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29.妹の友達の家に行ったけど②

俺は梨乃ちゃんのご両親と会うべく、家の応接室に向かっていた。

……家に来客専用の応接室があるのかよ……。


「なぁ、梨乃ちゃんのお父さんとお母さんってどんな人なんだ?」

「うーん、普段は仕事熱心な人達なんですけど、家にいるときは……まぁ、優しい両親ですよ」

「ふーん……。ちなみに仕事は何をされてるの?」

「ええと、IT企業の社長とその秘書ですね、一応。でも、家だと全然そんな感じしないです」

「ほえぇ……」


俺、梨乃ちゃんの家に来てから圧倒されっぱなしだな……。

思わずカードを集める魔法少女みたいな声を出してしまった。

そんな事を話していると、応接室に着いたようで、八代さんと梨乃ちゃんが立ち止まり、八代さんがドアをノックする。


「八代です。梨乃さんと高瀬さんをお連れしました」

「あ、入って入って」


中から男性の声が聞こえた。

気軽な感じの返事に俺はちょっと安心した。


部屋の中は、ソファが2つ向かい合うようにして置かれており、その間に黒塗りのシックなローテーブルが置かれていた。そして、奥のソファの前に、梨乃ちゃんのお父さんとお母さんと思われる2人が立って俺達を迎え入れてくれた。

梨乃ちゃんのお父さんは休日にも関わらずワイシャツにジャケットを着ており、お母さんはワンピースに落ち着いた薄手の紺のカーディガンを着ている。俺は服の良し悪しには詳しく無いが、質の良いものを着ている印象を受ける。


「八代くん、ありがとう。高瀬くんもわざわざ呼んでしまって申し訳ない。さぁ、座って」


梨乃ちゃんのお父さん……聖一さんが、笑顔で声をかけてくれた。

隣にいるお母さん……美里さんもこちらを向いて微笑む。

八代さんは、二人に一礼すると、扉の脇に移動してそこに立つ。


「お兄さん、大丈夫ですよ。座りましょう」

「お、おう」


少し緊張して立ち尽くしていた俺に梨乃ちゃんが声を掛ける。

俺と梨乃ちゃんは、梨乃ちゃんのご両親に向かい合う形で並んでソファに腰を下ろした。


「さて、高瀬くん。早速で申し訳無いけど、君は梨乃の友人の高瀬結菜さんのお兄さんの高瀬結樹くんで間違い無いかな?」


梨乃ちゃんのお父さんが俺を覗き込むようにして聞いてきた。

改めて見ると、お父さんは彫りの深いナイスミドルで、お母さんはクールな美人な女性だ。……お母さんの方は、絶対に敦が気に入るだろう。梨乃ちゃんも結菜のことが無ければ、落ち着いたお嬢様といった感じなので、梨乃ちゃんのご両親というのはなるほど納得だ。


「あ、はい。そうです、高瀬結樹……と申します」


こういう時に普段敬語を使いなれてないと困る。


「ふむ……そうか、君が結菜さんのお兄さんか……」


梨乃ちゃんのお父さんが少し考え込むようにして、隣にいる梨乃ちゃんのお母さんと顔を見合わせてアイコンタクトを取る。

いや、何を考え込んでいるんだよ……。しょうがない。頼む、ステータスさん、出番だ。


『ポッ』

=================

松川 聖一

年齢:49

職業:IT会社社長

- 企業経営 Lv. 42

- 結菜愛 Lv. 31

- プログラマー Lv. 35

- 隠密行動 Lv. 22

=================


『ポッ』

=================

松川 美里

年齢:48

職業:IT会社社長秘書

- 秘書業務 Lv. 39

- 結菜愛 Lv. 33

- 運転技術 Lv. 29

- 隠密行動 Lv. 38

=================


!!!!????

あんたらもかよ!!!!?????


なんで家族揃って俺の妹をそんなに偏愛してんだよ!?

この一家、頭おかしいよ!

一体全体なんなのさ!?


「お兄さん? どうかされましたか?」

「あ、いや、何でもない。なんかちょっと緊張しちゃっているだけだ」


俺の不審な様子に気付いた梨乃ちゃんが俺に声をかける。

君の家の底の知れない危険性に怯えているんだよ。


「高瀬くん。初対面の君にこんなことを言うのは些か失礼かと思うが、どうしても頼みたいことがある」

「頼み……?」


梨乃ちゃんのお父さんが改まって声をかける。

はて、なんだろうか?

