33.親友の気持ちを探ったけど
すみません、投稿遅くなりました。
さて、俺自身の恋愛もそうだが、もう一つ恋愛事情について懸念すべきことがある。
そう、原田杏香と与田敦の件だ。
敦に原田の気持ちを仄めかして、その反応を伺うというミッションを前から原田の妹である桃香ちゃんに頼まれていたのだ。
ただ、いざ敦と話そうと思っても、どう切り出して良いかを迷ってしまって未だに聞けずじまいだったのだ。
そんな中、俺にも無視できない人からL●NEが来た。今井さんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Akina『ねぇ、高瀬。ちょっと頼みたいことがあるんだけど』 午後7:01
高瀬結樹『え、何?(震え声)』午後7:01
Akina『いや、何で怯えてんのよ?』午後7:03
高瀬結樹『だって、今井さんからの頼みとか失敗したら怖そうなんだもん』午後7:04
Akina『あんた私のことをどんな風に思っているのよ!? ていうか、そういうことを本人に直接言う!?』午後7:12
俺は、今井さんが目的の達成のために俺のことを水族館で有無を言わせずに殴ったことを忘れないぞ。
高瀬結樹『で、頼みってなに?』午後7:12
Akina『もちろん、杏香の事よ。与田君に、与田君が杏香の事をどういう風に考えているのかを聞いて欲しいのよ。与田君が現在どういう考えなのか分からないと、杏香も自信を持って与田君にアプローチできなそうだし……』午後8:02
原田って普段は横暴な割には、妙に乙女というか敦に対しては奥手だしな。
高瀬結樹『あぁ、そういう話ね』午後8:02
Akina『どう? やってくれる?』午後8:05
高瀬結樹『やらないと俺の命が危うくなるんでしょ? やるよ』午後8:06
Akina『だからあんたは私をどういう人間だと思っているのよ!?』午後8:09
前科者の今井さんに弁解の余地を与える必要はない。
と言うわけで、俺は自分の身の危機もあるので、意を決して敦と話すことにしたのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
家の近い敦は部活の朝練がある時以外は、ほぼ毎朝俺の家の前で待ってくれている。
敦と二人だけで秘密の話をするなら、やはりこの時間が適当だろう。
「お早う、ユーキ」
「おっす、敦。いつも待たせて悪いな」
「ん? いつも大して待ってないさ、大丈夫だぞ」
敦の返答って、たまに恋人相手に言っているかのような言葉選びだよな。
だからクラスメイトにホモとか言われるんだ、こいつは。
あと、同年代の女の子(主に原田)に全く興味を示していないのもその誤解に拍車をかけている一因だ。
さて、どう話を切り出したものか。
朴念仁の敦のことだ。回り込んでモノを言ってもはっきり伝わらないだろう。
ここはストレートに聞くとしよう。
「なぁ、敦。お前は好きな女の子とかいるか?」
「うん? どうした藪から棒に。……特にはいないけどなぁ」
ふむ、敦よ。すまないが、俺の能力でお前の本当の考えを覗かせてもらうぞ。
『ポッ』
=================
与田 敦
現在の心境:……やっぱり菜美さんかなぁ……。
=================
だからなんで最初に出てくるのが俺の母親なんだよ!?
なんで世の中に数多くいる熟女の中でも俺の母親がお気に入りなんだよ、お前は!
そもそも俺は『女の子』って聞きましたよね!?
何か!? 女性はいくつになっても女の子ってか!?
「……ええと、敦。本当か?」
「なぜ疑うんだ?」
「…………」
ううん、どうしたものか。
とりあえず今度は原田のことをどう思っているかを改めて聞いてみるか。
この間の水族館で少しは仲良さそうにしてたしな。
「あのな、敦。この前とか原田とかと遊びに行ったりしたじゃん? 割と原田と仲良さそうにしてたし、なんか敦が女の子と仲を深めることとかあるのかなぁと思ってさ」
「ん? まぁ、あの時は確かに原田と大分話せたなぁ。ユーキが今井とどっか行ってたりしたのもあって。ユーキこそ今井と仲良くなったんじゃないか?」
俺はあの時今井さんのサンドバックになっていただけだよ。
そんなことより、もう少し踏み込んで聞こう。
「いや、俺はあの時はそれどころではなかったよ……。そういえば原田って普段から敦と仲良くしたそうに見えるけど、敦はそこんとこどう思ってるんだ?」
「んー、そうか? 原田はむしろお前と戯れているから俺のことは気にしていないかと思っているが……」
「原田と俺の関係性は、ただの加害者と被害者だから」
本当にそれだけか? また探らせてもらうぞ?
『シュッ』
=================
与田 敦
現在の心境:原田かぁ。やっぱり好意を向けているのかなぁ……ううん。
=================
あれ!? 実はちょっと原田の好意に気づいていたのか!?
