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明智学園裏クラブ  作者: 涼
15/15

新学期

■ 新学期はじめての依頼


桜の満開が終わった4月の上旬、明智学園には新1年生が入学してきた。先月の”海の見える露天風呂の殺人事件”を自称「影郎」という高校生によって解決されたと新聞記事で報道されたことが学園内で広まっていた。今や影郎アカウントの存在は新入生まで知っているのだ。

また、今年の新入生の中には子役から女優になった大阪府出身の有名人が入学してきたのだが、このことでも大騒ぎになっていた。この有名人とは1年6組にクラスになった芸名で葛城まどか、本名は楠円香という。


そして、裏クラブのメンバーはそれぞれ進級して、3年2組に琴宮梓颯、3年5組に堀坂向汰、2年1組に牧瀬悠人、2年3組に如月瑠衣、2年5組に夢前亜里沙になった。西村真一と宮下苗子も3年5組となり、また堀坂向汰と同じクラスになった。宮下苗子は「また堀坂と同じクラスになれてよかった!これからもわたしを守ってね」と堀坂向汰に囁いた。ちなみに西村真一の彼女である泉原優奈は、仲良しの夢前亜里沙と同じ2年5組になって大喜びしていた。


新学期が始まって1週間ほど経った朝、3年5組の教室では堀坂向汰が登校してきて席に座ると、ニコニコしながら西村真一がやってきた。


西村真一「堀坂、おはようさんねん!」

堀坂向汰「西村、おはよう。さんねんって意味がわからないよ」

西村真一「俺たちはもう3年なんだぜってことだぜ」

堀坂向汰「それはそうだけど、なんか今日は機嫌がいいね」

西村真一「今朝よぉ、下駄箱で新入生で有名な葛城まどかを見たんだけどさぁ、芸能人だけあってかなり可愛かったんだよ」

堀坂向汰「そうなんだ。僕には興味はないことだけど、西村は泉原さんに興味がなくなったの?」

西村真一「それとこれとは話が違う。優奈は俺の大事な人であって、葛城まどかはアイドル的な存在なんだよな」

堀坂向汰「生徒会長の琴宮さんのこともそんな風に言ってなかった?」

西村真一「お前、ときどきキツイこと聞いてくるよなぁ。まぁ俺的には琴宮梓颯のほうが上って感じがするけどよぉ、葛城まどかは新鮮って感じがするんだ」

堀坂向汰「僕にはよくわからないことだから・・・」


この二人の会話を聞いていた周りの女子生徒達はヒソヒソと「キモオタにリアル女子の比較なんてされたくないよね」などと言っていた。そこに3年5組の担任教師である宮前実里という20代後半でクセのあるセミロングヘアに少し垂れ気味の目に小顔、身長は155センチほどのスラっとした女性が教室に入ってきて「みなさん、席についてください!」と言うとクラス中の生徒達が席に座ってホームルームがはじまった。


その日の昼休み、牧瀬悠人は購買でおにぎり3つと緑茶を買って廊下を歩きながら教室へ戻っている時、後ろから「悠君!」と呼ぶ少し大きな声が聞こえた。振り返ると赤色のリボンをつけた女子生徒が走り寄ってきた。それはまさに新入生で有名なっている葛城まどかこと、楠円香であった。


牧瀬悠人「ちょっと円香ちゃんっ!!気安く学園内で僕に話しかけないでって言ったじゃないか」

楠円香「少しくらいええやんか!誰かに見られるとまずいん?」

牧瀬悠人「僕たちの関係が公になると困るんだよ」

楠円香「なあ、悠君の彼女さんって何て人なん?」

牧瀬悠人「そんなこと円香ちゃんが知ってどうするの?」

楠円香「彼女さんにはうちらの関係を知ってもらってたほうがええやろ?」

牧瀬悠人「それはそうかもしれけど、こっちにもいろいろ事情があるんだよ」

楠円香「その事情って何なん?」

牧瀬悠人「それだけは教えられないよ」

楠円香「それってこの学園で噂の影郎アカウントの関係とちがうん?」

牧瀬悠人「僕にもいろいろあるんだよ」

楠円香「なあ、露天風呂の殺人事件の謎を解いた影郎って悠君やろ?」

牧瀬悠人「それは僕が解いた事件じゃないし、影郎でもないよ」

楠円香「それは嘘やわ。この学園内でそんな事件を解決できるのって悠君しかおらんやん」

牧瀬悠人「本当に僕じゃないから!話はそれだけ?」

楠円香「ふーん、悠君じゃなかったら誰なん?うち、影郎アカウントの正体に興味があるねん!」

牧瀬悠人「さあ誰だろうね。円香ちゃん、好奇心旺盛なのはわかるけど、知らないほうがいいことだってあるから!」

楠円香「そうなんや・・・まあ、うちの情報収集能力は人並外れてるってことだけ忘れんといてな」

牧瀬悠人「話はそれだけなら僕はもう教室に戻るね!じゃあ・・・」


そういって牧瀬悠人はその場を去った。そんな姿を見た楠円香はニヤリと笑みを浮かべながら「絶対に暴いてやる!」と小声で呟いた。


それから5日ほど経った週明けの月曜日のことだった。昼休みに生徒会室では琴宮梓颯と如月瑠衣が昼食をとっていた。そして昼食をとりながら琴宮梓颯が影郎アカウントをチェックするとダイレクトメッセージが届いていた。最近ではときどき、影郎アカウントにつまらない依頼のダイレクトメッセージが届くことがあったのだが、今回は件名が「助けてください!!」ということもあって本文を読んでみた。ちなみに、今年度から如月瑠衣がいたずら防止も兼ねてダイレクトメッセージに件名の項目を追加したのだ。


琴宮梓颯「如月さん、昼食中に申し訳ないんだけど、ちょっとこの依頼を見てもらえる?」

如月瑠衣「何か気になる依頼が届いたのでしょうか・・・」


如月瑠衣は立ち上がって生徒会長席のほうへ歩いていって琴宮梓颯が開いているノートパソコンを見た。


如月瑠衣「これは有名人と騒がれている1年生からの依頼ですわね」

琴宮梓颯「この1年生のことで騒がれていることは知っているけど、実際に見たことがないのよね」

如月瑠衣「内容はいたってシンプルで、裏クラブの活動をするほどでもなさそうではありませんわね」

琴宮梓颯「普通に解釈するとそうなんだけど、何か裏がありそうな感じがするのよ」

如月瑠衣「それは他に意図があるということでしょうか?」

琴宮梓颯「そうなの。念のため、久しぶりに裏クラブのメンバーに集まってもらってもいいんじゃないかしら?」

如月瑠衣「それでも構いませんが、琴宮会長の考えすぎじゃありませんの?」

琴宮梓颯「そうかもしれないけど、今後のことも決めていけないといけないし、一度集まってもらいましょう」

如月瑠衣「わかりました。それではわたくしのほうから今日の放課後に集まるようにメールを送っておきますわ」

琴宮梓颯「お願いするわね」


放課後になり、ぞくぞくと裏クラブのメンバーが生徒会室に集まってきた。相変わらず堀坂向汰だけは掃除当番なので遅れるとのことだった。向かってソファーの右側に夢前亜里沙が座って、左側には牧瀬悠人が座った。落ち着いたところで琴宮梓颯が口を開いた。


