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明智学園裏クラブ  作者: 涼
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裏クラブ結成

■ 新しい生徒会副会長


昨年度、高校1年生で生徒会長に立候補した琴宮梓颯は見事に当選した。学園内のアイドル的存在だったこともあり、多くの男子生徒が琴宮梓颯に投票したと思われる。生徒会長になった琴宮梓颯は生徒会の仕事をこなしながら、ある計画を立てていた。2年生に進級した琴宮梓颯はすぐに生徒会室の模様替えをした。そして、同じ2年生で生徒会副会長をしていた川瀬美歩が転校してしまったので、新しい生徒会副会長を募集していた。ところが、なかなか名乗りを上げる生徒がいなかった。そんなある日、突然、生徒会室からノックの音が聞こえた。琴宮梓颯は「はい。どうぞ」と言うと、緑色のリボンをつけた女子生徒が「失礼します」と言って1人で入ってきた。この明智学園は1年生が緑色、2年生が水色、3年生が赤色のリボンをつけるのが規則なのですぐに1年生だとわかった。


琴宮梓颯「あなた1年生よね。生徒会室に何か用でもあるの?」

如月瑠衣「わたくし、1年2組の如月瑠衣と申します。生徒会副会長の募集を見てお伺いさせていただきました。1年生だといけませんか?」

琴宮梓颯「学年は問わないわ。如月さんだっけ?生徒会の仕事は思っている以上に大変だけど大丈夫なの?」

如月瑠衣「わたくし、他に部活動などしておりませんので大丈夫だと思います」

琴宮梓颯「そうなの。でも、どうして生徒会副会長になりたいと思ったの?」

如月瑠衣「この学園の風紀を正して、誰から見られても恥ずかしくない立派な学園にしたいと思っています」

琴宮梓颯「ずいぶんと大きな目標なのね。あと如月さんの得意なことを教えてもらえる?」

如月瑠衣「わたくしの得意なことですか?そうですね、パソコンに詳しいことくらいですわ」

琴宮梓颯「パソコンに詳しいのね・・・わかったわ。では如月さんに生徒会副会長をお願いするわね」

如月瑠衣「ありがとうございます」

琴宮梓颯「早速、生徒会副会長の申請書を先生に提出するので、この書類の必要事項に記入してもらえる?」

如月瑠衣「わかりました」


これで生徒会副会長は1年生の如月瑠衣に決まった。ところで、アイドル的存在である琴宮梓颯は身長は160cm程度で、少しくせ毛のあるセミロングのボブヘアー、くりっとした目に低めの鼻で卵型の顔立ちである。美人というよりキュートな感じで、男子生徒からよく告白されている2年1組の女子生徒。そして、生徒会副会長になった如月瑠衣は身長は155cm超えくらいでサラサラの黒髪ロングヘアー、おでこが広くキリッとした鋭い目に鼻筋が通っている逆三角型の顔立ちをしている。


如月瑠衣が書類を書き終えると琴宮梓颯が書類を受け取った。


琴宮梓颯「正式には明日から如月さんが副生徒会長となります」

如月瑠衣「1つご質問してもよろしいでしょうか?今日は書記の方もいないようですが、生徒会会議はいつ行われてるのでしょう?」

琴宮梓颯「生徒会会議は必要な時にだけ行います。書記の方は会議の時にだけ来ていただきます」

如月瑠衣「ずいぶんとのんびりしてますのね?この学園の生徒をみてますと、かなり風紀を乱してるように思えますの。議論するべきことはたくさんあるのではありませんか?」

琴宮梓颯「如月さん、議論するべきことはたくさんあると思うわ。でもね、わたしが生徒会長である以上、わたしのやり方で活動したいと思ってるの」

如月瑠衣「琴宮会長のやり方ですか。全くわかりませんわ」

琴宮梓颯「如月さん、明日の放課後、またこの生徒会室に来てもらうことはできる?」

如月瑠衣「できますわ。明日の放課後にまたお邪魔させていただきますわね」

琴宮梓颯「明日は重要な会議をするつもりだから必ず1人できてね」

如月瑠衣「重要な会議ですか?わかりました。では、わたくし、これで失礼させていただきます」


如月瑠衣はなにやら煮え切らないような表情をしながら生徒会室を出ていった。琴宮梓颯はニヤリとして「あの1年生はかなり使えそうね」と呟いた。



■ オタクの学生生活


次の日の朝、いつものように登校してきた堀坂向汰は2年3組の教室へ入った。誰とも挨拶をしないまま窓側の後ろから3番目の席に座った。堀坂向汰は美少女アニメのキーホルダーをつけたカバンから教科書やノートを取り出して机の中に入れた。ところで、堀坂向汰は普段から根暗でアニメや漫画好きのオタク系男子。身長170cm程度で少し長めで耳が隠れるほどのサラサラストレートヘアに、少し垂れ気味の目でしょうゆ顔をしている。女子生徒達からは陰でキモオタと呼ばれていて、ときどき目が合っても完全に避けられている。しかし、堀坂向汰はそんなことを全く気にしていなかった。


