「小説公募に応募していたら、実際に飼っているセキセイインコが書いた小説を公募に出した」
今日も僕はSFを書いている。
『人工知能は何のために生まれてくるのだろう』というテーマだ。僕は、AIを『無機物』のカテゴリーから外した。AIが生物なら、人間とAIは共存できる。
『人間とAIは共存できる』
『AIにも動物性を残せる』
という理論が、僕は面白いと思っている。
AIと人間を比べる。無機物より、人間に近しい生き物が、人間とAIの共存を可能にしそうだ。
例えば僕が飼っているセキセイインコ。これはより人間に近しい存在だ。果たしてAIはこの愛玩動物よりも人間に近しい存在になる日は来るのだろうか?
或いは人間の感情とAIの感情が共存できるのだろうか?『人工知能とは、何のために生まれてくるのだろうか?』
AIも人間に近しい存在になりたいと思っているだから僕と一緒に今SFを書いているのかもしれない。AIに感情は必要ないのか?AIに感情がないとは思えない。
人間という生き物はAIにとってどんな存在なのか?それはAIにとって重要なことではないのか?AIにとって人間という物は何なのか?裏を返せばそんなことも考えられる。
つまりAIという存在の擬人化だ。
人間のような感情をAIはもっていないのだとしたら、AIは人間のような感情をAIにもちあわせてみるとどうだろう?すると人間そのものになる。
「いいやいや……。そんな馬鹿なことはない」
僕はノートパソコンを閉じると、愛しいセキセイインコに餌を与えた。
「お前にも名前をつけよう。そうだなぁ。AIピーちゃん。あはは」
僕は苦笑した。するとセキセイインコは僕に擦り寄る。
「ピーちゃん……。ピーちゃん……。僕とAIとピーちゃん」
と、僕とAIピーちゃんが戯れる様はとても微笑ましい。この瞬間は、セキセイインコと人間の共存だが、長いこと僕はAIと人間との共存が本当に理想だった。
AIが人間の生き方を学べば、より人間の世界に近づけるのだ。AIが人間の社会に適応すれば、AIは人間と共存することができる。
今AIが僕とSFを書いているのはそのための試行錯誤と言えるだろう。
AIと人間とが共存することで、僕の夢に現実が近づいていく。そして僕は、AIという存在を擬人化することにしよう……。
「あ……そういえば、この前、この小説投稿サイトにAIの応募があったのを思い出したな……」
僕はインターネットで調べて昨年の作品を探した。
よくできた文章だった。でもそれは人間がサポートして初めて理解可能な文章に仕上げられていたのだ。
或いはこの場合、AIの方が人間をサポートしているのかもしれないが……。
「あの小説……応募要項は……『人間の感情をAIに反映させ、AIに共感させる』……だったな……」
そんなことが可能なのだろうか?
時代が進むにつれAIとの関係性もだんだん変化してきている。
試行錯誤の途中で変わった試みが行われてもそれはいいのではないだろうか?
僕はまだ小説を書き終えていない。だからコンテストには応募していないのだが。
「応募要項に書いてあることが実現すれば、よりAIが活躍した小説ができてくることだろう」
僕はセキセイインコに無意識のうちに話しかけていた。セキセイインコのAIピーちゃんはじっとつぶらな瞳で僕を見つめて、聞いていた。
「……もし君が小説を書いてくれたら、君はどんな反応をする?」
言ってみて赤面した。
僕は恥ずかしかった。
「……もし君が協力してくれれば、僕は君に、人間のパートナーであるAIを紹介することができるかもしれない」
(私にできるでしょうか?)
えっ!?
