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明智学園裏クラブ  作者: 涼
13/15

3月のお茶会

3月の中旬、卒業式が終わって学園では何事もなく影郎アカウントの依頼はなく平穏な日々が続いていた。裏クラブのメンバーである白石由希は卒業してしまったが、卒業後も何かあればOBとして裏クラブの活動に協力するとのことであった。生徒会書記担当も如月瑠衣がなんとか1年6組の羽島美佳にお願いして、”正式な書記担当が決まるまでなら”という条件で仮担当が決まった。とにかく4月に入学してくる新しい生徒の中に期待できそうな人がいればということで、裏クラブのメンバー達は生徒会室に集まっていた。特に依頼もなかったが、一度は依頼抜きで裏クラブのメンバーでお茶会でもしながら話をして親睦を深めようと琴宮梓颯が提案して呼び出した。その日の放課後に生徒会室に集まったのは琴宮梓颯と如月瑠衣、牧瀬悠人、夢前亜里沙の4人であった。堀坂向汰は前回起こった事件に関して宮下苗子と話をしてから生徒会室に向かうということで遅れるとのことだった。


琴宮梓颯「向汰君が来るまで時間がありそうだから先にはじめましょうか」

如月瑠衣「はい!では、みなさんには紅茶を入れますわ。少し高級な紅茶で頂き物です」


如月瑠衣はそういうと袋の中からティーバッグを取り出して、4人分のカップを用意すると電気ポットからお湯を注いで全員に配っていった。みんなその紅茶を一口飲むと「美味しい」と呟いていた。


琴宮梓颯「さて、これまでの裏クラブの活動について何か意見があれば話してもらえる?」

夢前亜里沙「わたしはまだ1度しか活動していないので特に意見はありません」

牧瀬悠人「僕も堀坂先輩の推理を見習っているだけなのでこれといったことはありませんね」

琴宮梓颯「如月さんは何かある?」

如月瑠衣「そうですね。意見ではありませんが、堀坂先輩が何を考えていらっしゃるのかわからないことがあります」

琴宮梓颯「向汰君の考えてること?」

如月瑠衣「ええ。堀坂先輩はわたくしのことをどのように思っているのかわかりませんの」

琴宮梓颯「如月さんがそう思うのはどういうところ?」

如月瑠衣「いろいろとありますが、先日の援助交際問題で活動していた時のお話からいたします」

琴宮梓颯「興味深いわね。何があったの?」


先日の援助交際問題の活動とは、木瀬玖瑠美という1年生の女子生徒が援助交際をしていた時のことである。如月瑠衣は変装してラブホテルのロビーへ行った時に堀坂向汰が発言したことを話した。


如月瑠衣『お待たせしました』

堀坂向汰『うわぁ!如月さんとは気づかなかったよ』

如月瑠衣『堀坂先輩も髪型を少し変えていらっしゃったので最初は気づきませんでした』

堀坂向汰『じゃあ少し部屋に入ってみる?如月さんの社会見学にもなるだろうしね』

如月瑠衣『わたくし、このようないかがわしい場所での社会見学なんて興味ありませんわ』

堀坂向汰『大丈夫だよ。部屋に入ったら如月さんを襲うだけだからすぐに終わるよ』

如月瑠衣『そのようなことをしましたら琴宮会長に報告するだけですわ!』

堀坂向汰『あははははは、如月さんには本当に冗談が通じないないんだね』

如月瑠衣『笑いごとではありません!それに外で牧瀬君を待たせていますので、さっさと行動を開始しましょう』


如月瑠衣がその話をすると牧瀬悠人は「ぷっぷぷ・・・」と笑いをこらえていた。夢前亜里沙も少し笑いをこらえながら「如月さん、それは災難なことだったね」と言った。そして琴宮梓颯も笑みを浮かべながら「そんな話をしていたんだ・・・フフフ」と言った。


