4.逃げた少女。
この主人公、煽りよる……()
次回くらいで戦闘パート終わるかな?
応援よろしくお願いいたします!!
――美しい剣舞。
アミナの振るうそれは間違いなく、芸術の域に至っていた。
俺は流れるようなその攻撃を炎剣で防ぎつつ、一定の距離を取り続ける。ハッキリ言って隙がなかった。一連の動きを見て感じたのは、どこから攻めても防がれるというイメージだ。まさに攻防一体の型だと言える。
「どうしたんだい、リッドくん。さっきまでの威勢はどこにいった?」
「………………へっ」
普通に剣技だけでぶつかり合っては、膠着状態が続くだろうと思われた。
相手もそれを理解している。だから互いに一度距離を取り、言葉を交えるのだ。挑発とも取れるアミナのそれに、俺は小さく笑った。
ここで乗ってしまっては、せっかくの戦いが台無し。
それに俺は、あることに気付いていた。
「なぁ、アミナ――」
「……どうした?」
だから、彼女自身も自覚しているであろうそれを指摘する。
「守ってばかりで、楽しいのかよ」――と。
◆
「な、に……?」
アミナはリッドの言葉に、眉をひそめた。
守ってばかり――というのはいったいどういうことか、と。
「はっ! まさかその表情からして、気付いてなかったのか!」
こちらの表情を見て、少年は顔を覆って笑った。
しかし、アミナには本当に意味が分からない。自分がいつ守ってばかりだと、そう彼は言っているのかが分からなかった。
こちらも剣を振るっている。
攻撃はしている。だが、リッドはそれを守っていると言った。
「だったら、教えてやるよ。――アミナ」
困惑していると、少年は炎剣を突き付けながらこう口にする。
「お前の剣技は、負けないだけの剣だ」――と。
その言葉を聞いた瞬間に、アミナの中に得体の知れない怒りが沸き上がった。
いいや、怒りというよりも苛立ちの方が近いか。負けないだけの剣、その呼び方がとかく気に障った。だから即座に、彼女は言い返そうとする。だが――。
「あぁ、でも仕方ないよな。アミナは以前からそうだった」
「なに……?」
それより先に、少年はニヤリと口角を歪めて言うのだ。
そして、それは――。
「お前は貴族だった頃から、ずっと勝負を避け続けてきたんだから」
アミナにとって、心を抉られるようなもの。
「な……っ!」
古い傷を無遠慮に、かつ的確に狙ったもの。
直後、彼女の脳裏にはある言葉がよみがえった。
『貴様のように上手いだけの者に、当主は任せられない』
五年前のあの日、最後に聞いた父の言葉。
それを思い出した瞬間、無意識のうちにアミナは駆け出していた。
「ああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
叫び、リッドに向かって剣を振り下ろす。
少年はそれを受け止めて、笑いながらこう語るのだった。
「アミナ・リーガー――歴史あるリーガー家の中で、史上最も剣技の才に恵まれた女性。しかし三女であることから、他の兄や姉には疎まれ続けていた」
「やめろ……」
「そして、選定の時。ついに、その矛先は喉元に突き付けられた」
「やめろ……!」
「周囲からの執拗な責めに、お前は――――逃げたんだ!」
「やめろと言っているんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
――吼える。
アミナはリッドの言葉に、絶叫しながら剣を振り下ろした。
質量を持った炎の剣と、金属の剣がぶつかり合う。いつもとは違う、乱暴に叩きつけられるアミナの攻撃。リッドはそれをいなしながら、彼女にこう告げた。
「良いぜ。やっと、戦う目になってきやがった……!」
「な、に……!?」
アミナは怒りに表情を歪めながら、距離を取ったリッドを睨む。
すると少年は、静かに呼吸を整えて言うのだ。
「お前がその気になって、ようやく俺も――」
頬に一筋の傷。
ほんの微量の血を流しながら。
「本気で、戦える……!」
直後、リッドを中心に魔力の奔流が生まれた。
そしてそれが収まった時、少年の手に握られていたのは――。
「さぁ、始めようぜ? ――血沸き肉躍る戦い、ってやつを!!」
――美しく輝く、氷の剣だった。
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