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15話 ひつじの撮影会3

「うわー、すっごく柔らかいですね」

「はい、チーズ」

 カシャッ。

「はーい、次の方お願いします」

 最初の方はチヤホヤされて機嫌良くしていたぽむだったが、さすがに数百人以上となると疲れも溜まってきたようだ。

 休憩を挟みながらファンサービスをしていると日も落ちてくる。


 そんなとき、スーツ男に囲まれた少女に順番が回ってきた。

「ぽむ様、はじめましてチャコルル・ロザリーアと言います。今日はあなたのために特別に準備してきたものがあります。ボランチオ、あれをっ!!」

 ボランチオはどこかと通信をとる動作をすると、同タイミングで付き添いで一番端にいたアーロが前に出る。

「ノア、イベントは終わりだ。残念だったな」


 一瞬、全員の視線がアーロに向いたが、すぐに空中に変わる。

 空中を昇っていく一筋の軌跡。

 ヒュルルルルルルルル……バァーン。

 花火が打ち上げられて、ぽむの顔が夜空に浮かぶ。


「メェェェ」

 ぽむは疲れも忘れて、目を輝かせ空を眺める。

「気に入ってもらえて良かったです」

 その様子を見るロジリーアも満足そうにしているし、会場の一人を除く全員が空を見てほっこりとしていた。


「ふ……ふ、ふざけるなよぉ。ボランチオさん、どういうことですか? 爆破は? 誘拐は?」

 唯一気に入らない顔をしていたアーロは怒声をあげる。

「なんのことだ?」

 アーロの急な問いかけに冷静に答えるボランチオ。


 なんのことはない、ただただボランチオが準備していた花火の火薬を見てアーロが勘違いをしていただけだった。

 ロザリーアがぽむを探していたのは単に見て触りたいから探していただけで誘拐なんてするつもりはなかった。

 ロザリーアは父のことが好きで義を重んじるファミリーが好きだ。

 兄のキリロフスの事は気に入らないと思っている。

 キリロフスとロザリーアでは全く方向性が違う。

 それがアーロの勘違いの理由だった。


「だったら一人でもやってやるよ」

 アーロは鎧を装着して剣を構えるが、すぐにチャコルルファミリーのスーツ男たちに囲まれて、銃を突きつけられる。

「こんな場で殺しはさせないでくれや」

 ボランチオは先ほどまでの静かな声色から怒気を纏った声色に変わる。

 その迫力にビビったのかアーロはすんなりと投降して会場を追い出された。


 しかし、事は簡単には収束せず、次の標的はチャコルルファミリーとなり、騎士団が取り囲む。

 元々が裏のマフィアということもあって目をつけられていたし、アーロが一緒にいたのも問題視された。


「よくも、この神聖な場にトラブルを……」

 ハンナは怒りを露わにしている。

「すまなかった。トラブルを持ち込むつもりはなかったんだけど」

 ロザリーアは悲しそうに俯く。

 楽しみにしていたイベントを自分の不手際で汚してしまったと思い込んでいた。


「ハンナ・フォレード、いくらなんでもお嬢にその口の聞き方は看過できねぇ」

 ボランチオがハンナを睨みつける。

 一触即発の空気が会場に流れる。

「待てボランチオ、たしかに今回の不手際はこちらにある」

「えぇ、当然です。お帰りを……」


「メェェェェェ」

 珍しくぽむが大きな声を上げて両者の間に割って入った。

「ぽむ様……」

「あー、待ってください。あいつとは知り合いでよく因縁をつけてきてたんですよ。ありがとうお嬢ちゃん、花火凄かったね。ぽむも大興奮だったよ」

 ノアは目の前の少女が裏のマフィアなんて事は知らない。

 ただ、スーツの男がガッチリとボディガードをして、花火を準備できる資金があることからどこぞの令嬢だと思っていた。


「では、許すんですか?」

「許すも何も悪いことしてないじゃないか」

「たっ、たしかに、ですが……」

「ぽむもそう思うよな」

 ノアはぽむも抱き上げて掲げる。

「メェェメェェ」

 ぽむは許す的な感じで大きく頷いた。


「ぽむ様ありがとうございます」

「ぽむ様の御心のままに」

 ぽむの一言で騒動は解決。

 その後も残った人全員と撮影を済ませてイベントは大成功を収めた。


「ノアさん、片付けは我々でやるので手伝って貰わなくても大丈夫ですよ」

 ハンナを中心に広場の撤収作業が行われていた。

「いやいや、準備を全てしてもらったんだから片付けぐらいは手伝うよ」

 ノアはゴミ拾いをする。

 ぽむは疲れてお昼寝をしていた。



§



「おいおい、ここにも脱走したひつじがいるぞ」

「丁寧にな、傷つけるとルネリッツさんにどやされるぞ」

「分かってるよ、あの人、従魔には優しいけど人使いは荒いんだよな。っと寝てるから問題ないな」

 従魔専門店の触れ合いコーナーは大盛況だっのだが、人が溢れすぎて混乱が起き、その隙に従魔が何匹か逃げ出して従業員の二人が駆り出されていた。

 よし、これでやっと帰れるぞ。


「メェ?」

 ぽむは目を覚ますと檻の中にいた。

 周りには真っ白いもふもふとしたモンスターが何匹もいる。

 捕まったと焦って檻を叩くがびくともしない。

 魔法を使おうにも魔法封じの檻のせいで威力がかなり低くされて全力で放った深淵業火(アビスファイヤ)はミミズ程度の大きさの炎の帯となり、檻に当たって消える。


 かくして、ぽむは従魔専門店に連れて行かれてしまったのであった。

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