如月瑠衣「みなさん笑いごとではありません!あのようないかがわしい場所でそんな発言をするなんて不謹慎ですわ!!」

琴宮梓颯「フフッ・・・ごめんなさいね。でも如月さんはよほど向汰君に気に入られているのね」

如月瑠衣「それはどういうことですの?」

牧瀬悠人「如月さんは純粋すぎるってことってことなんだよ」

夢前亜里沙「堀坂先輩は如月さんのそんな純粋なところを突いて冗談を言ってるだけだと思う」

琴宮梓颯「まあ、そこが如月さんの良い部分とも言えるわね」

如月瑠衣「それだけではありませんの!わたくしが堀坂先輩に調査を依頼した体操服盗難事件の時もそうでした」

琴宮梓颯「その盗難事件ってたしか柴崎和真君が同じクラスの葉月穂香の体操服を盗んでロッカーに入れていた事件のことね?」

如月瑠衣「そうです。その調査で堀坂先輩とわたくしが1年2組の教室で現場検証して生徒会室に戻ろうとした時のことですわ」


堀坂向汰『薄暗くて誰もいない学校の廊下に男女二人で歩いてるって怪しい雰囲気がしない?』

如月瑠衣『わたくしは何も感じませんが、怪しい雰囲気とはどういうことですの?』

堀坂向汰『そのままの意味だよ。如月さん、とりあえずその辺の空き教室に入ってイケナイことをしてから生徒会室に戻るのはどう?』

如月瑠衣『イケナイことって何ですの?』

堀坂向汰『二人だけの想い出作りをするだけだよ。抱き合ってキスするだけだから時間はかからないよ』

如月瑠衣『わたくし、そのようないかがわしいこと、しかも学園内ではできませんわ!』

堀坂向汰『だったら誰もいないしせっかくだから手でも繋ぎながら戻ろうか!?』

如月瑠衣『そのようなことをしましたら、琴宮会長に報告するまでですわ!』

堀坂向汰『あははははは・・・如月さんは全くガードが硬いねえ~』


その話を聞いた夢前亜里沙は「ふふっ・・・如月さん、堀坂先輩が本気だったら『イケナイこと』という表現は使わないと思う」と言った。牧瀬悠人は笑いをこらえるのに必死で声も出さずに腹部を手で押さえていた。琴宮梓颯は「夢前さんの言う通りよ。如月さんは向汰君の冗談を真面目に答えすぎなのよ」と言った。


如月瑠衣「わたくし、冗談を言われてもあまりよくわかりませんの」

琴宮梓颯「向汰君はそれをわかっていて、真面目に答える如月さんの反応を面白がってるのよ」

夢前亜里沙「そうですね。でも如月さんのそういう性格がわたしは好きです」

如月瑠衣「それだとまるでわたくしが玩具にされているみたいじゃありませんか!」

琴宮梓颯「悪くいえばそうかもしれないけど、向汰君は如月さんが可愛くてたまらないのよ」

如月瑠衣「わたくしのことが可愛くてたまらないとはどういうことですの?」

夢前亜里沙「堀坂先輩にかなり信用されて気に入られているってことなの」

如月瑠衣「それは嬉しいことでもありますが・・・そういえば愛人にならないかと言われたことがありましたわ。推理対決した時のことです」

琴宮梓颯「向汰君と牧瀬君が如月さんをかけた推理対決のことね」

如月瑠衣「琴宮会長が掃除当番で遅くなった時のことです。先にわたくしと堀坂先輩が生徒会室でみなさんが集まるのを待っていましたの」


堀坂向汰『しかしなあ、如月さんをかけた推理対決になってるけど俺が勝っても何のメリットもないんだよね』

如月瑠衣『たしかにそれはいえますわね』

堀坂向汰『じゃあ俺が勝ったら、向汰と瑠衣のあぶない関係を密かにはじめるのはどう?』

如月瑠衣『あぶない関係とはどのようなことですの?』

堀坂向汰『如月さんには俺の愛人になってもらって秘密の関係になるってことだよ』

如月瑠衣『愛人ってなにをおっしゃっていますの!わたくしが浮気の相手になるなんて絶対にお断りです!!』

堀坂向汰『まあ、そう興奮しないで!2人だけのひ・み・つの関係って何だかドキドキしない?向汰と瑠衣の朝帰りとかドラマになりそうだしね』

如月瑠衣『わたくしは全くドキドキしません。それに朝帰りって、またいかがわしいことを考えていらっしゃるのですね』

堀坂向汰『いかがわしいなんてとんでもない。ただ、密かに2人でイチャイチャしながらあんなことやこんなことをするだけだから心配しないでいいよ。梓颯もびっくり、向汰と瑠衣は意外な関係!?みたいな。ドラマのタイトルになりそうだよ』

