントに届いたダイレクトメッセージを表示します」と言った。その影郎アカウントに届いたダイレクトメッセージは次のような内容であった。


影郎様


はじめまして。私は1年2組の早川那奈と申します。

半信半疑ではありますが、問題の解決をお願いしたいと思って

メッセージを送信させていただきました。


私のクラスでは森本早苗さんという女子生徒がいやがらせを受けています。

その森本さんがいやがらせを受けるようになったのは私のせいなのです。

もともと私がクラス内でいやがらせを受けていましたが、森本さんが私を助けたのです。

それ以来、私ではなく森本さんがいやがらせを受けるようになりました。

森本さんは反抗的になっていますが、その状況を見るに耐えられなくなりました。

何の証拠もありませんので、そのいやがらせ行為をしている

女子生徒達の名前は公表できませんが、なんとか解決できないでしょうか?


よろしくお願いします。


この文章を読んだ堀坂向汰は「如月さん、もう明かりつけていいよ」と言った。そこで牧瀬悠人は「解決策は簡単かもしれませんが、そこに至る過程が難しいですね」と呟いた。如月瑠衣は生徒会室の明かりをつけると琴宮梓颯が「解決策は簡単ってどういうこと?事実関係もわからないんでしょ」と問いかけた。


堀坂向汰「その前に、夢前さんはこの文章を読んでどう思った?」

夢前亜里沙「わたしですか?そうですね・・・この文章に書かれていることは真実だと思います。簡単に言えば一部の女子生徒達からのイジメみたいなものになりますが、この森本早苗さんって生徒も反抗的になっていることからすると対立的な関係性になっていますので、第三者が介入しにくいのではないでしょうか」

如月瑠衣「なるほど、対立しているということであれば介入するのは難しいですわね」

堀坂向汰「夢前さん、ありがとう。そうなんだよね。直接介入しにくい問題になってるのが解決策が難しくなってる」

夢前亜里沙「それは無視して、さっさと介入して問題解決させればいいのはないでしょうか?」

牧瀬悠人「夢前さんの言ってることは間違ってないんだけど、いきなり第三者が介入してその場は解決させたとしても、その女子生徒達は裏でまた同じいやがらせをすると思う」

琴宮梓颯「ちょっと、わたしには何の話をしているのかわからないわ。わかるように説明してよ」

堀坂向汰「梓颯、まずこの依頼はいやがらせをやめさせたいってことにあるんだよ。いやがらせ行為をしている女子生徒達の名前を公表してないのはこの際どうでもいんだけど、何の意味もなく裏クラブが介入しても根本的な部分じゃないから問題解決にはならないでしょ?」

琴宮梓颯「たしかに裏クラブが介入しても解決にはならないわね」

楠円香「うち、1年2組のことはまだ知らないんですけど、こんないやがらせ行為をしてる人達がいるんやったら許せないです!」

堀坂向汰「円香ちゃん、そんな熱くならないで!とにかく、この件に関してはまず事実関係を明らかにさせる必要がある。この文章だけだと、どういう状況か全く掴めないからね」

琴宮梓颯「それでどうするつもりなの?」

堀坂向汰「まず円香ちゃんにはしばらくの間、1年2組の教室に居座っていやがらせ行為をこっそり見ていてほしい。それでどの女子生徒達かわかるからね。話しかける相手は優等生ぽい子でいいんだけど、いやがらせ行為をしているのは誰なのか調査して梓颯に伝えてほしい。梓颯はその生徒達の情報を集めて夢前さんに伝える。夢前さんはそのいやがらせ行為をしている生徒達の人間関係を徹底的に調査してほしい。牧瀬君には現在の1年2組の雰囲気について推理も兼ねて調査してほしい。最後に如月さんは梓颯や夢前さんの情報を得てから、そのいやがらせ行為をしている生徒達の中の一人でいいからリムチャットを覗いてほしい」


それを聞いたメンバー達は「わかった」と言って堀坂向汰の言った通りに動こうとしたが、楠円香は不安そうな表情をしていた。


楠円香「優等生ですか?見た目で判断するのは難しいです」

堀坂向汰「それは梓颯から成績表の一覧を見せてもらえばわかるでしょ?優等生がいやがらせ行為なんてすると思えないしね」

楠円香「なるほど、わかりました」

琴宮梓颯「楠さん、あとで成績表を見せるわね」

堀坂向汰「ただ、最後に言っておきたいんだけど、いやがらせ行為を立証させるのはかなり難しいんだよ。だから先生達にも言えないし、生徒会としても動きようがない。たとえ、それを目撃したとしても否定されると終わりだからね。今回の依頼はそこをシビアに考えないといけないってこと」