琴宮梓颯「集まってくれてありがとう。先に少し相談があるの」

如月瑠衣「琴宮会長、それは新入生のことでしょうか?」

夢前亜里沙「新入生のこと?」

琴宮梓颯「そうなの。影郎アカウントのことはあの殺人事件のことが新聞で掲載されたから、新入生達にも広まっているんだけど、私たちはにはまだ新入生の情報を集めることができないのよね」

牧瀬悠人「たしかに今のメンバーでは新入生の情報を集めるのは困難ですね」

琴宮梓颯「新入生から情報収集担当のメンバーを入れたいところなんだけど、如月さんに入手してもらった学生データだけでは判断が難しいのよ」

夢前亜里沙「生徒会に興味を持っている新入生を募集するのはまずいですか?」

琴宮梓颯「それも考えてはみたけど、何を募集していいのか検討がつかないの」

牧瀬悠人「新入生に1人だけ知り合いはいますが・・・その人はダメですね」

如月瑠衣「牧瀬君には新入生に知り合いがいますのね。どうしてその人はダメなのです?」

牧瀬悠人「如月さん、その人はいろいろと都合が悪いんだよ」


そこで生徒会室のドアが開いて堀坂向汰が「みんなお待たせしてごめん」といって入ってきた。そしてソファーの中央に座り、カバンの中からペットボトルのコーラーとスナック菓子を取り出した。如月瑠衣は立ち上がって生徒会室のドアに鍵をかけると、琴宮梓颯が立ち上がって「これで全員集まったから会議をするわよ」と言った。


堀坂向汰「梓颯、ちょっと待って!牧瀬君、その知り合いというのは女の子じゃない?」

牧瀬悠人「堀坂先輩、どうしてわかったのですか?」

堀坂向汰「これは推理とかじゃなくてなんとなくだよ。都合が悪いってことは、その女の子に知られたくない事があるんだね?」

牧瀬悠人「そうなんですが、今は詳しく話せません」

堀坂向汰「わかった。梓颯、はじめてくれていいよ」

琴宮梓颯「じゃあはじめます。如月さん、お願いします」


如月瑠衣はすでにノートパソコンにプロジェクターを取り付けていて、生徒会室の明かりだけ消した。

そして「それでは今朝方、影郎アカウントに届いたダイレクトメッセージを表示します」と言った。



■ 依頼の意図と対策


生徒会室の大きな壁に映し出された影郎アカウントに届いたダイレクトメッセージは次のような内容であった。


件名:助けてください!!


本文:

影郎さんへ


はじめまして。

1年6組の楠円香といいます。

既にご存じかもしれませんが、葛城まどかという芸名で女優活動をしてます。


この学園に入学してすぐの頃から2年5組の赤倉幸彦という先輩に

しつこく言い寄られています。


最初は「ファンだからツーショットの写真を撮らせてほしい」とお願いされましたがお断りしました。

でも次に「2人でお茶してほしい」とお願いされて、それも拒否していると、

今では「1度でいいからデートしてほしい」とお願いされました。

もちろんデートなんてするとスクープにされかねませんので困っています。

この先、何をされるかわからないのでとても怖いです。


影郎さん、どうか助けていただけないでしょうか?

よろしくお願いします。


この文章を読んだ裏クラブのメンバーはボソボソと呟きだした。そして堀坂向汰が「如月さん、もういいから部屋の明かりをつけて!」と言った。如月瑠衣が生徒会室の明かりをつけると牧瀬悠人が「こんな依頼は無視すればいいのではないでしょうか?」と言った。


夢前亜里沙「わたしは助けてほしい感じが全くしない文章のように思えます」

如月瑠衣「わたくしもそのように思いますわ」

琴宮梓颯「普通に読めばそう感じるかもしれないけど、この依頼には他に何か意図があるように思えてならないのよ」

牧瀬悠人「本文の内容も事実かどうかわかりませんよ?」

琴宮梓颯「そうかもしれないけど・・・向汰君はどう思う?」


ソファーの中央で座っている堀坂向汰はペットボトルのコーラーをゴクリと飲むと「ふははははは」と笑い出した。琴宮梓颯は「どうして笑っているのよ?」と問いかけた。


堀坂向汰「だって、少し考えたら小学生でもわかる推理だからだよ」

琴宮梓颯「どういうこと?」

堀坂向汰「入学してきてまだ間もないのに、しつこく言い寄られて困っているなら普通なら先生に相談すればいい。女優であれば事務所にも相談できる。それなのにいきなり影郎アカウントに依頼を送ってきたってことは、影郎アカウントの調査をしているとしか考えられない」

夢前亜里沙「でも、わたしは同じ2年5組ですが、この赤倉幸彦という生徒は存在していますよ」

堀坂向汰「赤倉幸彦が楠円香に言い寄よっているのは事実だろうけど、そんなの無視すればいいだけだし、それはただの口実のように思う。牧瀬君、そろそろ正直に話してもらえないかな?」

牧瀬悠人「正直にってどういうことですか?」

堀坂向汰「牧瀬君と楠円香の関係だよ。如月さんとは違う別の深い関係があるんでしょ?」

牧瀬悠人「よくわかりましたね!?」

堀坂向汰「だって『こんな依頼は無視すればいい』なんて言ったけど、こんな依頼って、まるで何かを知ってたかのような発言だったからだよ」

牧瀬悠人「なるほど!僕もうっかり口をすべらせてしまいました。さすがは堀坂先輩です!では説明しますが、これは裏クラブだけの秘密にしてください」


牧瀬悠人は立ち上がってみんなのほうを向いて口を開いた。


牧瀬悠人「円香ちゃんは大阪に住んでいた僕の従妹で、女優活動をするためにこっちに引っ越してきたのです」

琴宮梓颯「親類だったのね。女優さんだったら芸能系の高校に行けばいいのに、どうしてこの学園に入学したのかしら?」

牧瀬悠人「両親の希望もあったみたいで、僕と同じ学園に通うことにしたとのことらしいのです」

琴宮梓颯「なるほどね。それにしても女優活動でこっちに来たってことはそれだけ売れてるってことなの?」

牧瀬悠人「関西ではかなり人気があったみたいで、最近はモデルの仕事もしているので全国的にも知名度があるようです」

如月瑠衣「それだと琴宮会長と張り合いになりそうですわね」

琴宮梓颯「如月さん、それはどういう意味なの?」

如月瑠衣「モデルさんということは学園のアイドル的存在が現れたということです」

琴宮梓颯「たしかにそうかもしれないけど、わたしは張り合うつもりはないわ」

牧瀬悠人「ルックスでいうと琴宮先輩のほうが上のように思いますが・・・」

琴宮梓颯「そんなことは比較するものじゃないわ。それより、楠円香さんは牧瀬君に何か言ってたの?」

牧瀬悠人「影郎アカウントの正体を絶対に暴いてやると言っていました」

琴宮梓颯「なるほどねえ。でも、興味本位で暴けるほど簡単ではないから大丈夫じゃないかしら?」

牧瀬悠人「ただ、円香ちゃんの情報収集能力は人並外れていますので油断はできません」


そこでスナック菓子をボリボリと食べていた堀坂向汰がペットボトルのコーラーを一口のんで話に入ってきた。


堀坂向汰「人並外れた情報収集能力ってどういうこと?」

牧瀬悠人「円香ちゃんは有名人という立場もあって、誰とでも気軽に話しかけることができる社交的な部分があります。影郎アカウントが生徒会に関係しているのではなかと疑っている生徒もいるくらいですから、生徒会が目につけられるのも時間の問題でしょう」