しばらくすると1人の男子生徒がやってきて「よう堀坂!まだ新しい同人誌は手に入れてねえのか?」と話しかけてきた。それは西村真一という唯一、堀坂向汰と趣味が合って話しをするクラスメイトだ。


堀坂向汰「先に欲しかったDVDを買ったから、まだ手に入れてないよ」

西村真一「またアニメのDVDかよ。お前さ、アニメや同人誌ばっかだけど、3次元の女子に興味はねえのかよ」

堀坂向汰「そういう西村は3次元の女子に興味があるの?」

西村真一「俺はアニメや同人誌も好きだけど、やっぱ3次元の女子に憧れるんだよな。堀坂は彼女が欲しいとか思わないのか?」

堀坂向汰「僕は3次元の女子に興味はないから、彼女が欲しいなんて思わないよ」

西村真一「じゃあ聞くけどさ、たとえば生徒会長の琴宮梓颯を見てめちゃくちゃ可愛いって思ったりしねえのかよ?」

堀坂向汰「可愛いとは思うけど、でもそれだけだよ」

西村真一「マジかよ。俺、もし琴宮みたいな超可愛い子が彼女になってくれたら、いつ死んでもいいくらいに思うぜ」


西村真一の声が少し大きかったようで、クラスの女子生徒達がヒソヒソと話しはじめた。「キモオタが琴宮さんのこと可愛いだって。やっぱキモイね」、「キモオタと琴宮さんってありえなさすぎて超うける」など、かすかな女子生徒達の声が聞こえてきた。


堀坂向汰「西村、ちょっと声が大きいよ」

西村真一「悪ぃ悪ぃ。でもお前、ずっと2次元で生きていくつもりかよ?」

堀坂向汰「先のことなんてまだ考えてないよ」

西村真一「でも来年は受験なんだから、お前もちょっとは先のこと考えてたほうがいいぜ」


そんな話をしていると、担任の先生が教室に入ってきて「はーい、みなさん席についてください」と大きな声で言った。クラスの全員が席につくと「では授業の前に出席をとります」と言った。このクラスの担任は水瀬里穂という30代前の女性教師だ。少し茶髪のサラサラショートヘアー、スラッとした体型で少し大きな目に鼻筋が通っていて丸顔といった感じだ。少し厳しそうなキャリアウーマン風に見えるが、生徒にはとても優しく、ときどき子供ぽい仕草をする。未だに独身なのは頭のキレそうな女性という印象を持たれてしまうからなのかもしれない。


お昼休みになって、堀坂向汰はカバンを持ってうつむきながら廊下を歩いていた。そして前を向かずフラフラ歩いていると女子生徒とぶつかった。堀坂向汰は後ろに倒れて、カバンの中から2冊の漫画の本が床に落ちた。それと同時に「痛っ」という女子生徒が声が聞こえた。堀坂向汰はすぐに立ち上がって「大丈夫ですか?ごめんなさい」と言った。その女子生徒も起き上がって「ちょっと!気をつけてくださいよ」と言った。その女子生徒は緑色のリボンをしているのですぐに1年生だとわかった。堀坂向汰は「本当にごめんなさい。どこかケガしてない?」と優しく声をかけた。するとその女子生徒は「そのネクタイ、2年生の方ですね。わたくし、あなたがフラフラとこちらへ歩いてきましたので避けましたのよ。それなのにあなたはわたくしの避けた方向に来てぶつかってきたのです。少し酷いじゃありませんか?」と言った。堀坂向汰は「少しぼーっとしてたみたいでごめんなさい」と頭をさげた。そして床に落ちた2冊の漫画を拾おうとした。それを見た1年生の女子生徒は「それは漫画の本じゃないですか!そんな本を学校に持ってきてはいけません。それに、そのカバンにつけているふざけたキーホルダーはなんですの?とても2年生とは思えませんわ」とキツい口調で言った。堀坂向汰は小さな声で「それだけ元気だと大丈夫みたいだね。本当にごめんなさい」と言ってその場を去った。1年生の女子生徒は「ちょっと待ちなさいよ」と言ったが、無視してその場を離れた。


