2.アミナの素性。
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「アミナ・リーガー……か」
俺はダンジョンで魔物を倒しながら、ボンヤリとアミナのことを考えていた。
王都最強を名乗った女剣士。その自称はおそらく間違いではないだろうと、そう思われた。何故なら彼女の瞳の奥にある光は、他の冒険者のものと違ったから。
しかし俺には、他に引っかかることがあった。
「リン、一ついいか?」
「え、あ! はい!」
考え事をしながらドラゴンを両断し、後方で見学しているリンに声をかける。そして改めて、アミナの素性について訊ねるのだった。
「アミナについて、知っていることを教えてくれ。どんな些細なことでもいい」
「えっと、アミナさん、ですか……」
こちらの問いかけに、少年は顎に手を当てて考え込む。
そして、こう語り始めるのだった。
「アミナさんは、ご自身で言っていたように王都で一番との呼び声高い剣士です。誰もが彼女に憧れて、最初は剣士を志す――そう言われるほどに」
「もしかして、お前もか?」
「え、あはは……バレましたか」
俺が口を挟むと、リンは恥ずかしそうに頬を掻く。
だが、すぐにアミナの話に戻った。
「あと、アミナさんといえば元貴族、ということですね」――と。
その言葉に、俺は眉をひそめる。
そしてリンの声に、黙って耳を澄ませるのだった。
「リーガー家は有名な騎士の家系で、彼女はそこの三女だったそうです。ただ、どういうわけなのか冒険者になって腕を磨いているとか、なんとか……?」
「どういうわけなのか、か……」
「リッドさん……?」
その話を聞いて、俺はどこか皮肉交じりな笑みを浮かべてしまう。
この感覚と薄気味悪さは、実に懐かしい。やはりアミナは、あのリーガー家の出で間違いなかった。そして俺は知っている。
――五年前だ。
その時、リーガー家で何があったのかを。
「どうされたんですか? ――リッドさん」
「あぁ、いや。なんでもない」
「……?」
少し沈黙が長かったからだろうか。
いつの間にかリンは俺の傍にやってきていて、小首を傾げて顔を覗き込んでいた。こう見るとつくづく『少女のような少年』だと、そう思ってしまう。
もっとも、今は関係ないので気持ちを切り替えた。
そして踵を返し、ダンジョンの出口へ――。
「……あぁ、そうだった。リンにはこれだけ、伝えておこう」
「なんですか?」
向かおうとして、俺はふと思い出したことを口にした。
この細身の剣士志望の少年に、ハッキリ――。
「残念だが、お前に剣士の素質はない。諦めろ」――と。
まず、圧倒的に足りない筋力。
その他にも色々な要素があったが、性格的にも不向きだった。
「がーん……!」
俺の言葉に愕然とするリン。
大袈裟なリアクションの後に、ぐったりと肩を落として言うのだった。
「うぅ、分かりました……」
意外に物分かりは良いらしい。
その決断力だけなら、なにかに向くかもしれないな。
「さて、そろそろ帰るぞ」
そう考えて、俺はまた歩き出した。
昨夜、アミナとは決闘の約束を取り付けたのだ。
決戦は明日の正午。
少なくとも、退屈はしなさそうだと感じられた。