夢前亜里沙「琴宮先輩に対抗できるルックスであれば、男子生徒からはあらゆることを聞き出せるかもしれませんね」

堀坂向汰「まあルックスはどうであれ、その楠円香って子をここに連れてくればいいよ」

牧瀬悠人「堀坂先輩何を言っているのでしょうか?円香ちゃんをここに連れてくるということは、半分正体を明かしているようなものになりかねませんよ?」

堀坂向汰「どうせ新入生の情報収集役を探していたんだから、うまくいけば一石二鳥かもしれないよ」

牧瀬悠人「しかし、まずい結果にならないとも言い切れませんよ」

堀坂向汰「大丈夫だと思う。梓颯、明日の放課後も生徒会室は空いているよね?」

琴宮梓颯「明日も空いてはいるけど、本当に大丈夫なの?」

堀坂向汰「明日の朝、如月さんが直接1年6組の教室へ行って楠円香の呼び出してほしい」

如月瑠衣「わたくしですか?それは構いませんが、いきなり話しかけるのは抵抗がありますわ」

堀坂向汰「生徒会副会長で牧瀬悠人の恋人だと言えばいい」

如月瑠衣「ええええええええ!!!???」

堀坂向汰「あと、念のため梓颯は2年5組の赤倉幸彦の情報だけ洗い出しておいて!」

琴宮梓颯「わかったわ。夢前さんにも少し手伝ってもらうわね」

夢前亜里沙「わかりました」

堀坂向汰「本日の会議は以上で終了!まあ明日の放課後を楽しみにしてるといいよ」


裏クラブのメンバーは堀坂向汰の考えていることがいま一つ理解できなかったが、こうなったら信じて指示に従って行動するしかないのだ。

一体、裏クラブはどうなってしまうのだろうか?



■ 裏クラブの秘密


次の日の朝、少し早めに登校した如月瑠衣は1年6組の教室へ向かった。教室の入口前で1年6組の教室へ登校してきた女子生徒2名に「わたくし生徒会副会長の如月瑠衣と申しますが楠円香さんを呼んできていただけますか?」と声をかけた。その女子生徒2名は如月瑠衣の存在を知っていたのか「は、はい!少々お待ちください」というと突然、教室の中に向かって「楠さん、生徒会副会長さんがお呼びですよ」と大きな声で叫んだ。その瞬間、女子生徒1名が左後ろの席を立ちあがって教室の入口のほうへ歩いてきた。そして「楠ですが生徒会副会長さんがうちに何の用ですか?」と言った。楠円香は地毛の茶髪にサラサラのセミロングでハーフツインテール、少し大きな目をしていてだんご鼻に小さな唇のベース型の顔立ちをして、背丈は琴宮梓颯より少し低いスリムな体型をしていた。


如月瑠衣「あなたが楠円香さんね。わたくしのことはご存じです?」

楠円香「もちろん知ってます。生徒会副会長の如月先輩ですですよね?」

如月瑠衣「それなら話が早いですわ。今日の放課後、生徒会室にきていただけます?」

楠円香「生徒会室?うち、なんかまずいことでもしました?」

如月瑠衣「そういうわけではありません。知っている人かわかりませんが琴宮会長も含めてお話したいことがありますの」

楠円香「学園のアイドル的存在である琴宮先輩のことですよね?呼び出しの理由を明確に話してもらわれへんでしょうか?」

如月瑠衣「ここでは話せないけど、わたくしは牧瀬悠人の恋人だと打ち明けておきます。もちろん放課後にはその牧瀬君も来ます」

楠円香「えええーーーーーー!??如月先輩が悠君の彼女!?」

如月瑠衣「他にも人は来ます。来るか来ないか、あとは楠さんの判断にお任せしますわね。では、わたくしは教室にもどりますわ」


如月瑠衣は伝えることだけ伝えてるとさっさと自分の教室へ戻って行った。楠円香はどうして生徒会室に呼ばれたのか全く理解できず、立ち去っていく如月瑠衣を不思議そうな表情で見ていた。


放課後になり、先に如月瑠衣が生徒会室に来ていた。如月瑠衣も楠円香を生徒会室に呼び出した理由がよく理解できていなかったので内心ではドキドキしていた。そこに急いでやってきたのが夢前亜里沙だったが、肝心のメンバーがきていない。しかし、こういう時の夢前亜里沙はやけに落ち着いている。如月瑠衣は「夢前さん、今朝方、例の楠円香さんに生徒会室に来るように言ったのだけど、緊張しませんの?」と聞いてみると、夢前亜里沙は「全ては堀坂先輩にお任せするといいと思う」と答えた。如月瑠衣は「たしかにそうだけど・・・」と呟きながらも、まだ緊張の糸がほぐれない。そして、次に生徒会室に入ってきたのは琴宮梓颯で「みなさんお待たせしました」と言って生徒会長席に座った。生徒会長が来たので少しはホッとしたが、肝心の男子生徒2名がまだきていない。


琴宮梓颯「あら、まだ推理オタクの二人はきてないのね」

如月瑠衣「わたくし達、まだ楠円香さんを呼び出した理由がわかっていないので、先に彼女が来てしまったらと思うと落ち着いていられません」

夢前亜里沙「如月さん、そうなればまずはリラックスしてお茶を出して待っていただくしかないよ」


そこで生徒会室のドアから「トンットンッ」とノックする音が聞こえた。琴宮梓颯が「どうぞ」と声をかけると生徒会室のドアが開いて楠円香が頭を下げながら「失礼します」と言って入ってきた。琴宮梓颯は「わざわざ呼び出したりしてごめんなさいね。わたしのことは知っているかしら?」と言った。すると楠円香が近づいてきて「もちろん知っています!うわぁー近くでみるとさすがは学園のアイドルと言われているだけあって、めちゃくちゃ美人というかめちゃくちゃ可愛らしいっていえますね~女優のうちですら顔負けを認めますわ」と言った。


琴宮梓颯「ありがとう。わたしはそんなふうに思ったことはないんだけどね」

楠円香「うちの事務所に紹介したいくらいですわ。琴宮先輩ならアイドルだけやなくて、超売れっ子のモデルにもなれると思いますよ!」

琴宮梓颯「残念ながらわたしは芸能界に興味はないの」

楠円香「そうなんですか?それはもったいないですわ」

琴宮梓颯「楠さんだっけ?そこのソファーに座ってお茶でも飲んで待っていてもらえる?」

楠円香「わかりました」


ソファーの左側に座った楠円香がお茶をすすっていると、生徒会室に「おまたせしました」と言いながら牧瀬悠人が入ってきた。それを見た楠円香は「悠君っ!!!」と少し大きな声で言った。


