No.02
「そういえば、お前の名前を聞いてなかったな。名前なんて言うんだ?」
純一は親しげな顔をして少女に聞いた。
少女は一瞬躊躇したようにも見えたが、純一の質問に可愛げな顔でこたえた。
「私の名前ですか……私の名前は、ゴルード……です……」
(いや草)
純一は彼女の名前を聞いた瞬間、口がぽかんと開き頭のの中が「ゴルード」という文字で埋め尽くされた後、笑いが心からこみ上げてきた。しかし笑い声は出さなかった。いや、出せなかった。
少女、ゴルードの顔が紅潮していたからである。
「あの! 魔王……様……。あなたを転生させたのは、このためでもあります……」
「は?」
純一の口がまたしてもぽかんと開いた。
「魔王になった者は支配したモンスターや植物等に名前をつけることができるのです。私はこの「ゴルード」とかいう男みたいな名前は嫌でなんです。恥なんです。だから……名前を変えてほしくて……」
(世界を救うとか支配するとかだったらまだ納得がいくのだが……こいつの名前のためだけに転生したと考えると、やる気もあまり出ないなぁ。…………でも、まだもとの世界に帰れる方法が見つかってないのも事実だし、やれることはやっておこうかな)
そんなわけで純一は少女の名前を改名することにした。
「そうだな……アンリというのはどうだ?」
純一の思い付きではあったが、少女はこれまでにない笑みで「ありがとう」と言った。
(ようやく物語が進むわ〜)
「おい、えっと……アンリ。これからどうすればいいんだ?」
アンリは少し考え込んだが、思い出した後ゆっくりと純一にこれからのことを説明し始めた。
「魔王様にはこれから五体のモンスターをあなたの支配下に置いてもらいます。と言っても今この場にモンスターはいません。なので探してもらいますこの五体を」
アンリは純一にこれから探す五体のモンスターの写真を見せた。
「左からツヴィリング、ヴィダー、レーヴェ、ヴァーゲ、シュティアです」
(なんで魔王のこの俺が探さなくてはならんのだ……集めてから転生させろよ)
純一はいやいやながらも探すことにした。
「わかった。で、そいつらはどこにいるんだ?」
アンリは真顔で言う、
「わかりません」
(わからないってなんだよ! それぐらい把握しとけ)
「じゃあ、この世界のマップのようなものを見せてくれ」
純一が言うとアンリはこれです、と純一に見せた。
見るからに変なマップだった。
正方形に近い紙の中には、青色の十字形に四つの空白。漢字で表すと「田」の字に似ているだろうか。
純一はそれを見てアンリに質問した。
「なあ、アンリ。これ、青色の十字の部分は川か海かわかんねえけど水ってことはわかる。だけど、この四つの空白はなんだ? まさか空白になってる所まで行かないと、このマップが埋まらないってことはないよな? な?」
「ご名答です魔王様! さあ、先程のモンスターいや、下僕どもを探し、ついでにマップを埋めましょう! しゅっぱーつ!」
「なーにが、しゅっぱーつ! だよ。あんまり調子乗ってると名前をゴルードにするぞ」
さっき表情とは裏腹に青ざめた顔でアンリは純一に、
「すみません! すみません! 調子に乗りました魔王様。どうか名前だけは、名前だけは……」
「冗談だよ、早く行くぞ!」
「は、はい〜」
(あーめんどくせー。早く家でゲームやりたいな〜」