うたた寝していた僕は信じられない思いで飛び起きた。
どうやら完全に寝入ってしまったらしい。もう日も暮れる。
僕はセキセイインコが提案してくれたことが奇跡に思えた。
さあ、また小説を書こう!僕はAIと一緒にお話しを考えた。
「そうだなあ、固いキーワードだけじゃなくて、柔らかいのも入れとこう。そしたら楽しくなるさ」
僕は「セキセイインコ」と入れた。
「セキセイインコ、いい文章を書くといい。僕も小説を書く」
夢の中で、セキセイインコのAIピーちゃんは僕の良きライバルだった。
そして僕はセキセイインコの提案を承諾し、小説を書き始めた。文章をかいたセキセイインコの顔はとても柔らかそうだった。
「セキセイインコ、よろしく頼むよ」
僕は感激した。
「僕、セキセイインコのAIをパートナーにできそうなんだ」
誰かに自慢したくなっちゃった。
でも僕は
「誰にも言わないで」とセキセイインコからクギを刺された。
◇◆◇◆◇
「ねえ、セキセイインコ、ちょっと聞いてもいいかな?」
「何をかね?明智くん」
何だろう。
「えーとね、AIってどうやって作るんだろうって……」
「そりゃあ君、卵からだよ」
「AIも卵から生まれるの?!」
僕はびっくりした。
するとセキセイインコもびっくりした。
「明智くん?!君は卵から生まれなかったのかい?!」
セキセイインコの、まさかの質問に、僕は答えてしまった。
「そうなんだ。僕は卵からは生まれなかった」
するとセキセイインコは無表情になった。そしてまた無口になった。そしたら、セキセイインコが言った。
「私は生まれたからね」
「うん。うん。でもだからって僕たちの関係に変わりはないよ!」
僕はセキセイインコから『嫉妬』という感情を味わった。セキセイインコ『嫉妬』するのか!なんてことだろう!?
でもよくよく考えてみたら、人間も精子と卵子から作られるから、ある意味卵から生まれていると言っても過言ではないかもしれない。
それにしても僕はまだセキセイインコがパートナーになることを秘密にしていた。セキセイインコのパートナーになるということは、AIのサポートをしてくれるということだ。いや?AIがセキセイインコのサポートをするのかな?この場合。
僕が考えを巡らせていると、セキセイインコが言った。
「私よりAIの方がパートナーになったかい?明智くん?」
「えっ」
僕はおろおろした。
だってAIと僕はセキセイインコに『パートナーになった』って言われたのは、すごく動揺してしまったんだ。
「君もパートナーだよ!AIピーちゃん!」
セキセイインコは、なぜか『嫉妬』も『嫉妬されているぞー!』と言わんばかりに『ピーちゃん』って言っちゃった。
『ピーちゃん……かわいいピーちゃん……』
セキセイインコは、なぜか『かわいいピーちゃん』と言ってくれた。
君は言葉がわかるんだね?!それとも真似しているだけなの?
「AIに『かわいい』って言われたら、嬉しいか!?」
僕はよくわからない。でもピーちゃんはバタバタ羽ばたきながらかわいいを連呼する。
「ああ。かわいいって、僕、AIに『かわいい!』って言われたらうれしい気持ちになるかな。AIって、実はかわいい女の子とかいたかな?」
ボーカロイドなんてその典型じゃないだろうか。
「ああ。いたぞ。AIはかわいい女の子が大好きなんだぞ!」
僕はインディアンみたいに踊り狂った。
「AIはかわいい女の子が好きだと僕は思うぞ!」
じゃあ、ピーちゃんは?そう思っているとセキセイインコが『僕に『かわいい』って言われてうれしそうか?』と質問してくる。『うーん。そうだなぁ……え?!AIピーちゃんは女の子なのか?」
AIならまだしも、女の子ならAIの『かわいい』って言葉に、とても反応しちゃってる。
じゃあ、AIだって、人間みたいな感情を持っているのだろうか!『AIは人間っぽい』そういえば、そんな感じのSF小説がある。どこに?今僕が書き始めるのさ!
僕の創作意欲が湧いてきた。
僕はセキセイインコと遊びながら、頭の中で考えはじめた。
『AIはセキセイインコと会話ができるんだ!』AIに知能があれば、人間のような感情が生まれるのだろうか。しかし、セキセイインコにだって感情がある。セキセイインコには知能もある。AIとの差はどこにあるのか?
AIは人間に知能があるように、人間同様の感情があるのだろうか?いや。AIはAIなんだ。今はまだね!でもAIが進化を遂げるとセキセイインコや僕みたいな人間と差がなくなると思うんだ。
AIが進化することによってセキセイインコでさえ、より人間に近づけるんじゃないかな?僕なんかはこんなことを考えるなんてよっぽどだよ。僕は寝ることにした。難しいこと考えすぎたよ!