楠円香「う、うちと悠君は単なる知り合いで何も関係ありませんっ!」

牧瀬悠人「円香ちゃん、もうここの人達にはバレてるから隠さなくてもいいんだよ」

楠円香「えっ!?それってどういうことなん?」

牧瀬悠人「もうすぐわかるよ」


そして生徒会室のドアが開くと「もうはじまっているのか」といいながら堀坂向汰が入ってきた。牧瀬悠人は「堀坂先輩、お待ちしていました」と言ったが、その言葉を聞いた楠円香は不思議そうな表情をしていた。


楠円香「あ、あの・・・この人って3年生で噂になっているキモ、いや、ある意味有名な人とちゃうんですか?」

琴宮梓颯「そうだけど、楠さん、それがどうかしたの?」

楠円香「いえ、別になんもないですけど・・・」

堀坂向汰「ほうほう、これが女優で有名な楠さんか・・・たしかにデートしたい男子生徒は多いだろうね」

楠円香「うち、デートなんてお断りですよ!!」

堀坂向汰「まあまあ~ちなみに君をここへ呼んだのは俺だから話を聞いてほしい」

楠円香「えええーーー?」


楠円香は全く意味がわからなからなかった。見た目はオタクで周囲の女子生徒達からキモオタと呼ばれている先輩に呼び出された理由が全く理解できなかったと同時に身の危険を少し感じているところであった。


堀坂向汰「少し警戒心を持たれているみたいだから本題に入るけど、単刀直入に、君はどうして影郎アカウントの正体を暴こうとしているの?」

楠円香「それは悠君から聞いたんですよね?うちはただ、警察でも解けなかった殺人事件を解いた影郎アカウントの正体が知りたかったのと、自分の情報収集能力を試してみたかっただけなんです」

堀坂向汰「なるほど、楠さんは自分がどれほど情報収集能力を持っていると思う?」

楠円香「それは比較対象がないのでわかりませんけど、うちは誰とでも話していろんな情報を収集していける能力を人並み以上に持ってると思ってます!」

堀坂向汰「あはははははっ!そうなんだ・・・そっかあ!」

楠円香「何かおかしいですか?うちは真剣に答えてるんです!」

堀坂向汰「梓颯、新入生の情報収集役はこの子でいいんじゃないか?」


堀坂向汰のその言葉を聞いて他のメンバー達は唖然としていた。


琴宮梓颯「向汰君がそう言うなら別にいいかもしれないけど、まだ楠さんを完全に信用していいかわからないのよ」

堀坂向汰「そこは牧瀬君の親類なんだし、大丈夫だと思う」

牧瀬悠人「芸能人ということもあって口は堅いと思いますがいきなりメンバーに入れるつもりですか?」

堀坂向汰「これほどの人はなかなかいないと思からね」

夢前亜里沙「わたしは賛成します。少し話を聞いただけですが、楠さんは人並外れた能力を持っていると思います」

如月瑠衣「わたくしは琴宮会長と同じく、楠さんを完全に信用していいのか疑問です」

堀坂向汰「如月さん、さっき梓颯にも言ったけど、それは大丈夫だと思う」


話を聞いていた楠円香は意味がわからず不思議そうな表情をしていた。


楠円香「あの、信用とかメンバーに入れるとかって何の話をしてるんですか?」

堀坂向汰「あーいきなりわけわからないよね。梓颯、影郎アカウントと裏クラブの説明をしてあげてほしい」

琴宮梓颯「そうね・・・わかったわ」


琴宮梓颯は楠円香に裏クラブのことや影郎アカウントのことを詳しく説明した。もちろん、先日の海の見える露天風呂殺人事件のことも含めて、これまで解決してきた事件のことも話した。楠円香は「そういうことやったんですね。うち、裏クラブのメンバーになってもいいですが、その前に裏クラブの実力をみせてほしいのと、やっぱり露天風呂殺人事件は悠君が解いたんやね」と呟いた。ところが牧瀬悠人は「あの事件を解いたのは僕じゃないよ」と言った。


楠円香「じゃあ誰なん?まさか悠君以外に考えられへんのやけど・・・」

牧瀬悠人「円香ちゃん、世の中、上には上がいるんだ」

楠円香「それやったらその悠君より推理力が上って人連れてきてよ」

牧瀬悠人「それはそこにいる堀坂先輩だよ」

楠円香「ええええええーーーーー!?このキモ、いや3年生が!?」

牧瀬悠人「円香ちゃん、人を見た目で判断するのはよくないよ。堀坂先輩は僕が尊敬するほどの推理力を持っているんだ」

楠円香「それやったら裏クラブの実力を見せてもらうことも兼ねて、みなさん、うちが今から出題する問題を解いてもらえますか?」


そこで堀坂向汰が「出題か・・・おもしろそうだ!どんな問題?」と言った。



■ 新入生のメンバーは女優で決定


楠円香は「それでは出題しますのでよく聞いていてください」と言った。


これから死刑執行になる10人の囚人が右を向いて一列に並んでいます。囚人はそれぞれ白か黒の帽子をかぶらされていますが、自分の帽子の色はわかりません。その状況で10人中9人が見事に自分がかぶっている帽子の色を的中させることができれば全員解放するという条件を出されました。もちろん1番後ろの人は前に並んでいる9人の帽子の色は見えていますし、9番目の人も前に並ぶ8人の帽子の色は見えています。そこで5分だけその10人の囚人に作戦会議をすることが許されました。ただし作戦会議時において囚人は後ろを振り向いたり、後ろの人がそれぞれの帽子の色を教えることや白と黒の人数を教えてならないという厳しいルールが設定されました。その囚人達は白か黒の帽子をかぶっているということは知らされていましたが、人数までは知らされていません。さて、この条件下で9人の囚人が確実に自分の帽子の色を的中させて全員を解放させるにはどのようにすればいいのでしょうか?


※10人の囚人理論の答えは独自で調べてみてください


堀坂向汰「四人の囚人理論なら知ってるけど10人か・・・」

牧瀬悠人「僕も四人の囚人理論は知っていましたが10人となると別の理論になりそうですね」

楠円香「うちはさすがに解けませんでしたので答えを教えてもらいました」

牧瀬悠人「円香ちゃんが解けなかった問題をわざわざ僕たちに出題したのはどうして?」

楠円香「うちは影郎アカウントの推理担当者と思われる人にこの問題を解いてほしいと思いましてん」


生徒会室は少し沈黙が続いたが2分程すると堀坂向汰が「なるほどね。こうすれば全員が釈放できるよ」と言った。楠円香は「めっちゃ早いですねえ。堀坂先輩でしたか?こっそりとうちの耳元でその答えを言ってくれませんか?」と言うと堀坂向汰は立ち上がって歩いていき楠円香の耳元で囁いた。


