4.先生達のステータスを見たけど
2時間目の古文の授業が終わろうとしていた
授業中にクラスメイトのステータスを何人か見てみたが、敦や杏香ほどクレイジーな奴は流石にいなかった。
まぁ、あんな変な奴らがたくさんいたら俺の精神が保たない。本当に良かった。
ただ、敦ほど親しい友人もおらず、ステータスが開示できなかった部分もそこそこあった。
もしかしたら心の底ではクレイジーな奴らがいるかもしれないが、とりあえず表面的には皆まともなんだろう。
そうだ、先生のステータスを見てみるのも面白いかもしれない。
今授業をしているのは、古文の道川早希先生。
まだ若い先生で、天然な性格。生徒からの人気の高い先生の一人だ。女子の間ではサキちゃん先生とか言われている。
よし、どれどれ……
『ポッ』
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道川 早希
年齢:26
職業:高校教員
- 高校教員 Lv. 26
- 天然 Lv. 31
- 古文愛 Lv. 24
- テニス Lv. 15
- 肩こり Lv. 18
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ふむふむ。まぁこんな感じか。
他の人のステータスを見ながらなんとなくわかってきたけど、この特技・属性レベルは、10以下だとまだニワカって感じだけど、10以上だと平均的な人よりも得意って感じに見えるな。
20を越えるとまさしく『特技』って感じで、道川先生の高校教員のレベルみたいなのは、それだけ学校の先生が板についているってことだな。
それを考えると本当にこの先生は天然なんだな。
一方で、気になるのは『肩こり』だよなぁ……。原因は正直、察しがつく。
胸……だよなぁ……。
そう、道川先生はもう圧倒的な巨乳。
そのおかげで道川先生は、男子生徒からすごい人気があるんだよね。
クラスメイトのステータスを見ているときに、現在の心境で『でかい……良い……』とか授業そっちのけで考えている奴いたし。
待てよ、道川先生の胸……そのサイズをこのステータス能力なら知ることができるんじゃないか?
た、頼む、ステータス画面! 表示してくれぇ!
『シュッ』
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道川 早希
状態:普通
身長:158 cm
体重:54 kg
スリーサイズ:B85-W60-H86
カップ:F
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「F!!!」
うおおおおおおおお! 出るじゃねぇか! ステータス画面最高!!!!
「んー? 高瀬くん、急に声を張り上げてどうしたのー?」
おっと、授業中だった。
「すみません、ちょっと寝ぼけちゃいまして…….」
「もうーダメですよー、もう少しで授業終わるから最後まで集中してねー」
「はい、すみませんでした」
とりあえずの言い訳をやり過ごす。
いやーそれにしてもFかー、どのくらいレアなのかわからないけど、いいものですなー。
どこぞのクラスメイトの貧乳とは格がちが……メゴォ!
「ごはぁ!?」
顔に古語辞典がめり込んだ。
誰だよ!? 古語辞典投げた奴!?
いや、まぁ、分かるよ!? どうせ原田でしょ!?
『ポッ』
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原田 杏香
現在の心境:キョニュウ……ホロボス……
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ほら、原田ですよ。なんか悪の帝王みたいになってるし。
「あれー? 高瀬くんー今度はどうしたんですかー?」
「いや、なんか古語辞典が降ってきて…」
「はいー?」
まぁ、正確には『投げつけられた』だけど。
「あ、すみませんー。手が滑って私の古語辞典が高瀬くんのところに飛んで行ってしまったみたいです」
原田がしれっと言う。どう手を滑らしたら、5席分以上またいで辞典を吹っ飛ばせるのだ。
ちなみに、原田の席は前から2番目の右から2番目、俺の席は一番後ろの真ん中ぐらいだ。
「あらあら、原田さん、気をつけてねー」
いや、先生は事態のおかしさにツッコンでよ……。
キーンコーンカーンコーン
「あら、ここまでですねー。みなさん、次の授業までにこのページを一通り読んできてくださいねー」
授業の最後に色々あったが、とりあえず終わった。良い情報を知ることができたぜ。
次の授業は……数学か。数学、兼担任の坂下教諭、苦手なんだよなぁ……。
いつも冷たい感じだし、怖いんだよね。気軽に先生と呼びにくいことから、生徒の間では「教諭」で通っている人だ。
「あ、サキちゃん先生、またねー」
「はいはーい」
ふと見るとちょうど道川先生がクラスの女子に手を振られながら教室を出るところだった。
「きゃわ!?」
「……む」
とか見ていたら道川先生が、入れ替わりで入ってきた坂下教諭に軽くぶつかった。
くっ、坂下教諭、うらやましいぞ。俺も道川先生にぶつかられたい!
「あ、坂下先生、すみませんっ!大丈夫でしたか……?」
「……いえ、問題ありません」
だから坂下教諭、反応が冷たくて怖いですって。
道川先生が怯えでもしたらどうするの?
『ポッ』
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道川 早希
現在の心境:あはは、また人にぶつかっちゃいましたー
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道川先生のメンタルすげぇ!
坂下教諭に睨まれている感じなのに全然気にしてない!
ていうか、よく人にぶつかるんですね! 俺にもぶつかってください!
「じゃあ、失礼しますねー」
「……お気をつけて」
お気をつけては坂下教諭なりの嫌味なんだろうか?
ちょっと見てみるか。
『ポッ』
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坂下 亨
現在の心境:み、道川先生にぶつかってしま、しまうなんて……!
だだだ、大丈夫だよな!?怪我とかしてないよな!?
後から慰謝料とか請求されないよな!?
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この人、誰ですか!?
本当にさっきから冷たい表情のまま、去っていく道川先生の後ろ姿を睨んでいるように見えている坂下教諭の心の声ですか!?
めちゃくちゃメンタル弱いじゃん!
「あーあー、道川先生もかわいそうに。よりにもよって教諭にぶつかっちゃうなんて」
「坂下教諭、後で道川先生を呼び出してネチっとした説教とかするんじゃない?」
クラスの女子がひそひそと話しているのが聞こえる。
いや、君達……坂下教諭は説教どころか、慰謝料をふんだくられるかどうかの心配をしているよ…
「……時間だ。皆さん、席についてください。……今日は、前回説明する時間が足りなかった問題についてからです」
相変わらずの冷たい声で話し始める。
『シュッ』
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坂下 亨
現在の心境:あぁ……この教え方で大丈夫なんだろうか。
後で生徒に締め上げられたりしないだろうか。
いや、もしかしたらPTAになんか言われるかも……。
あぁ、そして道川先生は大丈夫だろうか……。
慰謝料を予め準備した方が良いかなぁ……。
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どういうこと考えながら授業しているんだこの人!?
すげぇビビりまくってんじゃん!?
あと慰謝料は用意する必要、絶対ないから!
この人のステータスどうなってんのよ!?
『シュッ』
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坂下 亨
年齢:31
職業:高校教員
- 高校教員 Lv. 15
- 強迫観念 Lv. 49
- 数学 Lv. 31
- 頭痛 Lv. 21
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この人、生きているのが辛いんじゃなかろうか……。
なんだか、ステータスを見るだけで悲しくなってきた。
坂下教諭、その、なんか機会があったら優しく接したいと思います。
頑張ってください……。
授業を受けているだけなのに、俺の瞳にはうっすらと涙溜まっていた。