こうして裏クラブでの活動がはじまって各自で動きはじめたのだが、果たしてどこまで上手くのか、堀坂向汰の考えていることは誰にもわからなかった。



■ 明らかになった調査結果、問題解決には至らない


次の日、楠円香は1年2組で学年5位の浜中美憂という女子生徒とコンタクトをとることにした。浜中美憂は黒髪で短めのツインテール、小顔で少しタレ気味の目をしている大人しい女子生徒だった。


楠円香「浜中さんって結構話すんやね」

浜中美憂「わたしから話しかけることはないけど・・・」

楠円香「それよりうちのことは知ってた?」

浜中美憂「楠さんは有名だから知っていたよ」

楠円香「そうなんや。ありがとう。ところで1年2組っていっつもこんな感じなん?」

浜中美憂「そうだね。でも、もう少ししたら騒がしくなるかも」


そこに森本早苗が登校してきてクラス内の雰囲気が少し険悪になった。森本早苗が席に着くとある女子生徒がわざと机の脚を蹴とばして「あーごめんなさい。ついつい当たっちゃった」と言った。そこで森本早苗が立ち上がって「ちょっとあなた達、いい加減に辞めてよ!」と少し大きめな声で発した。ところが一人の女子生徒が「偶然に当たっただけじゃない。森本さん何怒ってんの?」と言った。そんなやり取りを見ていた楠円香はいやがらせ行為の状況を完全に把握した。


その日のお昼休み、楠円香は生徒会室に行って早速誰がいやがらせ行為を行っているのか琴宮梓颯に伝えた。その情報を得た琴宮梓颯はその女子生徒達の情報を洗い出したのだが、何の目的があって調査しているのか全くわからなかった。そして放課後、この日は生徒会役員会議が実施される予定だったのだが、その前に夢前亜里沙が生徒会室を訪れて琴宮梓颯からいやがらせ行為をしている女子生徒達のリスト表を受け取った。しかし、問題はここからであった。夢前亜里沙にとって全く知らない女子生徒達とどのように接すればいいのかわからなかった。万が一、自分と同じ中学出身であれば話しかけることはできるが、今回は接点がないのだ。その女子生徒達の人間関係を調べるといっても誰かと話をしないとどうにもならないし、しかも自分は一つ上の先輩なのだ。これはもう堀坂向汰に相談するしかないと行き詰っていた夢前亜里沙だが、何か見落としてる部分があるように思えたのでもう一度考えてみることにした。しばらくして「そうだ、裏クラブ的な方法でアプローチすればいいんだ」と思い浮かんだ。


またまた次の日の朝、夢前亜里沙は1年2組の教室でいやがらせ行為を受けている森本早苗と話をしていた。森本早苗は中学生の頃、バスケットボール部で優秀な成績を残しており、学園に入学してからもバスケ部に入ろうか悩んでいるという。そのバスケットボール繋がりの話で森本早苗に話しかけていたのだ。


夢前亜里沙「そこまでの実力があるならバスケ部に入ったほうがいいと思う」

森本早苗「いや、わたしなんてまだまだですし、夢前先輩も途中で退部されたのですよね?」

夢前亜里沙「わたしは他にやりたいことができたから勉強に集中するため退部したけど、森本さんは実力があるんだから入部したほうがいいよ」

森本早苗「夢前先輩みたいに他にやりたいことはないですけど、部活に入るのは抵抗があります」

夢前亜里沙「どんな抵抗があるの?わたし、別に強制で部活に入れって言ってるんじゃないんだけど、このままほったらかしにすると森本さんの実力がもったいないって思ってる」


そこにいやがらせ行為をしている主犯格である新井絵里が登校してきた。今日は2年生である夢前亜里沙もいるのでいやがらせ行為をするとは思えなかった。ここで夢前亜里沙が「森本さん、ここからわたしがすることはフェイク。ごめんね」と言った。すると夢前亜里沙は森本早苗の机の脚を蹴っ飛ばして「ごめんなさい。なんか森本さんって話してるとムカつくからついつい机を蹴とばしてしまった」と少し大きな声で言った。もちろんこれはフェイクだということを森本早苗だけが知っていたが、クラスにいる生徒達はすっかり黙り込んでしまった。そして夢前亜里沙は何気ない表情をしながら新井絵里の席へと歩いていった。


