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サクラ、歌ってくれよ  作者: 呑竜
「第一章:忠犬よろしく駆けて来た」
10/14

「自分で言って、自分で照れてた」

 次の日から、俺たちのミッションは始まった。

 遠藤さんに求められたのは、日々の活動報告。

 今日はどこで演奏したとか、どれぐらいの集客があったとか、売り上げはどうだったとか。

 Mytubeの反応はどうだったとか、どれぐらいの登録者がついたとか。

 かんばしくない時は、その都度つどアドバイスをくれた。


 アドバイスをくれるのは遠藤さん自身の時もあれば、その道のプロであることもあった。

 有名ブロガーに有名動画配信者、路上ライブからメジャーデビューした個人やバンド。

 遠藤さんはどうやら、本気で俺たちをスターダムにのし上げようとしてくれているようだった。


「いっやあー、至れり尽くせりっすねー。さっすがプロっ」


 路上ライブ開始前、地べたにあぐらをかいた俺がチューニングをしている横で、サクラが楽し気にノートPCを眺めている(コンビニバイトの後輩山田から、中古品を安値で譲ってもらった)。


「ほらほら師匠、またMytubeのチャンネル登録者数増えましたよ。コメントもいいねもたっくさん。師匠ほらほらっ、ちゃんと見てくださいよーっ」

「はいはい見てる見てる。つうかまだ1万人にもなってねえんだろうが。よくわかんねえけど、トップが何百万人とかいう状況なんだろ? 浮かれるにゃまだ早えんじゃねえのか?」

「配信開始2週間でこれはすごいんですってば! もう、わかってないなあー! 千人の壁を超えるのすら普通はもっとかかるんすよ!」


『Spring,Cherryblossoms』。

 ハルとサクラを並べただけの簡素なコンビ名のそのチャンネルは、配信開始一週間で登録者数8千人を超えている。

 それがどれだけのものかは正直わからないが、サクラ曰くけっこうなものらしい。


 ちなみにチャンネルでは、路上ライブの他に俺たちの私生活も配信している。

 主に喋っているのはサクラで、俺はつまらなそうな顔をして画面の端に映っているだけだが、意外とこれがウケがいい。

 サクラの適当な(本気で適当な)お喋りや喰いっぷり(本気でよく喰う)、手遊びで作る粘土人形(師匠ろいど君。現在ver20まである。本気で意味がわからない)などが人気で、よくコメントをもらっているようだ。


「そういうのは俺はいいよ、おまえに任せる。俺はブルースがれりゃあそれでいいんだ」

「もおおーっ、そんなんじゃダメっすよー。自分たちはコンビなんすから、ふたりでひとりの熱い絆で結ばれたあれな感じなんすからー。……なぁーんて、えっへへへへー……」

「自分で言って自分で照れてりゃ世話ねえな」

 

 顔を赤くして頭をかくサクラを鼻で笑うと同時にチューニング終了。


「さ、行くぞサクラ。ライブ開始だ」

「はあーいっ」


 声をかけると、サクラは元気よく返事をしながら立ち上がった。


 ──サクラちゃーん、今日も来たよーっ。

 ──今日も可愛いーっ。

 ──がんばってねーっ。


 ちらほらとファンのつき始めたサクラは、応援してくれる観客たちに向かって投げキッス。

 俺のギターに合わせて、「Sweet Home Chicago」の第一声を力強く発した。



○「Sweet Home Chicago」は数あるブルースナンバーの中でも屈指の傑作です。十字路の悪魔と契約したとされるロバート・ジョンソンの名演奏がYoutubeなどで聞けるので、興味ある方は是非。



○ハルとサクラのユニット名はもう少し凝ったものも考えていたのですが、よりシンプルなこちらにしました。ハルはそこまでこだわらないだろうし、サクラの脳みそは難しい事を考えないだろうし、ハルとサクラの名前が並んだことで、「こ、これはもう結婚したと言っていいのでは!?|д゜)」とかひとりで思って興奮しているサクラの画像がたやすく思い浮かぶので。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 出てくるミュージシャンがいちいち琴線に触れる [一言] 先生〜、グリムスパンキーはブルースに入りますか?????
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