No.03 能力判明
(捜すのは決まったが、どこにいるかわかんねぇな)
「歩くのは面倒だから魔法とかで瞬間移動みたいなのないの?」
これに対してアンリはああ、そういえばと思い出した表情で、
「魔王様、言い忘れていました。こめかみを人差し指でコンっとつつくようにしてみてください。能力が表示されるはずです。あ、左右どちらでも構いませよ」
純一はアンリの話を聞くと、早速右手の人差し指でこめかみをつついた。
純一の目の前に【能力】とやらが表示された。
魔王
能力︰握力999
純一は自分の能力を見て呆れて、
「……え、これだけ?」
「はい、そうですけど……」
アンリは何も問題ないという顔で純一を見つめていた。
純一は、嫌味混じりに言った。
「魔王なのに初期ステータスがこれ? 握力ってなんだよ。地味にカンストしてるし……」
「聞き捨てなりませんね、魔王様。ステータスではなく、せめて能力と言って下さい。ステータスと言っていいのはゲームをやってる側の方ですよ。この世界はゲームの世界に似てますが仮想世界ではなく、死んだら終わりの現実世界ゲームと言ったところでしょうか」
「なるほど……わからん」
「つまり……ゲームなんですけど、死んだら魔王様ごとあの世に逝っちゃいますってことです」
「ああ、殺されたら俺の身体ごと逝っちまうってことか」
(やばいやん。なんで俺、別世界転生許可しちまったんだ…………頼むから強い勇者来るなよ)
「それで、魔法とかは……」
「ありません」
(即答……)
「てか、なんで初めから握力カンストって決まってんだよ。これは流石に聞いてないぞ」
そう純一に聞かれると、アンリは急に慎重になって話すようになった。
「あまり言えないのですがこの世界全体を裏で支配している者が決めたとしか……」
「それ以上は言えないのか?」
「はい……多分消されます」
(俺が魔王で、これから支配するっていうのに……この世界を支配しているやつがいるのか……)
純一は気を取り直して言った
「どう捜せばいい? テレポートすらできない状態じゃ歩いてこの広大な世界から見つけ出すのは何日もかかるぞ」
「そのことについてなんですがーー」
アンリは続けて、
「実は、私がそれを使えるんですよね。テレポートも転送も。逆に言えばその他の能力はありません」
(早く言えよ! はじめに言えよ!)
「わかった。じゃあまず、このマップを埋めてきてくれ。その能力を使って」
「え? まじですか?」
「マジだ。魔王の命令だぞ? やらないならまた名前をーー」
「やります、やります。やらせて頂きます」
そう言うとアンリは急いでマップを埋めに行った。