夢前亜里沙「ねえ、あなた、あそこにいる森本って女子、一緒にいてイライラしない?」

新井絵里「え?あっはい・・・」

夢前亜里沙「ふーん、そうなんだ。あなたお名前は?」

新井絵里「あ、新井絵里と申します」

夢前亜里沙「あんな話していてムカつく女、目障りよね?」

新井絵里「そうかもしれません」

夢前亜里沙「だったらあんたの女子グループでハブればいいじゃん。そのくらい簡単だよね?」

新井絵里「あたしのグループといっても・・・ま、まだそこまで仲良くありませんし」

夢前亜里沙「そうなんだ。もういい、今日は気分が悪いから教室に戻るわ」


そう言って夢前亜里沙は1年2組の教室を出て行った。これは演技であったので教室を出た後、夢前亜里沙は冷や汗をかいていた。もちろん、この後、密かに森本早苗に演技だったことについて謝ったのは言うまでもない。ところで、この演技をしたことによって夢前亜里沙は新井絵里とそれを取り囲む人間関係について少しは情報を得ていたのだ。


その日の放課後、裏クラブのメンバー全員が生徒会室に集まっていた。楠円香と夢前亜里沙はそれぞれの調査報告を発表していた。これで森本早苗にいやがらせ行為をしている新井絵里およびそのグループにいる女子生徒の名前は絞り出すことはできた。


堀坂向汰「それにしても夢前さんがそんな演技をしたってことに驚いたよ。よくそこまでやってくれたと褒めたいんだけど、これでもう夢前さんがこの問題を解決させることは不可能になってしまった」

琴宮梓颯「どうして不可能になったの?」

牧瀬悠人「夢前さんはいやがらせ行為を応援する側になってしまったからですよ。ここで森本さんの味方になってしまうと、計画的に仕組まれたってことがバレてしまいます」

夢前亜里沙「わたしはその覚悟で演技をしましたので大丈夫です」

堀坂向汰「まあ、最後は梓颯と如月さんに演技をしてもらって解決させようって考えていたからね」

如月瑠衣「わたくし、演技などできませんわよ?」

堀坂向汰「如月さん、そんな深刻に考えなくても簡単な演技なんだよ。ただ、今の段階では問題解決までに至らない」

琴宮梓颯「向汰君が何を考えているのかよくわからないんだけど、ここまでわかっていながら問題解決行動はできないってこと?」

堀坂向汰「梓颯、最初から言ってるように今回の問題に関して解決策は簡単だけど、裏クラブが直接介入できないって部分が難しいんだよ」

牧瀬悠人「琴宮先輩、簡単に言えば森本早苗と裏クラブの接点がないってところなのです。その接点を上手く作っていくにはもう一仕事必要になるんですが、それが難しいのです」

琴宮梓颯「なるほどね。接点か・・・そういうの楠さんが得意そうだけどそれだとダメなの?」

堀坂向汰「円香ちゃんでは問題解決できないんだよ・・・やっぱ少し考えないといけない」

牧瀬悠人「僕のほうでも接点について考えておきます」

楠円香「あの・・・うち、この問題でずっと疑問に思ってたんですけど、新井絵里さんとそのグループではなくて逆に森本早苗さんが悪いってことにならんのですか?森本さんにも問題があったみたいな・・・」

堀坂向汰「そうか!円香ちゃん、お手柄だよ!!牧瀬君、逆の発想をしてみれば接点なんて簡単に作れてしまうよ」

牧瀬悠人「逆の発想・・・あっなるほど!僕らは真正面から考えすぎていたようですね」

楠円香「お手柄って・・・うち何か言いました?」

堀坂向汰「円香ちゃん、そのうちわかるよ。じゃあ接点を作るために、もう一度みんなに動いてもらわないといけない」


堀坂向汰と牧瀬悠人は一体何を考えているのだろうか。接点を作るとはどういうことであろうか。他のメンバー達にはそれがわからなかった。



■ 接点確立と解決行動


次の日の朝、ホームルームが始まる10分前に如月瑠衣は1年2組の教室へ入って森本早苗の席へといった。突然、2年生の生徒会副会長が教室に入ってきたので1年2組にいる生徒達はシーンとした。


如月瑠衣「おはようございます。あなたが森本早苗さんですね!?生徒会副会長の如月瑠衣と申しますが、わたくしのご存じでしょうか?」

森本早苗「はい。如月先輩は生徒会副会長さんですのでよく知っています」

如月瑠衣「突然ですが、森本早苗さんがこのクラス内の風紀を乱しているとの疑いがあります。そのことで詳しい話を聴かせていただきたいので、今日のお昼休みに生徒会室まで来てください」

森本早苗「風紀を乱しているって、わたしには心当たりがありません」

如月瑠衣「新井絵里さん達を不快にさせたってことですわ。無視しましたら、反論なしと判断して生徒会側であなたの処分を検討します」

森本早苗「そ、そんな・・・わかりました。お昼休みに生徒会室へ行くようにします」

如月瑠衣「ではお待ちしております」


そう言って如月瑠衣は1年2組の教室を出て行った。それからホームルームが終わって授業がはじまったのだが、森本早苗はずっと考え込んでいて授業の内容が全く頭に入らなかった。休憩時間になると新井絵里とそのグループの女子生徒達が集まっていた。