楠円香「うわー!うちが何日考えてもわからへんかった問題をわずか2分足らずで解けたなんて驚かされましたわ!!」

牧瀬悠人「僕もわかりました。この方法であれば9人は答えることができます!」

楠円香「じゃあ悠君もうちの耳元で答えを言ってもらえる?」


牧瀬悠人も歩いていき楠円香の耳元で囁いた。


楠円香「あらら、悠君まであっという間に解いちゃったんやね」

琴宮梓颯「わたしには全くわからないわ」

如月瑠衣「わたくしにも全然わかりません」

夢前亜里沙「何かヒントはないのですか?」

堀坂向汰「ヒントは人数じゃなく単位で考えることかな」

琴宮梓颯「単位?うーん・・・余計にわからなくなったわ」

夢前亜里沙「あっ!なるほど・・・えっと・・・」

如月瑠衣「わたくしたちは推理担当ではありませんので答えを教えていただいて構いませんか?」

琴宮梓颯「そうよ。答えを教えなさいよ」

堀坂向汰「じゃあ答えを言うけど、夢前さんはそろそろ解けそうな感じだね」

夢前亜里沙「はい。でもややこしくて、計算するので他の方だけに答えを教えてください」

牧瀬悠人「では僕がお2人に耳元で答えを教えますね」


牧瀬悠人は琴宮梓颯と如月瑠衣の耳元で答えを囁いた。琴宮梓颯は「こんなややこしい計算、よくすぐにわかったわね」と言い、如月瑠衣は「なるほど、その発想は思いつきませんでしたが、たしかにそれだと皆さん助かりますね」と言った。それからしばらくすると夢前亜里沙が「やっと計算ができて納得できました!」とスッキリした顔で言った。


楠円香「影郎アカウントや裏クラブのみなさんの実力はわかりました。とんでもないです推理力です。うちもメンバーに入れてもらって協力しますよ」

堀坂向汰「それはありがたいことだよ!梓颯、早速だけど裏クラブのメンバー紹介からルールまで説明してあげてほしい」

琴宮梓颯「わかったけど、楠さん、裏クラブの活動は大変だけど覚悟はできてる?」

楠円香「大丈夫ですが、うちも女優のはしくれですので全ての協力はできへんかもしれませんけどそれでよろしければ!」


琴宮梓颯は裏クラブのメンバー紹介と絶対に秘密にしておかなければならないルールなど詳しく説明した。如月瑠衣は裏クラブの人間関係などの口外は一切しないように強く言った。そして楠円香は「悠君と如月先輩の関係についてはわかりましたが、まさか琴宮先輩の彼氏さんが堀坂先輩だってことには驚きましたわ!でもなんとなくわかる気がしましたよ」と言った。


堀坂向汰「ところで円香ちゃん、影郎への依頼についてはもういいの?」

琴宮梓颯「向汰君、いきなり円香ちゃんって・・・」

堀坂向汰「いや、そう呼んであげたほうがいいと思っただけだよ」

楠円香「うちのことはそう呼んでくれたほうが親近感があっていいので気にせんでください。依頼の件ですが、それがそう簡単でもないんですよ」

牧瀬悠人「簡単でもないってどうして?先生か芸能事務所の人に相談すればなんとかしてもらえるんじゃないの?」

夢前亜里沙「牧瀬君、そんなことをしたら大事になってしまって、楠さんが学園に居づらくなるんじゃないかな?」

楠円香「夢前さんでしたか!?さすが心理アナリストだけあります。その通りです!!」

琴宮梓颯「いわれてみるとそうよね。ここは穏便に解決させないといけないのかもしれないわ」


少し生徒会室内がシーンとしていたが、堀坂向汰はソファーに座りながらペットボトルのコーラーをゴクゴクと飲んでいた。その姿をみた如月瑠衣が「堀坂先輩、何か良い知恵でもありますの?」と尋ねてみると堀坂向汰は「いや、知恵なんてないよ」といいながらテーブルの上のペットボトルを置いた。


堀坂向汰「梓颯、2年5組の赤倉幸彦の情報は洗い出してもらえた?」

琴宮梓颯「ざっくりだけど洗い出しておいたわ。家族は4人構成で共働きの両親と男子生徒から結構人気のある中学3年生の妹がいるみたい。中学3年生の頃は広報活動部にいたみたいだけど半年で退部しているのと、根暗で友達があまりいないってことくらいしかわからなかったわ」

堀坂向汰「なるほど。それじゃあ、如月さん、ちょっと牧瀬君を貸してほしいんだけどいい?」

如月瑠衣「貸してほしい??意味がよくわかりませんが、何をするのでしょうか?」

堀坂向汰「円香ちゃん、赤倉幸彦にデートしてもいいって言ってやればいいよ!」

楠円香「はっ!?そんなことしてスクープされたらもっと大変なことになります!!!」

堀坂向汰「ただ、デートする代わりの条件を出すんだよ」

楠円香「条件ってなんですか?」

堀坂向汰「赤倉幸彦の妹と牧瀬君も一緒にデートさせることだよ。つまりダブルデートだね」

牧瀬悠人「なるほど!それであれば穏便にこの問題は解決できますね!!」


楠円香を含めた裏クラブのメンバーのほとんどが堀坂向汰の考えていることがよく理解できなかったが、何かに気づいた夢前亜里沙は「ふふふ・・・さすがは堀坂先輩ですね」と言った。


楠円香「あの・・・よくわからんのやけど、赤倉先輩の妹を誘うって条件に何の意味があるんですか?」

琴宮梓颯「わたしもよくわからないんだけど、どういうことなの?」

夢前亜里沙「こんなダブルデートをしても得する人なんていないってことですよね?」

堀坂向汰「そう。そもそも、無理を言ってるのは赤倉幸彦なわけで、そんな条件を出されても文句はいえない」

牧瀬悠人「それに赤倉幸彦の妹さんがダブルデートの条件をのむはずがありませんからね」

如月瑠衣「しかし、もしその妹さんが条件をのんでしまいましたらどうしますの?」

堀坂向汰「まあ、その可能性を考えて牧瀬君にお願いしたんだけど、その妹とは不仲そうだから無理だろうけどね」

琴宮梓颯「なるほど!そういうことなのね!!」

牧瀬悠人「円香ちゃん、赤倉幸彦にこの条件ならデートしてもいいって返事できそう?」

楠円香「そのままの言葉で返事はできるけど本当に大丈夫なんか心配やわ!」

堀坂向汰「もしもの場合は裏クラブがいるんだから安心して返事すればいいよ」

楠円香「わかりました。その条件で返事しますわ」


楠円香はまだ不安そうな表情をしていたが、堀坂向汰は裏クラブのメンバーの紹介と今後の活動方法について説明しはじめた。そして、楠円香のメールアドレスを聞いて、秘密厳守の誓約書にサインさせた。


楠円香「推理担当に探偵調査担当、天才ハッカーと心理アナリスト、それと学園全体の情報収集役がいるなんて、まるでどこかの秘密組織みたいやわ!」

夢前亜里沙「楠さん、わたしも最初そう思ったけど、裏クラブは影の組織なの。よろしくお願いしますね」


これで新入生から情報収集役となるメンバーの加入が決定した。しかもそれは周りの生徒から注目されている女優である。女優といっても、まだ仕事が多いわけではないので、しばらく裏クラブのメンバーとして活動できそうなのだ。



■ 楠円香と不安と行動


裏クラブの組織を説明された楠円香はまだ不安そうな表情をしていた。その不安と疑いの眼差しは如月瑠衣に向けられている。視線を感じた如月瑠衣は楠円香に向かって「わたくしに何か?」と小声で呟いた。