如月瑠衣『いかがわしいことこの上ありませんわ!わたくし、そのようなことは絶対にお断りです!!』

堀坂向汰『あははははは・・・そこまで本気に考えなくていいんだよ。まあ、それが如月さんなんだけどね』


その話を聞いた他のメンバー達は大笑いだして生徒会室は爆笑の渦に包まれた。さすがの琴宮梓颯も腹を押さえながら俯きながら笑っていた。


如月瑠衣「琴宮会長まで!そこまでお笑いになるほど面白い話とは思いません」

琴宮梓颯「ご、ごめんなさいね。でも、向汰と瑠衣のあぶない関係、向汰と瑠衣の朝帰りね・・・ふふふふふっ、そこまでいくともうコントね」

如月瑠衣「牧瀬君もいい加減に笑うのを辞めてください!彼女がからかわれているのに何がおかしいの?」

牧瀬悠人「ごめんごめん。でも堀坂先輩の表現力と如月さんの扱いは素晴らしいよ。僕にはとても真似できない・・・駄目だ、思い出すとまた・・・ぷっぷっぷ」

如月瑠衣「夢前さんも涙を浮かべながら笑うほどおかしなことではないでしょ!」

夢前亜里沙「ごめんなさい。でも、堀坂先輩のタイトルの付け方があまりにも上手くて、最後の『梓颯もびっくり、向汰と瑠衣は意外な関係!?』は見事すぎて耐えられなくなったの・・・ふふ、ふふふ」