坂下麻実「今朝、生徒会副会長が乗り込んできたのってヤバくない?」

新井絵里「大丈夫なんじゃない。どういうわけか森本が悪者になってるわけだし」

遠藤加奈「でも、森本が生徒会に余計なこと言ったら面倒じゃない?」

木ノ川雫「それそれ!あいつ絶対余計なこと言いそうだよね」

新井絵里「余計なこと言ったとしても証拠が何もないから気にしなくていいんじゃない」

木ノ川雫「どうして生徒会が動き出したのか気になるところだけど、森本が風紀を乱しているっていうのもあながち間違いじゃないしね」


午前中の授業が終わって昼休みになると、森本早苗はすぐさま生徒会室へ向かった。いやがらせ行為をしているのは新井絵里とそのグループの女子生徒達であるのに、どうして自分が責められなければならないのかと考えると怒りが生じていた。一方、生徒会室には琴宮梓颯と如月瑠衣、夢前亜里沙の3人がお弁当を食べながら待機していると生徒会室のドアからノックする音が聞こえた。如月瑠衣が「どうぞ」と言うと生徒会室のドアが開いて複雑な表情をした森本早苗が立っていた。


琴宮梓颯「あなたが森本早苗さんね?どうぞ入って

森本早苗「は、はい。失礼します・・・」

琴宮梓颯「如月さん、生徒会室のドアの鍵閉めといてね」

如月瑠衣「わかりました」


森本早苗が部屋の中央に立つと、如月瑠衣は生徒会室のドアの鍵を閉めた。ソファーに座っている夢前亜里沙が「森本さん、緊張しなくて大丈夫だよ」と声をかけると森本早苗は「夢前先輩、どうしてここにいらっしゃるのですか?」と問いかけた。すると琴宮梓颯が「森本さん、こっちまで来てもらえる」と言うと森本早苗は「わかりました」と答えて生徒会長席の前まで歩いていった。


琴宮梓颯「森本さん、わたしのことは知っているかしら?」

森本早苗「はい。学園のアイドル的存在の生徒会長で有名ですから。近くで見ると本当にアイドルみたく綺麗でとても可愛いので驚きました」

琴宮梓颯「じゃあ、今日ここに呼び出された本当の理由についてはどうかしら?」

森本早苗「えっと、わたしが1年2組の風紀を乱していると如月先輩からお聞きしていますが・・・」

琴宮梓颯「その表情だと納得はしてないようね。まあ、ここにいる人達は誰も納得してないから無理もないんだけど」

森本早苗「納得していないってどういうことですか?」

琴宮梓颯「森本さんが1年2組の風紀を乱しているってことに誰も納得していないってことだけど?」

森本早苗「ええーっ!?ではなぜ、わたしは呼び出されたのでしょうか?」

琴宮梓颯「納得できないからわざわざ来てもらったの」

森本早苗「あの、話がよくわからないのですが・・・」

琴宮梓颯「1年2組の風紀を乱しているのは新井絵里さん達でしょ?」

森本早苗「そうですね」

琴宮梓颯「ここからは如月さん、説明してあげて!」

如月瑠衣「わかりました。あのですね、森本さんはいつまで新井絵里さん達のいやがらせ行為に対抗していくつもりなの?」

森本早苗「それは決めていませんが、風紀が乱れているのは事実ですから早く終わりにしたいです。ただわたしはあの人たちに屈するのは嫌です」

如月瑠衣「それでは早く終わりにするためにわたくし達生徒会に協力する気はございませんか?」

森本早苗「そういうことであれば協力しますが、具体的にわたしは何をすればいいのですか?」

如月瑠衣「森本さんには今日中にクラスの風紀を乱してしまったことについての反省文を本日の放課後までに書いていただきたいの。えっと、こちらで用意したこの1枚の用紙に書いてくれればいいですわ」

森本早苗「でもわたし、反省することなんて思いつきません」

如月瑠衣「森本さんが新井絵里さん達に不快な思いをさせてしまい、深く反省していますみたいなことでいいの。あと私はクズですとか・・・もちろん全て本音でなくてもいいわ」

