No.01
(風が心地よい。……え?)
目が覚めると純一は絵に描いたような綺麗な芝の野原に寝ころんでいた。
(どこだ? ここ?)
辺りを見渡して見たが今ひとつ情報がつかめない。
純一は目線を胸元から足の指先まで移す。
(あれ……何この格好…………!)
白髪の少年。顔から足の指先まで白骨化した左半身、右半身は人間の肉体でできているだろうか。肩からくるぶしまで届いている神父服。白骨化した左半身からは骸の黒いオーラが浮き出てくる。
「うわ! 俺の左半身骨じゃねえーか! こっわ。てか、なんで右半身は人間の肉体なんだ!? 俺、生きてるのか? 死んでるのか?」
低い声が野原全体に響くと同時に純一の背後から高く可愛らしい声で話しかけられた。
「そんなに慌ててどうしたのですか魔王様?」
見た目は金髪の小学生ぐらいの少女だった。
背中には羽が生え、その姿はまさに絵に描いた天使だ。
「魔王、なんのことだ?」
「とぼけないでくださいよ。ちゃんと通知まで送ってあなたに許可を頂きましたよ」
(通知ねぇ……。さっきまでゲームを…………あ……)
「通知って……え? まさかゲームのやつ?」
「そうです。許可しましたよね? 別世界転生を」
「あれって別の仮想世界に行ってまた新しく支配するんじゃないのか?」
「少し違いますね。別世界転生とは現実世界にいたあなたがまた別の世界に行き、姿を変えることです。そう、あなたは異世界転生したのです。」
(話がぶっ飛びすぎて理解しきれん。……まあでも、いまの俺は魔王ってことだけ理解できたかな)
「今更なんだが、なんで俺がその異世界……転生したって知ってるんだ? ゲームの通知の事から今の状況まで」
「そんなことですか……本当に今更ですね……」
(そんなことで済む事じゃないんだけどなぁ……)
「まあ、そりゃ知ってますよ。だって私があなたをここに転生させたのですから」
「ふーん……そうか、お前が転生を…………お前が俺を……」
純一はひと呼吸置いて頭の中を整理した。
しかし、いくら整理しても純一は納得できていなかった。
それもそのはず、転生させられて急に魔王をやれと言わても無理なことだ。
(自分が魔王だと理解していたが、改めて考えてみるとこれはおかしいだろ)
「おい、もとの世界に帰りたいんだが」
(魔王なんかやりたくねぇーよ。これ、やってたら最終的に勇者に殺されるパターンだろ。まだ俺は死にたくないんだよ)
「それは無理です。先程言ったように、あなたが別世界転生を許可したからこの世界に連れてきたのですよ。今から死ぬまで、この世界であなたは魔王として頑張ってくださいね」
金髪の少女はにこにこしながら純一に言った。
(このクソがきが! 外見は天使で中身は悪魔かよ)
「一つだけ……もとの世界に戻れる方法があります」
純一はホッとした表情でいた。
「なんだよ、方法があるんならはじめから言えばいいじゃん。それで、戻れる方法って?」
「今は、教えません。いえ、今教えるべきではないといったところでしょうか」
純一はなぜ教えてくれないのか気になったが、どうせ答えてくれないだろうと思い、ひと呼吸おいた。