3.決戦前――アミナの過去。
次回、戦闘パート。
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「アミナよ。貴様はリーガー家に相応しくない」
それは五年前のこと。
アミナは父から突然にそう宣告を受けたのだ。
リーガー家の三女として生まれ、幼い日から今までずっと剣術に励んできた。そして次期当主を決めようとなった頃合い、彼女はその権利を剥奪される。
原因は分かっていた。
だが、どうしようもなかった。
多勢に無勢。
たった一人の彼女は、いくら誰よりも剣技に優れようとも敵わない。
そうして、アミナはリーガー家を出た。
しかし名を捨てることはしない。いつの日か必ず、そう誓っていたから……。
◆
ギルドの屋内闘技場は、いつにない賑わいをみせていた。
理由は単純。王都で最強と名高い剣士、アミナ。そして先日の一件で、大きく名を上げたリッドの対決。血気盛んな冒険者たちは、その注目の一戦を観ようと押しかけていた。中にはどちらが勝つか、賭け事を行う者もいる。
「あの、大丈夫なんですか。リッドさん」
「大丈夫。心配はいらねぇよ」
俺は不安げにこちらを見上げるリンに、そう声をかけた。
金網の入場口へ、真っすぐに伸びる通路。その一番後方で、俺たちは決闘の準備を整えていた。ルールはシンプル、何でもあり。
そして、どちらかが意識を失うまで続けられる。
下手をすれば命を落とすが、それもまた一興だろうと思えた。
「おや、先にきていたんだね」
「そっちは、意外に遅かったじゃねぇか」
「ふふ、少しばかり準備に手こずってね」
そう考えていると、本日の相手が現れる。
アミナは先日手にしていた剣とは、また違うものを持っていた。そこに刻まれた家紋を見て、俺は少しだけ、気取られないように息をつく。
やはりまだ、過去に囚われているのか――と。
「今日は是非、よろしく頼むよ。期待の新人くん?」
「あぁ、こちらこそだな。でも――」
「…………?」
だから俺は、首を傾げたアミナにこう告げた。
「立ち止まってる馬鹿には、負けねぇよ」――と。
宣戦布告。
いや、喧嘩を売っているに近かった。
俺は口元に笑みを浮かべて、彼女を見据える。すると、
「へぇ……?」
アミナの表情も変わった。
先ほどまでの友好的なものは消え失せ、好戦的なそれに。
それでいい。
俺は相手の言葉を聞かずに、歩き出した。
きっと今日は、退屈しない戦いができるだろう。
「楽しくなってきたぜ……!」
それに、心を躍らせた。