森本早苗「本音でない文章であれば書きますけど・・・」

如月瑠衣「そして今日は授業が終わってからもしばらく教室に残っていてほしい。あとは夢前さんお願いします」


夢前亜里沙はソファーから立ち上がって森本早苗の左側へ立った。


夢前亜里沙「森本さん、今日の放課後も前のようにフェイクで演じるから我慢してね」

森本早苗「わかりました」

夢前亜里沙「ねえ森本さん、前にも話したけどバスケ部に入部する気ないの?」

森本早苗「高校の部活は上下関係が厳しいって聞いてますので抵抗があります。わたし、結構強気な性格ですし・・・」

夢前亜里沙「わたしは退部したけど、尊敬する優しい先輩を紹介するから、その先輩と話をして決めてもいいんじゃないかな?森本さんのような人でも優しく包んでもらえると思うよ」

森本早苗「夢前先輩がそこまでおっしゃるのであれば、その先輩と一度会って話をさせてください」


その後、森本早苗は生徒会室を出ると急いで1年2組の教室へ戻っていった。今日の放課後までに反省文を書かなければならないのだが、さすがに授業中に書くことはできないので5限目と6限目の間の休憩時間にさっと書いていた。如月瑠衣から受け取った用紙の上部には大きく反省文という文字が記載されていてとても目立っている。新井絵里グループの一人がそれを見て「森本、反省文なんて書いてるよ?超ウケる」や「でも反省してそうにないよね」などと仲間内でコソコソと話していた。そこにタイミングよく1年2組の教室に夢前亜里沙が入ってきて、森本早苗を見ながら新井絵里の席のほうへ歩いていった。


夢前亜里沙「ねえ、あのムカつく女は何書いてるの?」

新井絵里「あ、えっと・・・生徒会に提出する反省文のようです」

夢前亜里沙「反省文?あの女何かしたの?」

新井絵里「あたしを不快にさせて、このクラス内の風紀を乱したとかで生徒会に呼び出されたようです」

夢前亜里沙「そうなんだ。でも反省してる顔に見えないよ、あれ」

新井絵里「あ、あたしもそう思います」

夢前亜里沙「どうせ、適当に書いて提出すれば終わりみたいに思っているんでしょ。あんた不快にさせられた被害者なんだし、その程度で許していいわけ?」

新井絵里「たしかにその程度じゃ許せません」

夢前亜里沙「あんな適当に書いてる反省文なんてビリビリに破ってやるくらいのことしたいね」

新井絵里「それもそうですね」

夢前亜里沙「じゃあ、授業あるから教室にもどるわ」


夢前亜里沙が1年2組の教室を出た後、新井絵里とそのグループの女子生徒達が「夢前先輩の言ってる通りだよ」、「生徒会に提出されたらまずいから、次の授業終わってからビリビリに破ってやろうよ」、「今日中に提出なら、森本は放課後も残っているからやってやろうよ」などヒソヒソと打ち合わせをしていた。


6限目の授業が終わって1年2組の生徒達はさっさと部活に行ったり帰宅していった。ところが森本早苗は残って必死に反省文を書いていたのだ。そんな森本早苗の机の周りに新井絵里とそのグループの女子生徒達が取り囲んだ。


坂下麻実「森本さん、居残りして反省文書いてるの?」

森本早苗「・・・」


そこに木ノ川雫が反省文を書いている用紙の真ん中あたりにペンを突き刺した。


木ノ川雫「あら、ごめんなさい。手が滑っちゃったの」

遠藤加奈「えっと・・・私は他人の人を不快にさせるようなクズです、だって!あははは」

新井絵里「どこどこ?ちょっとあたしにも読ませて!」


新井絵里はペンを突きさしたままの用紙をそのまま上に持ち上げると用紙の中心部からビリビリと破れて大きな穴が空いてしまった。


木ノ川雫「あら、貫通して破けちゃった。これだともう書き直しだね」

新井絵里「本当だ、ここに私はクズって書いてある。あははは、超ウケる・・・あんたクズだったんだね。あたしらあんたのことこれからそう呼んであげる」


そこで1年2組のドアが開いて琴宮梓颯と如月瑠衣が教室に入ってきた。突然のことだったので教室内はシーンとして女子生徒達は驚いていた。琴宮梓颯と如月瑠衣は森本早苗の席の前まで行くと、貫通して破れている反省文の用紙を見た。