如月瑠衣「他人事のように・・・もし夢前さんがそのようなことを言われたらどう答えるの?」

夢前亜里沙「わたしだったら・・・面白そうでわくわくするって答えるかな」

琴宮梓颯「そうね。夢前さんの答え方が正解ね。向汰君は奥手だからそう答えられると逆に困惑すると思うわ」

如月瑠衣「それでも困惑しないで『密かに2人でイチャイチャしながらあんなことやこんなことをするだけ』なんて言われたら夢前さんはどう答えるの?」

夢前亜里沙「わたしが相手でよろしければって答えるよ」

牧瀬悠人「たしかに夢前さんの答え方をすれば堀坂先輩は完全に困惑してしまうでしょうね」

如月瑠衣「わたくし、とてもそのように答えられませんわ」

琴宮梓颯「まあ、如月さんにはできない答え方よね」

如月瑠衣「答えるで思い出しましたが、昨年の冬休み前、堀坂先輩の口車に乗ってしまいそうになったことがありましたわ」

琴宮梓颯「ちょっと如月さんまだあるの?わたし、これ以上笑うとお腹がちぎれそうなんだけど話してもらえる?」

如月瑠衣「あれは2学期最後の生徒会会議を終えて帰りが遅くなった時のことです」

琴宮梓颯「あの日はたしかわたしと書記の倉田君がまだ残って仕事をしてた時のことよね?」

如月瑠衣「はい。わたくしがお先に下校させていただいたのですが、堀坂先輩とバッタリ会ったのです」

琴宮梓颯「そういえばあの日、向汰君もストーカー事件が解決して今後の方針を宮下さんと話すって言ってたわね」

如月瑠衣「学園の生徒もいませんでしたしすっかり暗くなっていましたので、駅まで一緒に歩いていました」


堀坂向汰『そういえば如月さんにクリスマスプレゼントを買おうと思っているんだよ』

如月瑠衣『クリスマスプレゼントですか?それだとわたくしも何か用意しないといけませんわね』

堀坂向汰『プレゼントはメイド服なんだけどね。如月さんにはそれを着てもらって写真を撮影させてくれれば、それが俺へのプレゼントになるから用意しなくてもいいよ』

如月瑠衣『またメイド服のお話ですか!?わたくし、とてもじゃありませんがあのような恰好はできません』

堀坂向汰『でも、如月さんはすごく似合うと思うよ。写真撮らせてくれたら、写真立てに入れて毎朝その写真を見ながら手を叩いて拝むことにするよ』

如月瑠衣『手を叩いて拝むって・・・わたくし神様ではありませんわ!』

堀坂向汰『そっか。だったらその写真の前で修行する。もちろん毎日1円ずつお布施もするよ』

如月瑠衣『修行とかお布施って・・・わたくしは怪しい宗教の教祖でもありません!』

堀坂向汰『如月教も駄目か。だったら、その写真をバッジにするのはどうかな?萌えキャラ風にデザインするよ』

如月瑠衣『まあ、そのくらいでしたら・・・って、わたくしがメイド服を着る前提になっているではありませんか!』

堀坂向汰『あははは。バレたか!でも如月さんのメイド服姿はみんなを幸せにするものになると思うよ』

如月瑠衣『どうしてわたくしのメイド服姿がみなさんの幸せになるのでしょう?』

堀坂向汰『だってみんな喜ぶだろうし癒されるからね。それにみんなからお供え物もしてもらえるよ』

如月瑠衣『お供え物って・・・あのですね、わたくしは女神様でもありませんわ!一体どのような目でわたくしを見ていらっしゃるのですか?』

堀坂向汰『だから女神様だよ。みんなのためにも恥じらいを捨ててメイド服姿になってみれば全て解決!』

如月瑠衣『みなさんのためにですか・・・って、また引っかかるところでした。わたくしは絶対にメイド服姿になんてなりません!』

堀坂向汰『あははははは・・・如月さんって意外としっかりしてるんだね』


その話を聞いた他のメンバー達はまた大笑いだして生徒会室は爆笑の渦に包まれた。琴宮梓颯は「ふふふふふっ・・・笑ったら失礼かもだけど、今度は如月さんの反応が面白いの」と笑いながら言った。それを聞いた如月瑠衣は「わたくし、何かおかしなこと言ってますか?」と不思議そうな表情をして言った。


牧瀬悠人「如月さんはおかしなことを言ってないけど『わたくし神様ではありませんわ!』って当たり前のことをわざわざ否定してるから面白いんだよ」

琴宮梓颯「ふふふ、ご、ごめんなさい。それと『わたくしは怪しい宗教の教祖でもありません!』って真面目に否定してるのも滑稽なの」

如月瑠衣「そのように言われるとたしかに滑稽かもしれませんわね。夢前さん、いつまで涙を浮かべながら笑っているの!」

夢前亜里沙「ぷぷぷぷぷっ・・・ご、ごめんなさい。『わたくしは女神様でもありませんわ!』も笑ってしまったけど、その後の『一体どのような目でわたくしを見ていらっしゃるのですか?』という質問を真面目にしているのが可愛いのだけどおかしくて・・・どのような目もこのような目もないと思うの」

琴宮梓颯「夢前さん、たしかにそれも言えるわね。だめ・・・また笑ってしまいそう」

如月瑠衣「たしかにそのように捉えると滑稽な質問をしていますね。わたくし思わず引っかかりそうになりました」

夢前亜里沙「堀坂先輩の発言は簡単な心理トリックです。最初の二つを相手に否定させておいて、最後の三つ目で相手に『そのくらいならいいか』と錯覚させてしまうのです。その次からは否定させたあとに再び相手を錯覚させる方法だと思います」

