第三話 もう一匹の仲間
あの後お父さんに本気でお願いしたら、(今の可愛さを最大限出して)12の鐘から16の鐘までならいいと言ってくれた。だから今から行ってくる予定だ。
というわけで、行ってきま――
「ちゃんと帰ってくるのよ。後、スライムちゃん宜しくね。うちの子が危ないことしてたら止めてね」
「ねえユキ、お母さん何言ってるの?」
「私のことを頼んだよって言ってる」
「あいよ! お母さん、任せな!」
「じゃあ行ってきまーす!」
■■■
えー私、ユキ、いま前と一緒の草原にいます。ここにいるのが超怯えている一匹のスライム。私の仲間、マリンです。なぜ怯えているかって? 簡単だ。
目の前にドラゴンがいるんだよ~! だがしかし、これはチャンス! テイムしてやる!
「ドラゴンさーん!こんにちはー!」
「?」
……? 後ろ姿しか見ていなかったから目つきの悪い凶悪そうで強いやつにしか服従しない見ないな感じかと思ったら超プリティーじゃん!
「だれ? ここはぼくのなわばりだぞ! でていくんだ!」
「私は魔物使いのユキです。どうか仲間になってくれませんか?」
「……そういうことか。えっと、確かこうだったはず……」
? なんかぶつぶつ言い始めたぞ? 何だ?
「ぼくをなかまにしたくば、たおしてみせよ!」
なるほど。強いやつにしか服従しないっていうのは合っていたのか。
ただ、今の私とマリンで勝てるか? いや、やってみるしかない! だってドラゴンだもん! 仲間にしたらとっても格好良さそうだもん!
「じゃあ行きますよ! 【水球】!」
バシャ! ……やっぱり食らわないか。弱点属性はなんだ?
「よし! つぎはこっちのばんだ! 気配遮断!」
何処へ行った? 気配遮断と言っていたな。まずい、こっちに気配を探るスキルはないのに!
「ユキ! 大丈夫だよ。流水!」
なるほど! 水を踏んだ音で探るのか! ……ん? 今戦っている子って、ドラゴンだったよね? ドラゴンって……飛べるじゃん!
「マリン! 意味がない、あいつは飛べる。ドラゴンだから」
「そうでもないよ!」
えっ? ほんとだ! あのドラゴン飛んでない! もしかして、子供のドラゴンって飛べないのかな?
「くっ、やるな。だがぼくにはアレがある!」
アレ?アレってなんだ?何が来る?ドラゴンだからやっぱりブレスか。
「【含み針】」
!? 針!? 気配遮断といいまさかアサシンタイプか?含み針とかには毒が塗られていたりするよな? 気をつけなきゃ!
チッ やべ! 当たった! ……何もない?体力も3しか減ってない。いや、私にとっては3でもかなり痛いんだけど……
「どうだ! どくでびりびりになっただろ! ……あれ? なってない? ぬりわすれた? やっちゃった。だからぼくはつめがあまいって言われるんだ」
なんかよくわからないけど相手のミスだったっぽい。ここから畳みかけるぞ!
「マリン! いける? 体当たりお願い!」
「ごめん。こっちには毒塗ってあったぽい。当分動けないや」
マジか! そっちには塗ってあったのか! 一人でドラゴンは無理か? いや、いける。私には必殺技があるんだ。
「降参させていただきます。私には早かったようです」
「なんだ。もうおわり? こうさんしたこのいのちまでうばうこともないか。ばいばい! もっと強くなってからぼくにいどむんだな!」
「残念です。今ならこの麦蜜を献上しようと思ったのですが」
そう! これは前世の知識を総動員した麦バージョン蜂蜜(麦蜜)である! やっぱり甘味は人生を変える。偉い人もそう言っていたはずだ。パンよりケーキを食べようとか。言ってないか。
「・・そのおいしそうなものは何? とってもおいしそう。ちょうだい!」
「ですが仲間になるには倒すしかないんでしょう? 私には倒せませんので助言どうりいったん帰らせていただきます」
「まって! ……うううう! 分かった! 仲間になる!」
おっと! その上目使いは最強だ! ユキの我慢は限界になった!
「では名前を決めていいですか?」
「いい! 早く早く!」
そうだな……見た目的には……黒のドラゴン〇ッズである。
黒、黒? 黒の宝石なんてあったっけ?いや、あったわ。
「じゃあブラキスでどうでしょうか」
ブラックオニキスって長いしね。
「…かっこいいい! それがいい!」
「じゃあよろしくね! ブラキス!」
「私はアクアマリンだよ。マリンって呼んでね。よろしく!」
痺れたまま挨拶って……まあいいか。マリンとも打ち解けてくれそうだな。
「よろしく! まりん!」
こうして、私はもう一匹を仲間にしたのだった。
今思えば、この子がいなきゃ……いや、もうよそう。過ぎたことはしょうがない。
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