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8.いつも通りの昼休み……のはずなんだけど

「なぁ、高瀬氏、ひとつ聞いても良いだろうか?」

「何だ?」

「こう言っちゃ悪いんだけどよ、お前...臭くないか?」

「...…納豆か?」

「そうともよ」


昼休み、教室で机を並べて弁当を一緒に食べている竹野正志が耐えかねたように聞いてきた。

原因はもちろん制服のシャツが入っていた洋服箪笥に納豆が入っていたからだ。

一応ファブリーズはしたのだが、ほんのりと納豆の匂いが残っているのは着ている自分でもちょっと分かる。


昨日、俺が気絶した後、梨乃ちゃんがどうにかこうにか俺と梨乃ちゃんがいかがわしい関係では無いことを説明したらしく、一応結菜の怒りも収まったようだ。

ただ、梨乃ちゃんの最終的な言い訳は、『目にゴミが入っちゃって、助けてもらっていたんです』という少々苦しいもので、今朝も結菜が疑惑の目で俺を見ていた。

危険視すべきは俺じゃなくて梨乃ちゃんの方なんだけど。


「えーと、妹の悪戯のせいだ」

「あー、そういうことか。実は俺もユーキが若干納豆くさくいのが気になっていたんだ」


同じく昼食を一緒に食べていた敦も口を挟む。やっぱお前も気になっていたか……。


「何かちょっと誤解されちまったようでさ、今朝も冷たく接されたよ」

「はぁ〜!? 実妹に悪戯されて冷たくされるとか羨ましいんだよ! 自慢か!? 俺も実妹ちゃんに悪戯したいし、されたいわ!」


と、意味不明なことを言ったのは正志。


「……いや、妹にそういう扱いされるのって、ただムカつくだけだぞ」

「あーあー、お前は人生の楽しみ方が分かってねぇなぁ!」

「……お前、妹はいるのか?」

「いない」

「実際に妹いても、別にイイとは思わないし、面倒だぞ?」

「それは妹がいる奴の言い分だろ! 俺にはいねえんだよ! 妹という存在に夢持ったって良いだろが!! 実妹でも義妹でもいいから俺にくれよ!」


正志は、なんというか分かりやすくオタクな奴だ。

たまに意味不明なことを言うが、面白い奴だし、よくつるんでいる。

敦が基本的に糞真面目な分、ふざけた話は正志との方がよく盛り上がる。

まぁ、妹にはあまり幻想を持たないで欲しいけど。


「ところで、マサシ。昨日は休んでいたがどこか調子でも悪かったのか?」


正志が妹について熱くなってしまいそうだったのを見かねてか、敦が話題を変える。


「ん?いや、ズル休みだが」

「おい」

「仕方なかったんだよ! 昨日は最近売り出し中の声優さんである下沢美央のトークイベントがあったんだよ! 東京で!」

「それのどこが仕方ないんだよ!?」


平日だったらちゃんと学校行けや。


「ほう、平日でもそんなイベントがあるのか?」


敦も興味を持たずにズル休みの方を責めろ。


「んー、イベント自体はナイトイベントだったわけよ。で、金のない地方民の俺様は仕方なく行きは真昼間の高速バス、帰りはもちろん深夜バス。ほら、学校行く暇ないだろ?」

「イベントに参加しないという選択肢をちゃんと考えろ」

「はぁ!? 美央たんのイベントに俺が行かないとかありえないんですけど!? 数年後に大人気声優になった美央たんを見て、『ワシが育てた』って悦に入りたいんだよ、俺は!」


ちょっと何言っているかよく分からないですね。


「マサシ、好きな女性を追うのも良いが、学校も大切にしろよ? 頻繁に休まれたら俺もユーキも心配するし、寂しいぞ?」

「トゥンク……。あれ?この気持ちは……って、いや、お前なぁ! そういうの面と向かって言ってくるのは恥ずかしいからやめてくれよ!」


そうだぞ、敦。ホモくさく見られたらどうするんだ。

お前のことが好きなどっかの誰かが心配するぞ?


『ポッ』

=================

原田 杏香

現在の心境:敦くん……やっぱり女の子より男の子の方が良いの……?

だから私もあんまり興味持たれてないの……?

=================


ほら、少し離れたところで聞き耳立てながらお前を観察していた原田ひんにゅうが不安になっているじゃないか。

全く敦は罪作りな男だなんだか投擲されたフォークが脇腹に刺さっているなぁ!