堀坂向汰はいつものように中庭の端っこにあるベンチに座って昼食を食べていた。さっきぶつかった1年生の女子生徒からかなり偉そうにされていたがあまり気にしていなかった。そのうち1年生からも偉そうにされたりキモオタと呼ばれるかもしれないが、堀坂向汰にはどうでもいいことなのだ。


昼食を終えてしばらくぼーっとベンチに座っていると、堀坂向汰のスマートフォンにメールが届いた。そのメールには『今日の放課後忘れずに』というだけの内容であった。このメールは差出人もわからず、ただランダムな文字列で作られたフリーのメールアドレスであった。しかし、堀坂向汰にはこのメールの差出人やメッセージの意味がわかっていた。そして返信することなく、そのメールを完全に削除した。


午後の授業が終わり、部活の準備をする生徒を見ながら、数人の女子生徒が帰宅した後、堀坂向汰はカバンを持ってのろのろと歩きながら教室を出た。そして、他の生徒に気づかれないように向かっていった先は生徒会室だった。



■ 秘密の会議


生徒会室では琴宮梓颯が大きな椅子に座りながら如月瑠衣と話をしていた。


如月瑠衣「琴宮会長、やはりこの学園の風紀は乱れてますわ。今日の昼休み、2年生の男子生徒がわたくしにぶつかってきましたのよ」

琴宮梓颯「それは災難だったわね。大丈夫だったの?」

如月瑠衣「わたくしは大丈夫でした。しかし、問題はそんなことではありません。その男子生徒はこともあろうに学校に漫画の本を持ってきてましたの」

琴宮梓颯「あははは・・・まあ、漫画の本くらい見逃してあげましょう。これから、わたし達がすることはもっと重要なことだから」

如月瑠衣「琴宮会長は何をされるおつもりですか?」

琴宮梓颯「簡単に言えば裏クラブを作るのよ。学園生活における、いじめ問題、根拠のない噂話、恋愛や人間関係の問題、そんな生徒達の問題や悩み事を解決したり、隠された真実を解き明かすの」

如月瑠衣「それは生徒会ではなく先生達のする仕事じゃありませんの?」

琴宮梓颯「たしかに生徒会の仕事ではないわ。でもね、こんな時代だからこそ、そういう問題は徹底調査をして真相を解き明かさないと解決しないと思うの。いくら先生達でもそこまでしないでしょ?」

如月瑠衣「おっしゃってる意味はよくわかりましたが、わたくし達だけでそんな問題が解決できると思えませんわ」

琴宮梓颯「そこで1人、頭のキレる推理力抜群の生徒を仲間に入れることにしたの。今日、その生徒を呼んでるからもうすぐ来ると思うわ」

如月瑠衣「それはかなり成績優秀な生徒でしょうか?」

琴宮梓颯「勉強のほうはそこまで優秀と言えないけど、彼の知能指数はかなりのものよ」


その時、生徒会室のドアをノックする音が聞こえた。琴宮梓颯は「はい。どうぞ」と言うとドアが開いた。そして、生徒会室に入ってきた男子生徒を見た瞬間、如月瑠衣は「ああーっ!」と声を出した。まさにその男子生徒とは昼休みにぶつかってきた堀坂向汰であった。