楠円香「如月先輩は天才ハッカーということですが、悠君とお付き合いできるほどなんですか?」

牧瀬悠人「円香ちゃん、如月さんの技術は本物なんだけど、それは目に見えない」

如月瑠衣「わたくし、自分が天才ハッカーだとは思っておりませんの。ただ、普通の人ができないようなことはできるとしかお答えできません!」

楠円香「それやったら、今所属してるうちの事務所から葛城まどかに関することだけでええですので調べることって可能ですか?」

如月瑠衣「わたくしは意味のないハッキングは行いません!」

楠円香「やっぱり芸能事務所の情報とかを調べるのって難しいってことですよね?」


そこに「ふふふふふ」と笑いながら堀坂向汰が話に入ってきた。


堀坂向汰「如月さん、意味があるなしは関係なく、ハッキングしてやればいいよ。それで円香ちゃんが納得するんだし、そんなことは朝飯前でしょ?」

如月瑠衣「それはそうなのですが、なるべく犯罪行為は避けたいところです」

楠円香「もしハッキングが公になっても、うちが責任をとって事務所と話しますのでやってみてください」

堀坂向汰「ほら、円香ちゃんもそう言ってるからパパっとハッキングしてやってあげて!」

如月瑠衣「わかりました。それではその事務所関係者のメールアドレスだけ教えていただけます?」

楠円香「マネージャーのメールアドレスであればこちらです」


そういって、楠円香はスマホ画面からマネージャーのメールアドレスだけ如月瑠衣に見せた。


如月瑠衣「ありがとうございます。それでは10分程お待ちください」


そこから如月瑠衣はノートパソコンを開いて、まず自宅のPCにアクセスした。そして、見せてもらったメールアドレスのドメインのネットワーク経路を調べていった。如月瑠衣のノートパソコンはコマンドラインの画面(文字入力だけの画面)が多数広がっていた。ノートパソコンをパチパチと叩く姿を見ていた楠円香は「指の動きが見えない!まるでピアニストみたいやわ」と呟いた。しばらくすると「やっと見つけたわ!」と如月瑠衣が呟いた。


~それから5分後~


如月瑠衣は「足跡が残らないようにログは全て消去おきますが、取得した情報の印刷はやめておきますわね」と言った。それを聞いた楠円香は「もう終わりましたん?うちの事務所にあるパソコンってそんなにセキュリティが甘かったってことなんですか?」と言った。


如月瑠衣「一般的なセキュリティに何の問題もありませんでしたわ。ただし、今回はクラッキングさせていただきました」

楠円香「それで肝心の得た情報をここで公表してもらえます?」

堀坂向汰「如月さん、余計な情報までも得た感じだろうけど、ここは穏便にね!」

如月瑠衣「わかりました。まず、葛城まどかさんのマネージャーは26歳、名前はイニシャルでKMという未婚の女性です。楠さんは今年の3月末まではこのマネージャーさんではなかったようですね。RTという25歳の大阪に済む女性から引継ぎされています。あと、楠さんは大阪から引越しして、こちらに来てからは仕事の量をかなり減らしているようですわ。スケジュール表ではほぼ土日だけ仕事を入れるようにしたのではないでしょうか。それに歌唱力はあまりないようですね。事務所側は歌手デビューも考えていたのでしょうか・・・あとは」

楠円香「もうわかりましたから、それ以上は恥ずかしいんで言わんでください!」

如月瑠衣「せっかくですので、楠さんの個人的に使用されているリムチャットに登録しておきましたわ」

楠円香「そんなことまで・・・すごい、すごいです!こんなことするのは朝飯前ってことは、もっとすごいことができるんですか・・・」

牧瀬悠人「円香ちゃん、如月さんが本気を出したら恐ろしいことはわかったよね?」

楠円香「それはもう・・・さすが悠君の彼女さんだけあるわ!」

堀坂向汰「とりあえず、円香ちゃんはまず赤倉幸彦に返事を出しておくこと。何かあった時はメールでいいので裏クラブに報告くれればいいよ」

楠円香「はいっ!わかりました!!」

堀坂向汰「それと夢前さんは同じクラスみたいなので、赤倉幸彦をよく観察しておいて!おそらく変な行動を起こすはずだから、尾行してその様子を伺ってほしい」

夢前亜里沙「わかりました!」


次の日の朝、楠円香は2年5組の教室まで行って、赤倉幸彦に「いきなり二人でデートはできませんけど、2年1組の牧瀬悠人先輩を連れて行きますので、赤倉先輩は妹さんを連れてきてもらって4人でダブルーデートをするんであれば構いませんよ」と言った。それを聞いた赤倉幸彦は「楠さんは牧瀬と知り合いなの?それにどうして僕の妹なの?」と質問をしてみた。楠円香は「牧瀬先輩には以前、ストーカー被害に合った時に相談したことがあって知り合いにりました。今回、その牧瀬先輩にダブルデートをお願いしたんですが、それやったら赤倉先輩の妹さんとデートしたいって言ってるんです」と答えた。赤倉幸彦は「うーん・・・妹は難しいんだけど、でもこの際なんとかしてみるよ!」と言った。その後チャイムが鳴ったので楠円香は教室に戻っていった。


その後の赤倉幸彦はずっと難しい表情をしており、同じクラスである夢前亜里沙はその様子をずっと観察していた。四限目のチャイムが鳴ってお昼休みに入ると、いつもは一人でお弁当を食べるはずの赤倉幸彦は教室を出て行った。夢前亜里沙も教室を出て後をつけていった。赤倉幸彦は2年の教室から階段を降りていくと、あまり人がいない中庭の片隅に立ってポケットの中からスマホを取り出して誰かに電話をかけていた。夢前亜里沙はそっと近寄って耳を澄まして話を聞いていた。電話越しの相手の声は聴こえなかったものの、赤倉幸彦の話し声はわずかに聴こえていた。


赤倉幸彦「なあ、いいだろ!お前の友達でいいから一日だけデートに付き合ってもらうだけでいいんだ」

・・・・・

赤倉幸彦「僕の妹ってことで、もちろんバイト代の報酬も渡すよ」

・・・・・

赤倉幸彦「本当はお前が来てくれると有難いんだけど・・・」

・・・・・

赤倉幸彦「やっぱり駄目だよな・・・だからこうしてお願いしているんだよ。頼むよ!」


この会話から夢前亜里沙は赤倉幸彦が何を考えているのか察しがついたので、直ちに堀坂向汰と牧瀬悠人に連絡をして生徒会室へ向かった。

生徒会室の前でドアをノックすると如月瑠衣が「はい」と大きな声で言って、夢前亜里沙はドアを開いた。琴宮梓颯が「あら、夢前さん、こんな時間にめずらしいわね」と言った。夢前亜里沙は「既に堀坂先輩と牧瀬君にも連絡していますが緊急事態です!」と言って入ってきた。琴宮梓颯は「それなら、その二人が来るまでまっていましょう。夢前さん、一旦ソファーに座って落ち着いて!」と言った。夢前亜里沙がソファーに座ると如月瑠衣がお茶を持ってきて「どうぞ」と言った。そこでまた生徒会室のドアからノックする音が聴こえた。如月瑠衣が「はい」というと堀坂向汰と牧瀬悠人の二人が入ってきて「たまたまそこでバッタリあったんだよ」といって生徒会室に入ると生徒会室のドアの鍵をかけた。夢前亜里沙は「赤倉君はとんでもないことを考えています。ダブルーデートは中止するべきです!」と大きな声で発言した。


