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6.妹の友達に会ったけど

部活に行く敦を見送った後、俺は帰宅部らしく真っ直ぐ家に帰った。

ステータス表示能力をもう少し色々試してみようかとも思ったが、ちょっと疲れてきてるし夕食まで寝て過ごそうという魂胆だ。


「ただいまー」


家に入って、一応声を掛ける。

この時間なら母さんはいるはずだ。妹の結菜は生徒会の仕事があるかどうか次第だな。


「あれ?」


玄関先の靴を見ると意外にも母さんの靴はなかった。買い物かな?

代わりに結菜の靴と見慣れない靴があった。

結菜の友人でも来ているのだろうか。


居間のドアを開けるとテーブルにノート類を広げて勉強をしている妹とその友人がいた。

この子、前にも家に来てたことがあるな。えーと、名前はなんだったかな?


「あ、兄貴おかえり。見ての通り勉強会しているから邪魔しないでね」


妹の友人のステータスを見ようとしたら結菜が先に話しかけてきた。

勉強会ねぇ……。学校か自分の部屋ですりゃいいじゃん。なんで居間でするのかね?


「分かったよ」

「もし邪魔したら、あんたの部屋の洋服箪笥に納豆仕込むからそのつもりで」

「やめろよ! 嫌がらせのレベルが高いんだよ!」


なんて残酷なこと考えるんだ、俺の妹は!

なんで帰宅早々そんな脅迫をうけなきゃいけないんですかねぇ!?


「お、お邪魔しています」

「あ、はい、ゆっくりしていってね」

「ありがとうございます」


おっと、忘れるところだった。結菜の友人もいるんだったな。

ちょっと小柄で、ピコッと出しているサイドテールが印象的な可愛い子だ。

口調も丁寧だし、結菜もこういう感じに育って欲しかったな。


「……私の友達に手を出したら、燃やすよ? 髪とか右目とか左足の小指の爪とか」

「燃やす場所が具体的すぎて怖いっ! 出さねえよ! 安心しろ!」


お前が兄に対してそんな口調だから他の子が可愛く見えるんじゃい!

あ、そうだ、友人のステータスを見ておかないと。名前、結局思い出せなかったし。


『ポッ』

=================

松川 梨乃

年齢:14

職業:中学生

- 女子中学生 Lv. 22

- 結菜愛 Lv. 38

- お菓子作り Lv. 11

- 隠密行動 Lv. 21

=================


待って、名前なんかどうでもよくなるような情報が見えるんですけど。

『結菜愛』ってなにさ? 俺の妹への愛ってことですかい???


「あの、どうかしましたか?」


思わず固まった俺に意味不明のステータスの持ち主が話しかけてくる。

どうもこうも君のステータスが変なだけですよ?

あと、隠密行動も女子中学生が普通持っている特技じゃないから!


「兄貴、さっさと出ていかないと本当に納豆使うよ?」


本当に納豆を部屋に蒔きかねないからな、こいつ。

色々と梨乃ちゃんのことは気になるが、さっさと退散した方が良さそうだな。


「分かった分かった、ジュースでも飲んだらすぐに出て行くよ」


うちの居間は台所とつながっていて、飲み物・食べ物を得るには居間を経由する必要があるのだ。

そもそも俺が居間に入ったのも、帰ってまず何か飲みたかったからだしな。


「あ、飲み物ですか?すみませんが、私も頂いていいですか?」


おっと、梨乃ちゃんもジュースをご所望ですか。


「じゃあ、君の分もコップに入れておくね」

「あ、はい。ありがとうございます」


自分と梨乃ちゃんの分のコップを出し、冷蔵庫に入れてあったオレンジジュースを注ぐ。

自分の分はさっさと飲み干して、もう一つを梨乃ちゃんに渡す。


「ありがとうございます。フフッ」


あれ、梨乃ちゃんなんか黒い笑顔こぼさなかった?

