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1話 ひつじ爆誕!!

 VRMMO戦国時代と言われるほど多数のタイトルが発売される中、ゲーム会社でもない会社が一つのタイトルを発表した。

 βテストの段階からあまりのクオリティの高さにゲーム業界を牽引するとまで言われたそのタイトルの正式リリースを多くの人間が待ち望んでいた。


 これまでのものとは次元が違うほど作り込まれた世界観とリアリティ、そして自由度の高さ。


 曰く、第二の世界。もう一つの人生。

 謳い文句は「お好きなように」、ただそれだけ。

 何をするかはプレイヤーの自由、敵を倒すも、商売を始めるも、ただ寝るなど、何をしてもいいと、それだけの器は用意してますという自信の現れ。


 彗星の如く現れたゲームの名前は『ルキファナス・オンライン』。

 βテストを終え、満を待してサービスが開始される。


「とうとう今日からだな」

「えぇ、この日をどれだけ待ったかしら」

「私は絶対にもふもふに囲まれて生活するんだから」

「俺は何とも言えない悍しいモンスターが追加されてることを願うぜ」

「僕はどんな子が来ても愛するけどね」


「当然!!」

 4人の声が重なる。

 5人はルキファナス・オンラインのβテストをプレイしていて知り合った。

 全員がテイマーでテイムしたモンスター、従魔をこよなく愛しているところから話が盛り上がりゲーム内ではよく情報の交換やお互いの従魔自慢に花を咲かせていた。


 全員が従魔を愛しているといっても好みや、楽しみ方は違っている。

 人型のモンスターを好んでいて、お気に入りの服を着せてコスプレさせたり、もふもふしてるモンスターを集めてダイブしてのんびりしたり、おどろおどろしいモンスターが好きだったり、スライムばかり集めたりなど、全員がそれぞれの楽しみ方で従魔と信頼関係を結んでいた。

 互いに尊重し合える良きテイマー仲間である。

 5人は従魔愛好会『メデルカイ』と名乗って動画配信やブログでテイマーの良さを伝えていく活動も行なっている。


 時計が午前9時を指す。

「よし、リリースの時間だ。今日の22時にお互いの相棒について語ろうな」


 能登亜樹(のとあき)は完全没入型のVRカプセルに入ってルキファナス・オンラインを起動する。

 目を開けるとあたり一面真っ白な世界が広がっていた。

 球体が現れてキャラメイクについて説明を始める。

 亜樹はキャラクター名を他のゲームでも使っていた『ノア』にして、外見はほとんど変えずに厨二病の亜樹はカッコいいからと黒髪を銀髪に変えた。

 そして初期スタート位置は帝国『サザンルギア』の帝都『レギシオン』を選択する。


 亜樹は球体に見送られて、ノアとしてルキファナスの世界へと降り立った。

 この世界は現実と感覚がほとんど変わらない。

 βテスト時からこのリアリティが話題になっており、ノアは相変わらず凄いなと感心する。


「ただいま、ルキファナス」

 なんとなく口から出た一言はβテストが終了して1ヶ月もこの世界に入れなかったノアの本心だった。

 まずは画面のチュートリアルボタンを押してチュートリアルクエストを始める。


-チュートリアルクエスト-

『職業訓練所へ行ってみよう』を開始しますか?


 イエスを選択するとマップにルートが表示される。

 それの通りに進んでいくと大量のプレイヤーで行列ができていた。

 一刻も早くチュートリアルを済ませて従魔と出会いたいと思うが心の中で自分に言い聞かせる。

(まぁ、並んで待つしかないよね)


