プロローグ 廃嫡、そして三年。
新作です。
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――説明も面倒くさいけど、廃嫡された。
「リッド、お前はもう伯爵家に必要ない」
「………………」
父親であるアラン・グロピウスは、額に青筋を立てながら言う。
俺ことリッドは、由緒正しい貴族であるこの家には不要なのだと。その宣告はあまりに唐突ではあったが、そんなに驚くべき内容でもなかった。
むしろ、今までよく俺のことを放任してきたなと思うほどだ。
「お前のように決まりを守らない愚か者、これ以上見過ごせない!」
「あぁ、はいはい。またその話か」
「また、とはなんだ! 誰のためだと思って――」
「うるせぇな。こっちは古臭い風習やマナーの押しつけに、飽き飽きしてたんだよ。廃嫡だろうが勘当だろうが、するならさっさとしやがれ」
「――! 最後まで、減らず口を!」
俺が頭を掻きながら思ったことを返すと、親父はついに爆発した模様。
ドンっ! と、テーブルを叩いてこう叫ぶのだった。
「いいか、リッド――貴様は今日限りで廃嫡だ! 二度とその顔見せるな!!」
リッド・グロピウス――この時、若干十三歳。
俺はその日、晴れて貴族のしがらみから解放され、普通のガキになった。
◆
――毎日が退屈だった。
朝起きた瞬間から、マナーやらなんやらを叩きこまれる日々。
貴族とはかくあるべし、と。とかく古臭い風習やらマナーといった、重要性の感じられないことばかりを教えられるのだ。
理屈の通らない形骸化したものもあった。
こちらがそれを指摘すると、子供が口を挟むなの一点張り。
「ばっかじゃねぇの。つまらねぇ……」
だから俺は、それらを徹底的に無視した。
そうやって反発することで、周囲の期待値は下がり続ける。そして今日、ついに廃嫡と相成ったわけだ。これほど清々しいことは、他にないだろう。
これで、自分の生き方は自分で決められる。
生きるも死ぬも、自己責任。
ただひとまず、当面の問題としては――。
「さて、どうやって退屈をしのぐか……だな」
そうだった。
貴族の家を追い出されたは良いものの、これからどうするか。
何もしなければ、結局はまた退屈な日々の始まりだった。それだけは、どんなことがあっても避けなければならない。そうでないと、意味がない。
だから、俺は考えていた。
そして一つ、案が浮かんだのだ。
「魔法剣、極めてみるか」――と。
それは、貴族だった時。
唯一といっていいほどの俺の趣味であった。
担当の講師から教わった魔法剣。それだけは、貴族のしがらみを忘れさせてくれた。教えてくれた講師も変な奴だったが、だからこそ退屈しなかったのだ。
だったら、今はそれをまずやってみよう。
「そうと決まれば、王都の近くにあるダンジョンに潜るか」
善は急げ。
いや、善なのかどうかは分からない。
むしろ無謀だろうが、退屈をしのげるなら俺にとっては正解だった。
◆
そうして、ダンジョンに潜る日々が始まって数年。
来る日も来る日も、その最奥にいる魔物たちを魔法剣で切り刻む。アークデイモン、ヒュドラ、ドラゴンにレライエ。
最初のうちこそ苦戦はした。
だが、何年も続けていればこちらの腕も上がる。
「今日は、これくらいにしておくか」
目の前の魔物が魔素へと還っていく。
それを見て、俺はそう呟いた。
ダンジョン最奥。
ここに人がくることは、この数年で一度もなかった。
それでも退屈しなかったのは、戦えば戦うほどに、魔法剣の力が増していく。そのことが身をもって実感できたからだった。
「…………三年、か」
俺はふっと息をつく。
そして、自分の手のひらを見つめて思うのだった。
「そろそろ、退屈になってきたかもな」
ダンジョンの魔物では、物足りない。
もっと、俺を退屈させない存在と戦いたい、と。
「だとすれば、次は――」
俺はダンジョンの出口を目指しながら、こう口にした。
「冒険者に、なってやろう」――と。
順序は違うが、退屈しのぎにはもってこいだ。
そう考えて俺は王都を目指す。
この時、十六歳。
普通の少年リッドとして、俺は新たに一歩を踏み出した。
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