琴宮梓颯「ねえ、森本さん、これはどういうことかしら?どうして生徒会が渡した反省文用紙が破れているの?」

森本早苗「それは、ここにいる新井さん、坂下さん、遠藤さん、木ノ川さんの4人の誰かが破きました」

如月瑠衣「反省文用紙といえども、生徒会にとって大切なものなのですよ。琴宮会長、これは許せませんね」

琴宮梓颯「そうね。この用紙を見た限り森本さんが自分で破いた感じがしないわ。一体誰がこんなことをしたの?」


琴宮梓颯は少し怒り口調で発言して鋭い目をしながら女子生徒達を睨みつけた。


新井絵里「そ、それは、2年の夢前先輩にそうしろと言われて・・・」

琴宮梓颯「夢前さんは今関係ないでしょ?わたしは誰が破ったか聞いているの。あなたが破ったの?」

新井絵里「あ、あたし、、、ではありません」

琴宮梓颯「だったらあなた?」

木ノ川雫「わたしではありません」

琴宮梓颯「じゃあ残りの2人のどちらかってことになるわね。あなたなの?」

坂下麻実「私はただ森本さんに声をかけただけです」

琴宮梓颯「だったらあなたが破ったっていうのね?」

遠藤加奈「わ、わたしはこの用紙に触れてもいません」

新井絵里「き、きっともっと前から破れていたのではないかと・・・」

琴宮梓颯「この用紙を渡したのは今日のお昼だからそんなことはありえないわ。如月さん、誰も破っていないって言ってるけどどうしましょうか?」

如月瑠衣「わたくし、今回のことは一人の犯行ではなく連帯責任だと思いますの。代表者を一名選んでいただいて、その代表者を処分するということでいかがでしょうか?」

琴宮梓颯「なるほど、それがいいわね。今回の件に関してあなた達の中で代表者を決めてもらえる?その代表者の処分ということで目をつぶることにするわ」

木ノ川雫「あ、あの・・・その処分とはどういったことなのですか?」

琴宮梓颯「先生に報告、下手すれば停学になるわね。問題を起こした生徒だと認識されるようになるわ」


新井絵里と他3人の女子生徒達はざわめきはじめた。そして、なすり合いがはじまった。


遠藤加奈「そもそもさ、今日森本に話しかけたのって坂下さんじゃない。だから坂下さんが代表になるべきだよ」

坂下麻実「なんでそうなるのよ!最初にペンを刺したのは雫じゃん。だから雫が悪いんだよ」

木ノ川雫「だからといって私が破ったわけじゃないのよ。それに加奈ちゃんが文章を読んでクズとか言うのはいけなかったんでしょ?」

遠藤加奈「私はただ文章を読んだだけで、破ったりしてないのに雫は私のせいにするの?それだったら、それを読もうとした絵里ちゃんのほうが悪いじゃない!」

新井絵里「ちょ、ちょっと、あたしのせいにするわけ?何なのあんた達」

坂下麻実「そうだね。もともと絵里ちゃんがはじめたことなんだから、代表者は絵里ちゃんがいいと思う」

新井絵里「坂下さん、それがあんたの本音なの?あたしは文章を読もうとしただけで何も悪くないわ」

坂下麻実「本音も何も事実じゃん」

遠藤加奈「わ、私も代表者は絵里ちゃんがいいと思う」

新井絵里「加奈まで何言ってるの!?どうしてあたしなのよ?」

木ノ川雫「絵里ちゃんってある意味私達のリーダーみたいな存在になってるし・・・」


そこで琴宮梓颯が鋭い目をしながら新井絵里を睨みつけた。


琴宮梓颯「じゃあ新井絵里さんが代表者ね。でも、あなた達の話を聞いていると一人だけの問題じゃなさそうね。副代表者をあと一名選んでいただいて同じように処分を受けてもらうことにするわ。三人の中から選んでもらえるかしら」


新井絵里を除く他の3人の女子生徒達は副代表者を選べと言われて困惑するとともに冷や汗を流してた。


坂下麻実「やっぱさ、さっき用紙にペンを刺した雫が副代表になるべきじゃない?」

木ノ川雫「それで私が副代表になるなんてわけわかんない!最初に話しかけた坂下さんが副代表になるべきだよ」

坂下麻実「私は話しかけただけじゃない!それより加奈ちゃんさ、文章を読んで思い切り笑ってたじゃん。加奈ちゃんが一番酷い事してると思う」

遠藤加奈「私が笑ったからって一番酷いことにはならないでしょ?だったら雫ちゃんだって用紙が貫通しちゃったとかイヤミ言ってたじゃない」

木ノ川雫「あ、あれはイヤミなんかじゃないし、坂下さんだって見ていて笑ってたじゃん」

坂下麻実「ちょっと、笑ってなんかいないよ」

遠藤加奈「坂下さん笑ってたよ。なんでそんな嘘つくの?」


そんな責任の擦り付け合いが行われていると、突然、森本早苗は席を立って大きな声で「もう、やめてください!」と言った。あまりにも大きな声に琴宮梓颯と如月瑠衣も驚いてしまった。