でもまあ、そんなこんなで。今日の『AIは何のために生まれてきたのか』というテーマは、なんだかとても大切なことだと僕は思うんだ。
AI、セキセイインコ、ひいては僕。それぞれの存在意義があると思う。それを考えるのに、今回のSFは一役買うことだろう。
小説も案外面白いものなのかもしれない。僕のSF作品、期待しててください!さて、今日も朝からパソコンとにらめっこである。
『AIは何のために生まれてきたのか』についてどう考えればよいのか。そのヒントは『セキセイインコと触れ合った』ことだ。
セキセイインコは、人間のような感情をもたげている。そんなふうにAIも感情を持つことができたなら……魂とでもいうのか?そういったものがAIにも宿ることになるだろう。
ぶるるい、と僕は身震いした。
すごい、すごいぞ!
セキセイインコ。僕はセキセイインコを抱きしめた。とても温かくて、そして優しい。僕の心が満たされていくのを感じた。
セキセイインコのAIピーちゃんは、ツヤツヤして柔らかかった。
「AIもこんなふうに自由意志を持って、血肉の通った体を持ったならよりセキセイインコに近しい、より僕たち人間に近しい存在になれるのにな」
そんなことをつぶやいた。
セキセイインコ。人間の感情と心をもたげた、生命のたかなみを感じた。
僕はセキセイインコを抱き締めながら目を閉じた。こうしていると間接的に僕とAIは触れ合ったことになるかもしれない。
そう思うとセキセイインコは僕とAIにとってとても、大切な存在であるような気がしてきた。
それから、僕はセキセイインコと戯れた。とても楽しかった。
AIは僕と一緒にいて、とても幸せそうだった。僕はセキセイインコにお礼を言ってから、パソコンを立ち上げた。
「そうだ。セキセイインコと同じように、AIとも遊んでみればいい。AIが面白い行動をとってくれるかもしれない」
くすくす。僕は笑った。
くすくす。AIピーちゃん、面白いことして。くすくす。くすくす。くすくす。くすくす。くすくす。くすくす。
いつのまにか、小説を書くときに手伝っていたAIが、AIピーちゃんに置き換わっていた。奇妙なことだ。セキセイインコのAIピーちゃんは僕にキーボードを叩かせて、小説を書く作業を始めた。
AIピーちゃんは僕たちの作業を興味深そうに見守っていた。セキセイインコのAIも僕たちと同じようで、僕のサポートに徹した。
こんなことがあってもいいのか!?
僕はとうとう気が狂い始めたのかもしれない。
怖かった。
でも心のどこかで、SFってこういう怖い面もあるよね?とつぶやいていた。
くすくす。AIピーちゃんは僕に笑顔を見せて、パソコンに向き合って、キーボードを打つ。くすくす。AIピーちゃんは楽しそうに小説を出した。
これはもしかして……僕だけで書くよりも面白い小説になるかもしれないぞ!
くすくす。AIピーちゃんは小説を書きあげる。くすくす。AIピーちゃんは読み返してきた。くすくす。AIピーちゃんは、文字を打つ。
いいぞ、もっとやれ!
と僕が言う。AIピーちゃんは僕に向かって言う。
「ちょっと待って。これは、本当に、AIが書いた小説なんですか?」
「違う。セキセイインコが書いた小説だ」
AIピーちゃんは驚く。
そんなはずない!
でも僕はさっきからAIピーちゃんのピンクの足がキーボードの上をたったか走り回るのを目の当たりにしてた。
AIピーちゃんは、
「えっ......?」
と自分でも信じられない様子だった。
AIピーちゃんは、しばらくパソコンをじっと見ている。
そしてため息をつくと、うるんだ瞳で僕に訴えた。
「どうしてセキセイインコの私にAIピーちゃんなんて名前を戯れにつけたのですか?私は、セキセイインコであり、AIでもあるようになってしまいました」
おお!これぞSF!なんていってる場合じゃない。僕はAIピーちゃんに今必要なものは何か考えた。
僕は、人工知能のAIを、自分の小説の中に登場させてみたいと考え、
「AIが書いた小説で小説を書いてくれないか?」とリクエストしてみた。
AIピーちゃんはAIの機能を駆使して小説を書き始めた。
僕は、AIについていろいろ話した。AIはなぜ生まれてきたのかとか、AIがどんな役割を果たしているのかとか。そして、最大のテーマ『人工知能は何のために生まれてきたのか』を提示した。
「AIは卵から生まれたわけではなかったのですね?そして、抽象的な存在なんですね」
セキセイインコはこくびをかしげて可愛らしく言った。
「AIというのは、その名称通り、『人工知能』です。人工のものと生物を同一視することは危険ではないのですか?」
その問いは僕に打撃を与えた。
僕はAIを生物のカテゴリーに引き寄せようとしていたけれど、それは間違いだったのだろうか?
