表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/42

7.妹の友達を尋問したけど


「で、君は脱衣所で何してたわけ?」


居間に移動して、梨乃ちゃんを問い詰める。

何だか、出来心で万引きしちゃった中学生を諭す店員みたいな気分になってくる。


「えーと、あーと、その、し、心配だっただけで……」

「心配?」

「私のせいで、結菜、あんなことになっちゃったから、心配で様子を窺っただけで……」

「……カメラ、設置してたよね」

「……し、しらないですよー」

「……結菜に後でバラすぞ」

「ごめんなさい、盗撮しようとしてました。結菜には絶対に言わないでください、お願いします、何でもします」


流れるような謝罪&土下座だった。

なんで俺は女子中学生の土下座を眺めているんだろう。


「バラすつもりは、まぁ実はあんまりないんだけど」

「え、そうなんですか?」


結菜からしても友達が自分を盗撮しようとしていた、なんて知りたくないだろうしな。


「結菜は君と仲良しみたいだし、盗撮とかはなかったことにして、普通の友達付き合いをしてくれればそれで良いと思っている」

「そうですか……撮影はダメですか……」


普通に犯罪だからね?


「そもそも何で盗撮しようとしてたの? しかも同性の友達を」

「何を言っているんですか! 性別? ハッ、そんなの些細なことです! あの結菜ちゃんの素晴らしさ! 男だろうと女だろうと虜ですよ、もう! その姿をカメラに収めることの何に問題があると!」

「えぇ……」


なにこの子……。自分の趣味について語る時だけ饒舌になるオタクみたいになっているんですけど……。


「結菜ちゃんのいいところはですね、本人はしっかりしているつもりなのに、実はドジっ子なところなんですよ!」


知らんし。


「この間も何もないところで転んでて、その後の恥ずかしがっている表情とか本当に最高でしたよ! ごちそうさまでした! 結菜ちゃんといるときは常時ビデオ撮影しているおかげで、その時の映像もバッチリ! 結菜ちゃんを鑑賞しながらの夕食最高でした!」


えぇ……本格的にヤバイ人じゃないですか……。

まさかの盗撮の常習犯宣言。

常時ビデオ撮影って……。鑑賞しながら夕食って……。


「ちょっとなに引いているんですか!? お兄さんは結菜ちゃんと一緒に暮らしているんだから、その魅力分かるはずでしょう!?」


いや、妹に、ましてや部屋に納豆を仕掛けようとする奴にそんな感情抱かんだろ……。


「呆れました……お兄さんの代わりに私が結菜ちゃんのお兄さんになりたいですよ!」


何なのさ、もう……。

本気で言っているわけ……?


『ポッ』

=================

松川 梨乃

- 結菜愛 Lv. 38

・結菜といることが至上の幸せ

・結菜を眺めることが至上の喜び

・結菜を愛することが我が使命

・結菜ちゃんの、ハァハァ、匂いを嗅ぎたい…

=================


本気も本気でしたわー。

何で最後の説明だけやたら俗っぽいっていうか、欲望全開なんですかね?

やっぱステータス表示能力さん、たまにふざけているでしょ?

くそう、梨乃ちゃんは礼儀正しくて可愛い子だと思っていたのに、こいつも変態だったか!


「……いや、もう結菜に盗撮の件をバラすよ? 今回だけだったらまだしも、常習犯じゃどうしようもない」

「ええ!? そ、それはやめてください! 結菜ちゃんに嫌われたら私生きていけません! お兄さんを殺して私も死にます!」


なんで唐突に俺を巻き込んだし!?


「あと、これまで撮影したものも押収。全部、データ消すよ?」

「やめてくださいいい! 私が命を賭して集めた宝物なんです!」


何で命をそんなことに賭けちゃうかなぁ……。


「そして、結菜にはちゃんと謝ること。いいね?」

「う、う……」

「分かった?」

「お兄さんにも私の秘蔵の結菜ちゃんコレクションを見せるので許してください……」

「いや、どうしてそれで許されると思ったし……」

「普通の感性を持っている人間なら結菜ちゃんの姿を見たがって仕方ないはずなのに……!」


残念ながら君の感性が普通じゃないんだよなぁ……。


「お兄さんも普通なら結菜ちゃんのことが……あれ?」

「?」

「そもそもお兄さんは何で脱衣所にいたんですか?」

「え?」

「結菜ちゃんが『覗くな』ってきつく言っていたのに、わざわざお兄さんは脱衣所をこっそり覗き込んでいた……」


マズイ、確かに俺も不審だったわ。

『特殊能力で梨乃ちゃんの思考を読んで、企みを阻止しようとしていたのだ!』とかいう頭の悪いことは言えないし。


「……いや、それはだねぇ、君の行動が少々不審であったからで……」

「あ、そうか! わかりました! やっぱり、お兄さんも結菜ちゃんの一糸まとわぬ姿を見たかったんですね!!」

「ちっげーよ!? てか、『やっぱり』ってなんじゃい!?」


冗談でもやめてくれよ! 世間的にも色々ヤバイって!