不審に思いつつも俺は居間のドアを開け、二階の自室に引っ込もうとした……その時だった。


「う、うわー、つまづいちゃったー」

「ちょ、ちょっと梨乃ー!?」


梨乃ちゃんがなんか棒読み気味の叫び声を上げつつ、梨乃ちゃんが派手に転倒。

持っていたオレンジジュースが結菜に降りかかった。

えぇー、なんですか、これ。


「ご、ごめんね、結菜ー」

「あーもう、私は大丈夫大丈夫。それより梨乃は大丈夫?怪我とかしていない?」

「結菜ちゃんが、自分よりも私の心配を……! 嬉しい……!」


え、何で感極まっているの、この子?


「り、梨乃?」

「あ、いけないいけない。私は大丈夫だよ。でも本当に大丈夫?ベタベタするんじゃない?」

「うーん、ちょっとベタベタする……。着替えてくるね?」

「あ、その、髪とかにもかかっているし、着替えだけじゃなくて軽くシャワーとかしたら?」

「え、いいよー。梨乃が来ているのに放置してシャワーとかできないよ」

「いや、私が悪いんだからそんなこと気にしないよ!さぁ、シャワーしてきちゃって!」

「う、うん……」


少々強引に結菜にシャワーをさせようとする梨乃ちゃん。

怪しい……怪しすぎる……。


「ん、兄貴まだいたの? 見ての通り私はシャワーするけど、覗いたり梨乃にちょっかい出したら納豆だからね」

「しねえよ! すぐに部屋に行くから納豆はマジでやめろ!」


あと、お前は納豆に謝れ! たんぱく質豊富で栄養価の高い素晴らしい食品だぞ!


結菜は二階の自室に着替えを取りに行き、俺も後を追うように自分の部屋に戻った。

ただ、どうにも梨乃ちゃんの様子が気になる。

結菜が浴室に入った物音が聞こえた俺は、そっと自室を出て1階に降り、再び居間に向かった。


「あれ、いない」


待っているはずの梨乃ちゃんがいない。ますます怪しい。

俺は忍び足で浴室の方へ向かう。

浴室前の脱衣所のドアが少しだけ開いていたので軽く中を覗き見る。


「……はい?」


脱衣所の洗濯機の陰にしゃがみこんで、何やらこそこそしている梨乃ちゃんがいた。

人様の家で何しているのこの子!?

そうだ、こういう時こそステータスさんの出番だ!


『ポッ』

=================

松川 梨乃

現在の心境:カメラはもう少し隠し気味にして、うーん、角度が悪いな。これじゃあ全景が捉えられない……。でも見つかったら元も子もないし、これで妥協するか……。あと、もう少し仰角が欲しいな……。ローアングルから一番良い角度で撮るには……。

=================


アウトだよ!!!


思わず声が出かかったのを必死に抑える。

完全にアウトだよ! 盗撮だよ! ローアングルからの撮影を試みてんじゃねぇよ!


しかし、どうする? 相手が女友達とはいえ、妹の盗撮をみすみす見逃すわけにはいかない。

かといってここで声を上げると、結菜にも気づかれて話がややこしくなる可能性がある。

どうしたものか。


『シュッ』

=================

松川 梨乃

現在の心境:カメラはこれで良いかな……。あ、もしかして洗濯カゴの中のこの代物は……。

=================


おいぃぃぃ!!??


さらにアウトだよ! ダブルプレーだよ! 洗濯カゴって、結菜の下着とかだろ!

もう流石に止めるしかない……!

俺は、ポケットに偶然入っていた消しゴムを少しちぎって、梨乃ちゃんに向かって放り投げる。


「……っぴ!?」


消しゴムが当たった梨乃ちゃんは小さく声を上げると、ギギギっと効果音をつけたくなるような動きでこちらを振り返った。人の顔ってあんなに青くなるのか。

梨乃ちゃんは数秒フリーズしたのち、諦めたように静かにこちらに移動してきた。

はい、検挙。


どうすっかね……この子。



梨乃ちゃん編、次回に続きます

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