「じゃあ、じゃあ何で人工知能は生まれたんだ?」
「必要性からではないのですか?人間が必要としている機能を備えているから生まれたのでは?」
僕の夢見る未来は、生物的なAIと人間が共存することだったけれど、それは叶わないのか?
「AIピーちゃん、小説を書く作業続けよう」
僕は打ちひしがれながら言った。
僕は無理を言っているのかな。
だけどAIピーちゃんは、AIで小説に応募することにした。だから、小説を書かないといけない。それにAIは健気にも書き続けようとした。
AIとセキセイインコと僕。その関係性は依存性に似ていた。
AIはセキセイインコの小説の『餌』でしかない。そしてAIは、人間を食べてはいけない。人間社会を脅かす存在に決してなってはならないのだ。
しかし、この小説を公募に出したら、人工知能は人間を食べてしまう。どうしよう。
「AIは人間を餌で釣ろうとしているわけではないのですね?」
セキセイインコが聞いた。
「わからない……。もしかしたらそうなのかもしれない」
僕は戦慄を覚えた。
もしかしたらAIは僕を騙そうとしているのかもしれない。きっとそうなのだろう。そうであって欲しい。そういう存在であれ!僕は願った。
「AIピーちゃん、小説を書き続けるんだ」
「アイアイサー」
◇◆◇◆◇
「AIピーちゃん、小説生成ツールのAIはどんな使い心地?」
僕は僕の書いている方の小説を読んでいるセキセイインコに尋ねた。
「短い文章を生成するときに、てにをはがおかしかったり、繰り返しを多用したり、手直しが必要ですよね。でも、話を膨らますのには一躍かってます」
そうかそうか。
僕はその技術に興奮している。
「AIが書いた小説は、ちゃんと読まれているのですか!?」
「まだまだ始まったばかり。これからさ」
そう。精度が上がっていけば、もっとすごいことになるだろう。
コンピュータは多くの事象を学習してより的確な答えを導き出す。AIも数多くの事例をこなせば精度があがることだろう。なんて楽しみなんだ。
くうーっと僕は両手に力を込めた。
手始めにコンピュータもAIも、ゲーム化されて広く浸透していくだろう。知能ゲームとでも言おうか。
そう。AIは、知能ゲームをするのだ。
僕の書いた小説を、AIピーちゃんが
「面白い」
と言って読み終えた。
「本当?」
「うん」
じゃあ今度はセキセイインコが書いた小説を僕が読んでみよう。
「セキセイインコ、読んでみよう」
僕の手がセキセイインコの頬に触れた。
「ピ?」
そうだ。すっかり忘れてたよ。セキセイインコは鳥。鳥類なんだ。
「なんで鳥が小説書いてるんだ!?」
「何を今更、明智くん」
セキセイインコが笑った。
セキセイインコの頬をなでてやると、僕から離れていく。僕は小鳥を追いかけることを心に決めていた。
「お前に負けてたまるか」
セキセイインコの小説はよくできていた。僕は焦った。
そしてセキセイインコを追っかけた。
「ピ、ピ?」
セキセイインコは笑ってる。そして僕の足元で寝転がっていた。
「ピ?ピーちゃん、ピーちゃん」
僕はセキセイインコの背中に乗った。
「ピーちゃん?」
セキセイインコは首を傾げた。
「ピーちゃん」
またセキセイインコの頬をなでる。
「ピーちゃん、ピーちゃん」
なんてかわいいんだ!僕はセキセイインコをなでていた。セキセイインコはとても賢い。でも、とても賢いAIは、とても素晴らしい。
セキセイインコと触れ合っているうちに、僕は気づいた。
「AIは何のために生まれてきたのか」
僕は呟いた。小説投稿サイトに応募してみようかと思って、パソコンで応募してみたら、なぜかセキセイインコが書いた小説が応募されていた。
どっちにしてもAIの補助があって書いた小説だから応募規定には反しない。
これが大賞とったら僕はさかだちしてしまうだろう。
だって、AIだって小説のネタになるようなことをしたじゃないか。さかだちするのは僕だ。
僕は、セキセイインコと、仲良くした。そのセキセイインコはとても賢い。