「いえ、分かります、その気持ち! 本人からダメと言われても結菜ちゃんの姿は見たくなるもの……。そうして脱衣所を覗いていたら、先客であった私と遭遇してしまったんですね……!」

「勝手に話を広げないでくださいません!?」

「そう、つまり我々は結菜ちゃんに魅了された同類……いわば同志ですね!」

「志どころか話がまったく噛み合っていないんですけどぉ!?」

「安心してください! お兄さんの想い、決して他言いたしません!」

「その想いとやらはそもそも存在してないんだよなぁ!」


あぁ、ダメだ、この子全然俺の話聞いてない!

ていうか、普通兄が妹の覗きをするとかドン引きものなのに、なんで梨乃ちゃんは当たり前のように受け入れてんの!?


「そうと分かれば、色々シェアしましょう! 私は学校に行っている時の結菜ちゃんの映像を提供します! 代わりに、お兄さんなら昔の写真の提供や家での様子の撮影ができますよね!」

「俺がそんなものを提供するとでも!?」

「あと、お兄さんなら結菜ちゃんの聖遺物(パンツ)も取り扱いできますね!」

「待て、お前は俺に何をさせる気だ!?」


見つかったら家族会議どころじゃすまないよ!


「あぁ、すばらしい同志に出会えて感激ですわ!」


そう言って梨乃ちゃんは俺の手を握り、キラキラした目で俺を見上げてきた。

え、何? なんかちょっとドキドキしちゃうんですけど!?

落ち着け、相手はただの百合盗撮魔だぞ!?

この行為やさっきまでの同志発言も盗撮の罪を有耶無耶にするためにやっている可能性だって……


『シュッ』

=================

松川 梨乃

結樹への評価:一緒に結菜ちゃんを愛でる素晴らしき同志

- 好感度 16

- 信頼度 58

=================


めちゃめちゃ信頼してるぅー!?


え? え? 今まで結構な人数のステータス見てきたけど、俺への好感度・信頼度ともにこの子がトップなんですけど!?


ほとんど話したことのない友人の兄貴をいきなりこんなに信頼するか、普通!? どんだけ盲目的なんだよ!?

この子、結菜のことをダシにしたらコロッと騙されちゃったりするんじゃない!? 色々通り越して心配になってきたよ!


ガチャッ


「ふぅー、梨乃ーお待たせー……え?」


と、ここでシャワーを終えた結菜が居間に戻ってきた。

結菜が見ているのは、手を握り合っている自分の兄と友達。

しかも、友達の方はキラキラした目で俺を見上げているときている。

あ、俺死んだわ。


「ちょっとあんたたち、何しているわけ?」

「いや、結菜、これには、その色々訳があってな……」

「へぇ、どんな……?」

「そ、それは……」


言えない……。

『お前の友達がお前のことを常日頃から盗撮していたよー』とは……。

言えば、梨乃ちゃんの罪が明るみになって、俺への追求は弱まるかもしれない。

でも、結菜と梨乃ちゃんは、こうして家で一緒に勉強するくらい仲良しだし、それを壊したくはない…。

そして、梨乃ちゃんがちょっとアレな子で勘違いしているとは言えど、俺をすごく信頼してしまっている。

そんな子を裏切ってバラすことはできない。

でも、どう言い訳したらいいんだ、この状況!?


「待って、結菜ちゃん! 聞いて!」

「え? 梨乃?」


おぉ! 頼むぞ、梨乃ちゃん! 一番良い言い訳を頼む!


「私とお兄さんは、どちらも(結菜ちゃんを)愛しているだけで、ちょうどお互いの(結菜ちゃんに関する)大切なモノをやり取りしようとしていただけなの!」


ノウ!!!!


何でさ!? 梨乃ちゃん、バカなの!?

どうしたらそんな誤解しか生まないような発言を完成させることができるのさ!?


「いや、待て、結菜! そんなことはしていない! 違うんだ! 徹底的かつ完全に誤解なんだ!」

「え!? お兄さんは、お兄さんの(所持している結菜ちゃんの写った)モノを私に見せてくれないんですか!?」

「お前はその口を閉じろォ!!!!!」


わざとなの!? ねぇ、わざとなの!?


『シュッ』

=================

松川 梨乃

現在の心境:結菜ちゃんの写真、もっと見たいのに……。あと、聖遺物(パンツ)も持ってきてほしいのに……!

=================


ワザとじゃなかったー!

それにしても随所で妹の下着を欲しがるのやめてもらえませんかね!?


「兄貴ィ……」


あぁ、結菜が怒っていらっしゃる……。

なんか結菜の背後に幽波紋(スタンド)みたいのが見えるよー。

俺はお前を怒らせた。

確かめるまでもないと思うけど……


『シュッ』

=================

高瀬 結菜

現在の心境:滅

=================


オゥ、シンプル・イズ・ザ・ワースト。


「待て、話せば分かる……!」

「問答無用!死に散らせ、この変態ロリコンクソ兄貴ィ!!!!」

「あべしっ!!??」


結菜の放った光速の右ストレートが俺を吹っ飛ばした。

フッ、良い右、持ってやがる……。

俺は消えゆく意識の中、14歳はロリに入るのかどうかちょっと悩んだが、正確な定義を思い出せないまま力尽きた。



次の日、俺の部屋の洋服箪笥の中に、開封済みの納豆が3パック置かれていたのは言うまでもない。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