牧瀬悠人「如月さんは錯覚させられてもすぐに気づいたので、しっかりはしているんだよ」

琴宮梓颯「それにしても向汰君が『毎朝その写真を見ながら手を叩いて拝むことにするよ』と言った時点でふざけてるって思わなかったの?」

如月瑠衣「少しは思いましたが、堀坂先輩は何を考えていらっしゃるのかわからないところがありますので、真面目に受け答えてしまいますの」

夢前亜里沙「そういうところが如月さんらしいというか、愛されキャラなんだと思います」

琴宮梓颯「そうね。如月さんは愛されキャラだとわたしも思うわ。みんなに愛されているのよ」

如月瑠衣「そのようにおっしゃっていただくと嬉しく思います」

琴宮梓颯「それにしても向汰君遅いわね」


みんなの笑いがおさまると生徒会室はしばらく沈黙状態が続いた。


如月瑠衣「そういえば風紀委員に入った木瀬玖瑠美さんですが、真面目に活動しているようですわ」

琴宮梓颯「それはよかった。真面目に活動していれば援助交際で汚れた心が綺麗になってくると思うわ」

如月瑠衣「あと書記担当を引き受けていただいた羽島美佳さんですが、ずっと続けてもいいとおっしゃってくださいました」

琴宮梓颯「それは有難いわね。新しく入学してくる1年生には少し難しい仕事だと思うから是非続けていただきたいわ」

如月瑠衣「では、正式な書記担当の手続きをしておきます」

琴宮梓颯「向汰君、何してるのかしら。少し遅すぎるわ」


そんな話をしていると生徒会室のドアからノックする音が聞こえた。如月瑠衣は「はい、どうぞ」というと堀坂向汰が「みんなお待たせ!」と言って入ってきた。その後、生徒会室のドアの鍵を閉めると如月瑠衣はおどおどしながら電気ポットのあるほうへ歩いていった。


琴宮梓颯「向汰君、遅かったわね」

堀坂向汰「宮下さんがあまりにも神経質だから話が長くなってしまったんだよ。それよりみんな何か楽しい話をしていたみたいだね」

琴宮梓颯「どうして楽しい話をしていたって思うの?」

堀坂向汰「梓颯は嬉しそうな表情をしてるし、牧瀬君のほうれい線がやたらに目立つし、夢前さんの目は笑った後の涙がまだ残ってるからだよ」

牧瀬悠人「さすがは堀坂先輩、鋭い洞察力です」

琴宮梓颯「向汰君の大好きな如月さんからいろいろ話してもらったのよ」

堀坂向汰「ふーん、如月さんからねえ。そういえば如月さんだけ難しい表情をしているよね」

琴宮梓颯「向汰君が陰で如月さんに何を言ってるのかもう調査済みよ」


そこに如月瑠衣がやってきてカップに入れた紅茶を堀坂向汰の座っているソファー前のテーブルに置くと「どうぞ」と言った。


牧瀬悠人「如月さんは何も悪いことしていないんだからおどおどすることないよ」

琴宮梓颯「そうよ。如月さんは堂々としていていいの」

如月瑠衣「それもそうですね。わたくし、何か悪いことをしたのではないかと錯覚していました」

琴宮梓颯「今回のことに関して、向汰君にはみんなの前で如月さんに何をしたか白状してもらうことにするわ」

堀坂向汰「まあ梓颯がそう言うなら仕方ない。全て自供するよ」

如月瑠衣「あの、堀坂先輩は何を自供されますの?」


如月瑠衣がそう言った瞬間、堀坂向汰はニヤリとして口を開いた。


堀坂向汰「如月さん、こうなったらみんなに打ち明けるしかないよ」

如月瑠衣「打ち明けるって何をですの?」

堀坂向汰「誰もが驚愕、瑠衣のサラダ記念日!?向汰と過ごした一夜!ってことだよ」

如月瑠衣「何をおっしゃってるのかよくわかりません。わたくし、堀坂先輩と一夜を過ごしたりしてませんわ!」


それを聞いた牧瀬悠人は「ぷっ」と思わず笑ってしまった。夢前亜里沙も笑いをこらえながら「生ライブですね」と呟いた。琴宮梓颯も少し笑みを浮かべながら話を聴いていた。


堀坂向汰「あの時に2人で飲んだ夜明けの紅茶は忘れらない想い出だよ。タイトルにすれば『一夜限りの関係!?瑠衣が注いだ夜明けの紅茶』なんてどう?」

如月瑠衣「あのですね、どのような妄想をされてもそれは堀坂先輩の自由ですが、このような場所でそのような話をされますと、他のみなさんに誤解されますので辞めていただけますか?」

堀坂向汰「妄想はいいんだね。だったら俺は如月さんを崇拝しながらあらゆる妄想をさせてもらうよ」

如月瑠衣「崇拝って・・・わたくしは神聖の樹木ではありません!それにどのような妄想をされるのでしょう?」

堀坂向汰「それはあんなことやこんなことかな。それを部屋の中で1人になって妄想するってことだよ」

如月瑠衣「カマボコのような目をしながらそのようなことを言わないでいただけます?」

堀坂向汰「ぷっ。カマボコの目ってよくわからないんだけど、俺はそういう表情してたの?」

如月瑠衣「とてもいかがわしい表情をしてましたわ!」


そこに琴宮梓颯が「向汰君、わ、わかったから、もうやめて!それ以上話を続けられると本当にお腹がちぎれてしまうわ。ぷぷぷぷぷっふふははは」と赤ら顔をしながら言った。牧瀬悠人は「琴宮先輩の言う通りです。もう辞めてください。さすがの僕もお腹がちぎれてしまいます」と言った。そして夢前亜里沙は「カ、カマボコのような目って・・・ぷぷぷぷぷっふぁああははは」と大笑いしてしまった。