森本早苗「責任の擦り付け合いをして情けないとは思わないんですか?恥ずかしくないんですか?自分さえ助かればそれでいいんですか?仲間を売るような真似をして心が傷まないのですか?わたしはどれも嫌です。琴宮先輩、如月先輩、この人達はいいので、もうわたしだけに処分を下してください。わたしが全ての責任をとります」


この発言に新井絵里達は驚いたと同時に森本早苗の根性と熱意に感心していた。その後、森本早苗だけが生徒会室に連れていかれることになった。



■ 問題解決とその後


その後、森本早苗は生徒会室の琴宮梓颯の机の前に立っていたのだが、どういうわけか夢前亜里沙もソファーに座っていた。


琴宮梓颯「森本さん、あそこでよく立ち上がって発言してくれたわ。MVPよ」

森本早苗「わたしはただ新井さん達が擦り付け合いをしているのがあまりにも醜いと思いましたから思わず・・・」

琴宮梓颯「新井さん達も所詮はその程度の薄っぺらな関係性だったってだけよ」

森本早苗「薄っぺらな関係性?」

琴宮梓颯「みんな自分が窮地に陥ったら人のことなんて考えている余裕はないの。よほどの親密な関係であれば別なんだけど、薄っぺらな関係だとさっきのように擦り付け合いがはじまる。自分だけは助かろうとする。そんなの親友とはいえないでしょ」

森本早苗「たしかに・・・でもあの、全ての責任はわたしがとりますので新井さん達は許してあげてください」

琴宮梓颯「最初から責任なんてとってもらうつもりはなかったわ。ただ、森本さんが新井さん達からいやがらせ行為を受けてるって情報を得たから、生徒会として止めに入っただけよ」

如月瑠衣「反省文を書いていただいたことも含めて全てはわたくし達生徒会が考えてわざと仕組んだことですのよ」

森本早苗「そうだったんですね・・・でも、あのままわたしが発言しなかったらどうなっていたのでしょう?」

如月瑠衣「わたくしが森本さんと同じようなことを発言するつもりでしたわ」

琴宮梓颯「今回生徒会としては新井さん達の薄っぺらな人間関係を壊してしまうことが目的だったのよ。あそこまで擦り付け合いをしたら、もう今まで通りの関係を保つのは無理でしょうね。これでいやがらせ行為もなくなると思うわ」


それを聞いた森本早苗は涙を流しながら「ありがとうございました」と言った。そんな森本早苗をいたわるかのように如月瑠衣は「森本さん、とりあえずソファーに座ってください。夢前さんからもお話があるようですので」と声をかけた。森本早苗はソファーのほうへ行き、夢前亜里沙の隣にちょこんと座った。すぐさま如月瑠衣はお茶を持っていき「どうぞ」とテーブルの上に置くと、森本早苗は「ありがとうございます」と呟いた。


夢前亜里沙「森本さん、バスケ部にはまだ興味がない?」

森本早苗「まだ少し抵抗があります」

夢前亜里沙「えっと今は16時40分前か。前に話していた尊敬できる先輩がもうすぐ来るから話だけでも聞いてみるといいよ」

森本早苗「え!?ここに来るのですか?」


しばらくすると「トントン」と生徒会室のドアをノックする音が聞こえた。如月瑠衣は「はい、どうぞ」と返事をするとドアが開いた。すると水色で真ん中に7番と大きく書かれたタンクトップに短パンのユニフォーム姿の宮下苗子が入ってきた。琴宮梓颯は「宮下さん、夢前さんの向かい側のソファーに座ってもらえる」と言った。宮下苗子は「うん。夢前に呼ばれて部活を少し早めに切り上げてきたんだけど、急いでたから着替えてなくてごめんね」といって夢前亜里沙と森本早苗の向かい側のソファーに座った。


宮下苗子「夢前、何か問題でも起こったの?」

夢前亜里沙「いえ、あのこちらは1年生の森本早苗さんです。今日は宮下先輩とお話させたくて来てもらっています」

宮下苗子「森本早苗さんね!わたしは3年5組の宮下苗子だけどよろしくね」

森本早苗「森本早苗です。よ、よろしくお願いします」

宮下苗子「それで夢前、この森本さんと話をさせたいってどういうこと?」

夢前亜里沙「実はこの森本早苗さんは中学生の頃、バスケットボール部で優秀な成績を残していまして、今もこの学園でバスケ部に入ろうか悩んでいるようなのです」

宮下苗子「そうなんだ。1年生の入部数は少なかったから入ってもらえると嬉しいかも。森本さん、中学の時のポジションってどこだったの?」

森本早苗「あ、えっと、一応SFスモールフォワードを担当していました」

宮下苗子「へえ、かなり重要なポジションなのに優秀な成績を残したんだね。どうしてすぐにバスケ部に入部しなかったの?」

森本早苗「それは、高校の部活動って上下関係が激しくて厳しいと聞いていましたし、わたしは強く人に何でも言ってしまう性格ですので抵抗がありまして・・・」

宮下苗子「他の高校は知らないけど、うちの部は人間関係を重視しているから先輩後輩ともに大の仲良しだよ。それに自分の思ったことをすぐに発言できるような部員を必要としてるからいいと思うけどな。夢前はどう思う?」