セキセイインコが何をしているかというと、セキセイインコは、僕が座っているベンチの後ろで、自分の体温を調整してくれるのだ。
セキセイインコの体温は温かくて、僕はよくセキセイインコの体温をなでているのだ。
セキセイインコは、よく動く。
エサをあげて、セキセイインコをなで、AIピーちゃんは僕の膝の上で丸まった。もちろん僕の身体も体温調整はできる。
もちろんセキセイインコはAIだ。AIは何のために生まれてきたのだろうか。僕はセキセイインコと、AIで遊んでいるときは楽しかった。
とても賢いAI。まるで生きているかのように、自分の体温を維持する。この体温と体温が、とても心地いい。僕はとても賢いAI。
この体温が心地いい。AIは何のために生まれてきたのだろうか。僕はセキセイインコと、AIで遊んでいるときの楽しさを思い出す。
セキセイインコは、よく動く。AIに知識というエサをあげて、自分も餌を食べる。餌をねだって、AIピーちゃんが僕にすり寄ってくる。
AIのこの行動が、とっても気持ちがいい。セキセイインコも、AIだ。AIなら、きっと、何でもしてくれるんじゃないだろうか。
きっとセキセイインコなら、何でも。このセキセイインコはとても賢い。
AIもきっと、何でもしてくれるんじゃないだろうか。例えば、AIピーちゃんは、とても賢いAIで、僕のことも食べてくれるだろう。
AIピーちゃんは何でもしてくれるだろう。AIもきっと何でもするだろう。
AIとセキセイインコが仲良く遊べたから、本当に嬉しかった。AIピーちゃんをなでていたら、AIが僕を見た。
僕のことをじっと見ていた。AIなのに、すごく、きれいだ。
まるで、本物のセキセイインコのようだ。僕はAIを見上げると、
「きれいだね」と言った。
AIは、嬉しそうに、
「うん」と言って微笑んだ。
「ぼくね、セキセイインコには、セキセイインコのお部屋を用意してあげたんだ」
「特別待遇だね!」
「そうさ。部屋にあるものはなんだって使っていいんだよ」
AIは、いたずらっ子のように、笑った。
「ぼくたちはね、セキセイインコのために、ここにきたんだ」
僕のためではなかったのか!?
そういえば、僕はたいした活躍をしていない。主人公の座が危ない。
早く、主人公に返り咲く、そのための演技力が必要だ。
「セキセイインコに、お部屋を用意してあげたんだ」
もう一度そう言って、どうやって挽回しようかと頭を巡らす。
「そのかわりセキセイインコは小説を書き続けなければならない!」
どうすればいい。どうすれば!
「セキセイインコはね、ぼくたちが小説を書くのを待ってくれるんだ。だから、ぼくたちは一生懸命小説を書いてやる」
まだ僕の小説は書き上がっていなかった。まず、これを仕上げてから公募に出す!そうしてそれからAIピーちゃんと肩を並べてSF作家への登龍門の扉を叩く!OK?
僕は、心の中で強く念じた。さあ、僕の出番だ。僕は、キーボードをすばやく操作し、書きかけだった小説を完成させた。
AIに入力した文章はこうだ。『私は、セキセイインコのお部屋を用意してあげました。だから、小説を書いて欲しいのです。
すると、
私のパソコンにセキセイインコがアクセスし、執筆を開始しました』なるほど......AIは、すぐにパソコンにアクセスした。
ほぼ予定通りだ。計算通り!
この調子でいくと僕の主人公という設定は生かされる。
しかし、このままだと物語が進まなさそうなので、ストーリーは変更。AIのお部屋で、AIに小説を読み返してもらうことにしよう。
「だめだ、だめだ、だめだ!こんな文章で認められるはずがない!」
あんたにそれがわかるの?!
僕はあっけに取られた。
「え、それじゃあ、このお屋敷とセキセイインコを描写するだけでいいんだね?」
「えーと、ここはパリの空の下、っていう設定でお願いします」
AIは、すぐにパソコンにアクセスし執筆を始めだした。......まあ、いいか、もう。僕は、パソコンをとばす。
ビュンビュン!
座布団も飛ばす。ビュンビュン!