堀坂向汰「如月さん、主犯格とはいえ俺ももう限界というか・・・ふふぁはははははは」

如月瑠衣「わたくしまた何かおかしなことでもいいましたか?」

琴宮梓颯「ご、ごめんなさいね。でも、ふっふふ・・・あ、あのね如月さん、あなたはそのままでいいと思うわ」

牧瀬悠人「あの、えっと、僕も如月さんはこのままでいてほしいです。そういうところに惹かれましたので・・・」

夢前亜里沙「わたしも、ご、ごめんなさい。生のライブは強烈で、ぷぷぷ・・・それにしても如月さんの話を聴いていて”いかがわしい”という言葉の使い方が違うように感じました。他の表現をしたほうがいいように思います」

如月瑠衣「他の表現ですか?例えば”いやらしい”とか”エロい”とかそういうことですか?」

琴宮梓颯「それは極端すぎだから、エッチとかスケベとかそのくらいでいいのよ」

如月瑠衣「なるほど、しかし口癖になってしまっていますので難しいかもしれません」

堀坂向汰「口癖になってるなら無理に変えなくてもいいと思うよ。そのままのほうが如月さんらしくていい」


しばらくして、みんなの笑いがおさまると琴宮梓颯が数冊の旅行パンフレットをカバンの中から取り出した。


琴宮梓颯「みんな聞いてほしいんだけど、白石先輩から卒業旅行は裏クラブのメンバーで行きたいという連絡があったの」

堀坂向汰「卒業旅行か。上杉先輩と一緒に行けばいいのに、どうして裏クラブのメンバーなんだろう」

琴宮梓颯「上杉先輩とはまだはじまったばかりでしょ。同級生達とは都合が合わなかったみたいなのよ」

堀坂向汰「なるほどね。それで日程と旅行先は決まってるの?」

琴宮梓颯「日程は春休みに入ってすぐがいいらしいんだけど、旅行先はどこかの温泉を裏クラブのメンバーで決めてほしいとのことよ」

堀坂向汰「それで旅行パンフレットを持ってきたわけか。温泉はいいけど電車で行くのが面倒なんだよね」

琴宮梓颯「全員参加ならレンタカーで行けば安いし問題ないでしょ?」

堀坂向汰「白石先輩の運転ってちょっと怖いんだよね。まだ慣れてないというか遠くを見てないからね」

琴宮梓颯「あれからかなり運転してたみたいだから大丈夫だと思うわ。それより、みんな春休みの予定ってある?」

如月瑠衣「わたくしは特にありませんわ」

牧瀬悠人「僕もこれといって予定はありません」

夢前亜里沙「わたしも予定はありませんがご一緒していいのでしょうか?」

琴宮梓颯「夢前さん、もちろんよ。ところでずっと気になっていたんだけど、推薦入学なのに退部しても平気だったの?」

夢前亜里沙「スポーツ推薦ではなかったので大丈夫です。成績も平均点を少し上回っていましたからペナルティーもありません」

琴宮梓颯「それはよかった。とにかく全員参加ということであとは旅行先ね。向汰君、去年の夏休みに連れて行ってくれたのは日本海よね?」

堀坂向汰「そうだけど、あの付近の温泉だったら一つしかないよ」

琴宮梓颯「このパンフレットの温泉よね?」

堀坂向汰「そうだよ。でもそこの温泉の周辺には観光スポットなんてないよ?」

琴宮梓颯「綺麗な海が見れるだけでもいいと思うの。みんなここを第一希望にしてもいいかしら?」


琴宮梓颯がそう聞くと他のメンバー達に異論はなかった。その夜、琴宮梓颯は白石由希に連絡して旅行先が決まった。

こうして3月のお茶会は堀坂向汰と如月瑠衣のコントがメインとなって終わった。

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