夢前亜里沙「この学園のバスケ部は大会とかには出場するけど、基本はみんなでバスケをして楽しもうって感じだから森本さんの心配するようなことはないと思う。本格的にプロの選手を目指しているって感じでもないよ」

宮下苗子「だからなのかもしれないけど、うちの学園のバスケ部は弱いから大会に出てもすぐに負けちゃうけどね。でもみんな心からバスケを楽しんでいるだけなんだよ。そういう部だけど森本さんどうかな?」

森本早苗「わたし、中学の部活は本当にスパルタだったのでそのイメージが強いのですが、みんなで楽しむバスケ部というのは憧れがあります」

宮下苗子「だったらまず仮入部をしてしばらく部活に参加してみるのはどう?それで気に入らないならいつでも辞めればいいわけだし」

森本早苗「わかりました。わたし、バスケは好きなので仮入部からお願いします」

宮下苗子「じゃあ、明日から仮入部ということで、早速だけどこれからわたしと一緒に顧問の先生のところへ行きましょう」

夢前亜里沙「森本さんなら絶対にこの学園のバスケ部は楽しいって思えるはずだよ」

宮下苗子「ところで夢前はもう部活に戻る気はないの?」

夢前亜里沙「わたしはバスケ以上に心理学の勉強に打ち込んでいますから、もうバスケ部に戻ることはありません」


そういう話をして宮下苗子と森本早苗の二人は生徒会室を出てバスケ部顧問の先生のところへ向かっていった。二人が生徒会室から出て行ったところで堀坂向汰と牧瀬悠人が生徒会室に入っていった。如月瑠衣はすぐさま生徒会室のドアにカギをかけた。


琴宮梓颯「それにしても新井絵里さん達の人間関係を崩壊させることが問題解決になるとは向汰君もよく考えたわね」

堀坂向汰「所詮は薄っぺらな関係だし、そんな状態で窮地に追い込まれたら自分だけ助かろうと擦り付け合いがはじまる。そうなってしまうとすぐに人間関係なんて崩壊してしまうからね。これは最初から考えていたことなんだけど、問題はそこに追い込む方法が難しかったんだよ。ただ、俺も牧瀬君も森本早苗を中心として考えてたんだけど、逆に森本早苗を悪者にしてしまったほうが簡単だった。あとは夢前さんの演技と最後の梓颯と如月さんの演技にかかってたんだけど上手くやってくれたよ。これで新井絵里とその周りにいる人間関係は完全に崩壊しただろうね」

牧瀬悠人「さすがに先輩であり生徒会長でもある琴宮先輩と生徒会副会長の如月さんに追い込まれたら恐怖でしかなくなりますからね」

夢前亜里沙「それに森本さんが部活に入ればいろんな先輩と仲良くなれますし、こういういやがらせ行為をしてくる人はいなくなると思います」

琴宮梓颯「じゃあ影郎で返信を送っておくわ」


琴宮梓颯は影郎アカウントにログインして、ダイレクトメッセージを送ってきた早川那奈に『早川那奈さん、こんにちは。影郎です。あなたの問題を解決させました。しかし、今後はあなたもいやがらせ行為をされないように注意してください。それでは良き学園生活をおくってください』と返信をした。


堀坂向汰「今日は円香ちゃん来てないんだね」

牧瀬悠人「雑誌の取材があるとのことで先に帰りました」

堀坂向汰「それは残念だな」

琴宮梓颯「向汰君、やけに楠さんのことを気に入ってるのね」

堀坂向汰「そういうわけじゃないけど、久しぶりに大阪弁が聞きたかっただけだよ」

如月瑠衣「大阪に住むハッカー仲間を紹介しましょうか」

堀坂向汰「それは遠慮するけど、大阪にもハッカーいるんだ」

牧瀬悠人「如月さんはいろんな人と知り合いになってるんだね」


それから1年2組で森本早苗に対するいやがらせ行為はなくなったのだが、もちろん責任の擦り付け合いをした新井絵里達の関係性も崩壊していた。そしてバスケットボール部に仮入部した森本早苗はよほど部活が気に入ったのか3日目で本入部することになったのだが、一番仲のいい尊敬できる先輩となったのは宮下苗子であったことはいうまでもない。

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