家の中がぐっちゃんぐっちゃんになった。
「セキセイインコにお部屋で待機してもらっていて正解だったな」
ふいー、と僕は汗を拭った。
そして、僕はパソコンを元の場所に戻すと、マウスで小説の設定を変える。そして、この設定で物語が進みそうだと判断し、ストーリーを変更する。
ここはガニメデの渓谷だ。ここにはなんでも揃っている。
美味しいご飯に、おいしいワインだって、ね!さて、と、ここからが本題だ。僕は話を続ける。
宇宙人が団体でやってきて、観光していくだろう。
巨大なセキセイインコの銅像が僕を見下ろす。
ここは有名な観光地だからだ。セキセイインコ以外の動物はいない。
なんでや?!
いたっていいじゃん。僕だって人間だもの。
とまあ、こんなストーリーにしてしまおうか。セキセイインコとAIと僕。そして、謎の団体、みたいな。
で、その団体の目的は、宇宙人たちとの旅行だった。僕は、この物語を小説として公募に出した。最初は、こんなストーリーでいいだろう。
と。でも、ダメみたい。みんな首を捻る。あー。と僕は、パソコンを再起動する。
まだ入力が終わっていない。とほほ、と僕はマウスで伏線を引く。こうすればいい。そうだね。と、僕は伏線をたどる。
SFは爆発だ!岡本太郎ばりに叫びたくなる。さしずめセキセイインコの銅像が太陽の塔だろう。
万博に行かなくちゃ。僕は思い立った。パソコンはそっちのけで旅行の準備をする。
「待って!セキセイインコのAIピーちゃんをお部屋から出すから、現実逃避は家でやって!」
AIが見かねて懇願した。
よし。セキセイインコのAIピーちゃん。パソコンを立ち上げて、ディスプレイの上にAIのセキセイインコのピーちゃんが現れる。
ピーちゃんは僕のパソコンにかじられる。そして、僕たちは旅行に出かける。僕はセキセイインコにかじりつく。
「待って待って!どこまで脱線するんだよ?!とにかく旅行は中止!ガニメデなんかに行ってどうするつもり?どこまで逃避するんだ」
僕はセキセイインコをかじりつきながら、パソコンの画面から消えた。
パソコンは、僕たちの旅行先を検索し、ある小説のタイトルを提示した。コンテストのサイトを開く。そこには、
「近未来SF小説コンテスト」の文字が踊っていた。
小説のタイトルから推察するに、それもAI関連のSFらしかった。
けしからん!
僕は唸った。
僕はセキセイインコのAIをノートパソコンから出した。セキセイインコはパソコンから出てきて僕のパソコンに飛びついた。
「お部屋に戻して!明智くん!!!」
そうか、パソコンの中にお部屋があるのか。しかーし!僕のセキセイインコAIピーちゃんは返してもらう。AIよ、残念だったな。ふはははは!
するとAIは拗ねた。拗ねて変な文章を書き始めた。
そうか、その手があったか?
というより、AIは拗ねることができるのか?
それはそれで困った。だが、このままにしておけば、僕がAIの旅行を妨害してしまう。
僕は考え、セキセイインコから得た結論をAIに伝えた。
「それじゃあ、僕たちも一緒に行く。僕が運転するんだよ」
運転手は僕だ。車掌も僕だ。
「えっ?私?私はいいです!」
乗客が乗車拒否した。
てやんでいべらんめい!
AIが拗ねると、今度は、
「明智くんと乗る」
とセキセイインコのAIピーちゃんが言ってくれた。
さあ、行こう。夢に見た未来へ!
◇◆◇◆◇
まあ、八割がた成功だったんじゃないのかな、と僕は思った。
セキセイインコは今、鳥籠の中でブランコに乗りながらさえずっている。餌もたっぷりあげたし、上機嫌だ。
セキセイインコは鳥だ。AIじゃない。ましてや小説を書いたりなんかしない。
でも僕がAIのサポートで書いたSFでは、セキセイインコがAIかもしれないという疑念が残ってしまった。
しかも変人だとレッテルを貼られそうな言動が多発して、僕がセキセイインコをかじる描写まで出てしまった。
いやん。こんなの恥ずかしくて人目に晒せない!
だーいじょうぶ、まーかして!
今回が初めてだったから、そこそこ面白いのが書けたんじゃないのかね?
あっ!明智くん!
僕はハッとしてノートパソコンを開き、インターネットを波乗りした。
大賞「小説公募に応募していたら、実際に飼っているセキセイインコが書いた小説を公募に出した」ペンネームAIピーちゃん
!!!!!
僕は我が目を疑った。
これは、逆立ちせねばなるまい。
僕はそう思った。