見ると、さっきまでの乙女モードの消え失せた原田が俺を睨んでいる。

皆のステータスを見ている俺が言うのもアレだが、心を読んで攻撃するのやめてもらえませんかねぇ!?


「ん? どうした、脇腹を押さえて? そんな脇腹で大丈夫か?」

「いや、うん、大丈夫だ。問題ない。」


心配の仕方が正志らしい。

そういや、正志は昨日休んでいたからまだステータスを見てなかったな。

どれどれ一応拝見。


『ポッ』

=================

竹野 正志

年齢:17

職業:高校生

- 男子高校生 Lv. 18

- 声優オタク Lv. 29

- アニメオタク Lv. 19

- ストライクゾーン Lv. 37

- 自転車 Lv. 9

=================


いかにも正志らしいステータスだった。

オタクがジャンル別で2つあるあたりとか流石である。

そういえば自転車も『自転車でロングライドする女の子のアニメを見たから始めたぜ!』とか言ってたな。

こう考えると活発な奴だよな、正志って。


それにしてもストライクゾーンってなんだ? 野球とかしてたっけ?


『シュッ』

=================

竹野 正志

- ストライクゾーン Lv. 37

・下は4歳

・上は71歳

・胸の大きさに貴賎なし

・人外もOK

・男の娘はOK。ただし、男、テメーはダメだ。

=================


節操なしかよ!?

あぁ、これは広いなぁ! ストライクゾーン! うん、本当に広いわ!

下の4歳って本当にアウトだよ!

あと、上の71歳って妙に細かいけど、71歳と72歳になんか違いがあるんですかね!?

どちらも等しく婆さんやんけ!


「おい、高瀬氏、そんなに俺の顔を見てどうしたんだよ? まさか、お前も男が好きなのか? 俺は与田氏と違ってそんな趣味ないぞ?」

「安心しろ、俺も敦と違ってそんな趣味ない」

「言っておくが、俺も普通に女性が好きだぞ?」


うん、敦が女性(熟女)のことを好きなのはよく知っているよ。


『シュッ』

=================

原田 杏香

現在の心境:本当、敦くん? ちゃんと女の子が好きなんだよね? 信じて良いんだよね?

=================


原田よ、残念ながら敦の中で、女の『子』はストライクゾーンじゃないんだよなぁ。

お、でも正志ならちゃんとストライクゾーンに入っているぞ? 正志なら原田ほどの寂しい胸の大きさでも貴賎なく愛して食い込んでるぅ! 脇腹に2本目のフォークが食い込んでるよ!!!


原田は両手の指に4本ずつフォークを挟んで持ち、どこぞのキャプテン・クロさんばりにゆらりと立ち上がっていた。

さっきから恋する乙女モードとの切り替えが速すぎる。ていうか何本フォーク持ってんの!?


『シュッ』

=================

原田 杏香

- アイテム

・フォーク ×6

・ナイフ ×4

・仕込み針 ×4

・ハンカチ ×1

・ポケットティッシュ ×1

・リップクリーム ×1

・コンパクトミラー ×1

=================


うおおい!? こんな表示もあったの!?

ていうか、こいつ普段から何持っているんだよ!?

明らかに投擲武器として所持しているとしか思えないものと女子らしいものが混在してて、どこをどうツッコんでいいのかもう訳分かんねぇよ!!


『シュッ』

=================

原田 杏香

現在の心境:次はナイフ

=================


怖え!!! マジで怖ええ!!!

お巡りさん、早くこいつを捕まえて!!


ってアレ? フォークの本数足りなくない?

手には合計8本だよな? 手に持っているものは別でカウントされるのか?


『シュッ』

=================

原田 杏香

- 装備品

頭:  ヘアピン

右手: フォーク ×4

左手: フォーク ×4

身体: 学校指定制服

足:  学校指定上履き

=================


あ、なるほど、装備品が別にあるのか。

なんかこの表示はRPGっぽさがあるな。

装備品として下着類とか靴下とか細かいのが表示されてないけど、恐らくそういう仕様なんだろうな。

なんかホッとしたような残念なような。

ていうか、俺に投げつけたのと合わせて、少なくともこいつは16本のフォークを持っているのかよ。


……もしかしなくても、俺のクラスメイトってクレイジーな奴多い?



すみません、投稿遅れました。

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