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5.道を踏み外した者。

雪かきの合間に執筆して、お送りしております_(:3 」∠)_

誰か、湿布ください(腰痛

あと応援よろしくです!










 イアンにとって、それは衝撃以外の何物でもなかった。



「坊ちゃま。まだ始めたばかりで、私と模擬戦など……」

「いいじゃねぇか。他よりは面白いけど、基礎ばっかりはつまらねぇし」

「まったく、困った御方だ」



 今より六年前。

 イアンは伯爵家から乞われ、子息の魔法剣術指南役となった。

 冒険者上がりの彼としては間違いなく大出世。貴族に取り立てられ、地位を確立することは今後の生活の安定には必須であった。

 その足掛かりとして、イアンは意気込んでいたのだ。


 言う通りにしないクソガキ相手でも、将来のためならば仕方なし。

 そう自分に言い聞かせ、リッドという少年に相対していた。



「では、構えてください。坊ちゃま」



 正直なところ。

 この時のイアンは、伯爵家の嫡男を完全に見下していた。

 取るに足らないままごとで満足する凡俗に過ぎない。自分のように才覚にあふれた者とは違うのだと、そう思い切っていた。

 あるいは、貴族という生き物自体を軽んじていたのかもしれない。



 だがイアンは、それが思い上がりだと知ることになるのだ。

 目の前の十歳になったばかりの少年――リッドの相手をすることで。




「行くぜ、イアンのオッサン!」




 刀身のない剣に、少年は魔力を注ぎ込む。

 すると、信じられないことが起こった。



「な、馬鹿な……!?」



 まだ、基礎の基礎しか教わっていないにもかかわらず。

 リッドは炎の剣を形作ってみせた。それは、例えるなら上級魔法を無詠唱で発動するようなもの。魔力の生成に加えて固定まで、リッドはやってのけたのだ。

 その事実に、イアンは衝撃を受ける。

 そして――。




「ぐ、あ……!?」




 彼の生涯で、最も不甲斐ない敗北を喫した。

 圧倒的な差を見せつけられ、イアンはこう思ったのである。




 ――この少年を、このままにしてはいけない。




 もし放置すれば、自分の地位が危うくなる。

 いつの日か、機会を見てリッドを抹殺せねばならない、と。



「どうだ! すげぇだろ!」

「お、お見事です。坊ちゃま……」



 無邪気に喜ぶリッドを見つめる。

 そんなイアンの中には、どす黒い感情が芽生えたのだった。







 それから、六年が経過。

 一度は廃嫡となり、目の前から消えたクソガキ。

 それがどうして今になって、また姿を現したというのか。



「ふ、ふふふふ……」



 夜の街を歩きながら、イアンはそれを考えてほくそ笑んだ。

 あるいは、これもまた神が与えた好機なのかもしれない。そう考えたのだ。



「もっとも、私が崇拝するのは――」



 彼はそう呟いて、自らの右目に触れた。

 すると、金色のそれは鮮血のような赤に変わる。




「魔神と呼ばれる存在、ですがね……?」






 六年前の嫉妬から始まったイアンの道。

 それは、いつの間にか人のそれを大きく外れていた……。



 


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