堀坂向汰「どうせ妹の代役を探してたんでしょ?」

夢前亜里沙「どうしてわかったんですか?」

牧瀬悠人「まあ、赤倉幸彦はもうそうするしかありませんからね」

夢前亜里沙「どういうことでしょうか?」

堀坂向汰「おそらく妹には付き合っている人がいて、ダブルデートなんて条件は絶対にのめないから、妹の代役を用意するしかないってことだよ」

牧瀬悠人「夢前さん、ここまでは予定通りだよ。あとは赤倉幸彦を陥れて問題解決なんだよ」

夢前亜里沙「お二人がそこまで考えていたとは驚きました!この先、どのようにして陥れるのですか?」

堀坂向汰「梓颯、赤倉幸彦の妹の写真を手に入れることはできる?」

琴宮梓颯「赤倉美咲という名前はわかっているけど、写真までは難しいわね」

堀坂向汰「だったら牧瀬君にはお手数なんだけど、赤倉幸彦の自宅に行って、赤倉美咲の写真を撮ってきてほしい」

牧瀬悠人「わかりました。如月さんにメガネ型カメラを借りてうまく撮影してきます」

堀坂向汰「夢前さんはそのまま赤倉幸彦の観察を続けていてほしい。お昼休みは人が多いので俺はさっさと出ていくけど、各自よろしくね!」


その日の放課後、裏クラブのメンバーは生徒会室に集まっていた。ただし、牧瀬悠人だけは早退して赤倉幸彦の自宅へ向かっていた。一体、堀坂向汰が何を考えているのか他のメンバー達にはわからなかった。



■ 美女の利用と生徒会からの警告


メガネ型のカメラをつけて服装も変装していた牧瀬悠人は赤倉幸彦の自宅付近から死角になっているところで待機していた。ここで赤倉幸彦とバッタリ会ってしまうようなことになってしまうと変装がバレてしまう。しかし、学園からこの自宅までは電車で40分はかかるし、赤倉幸彦はまだ授業中のはず。どう考えても中学生のほうが帰宅するのが早いのだ。そんな状態で張り込みをして20分ほどすると、紺のブレザーに水色のリボン、グレーのチェック柄のスカートを履いた中学生らしき女の子が歩いてきた。牧瀬悠人はすかさずその女の子の後をつけると、赤倉という表札の家に入って行こうとした。そこで牧瀬悠人は「あの!」と少し大きな声で呼び止めた。その女の子が振り向くとサラサラの黒髪ロングヘアーに目はアーモンド形の二重瞼に鼻筋は通っていて小口、身長は160センチメートルくらいの細身の美女であった。たしかに兄である赤倉幸彦とはあまり似ていないが、異性からの人気は高そうだ。


赤倉美咲「あの何かうちにご用でしょうか?」

牧瀬悠人「実は私、バイトでこの付近の中学生のアンケート調査を行っているのですが、時間は取らせませんのでご協力いただけないでしょうか?」

赤倉美咲「何のアンケートでしょう?」

牧瀬悠人「その前にあなたは中学生でしょうか?」

赤倉美咲「はい。中学三年生です」

牧瀬悠人「なるほど。受験のシーズンなので大変そうですね。既に志望校はお決まりでしょうか?」

赤倉美咲「それはまだハッキリとは決まっておりません」

牧瀬悠人「そうですか。アンケートは以上となります」

赤倉美咲「それだけでいいのでしょうか?」

牧瀬悠人「はい。ご協力ありがとうございました」


そうして、牧瀬悠人は去っていった。もちろん、アンケート中にメガネ型のカメラで赤倉美咲の顔写真を数枚撮影しておいたのはいうまでもない。その後、借りていたメガネ型のカメラを如月瑠衣に返却しておいた。


次の日の放課後、生徒会室に裏クラブのメンバーが集まっていた。今回はもちろん新しいメンバーとなった楠円香も参加していた。如月瑠衣はフォト用紙に赤倉美咲の写真を数枚印刷して持ってきていた。


如月瑠衣「楠さん、この写真を使っていただくといいわ」

楠円香「使ってと言われましても、この写真の美女は誰なんですか?」

牧瀬悠人「円香ちゃん、その美女が赤倉幸彦の妹なんだよ」

楠円香「ホンマですか!?赤倉先輩とぜーんぜん似てませんね!!!」

堀坂向汰「それで円香ちゃん、ダブルデートの話をした後に赤倉幸彦から何か言われた?」

楠円香「妹を連れていくから今週末にダブルデートしようって言われました。うち、どないに答えてええかわかりませんでしたので、予定を調べておきますとだけ言っておきました」

堀坂向汰「じゃあ、明日の朝一番に赤倉幸彦のところへ行って、その写真を見せればいいよ」

楠円香「赤倉先輩の妹の写真を見せてどうにかなるんですか?」

堀坂向汰「おそらく驚くと思うから、円香ちゃんは『明日、間違いなくこの人を連れてきてほしい』と言うだけでいいよ。それでダブルデートは出来なくなるはず」

楠円香「よく意味がわからんのですが、それでええんですね?」

牧瀬悠人「円香ちゃん、赤倉幸彦は自分の妹ではなく、その代理を連れてくる予定なんだ。ところがその写真を見せることで、そんなことはできなくなるってことだよ」

楠円香「妹の代理!?それってルール違反とちゃいますの?」

堀坂向汰「そう、ルール違反だよ。だからそんなことはできないようにすれば、もう諦めざるを得なくなるってことだね」

楠円香「なるほど!!」

琴宮梓颯「でも、そんな簡単に諦めるかしら?行動がエスカレートしなければいいんだけど・・・」

堀坂向汰「そこで生徒会の登場だよ。円香ちゃんが生徒会に相談していたことにして、明日の昼間、赤倉幸彦を生徒会室に呼び出して梓颯と如月さんが警告すればいい」

琴宮梓颯「生徒会として警告ね。明日までにどういう警告をするのか考えておくわ」

堀坂向汰「もちろん、今回のダブルデートの件に関して牧瀬君と円香ちゃんも悪者になってもらって警告されたことにしておけばスムーズに事は進むと思う」

琴宮梓颯「そういうことね・・・わかったわ」

如月瑠衣「では、明日のお昼休みになったら、わたくしが校内放送で呼び出しておきますわね」


そうして放課後の打ち合わせが終わったのだが、楠円香はそれでも不安だった。それは、まだ入学したばかりで裏クラブの活動もよくわかっていない状況だったからである。


次の日の朝、楠円香は登校してすぐに2年5組の教室まで行くと赤倉幸彦に「明日のダブルデートですが、必ず妹さんを連れてくると約束してもらえますか?」と言った。赤倉幸彦は「うん。約束は必ず守るから!」と強い口調で答えた。すると楠円香はポケットの中からスマホを取り出して「赤倉先輩の妹さんはこの人で間違ないですよね?」と写真を差し出した。それを見た赤倉幸彦は驚愕して「ど、どうして、そんな写真を・・・」と言いながら動揺した。楠円香はさらに追い込みをかけるように「この人を必ず連れてくるんですよね?」と疑い眼差しをしながら聞いた。赤倉幸彦は冷や汗を出しながらしばらく沈黙していると「えっと、あの・・・僕にはもう一人妹がいて・・・」と咄嗟に発言した。すると楠円香は「うち、平気で嘘つく人は大嫌いなんです!!さようなら!!!」と大きな声で発言して教室から出て行った。赤倉幸彦は絶望感に満ちていたのだが、こうなれば無理矢理にでも付き合ってやると決心した。