如月瑠衣「あなた、今日、わたくしにぶつかってきた2年生じゃありませんか!」

琴宮梓颯「あら、如月さんとぶつかった生徒って向汰君のことだったのね。如月さん、とにかくドアの鍵を閉めてもらえる?」


如月瑠衣は「わかりました」と言って生徒会室のドアの鍵を閉めにいった。それと同時に堀坂向汰は中央右側のソファーに座った。


如月瑠衣「琴宮会長、まさか、この2年生がさっきおっしゃっていた頭のキレる推理力抜群の生徒でしょうか?」

琴宮梓颯「そうよ。如月さん、改めて紹介するわね。2年生の堀坂向汰君よ」

如月瑠衣「こんなオタク系にしか見えない男子生徒が推理力抜群だなんて、とても信じられませんわ」

琴宮梓颯「如月さん、人を見かけで判断してはいけないわ。ここだけの話だけど、これでもわたしの彼氏なのよ」

如月瑠衣「なんですって!それこそ驚きましたわ!琴宮会長はこの学園で最も男子生徒から人気のあるアイドル的存在・・・こんな男子生徒が彼氏だなんて理解できません」

琴宮梓颯「向汰君は表面上、ただの根暗なオタク系男子に見られてるけど、本性は頭のキレる推理力抜群の秀才男子なの」


ソファーに座っている堀坂向汰が鋭い目になった。


堀坂向汰「そろそろ俺も話に入ってもいいかな?梓颯、この1年生が新しい生徒会副会長ってわけね?」

琴宮梓颯「そうよ。向汰君にも紹介しておくわね。今日から生徒会副会長になった1年生の如月瑠衣さんよ」

堀坂向汰「なるほど。パソコンに詳しい人を副会長にしたわけか。たしかに裏クラブで役に立ちそうだね」

如月瑠衣「堀坂先輩、わたくしがパソコンに詳しいことを既に知っていらっしゃったのですか?」

堀坂向汰「いや、今日、ここで如月さんと会うまで知らなかったよ」

如月瑠衣「そんなこと信じられません。あらかじめ琴宮会長から、わたくしがパソコンに詳しいと聞いていたんじゃありませんの?」

堀坂向汰「疑い深い人だねえ。まず如月さんの爪は他の女子生徒に比べてかなり短い。爪を短くするのは弦楽器の演奏をしてるかパソコンのキーボードをよく打つ人。爪が長いと邪魔だからね。それと、かすかに眼鏡の跡があるけど、それは必要な時にだけかけるブルーライトカット眼鏡の跡。そして梓颯が副会長にした理由を考えればパソコンに詳しい人だと簡単に推理できる」


堀坂向汰の推理を聞いた如月瑠衣は驚愕して言葉がでなかった。


琴宮梓颯「向汰君、あまり如月さんをいじめないであげてよ」

堀坂向汰「いじめたつもりはないよ。俺は簡単な推理を説明しただけだよ」

如月瑠衣「わたくし、驚かされて言葉がでませんでしたわ。昼休みにぶつかった人とはまるで別人ではありませんか」

琴宮梓颯「如月さん、さっきも言ったけど、ここでの話したことや向汰君のことは誰にも口外しないでよ。秘密厳守でお願いね」

如月瑠衣「はい。わかっております」

琴宮梓颯「では、これから裏クラブの活動内容を説明していくわ。先ほど如月さんにも話したけど、この学園における生徒達のあらゆる問題を解決させていくのが裏クラブの活動よ。メンバーはわたし達3人のみ。もちろん誰にも気づかれず陰で活動するわけなので、裏クラブのことは全て他言無用でお願いするわ」

堀坂向汰「梓颯の考えてることはわかったけど、どうやって生徒達の問題を見つけていくの?裏クラブは秘密組織だし、オープンに悩み相談を受け付けるなんてできないよね?」

琴宮梓颯「そこで如月さんの登場よ。まず学園のSNSで裏アカウントを1つ作ってもらうの。そして、その裏アカウントに悩み相談をダイレクトメッセージで送信すれば、陰の組織がその問題を解決してくれるという噂を流すの」

如月瑠衣「裏アカウントを1つ作るのは簡単ですが、わたくしが噂を流すのですか?」

琴宮梓颯「学園のSNSは生徒会が管理してるから、生徒達のアカウント情報が見れるのよ。如月さんがフリーのメールアドレスで各クラス10人くらいずつに悩み相談受付のダイレクトメールを送れば噂はたちまち広まると思うのよ」

堀坂向汰「なるほどね。ほとんどの生徒達はイタズラだと思って無視するだろうけど、深刻な悩みを持っている生徒は神頼みのつもりでSNSの裏アカウントにダイレクトメッセージを送ってくるというわけだね?」

琴宮梓颯「さすが向汰君、ご名答よ。くだらない相談内容なら相手にしなくていいの」

如月瑠衣「あの、今更ですが、わたくしは学園内の風紀を正していくために生徒会副会長になりましたの。裏クラブの活動はわたくしの目的とはかなり違うように思います」

堀坂向汰「やれやれ、如月さんはまだわかってないみたいだねえ。服装の乱れや少しくらいの校則違反なんてちっぽけなものなんだよ。それより生徒が大きな問題を起こしたら、この学園の風紀は一気に乱れてしまう。警察沙汰なんてことになったら、もうこの学園は終わりだよ。そうならないように活動するのが裏クラブなんだよ」