原田からの好意に確実なものだと分かれば、敦の反応も変わるんじゃないか!?
よし、ちょっとお節介かもしれないが、ここはもう少し踏み込もう!
「なんにせよ、俺の目から見ると、原田は敦のことを大分好きそうに見えるぞ? まぁ、あくまで俺の主観だけど」
「……え、あ、うん。そうなのかなぁ……」
普段は全く暗い顔を見せない敦が、その顔を曇らせる。
ううん、あんまり聞いて欲しくない話題なのかもしれない。
でも、これだけは確認しておきたい。
「……原田から好かれると、嫌なのか?」
「嫌ってことはないさ。もし本当に好かれているんだったら、それは嬉しいよ」
言葉とは裏腹に曇った顔のままの敦。
ふーむ……。
『シュッ』
=================
与田 敦
現在の心境:やっぱり同年代の女子から好かれるのは……まだ怖いなぁ……。
=================
へ? 怖い? なんだそりゃ? 昔、何かあったのか?
いや、待てよ? 同年代からの好意が怖いってことは、それが敦の熟女好きに繋がっているんじゃ……? 確か熟女好きになった理由は……
『シュッ』
=================
与田 敦
- 熟女好き Lv. 32
・中学生の頃からの熟女愛好家
・自宅の引き出しの三重底の中には、秘密の写真集がある
・熟女好きのきっかけは [*信頼度が足りません*]
=================
そう、まだこの能力では解放されていない項目だ。
このことを探るには敦ともっと仲良くないといけないということか……。
ということは、現時点では聞き出すのは難しいかもしれない。
ここはもうこの話題を切り上げよう。俺もこれ以上、曇った敦の顔を見続けるのは辛いしな。
「そうか……。急に変なことを聞いてすまなかったな、敦」
「いや、気にすることはない。男同士で恋愛話など、俺らは全くしなかったからな。こういうのも新鮮で面白い」
敦の顔がすっと普段通りの穏やかな顔に戻った。
その上でむしろ俺のことを気遣うまでしてくれた。度量が広いなぁ、こいつは。
そうだ、俺が敦のことを聞くばっかりじゃ良くないよな。ちゃんと敦とは友達でいたいし、俺のことを話しておこう。敦とより仲良くなれるかもしれないしな。世の中、ギブアンドテイクだ。
「あのな、今週末に俺は水瀬と遊園地に行くことになりそうなんだよ」
「ふむ? 同じクラスの水瀬だよな? それは初耳だ」
「実は俺前から水瀬のことが気になっていたんだが、それを知ったお節介な奴がデートをセッティングしてくれたってわけ」
「ほほう、そうか水瀬のことが……。なるほど、ユーキはああいう大人しいタイプが好みか」
敦がニヤニヤと笑う。こういう正志みたいな反応をする敦は珍しい。敦にもこういう面があったんだな。
「それで、敦とか他の男子は女子とどういう風に接しているか、何か参考になることはないかなぁと思って、お前の恋愛事情をちょっと聞いてみたわけだ」
「あぁ、そういうことか。珍しくそういう話を振るから何事かと思ったぞ。しかし、そういうことならすまんな。俺の恋愛事情では全く参考になりそうなことは無くて」
「いや、大丈夫だ」
元々、そういう期待はしてなかったしな。
「ふむ、だが折角教えてもらっておいてアレだが、俺はユーキのデートで特に手伝うことなどできないぞ? 今週末は部活詰めなんだ」
「いやいや、大丈夫大丈夫。ただ、敦に聞いておいて欲しかっただけだからさ」
「ふむ、そうか」
敦がフッと少し嬉しそうに息を吐いた。
『リンッ』
=================
与田 敦
結樹への評価:良き友人、お母さんがとても素敵。
- 友情 32 → 35 (パラメータが更新されました)
- 信頼度 37 → 40 (パラメータが更新されました)
=================
あ、上がった。
良かった……。恋愛事情を問い詰めたから気分を害していないか心配だったんだ。
うんうん、これで俺ももっと敦と仲良くなれそうだな……
『シュッ』
=================
与田 敦
現在の心境:菜美さんと遊園地デートしたいなぁ……。
=================
……そう思ったそばから、仲良くなるのを断念しそうなことを考えるなよ……。
実は、なろうラジオ大賞用の超短編とか書いてました。
短編も短編で難しかったですが、もしお時間がありましたらどうぞ
・妖怪カフェへようこそ!
https://ncode.syosetu.com/n8679fq/
・世界中の人々から足蹴にされることに成功したドMな賢者はここにいます
https://ncode.syosetu.com/n8663fq/
・自称・大怪盗の持つお宝がショボすぎる件
https://ncode.syosetu.com/n9917fq/