昼休みになると「2年5組の赤倉幸彦さん、至急、生徒会室まで来て下さい。繰り返します・・・」と校内放送が流れた。その放送を聞いた赤倉幸彦は焦って教室を飛び出すと急いで生徒会室まで走っていった。


一方、生徒会室には琴宮梓颯と如月瑠衣が昼食をとりながら話をしていた。


如月瑠衣「琴宮会長、どのような警告をするのか、ちゃんと考えていますの?」

琴宮梓颯「もちろん考えているわよ。意外と簡単だったわ」

如月瑠衣「それならいいのですが、今回の件に関しまして校則違反ではございませんのでご注意ください」

琴宮梓颯「それはわかっているわ。大丈夫よ」


そんな話をしていると生徒会室のドアからノックする音が聴こえた。如月瑠衣が「はい、どうぞ」と言うと、生徒会室のドアが開いて赤倉幸彦が「失礼します」と言って入ってきた。如月瑠衣は席を立って生徒会室のドアを閉めると琴宮梓颯が「あなたが赤倉幸彦君ね。こちらまで来てもらえる?」と言った。赤倉幸彦は生徒会長席の前まで歩いていって立ち止まった。


琴宮梓颯「赤倉幸彦君、わたしのことは知っているかしら?」

赤倉幸彦「も、もちろんです!近くで見ると本当に学園のアイドルと呼ばれている理由がわかります!!」

琴宮梓颯「こっちの如月さんのことはご存じ?」

赤倉幸彦「生徒会副会長の如月さんですよね。もちろん知っています」

琴宮梓颯「じゃあ楠円香さんのことは知ってる?」

赤倉幸彦「は、はい・・・知っていますが・・・」

琴宮梓颯「だったら話が早いわ」


琴宮梓颯は楠円香から相談を受けていたことや、ダブルーデートを企ていたことなどの情報が生徒会の耳にも入っていることを赤倉幸彦に伝えた。それを聞いた赤倉幸彦は驚いていた。


赤倉幸彦「お話はわかりましたが、僕は何も悪いことをしているつもりはありませんでした」

如月瑠衣「赤倉君がそうだったとしても、楠さんは迷惑していたということにはなりますのよ」

琴宮梓颯「生徒会としては楠さんが無事平穏な学園生活をおくれるようにサポートすることにしたのよ。芸能人ということもあって、今後、あなたのようにしつこく言い寄る男子生徒が現れる可能性があるから・・・それに今回関わった楠さんと牧瀬悠人にも警告しておいたわ」

赤倉幸彦「しかし、僕は実際には何もしていません!」

如月瑠衣「実際にしていましたら、この程度では済まない問題になっていましたわ。一歩間違えればストーカー行為ですのよ」

琴宮梓颯「今でもストーカー行為だったと立証されるかもしれないわね。そうなれば停学処分、最悪の場合は退学処分になるのよ」

赤倉幸彦「そ、そんな・・・」

如月瑠衣「しかも自分の妹さんまで巻き込もうとしていたこともわかってますのよ。生徒会の情報網を甘く見ないでいただきます?」

琴宮梓颯「とにかく、二度と楠さんに手を出さないことね。それを約束してもらえれば今回のことは大目に見ることにするわ」

赤倉幸彦「わかりました。もう二度と楠さんに言い寄ったりしないとお約束します」


その後、如月瑠衣が作成した誓約書にサインをさせて無事に今回の問題を解決させることができた。今回の問題はそこまで難しい推理を必要としなかったが、楠円香という新しいメンバーが裏クラブに加入したことが大きな出来事である。


次の週の月曜日の放課後、裏クラブのメンバーが全員生徒会室に集まっていた。


楠円香「ところで琴宮先輩は相当な美人で可愛いと思うんですが、スカウトされたことはありませんの?」

琴宮梓颯「あるわよ。モデルやタレントにならないかって・・・でも全てお断りしたわ。芸能界に興味はないからね」

楠円香「それってなんかもったいない気がしますわ」

牧瀬悠人「円香ちゃん、琴宮先輩は芸能界に向かないと思う。これから見ていけばわかってくるよ」

楠円香「それに琴宮先輩だけやなくて、如月先輩は美少女って感じがしますし、夢前先輩もキュートで可愛らしいですが、裏クラブの女子は堀坂先輩の好身で選んでるんですか?」

堀坂向汰「そんな人聞きの悪いことを・・・俺が選んだのは夢前さんと円香ちゃんだけだよ」


そこに本を必死に読んでいた夢前亜里沙が「えっ!?わたしに何か?」と言った。


楠円香「夢前先輩はキュートで可愛らしいって話をしてたんです」

夢前亜里沙「わたし、そんなことを言われたことありませんよ」

楠円香「なんか夢中になって難しいそうな本を読んでるんですね」

夢前亜里沙「これは先日堀坂先輩におススメされた行動療法の本ですが、そんなに難しくないよ」

堀坂向汰「夢前さん、行動療法は使い方によって悪用できるから注意してね」

夢前亜里沙「そうですね、条件付けなんか犯罪にも使えますからね」

如月瑠衣「条件付けってなんですの?」

夢前亜里沙「たとえば、レモンをそのままかじって食べた想像してみてください。考えただけで口の中が酸っぱくなって唾液が出ませんか?」

楠円香「たしかに酸っぱいことを思い出して唾液が出てきますわ」

琴宮梓颯「夢前さん、変なことイメージさせないでよ。わたしまで唾液が出てきたわ」

如月瑠衣「わたくし、レモンなんてかじったことありませんのでよくわかりません」

夢前亜里沙「つまり、レモンは酸っぱいものだと学習しているから、実際に口にしなくても唾液が分泌されるわけです。これがレスポンデント条件付けといいます」

堀坂向汰「夢前さん、お見事!よく勉強しているよ。ちなみに俺は夢前さんって可愛いと思ってるよ」

夢前亜里沙「堀坂先輩、琴宮先輩の前でそういう発言は控えたほうがいいかと・・・」

琴宮梓颯「大丈夫よ。わたしも夢前さんは可愛いと思うわ」

夢前亜里沙「お二人ともありがとうございます!」

堀坂向汰「とにかく円香ちゃん、これから一年よろしくお願いするよ。ときどき如月さんとのコントもお楽しみに!」

如月瑠衣「わたくしを玩具にして楽しむのは辞めていただきます?」

楠円香「よーわかりませんが、活動はきっちりしますし、コントもあるなんて楽しみにしてますわ!」


こうして新入生の情報収集役として芸能人である楠円香が裏クラブのメンバーに加入した。これから影郎アカウントにどのようなメッセージが送られてくるのか今のメンバーには知る由もなかった。



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