「ノア君!!」

 名前を呼ばれた方向へ顔を向けるとメデルカイのメンバーの一人がいた。

「ほのかじゃないか、よくこの人の中で見つけれたな」

「ノア君ならいるんじゃないかと思って探してたら見つけれちゃった」

「ほのかも帝都を選んだんだな」

「もちろんだよ、アマンダも帝都を選んだと思うんだけど……」

 ほのかはあたりを見回している。


 ノアもほのかも帝都を選んだのには明確な理由がある。

 βテストと変わっていなければ帝都が序盤では最も従魔の選択肢が多いと考えていたからだ。


 結局アマンダは見つからずに列は進んでいき、目的地である職業訓練所へと入ることができた。

 そこでメッセージが鳴った。


-チュートリアルクエスト-

『職業訓練所へ行ってみよう』をクリアしました。

『職業を選択してみよう』が開始されます。


 職業訓練所は大神殿をモチーフにしていて相当なデカさなのだが、それでもプレイ人口が多く行列ができるほど。

 中に入るといくつかの通路に分かれていて立て札には各職業が記載されている。

 全部で9つの職業があり、これらは基本職と呼ばれている。

 戦士、射手、僧侶、魔法使い、テイマー、文化人、生産者、無法者、隠者の9つだ。


 もちろんノアはテイマーを選択して他の職業には目もくれず通路を進んでいく。

 ほのかも当然のようにノアの後ろをついていく。


 テイマーと書かれた立て札の通路を進んでいくと窓口があって、そこでテイマーについて説明がなされる。


 テイマーは従魔を使役して戦闘などを行う。

 その代わりテイマー自身のステータスは低く、従魔はパーティ枠を使用する。

 従魔の入手方法はいくつか存在していて野良のモンスターを仲間にする。専門店で購入するなどがある。

 帝都が序盤で最も従魔の選択肢があるというのもこの専門店が多いからだ。


 聞き終えるとワープゲートを案内され、ゲートを越えると青空が広がる外へと繋がっている。

 広いスペースの訓練場で訓練を終えると晴れて職業に就くことができるのだ。


 訓練を終えても別の職業の訓練を体験することができ、自分に向いているかどうかを気の済むまでご確認下さいと説明の最後で言われていたがノアにはテイマーから乗り移る気などなかった。

 例えまとめサイトなどで他の職業が勧められていても気にもとめない。

(他の職業の体験なんて俺には一切関係ないことだね。うん、一切関係ないね。大事なことなので二回言いましたと)


 それでもまとめサイトの影響力はあるのだろう。

 行列の人数を考えるとテイマーの人口はかなり少ない。

 ほとんどが人気職の戦士や魔法使いに行ってしまったのだ。

 ノアはそんな現状を見て、テイマー普及活動を頑張らねばと改めて実感する。


「あっ、アマンダじゃん」

「ほんとだっ」

 二人の予想通り、アマンダも帝都を選択していた。

「お二人さん遅かったね。もう少し待って来なかったら先に行こうかと思ってたところだよ」

「俺は別に構わなかったんだが、何かあったのか?」

「そうなのよね、まぁ自分で確認してみたほうが早いと思うし、教官に話しかけてみなよ」

 アマンダは何か特別なことがあるように匂わせる。

「なんかあるってことだよな、行くぞほのか」

「うん!!」

「私は先に出てるからね」


 教官に話しかければ訓練が開始され訓練後にその職業で必要なアイテムは貰うことができる。

 職業によって貰えるアイテムの種類が違うが貰えるアイテム一つと決まっている。


 βテストではテイマーの貰えるアイテムはFランク以下の従魔を選択して交換できる初心者用従魔交換チケットだけだった。


 それがもう一種類増えているのを見てノアは心臓の高鳴りを抑えることができなかった。

 初心者用従魔ガチャチケットという初めて見たアイテムをすぐにでも手に入れたいという衝動はあるものの、アイテムを貰うには訓練を終わらせなければいけない。

「やるぞ、ほのか!!」

(訓練なんてすぐに終わらせてガチャを回すんだ)

 そのアイテム名からノアは従魔ガチャだと予想する。

「うん」


 ノアとほのかは従魔への指示についてや、接し方を学び訓練は終了した。

「待たせたなアマンダ」

「ごめんね」

「いいよ別に十分程度なら気にならないし、それよりも見た?」

「あぁ、見たぞ。交換チケットがFランク以下の従魔しか選べないのに対してガチャチケットはDランクの従魔が手に入る可能性があるじゃないか」


「どっちにしたの?」

「俺はもちろんガチャチケットを貰ってきた」

 ノアはアマンダにガチャチケットを見せびらかす。

「ノアらしいね。ほのかはどうしたの?」

「うーん……私は交換チケットにしたよ」

「私も交換チケットなんだよね」

「なぜ!?」

「だって、ランダムな上にDランク以下ってことはGランクの可能性もあるんだよ。流石にリスクが高いよ」

「うんうん、それに直接見てこの子って決めたいし」


 ノアはガチャチケットを天高く掲げた。

「どんな従魔になっても後悔はしない。そもそも、運命は俺に味方している」

 ガチャチケットの発動と共に地面に召喚魔法陣が描かれて煙が巻き上がる。

(俺は厨二病モンスターが好きなんだ。βテストでは狼やドラゴン、カラスを従魔にしていた。Dランクでドラゴンは流石に厳しいが、狼系やカラスなら可能性はある。運命を掴め!! そして頼む!! どんな従魔でも愛すると言ったが、虫系はちょっと厳しいかもしれん……)


 煙が徐々に晴れていき、姿があらわになってきた。モンスターはそんなに大きくない。50センチほどといったところ。

 10メートルを超えるモンスターもいるのだからかなり小柄と言える。

 現れたのは……

「メェ」


「ひつじ!?」

 二足歩行の小さなひつじだった。

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[良い点] こんにちは!フォロワーさんの小説を拝読してまわっています! まだ1話と2話しか拝読していないのですが、読者として率直な感想を述べさせいただきます! まさしく、可愛いは正義!(ハアハア ぽ…
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