5.気になる人のステータスを見たけど
その後の授業でもクラスメイトや先生のステータスをチラ見していたが、まぁ大体当たり障りのない内容だった。
親しくないと見れる情報が限られるし、知ったからといって他の人に言いふらしてもしょうがない(俺が発信源だとバレたら面倒)し、なんか持て余すなこの能力。
ところで、ほとんどのクラスメイトのステータスは見たけど、まだ一人見ていない人がいる。
窓側の一番前の席に佇むクラスメイト『水瀬詩織』だ。
水瀬はすごく大人しくて、彼女の友達も大人しい人達ばかりなのもあって、あまり目立たない存在だ。
でも、俺はそんな彼女のことがそれなりに気になっている。
大人しい性格、主張しすぎない見た目、ふわりと揺れるショートヘアー、そして優しい笑顔。
他の男連中はどう思っているかは知らないが、俺の中では気になってしょうがないんだよな。
正直、ステータスを見てみたいのはやまやまなんだけど、なんか気になっている人の情報を覗き見るのはなんか躊躇われるし、俺への評価がズタボロだったら精神的に耐えられない。
うーむ、どうするか……。
他の人は好きな人のステータスが見れるようになったら、やっぱり見てしまうんだろうか?
ううむ……。
よ、よし。俺への評価はとりあえず置いておいて、基本的な情報だけ見るか! そ、それならいいよね…?
誰に許可を取ろうとしているんだか分からないが、俺は意を決してステータスを開いた。
『ポッ』
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水瀬 詩織
年齢:16
職業:高校生
- 女子高校生 Lv. 19
- 読書 Lv. 15
- 散歩 Lv. 7
- [*信頼度が足りません*] Lv. 18
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おや、特技・属性レベルのところで既に隠しステータス状態か。
他の人でもたまにいるんだよね。人には言いにくい趣味や特技、特徴ってことだろうか。
うーん、想像つかないな。
他のは読書や散歩という割とシンプルな項目だけに、なんか目立つな。
よ、よし、もうちょっと見てみるか。
『シュッ』
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水瀬 詩織
- 体力 18
- 知力 42
- 魅力 22
- 品性 28
- 精神 32
- 幸運 11
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うーむ、こちらも特に目立ったことはないか。
強いて挙げれば地頭が良いのかなぁという感じ。
そして、いよいよ見てしまうか、あの項目を……。
いや、本当は申し訳ないと思っているよ?
でもさ、男としては気になってしまうんだよ!
『シュッ』
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水瀬 詩織
状態:普通
身長:152 cm
体重:43 kg
スリーサイズ:B75-W56-H82
カップ:B
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あぁ、つつましやかで、これはこれで良い……!
世の中、大きさじゃないんですよ。本人の雰囲気に合っているかどうかなんですよ。
控えめでありつつも、今後の成長が多少は期待される……。
良い……。
どっかのAAの壁とはちが……サクッ!
「イイッタイ! メガァァァー!!!???」
高速で飛来したシャーペンの芯が俺の目(正確には直前に瞼閉じれたので、目の近くの皮)に突き刺さった。
なに、あいつ!? 失明させる気!?
『ポッ』
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原田 杏香
現在の心境:壁がなんだってぇ? 消すよ?
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存在消されるぅー!?
やっぱ、あいつおかしいよ! 絶対に人外だって!
「高瀬ー? どうしたー?」
授業をしていた地理の池永先生(51歳・男、最近娘が結婚しそうなのが悩み)が怪訝な顔で見てきた。
「な、なんでもないです! サー! 授業を続けてください!」
「お、おう、そうか」
あの非・人類のクラスメイト対策として、座席の近くに防壁を作るべきかもしれない。
ていうか、今日はあいつのせいで注目されることが多すぎる!
水瀬に変に思われてないといいんだが。
『シュッ』
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水瀬 詩織
結樹への評価:ある意味で気になる
- 好感度 7
- 信頼度 8
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あ、うっかり出してしまった。
ステータスの出す・出さないについては、慣れてきてほぼコントロールできてたけど、なんかの弾みで俺の感情を元に勝手に出てきてしまうことがあるんだよね。
やってしまった。
しかし、ううむ。他のクラスメイトの評価と比べて、好感度も信頼度も平均的だ。
ある程度仲の良いやつだと10を超えてくるんだが……。
そして、評価は『ある意味で気になる』か。
どの点が気になるんだろうか?
今日は能力と原田のせいでちょっと奇行が目立ち気味だし、そのせいかもしれない。
総合的に考えると、水瀬はおそらく俺のことをただのクラスメイトって思っている感じだろうか。
能力に目覚めた主人公には好感度の高い女の子が寄ってくるとかそういうことはないんですかね……。
授業が終わった後も、水瀬のステータスで少し悶々としている俺のところに敦がやってきた。
「ユーキ。俺はこれから部活なんだが……お前どうした? なんかおかしいぞ?」
おかしいのはお前のステータスだよ。
「うーん、まぁちょっと色々あってね」
「ふむ? なんかあるなら聞くぞ?」
やっぱ敦は優しい良いやつだ。熟女好きだけど。
こいつになら、ちょっとだけ踏み込んだことを相談しても良いかもしれない。
相談したことを言いふらすようなやつではないし。
「あー、その、なんだ。親しくしたいと思っている人があまりこっちに興味を持ってもらえない時ってどうしたら良いんだろうね?」
あー、もうこれ完全に好きな人がいて悩んでいるって感じになってしまっているな。
「ふむ、なるほど、人間関係の悩みだったか」
敦も流石に俺に好きな人がいるって気づいてしまったかな?
『ポッ』
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与田 敦
現在の心境:なるほどな。俺も菜美さんに息子の友達という以上の興味を持ってもらえなかったりするからな。そういう感じか。
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「違う、そうじゃない!」
俺の恋愛感情を熟女に対する想いと混ぜないでくださいませんかね!?
いや、人間関係という意味では間違ってなくはないのか!?
ていうか、完全にこいつ俺の母親好きですよね!?
心の中とはいえ、他人の母親を名前で呼ぶのやめてくれません!? 純粋に引くわ!!!
「うむ? 違ったか?」
「い、いや、なんでもない……。に、人間関係であっている……」
なんか認めたくはないが……。
「ふむ、誰に対して悩んでいるかは分からないが、きちんとその相手とは話しているか? 俺はユーキがすごく良い人間であることが良く分かっている。その相手もユーキとちゃんと関わって、たくさん話していれば、ユーキが良い人であることに気づくのではないか?」
「……おぅ」
こいつ、恥ずかしげもなくすごいこと言いやがって……。照れるじゃん……。
本当に良い奴だな……敦。熟女好きだけど。
「そ、そうか。なるほど、ありがとな」
確かに俺は勝手に水瀬のことを気にしているが、特段話しかけることもしていない。そんなんじゃ、水瀬が俺のことをそもそも興味を持つはずはない……か。
「俺の言葉が役立ったのなら良かった。頑張れよ、ユーキ」
「ああ」
折を見て、水瀬に話しかけてみようかな?
すぐには勇気が湧かないが、ちょっとでも水瀬に俺のことを分かってもらって、あのステータス画面の数値を上げたい。
熟女好きの友人に心の中でもう一度お礼を言って、俺はそう決意した。