如月瑠衣「なるほど。それに比べてわたくしの考えていたことなんて些細なことでしたのね」

琴宮梓颯「如月さん、やっと理解してくれたみたいね。これで裏クラブのメンバーが揃ったわ」


琴宮梓颯は椅子から立ち上がってニッコリ微笑んだ。



■ 裏クラブ結成


琴宮梓颯は生徒会室にある大きな棚からシルバーのノートパソコンとUSBメモリを取り出してきた。


琴宮梓颯「如月さん、早速だけど学園のSNSで裏アカウントを1つ作ってほしいんだけど、フリーのメールアドレスでは登録できないようになってるから何か考えてほしいの」

如月瑠衣「それなら簡単ですわ。SNSのアカウント情報を管理しているサーバーに直接アクセスして登録してしまえばいいのです」

琴宮梓颯「SNSのサーバーって職員室の奥に設置してるみたいだけど、直接アクセスなんてできるの?」

如月瑠衣「学園のSNSを生徒会が管理してるということは、サーバーに直接アクセスする情報がこのパソコンの中にあるはずです。それを見つければいいだけのことですわ」

琴宮梓颯「では如月さんにお願いするわ。ログイン情報はパソコンの裏側に貼り付けてあるわ」


如月瑠衣は右側の小さなデスクに座ってノートパソコンの電源を入れた。パソコンが起動して裏側にあるログイン情報を入力すると、デスクトップ画面になった。そして生徒会のノートパソコンにしか入っていない管理者用SNSというアプリケーションの情報を確認して、プログラムが書かれていると思われるファイルを開いた。5分ほどパソコンの中を見ていた如月瑠衣が「設定ファイルはこれね」と呟いた。


如月瑠衣「琴宮会長、わかりました。しかし、こんな脆弱なパスワードを設定してるなんて、先生達にも呆れますわ」

琴宮梓颯「ではアカウントを作ってください。ハンドルネームは影郎にしましょう。他の登録情報は適当でいいわ」

如月瑠衣「登録するメールアドレスがあまりにも適当ですと先生達に気づかれるかもしれませんので、本物らしいメールアドレスにしておきますわね」


如月瑠衣はSNSのサーバーにアクセスして、直接アカウントを登録した。そして影郎というハンドルネームのアカウントが1つ追加された。影郎のパスワードはかなり複雑なものにして、忘れないようにメモ用紙に記載しておいた。


琴宮梓颯「アカウント作成、お疲れ様。あと如月さんにはもう1つ仕事をしてもらわないといけないの」

如月瑠衣「それは噂を流すことですね?」

琴宮梓颯「そう。このUSBメモリの中に、今年度の学園のSNSアカウント情報が入ってるの。本当は持ち出し禁止だけど、今回だけは如月さんに持って帰ってもらって、噂を流してほしいのよ」

如月瑠衣「わかりました。今晩にでもやっておきますわ」

琴宮梓颯「大変な作業になるかもしれないけど、よろしくお願いするわ」


そこで堀坂向汰が話に入ってきた。


堀坂向汰「あと如月さんにお願いがあるんだけど、学園内では俺に話しかけないでほしいんだよ。この3人の関係や裏クラブのことは絶対秘密だからね」

如月瑠衣「それもわかりましたわ。でも、昼休みのようなことにならないよう、堀坂先輩も気をつけてください」

堀坂向汰「ああ、それは気をつけるようにするよ」

琴宮梓颯「では今日は解散にしましょう。向汰君、誰にも見つからないように注意して帰ってね」

堀坂向汰「わかった」


堀坂向汰はカバンを持ってのそのそと歩いて生徒会室の鍵をあけた。そして廊下をみて誰もいないことを確認すると生徒会室から出て、うつむきながら廊下を歩いていった。


その夜、如月瑠衣は持ち帰ったUSBメモリの中身を見ながら、自宅のパソコンから『影郎というアカウントにダイレクトメッセージで悩み事を相談すると解決してもらえるみたい』という内容のメールを各クラスの男女合わせて10人ずつくらいにメールを送っていた。これで明日、このメールのことで学園内の生徒達が騒ぎ出すだろう。しかし、チェーンメールでもないので問題にはならない。


そして次の日、予想通り、学園内の生徒達の間で送られてきたメールのことが話題になっていた。生徒達の声を聞いてみると「なんか嘘ぽいメールだけど気持ち悪いね」、「ただのイタズラメールだよ」、「これってただの噂じゃない」などまるで信用していないようだった。


その日の放課後、生徒会室で琴宮梓颯と如月瑠衣が話をしていた。


琴宮梓颯「如月さん、昨日はお疲れ様。わたしの計画通りになったわ。本当にありがとう」

如月瑠衣「今日1日で生徒達に噂が広まりましたわ。今回のメールは海外経由で送信しましたから、送信者を調べてもわからないはずです」

琴宮梓颯「さすがね。これで裏クラブが結成したわ。あとは相談者を待つのみ」

如月瑠衣「そうですね」


学園内で噂がながれてから10日が経った朝、はじめて影郎アカウントにダイレクトメッセージが届いた。琴宮梓颯は「いよいよ裏クラブの活動開始よ」と言った。

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