正直、ただでさえ困惑している俺をさらに困惑させないで欲しいのだが。



「高瀬くん、うちの梨乃と結婚してくれないか?」



……………。



……………はいいいいぃぃぃぃ!!!!?????



え、いや、なんでそうなるのさ!?

この家の住人って思考回路がショート寸前……っていうか爆発炎上しているんじゃないの!?


「ちょっと、お父さん。いきなり結婚だなんて高瀬さんが戸惑うじゃないの」


ここで梨乃ちゃんのお母さんが初めて口を開いた。

いや、もう、戸惑うどころじゃないよ。

さては、梨乃ちゃんのお父さんは、梨乃ちゃんと同じで色々言葉が足りない人だな?

お母さん、どうしてそうなったか聞かせてください。


「梨乃はまだ中学生。慌ててはダメ。まずは許嫁、そして婚約、最後に結婚でしょう?」

「そういうことではないんですよォ!!!!」


ダメだ、梨乃ちゃんのお母さんも思考が飛んでる! 俺は結婚までの過程を知りたかったんじゃないよ! なんでそもそも『結婚して』なんていう話になったんだよ!?


「お父さん、お母さん! なんでそういう話になっちゃったの!?」


梨乃ちゃんも声を張り上げて問いただす。梨乃ちゃんもこの結婚話は聞いてなかったんだな。


「梨乃。なんでってそりゃ、お前と高瀬くんが結婚したら……」

「「結菜ちゃんが私達の義理の娘になるじゃないか!!!!!」」

「そこかよ!!!!」


梨乃ちゃんのお父さんとお母さんが声を揃えて言い放った言葉に、俺は全力でツッコんだ。

この家に居るとこっちまで頭おかしくなるわ!

この人達、本当にそんな理由で初対面の男に娘と結婚しろなんて言うの!?


『シュッ』

=================

松川 聖一

現在の心境:もし結婚まで漕ぎ着ければ、私は梨乃と結菜ちゃんに挟まれながら、2人から『お父さん♡』と呼ばれることができるゥ!!

=================


くそ! この人、病気だ!


『シュッ』

=================

松川 美里

現在の心境:まずはこの場で口頭での本人との了解を得た後、高瀬家に向かい、高瀬家のご両親も含めて婚約者として確約。流石に、梨乃が高校生の間に結婚は世間体的に厳しいから、その間は婚約状態のままにしておいて、大学に入った頃にようやく結婚かしら。そうすると、結菜ちゃんが娘になるのに最低約5年といったところね……。

=================


こっちもこっちで病気だ! プランが具体的なのが恐ろしい!


「いや、急に結婚とか言われても困りますよ!」

「高瀬くん、大丈夫だ。困ることなんてない。結婚費用ならなんとかなるし、住む場所だってこの家には私達夫婦と梨乃に加えて、結菜ちゃんが暮らすのに十分すぎるスペースがある」

「あれ!? さらっと、俺の存在が無視されてません!?」

「結婚式は国内の高級ホテルでも良いし、海外でも良いわね。ハワイで挙式を行なった後、私と梨乃と結菜ちゃんとでビーチでバカンス……。素晴らしいわね」

「あなたに至っては自身の旦那さんの存在まで消してますよね!?」


なんなのこの人達!?

まともな人間はいないのか!?

俺は振り返って、唯一まともそうな人……八代さんを見る。


「……(スッ ←目線を逸らす)」


くっ、ダメだ! 八代さんは不介入を決め込んでいる!


『ポッ』

=================

八代 紬

現在の心境:あーあ、私に助けを求めても無駄ですよ。

色々松川さん達はアレですけど、割の良いお給料をもらっている以上、邪魔はしませんよ……。

さて、今日の夕飯のメニューを脳内で再確認しておきますか……。

=================


このカオスな状況で夕飯の献立のことを考えるとは……。

この達観さにはこれまでのこの家での八代さんの苦労が窺える……。


俺が八代さんに助けを乞うの失敗しているところで、梨乃ちゃんが再び口を挟んだ。


「お父さん、お母さん! だからってそんな結婚なんて!」


梨乃ちゃんが相対的にまともに見えてくるのが不思議だ。

自分の両親なんだから、ちゃんと止めてくれよな?


「おいおい、梨乃。最近、結菜ちゃんのお兄さんとも仲良くなれて嬉しそうにしてたじゃないか?」

「それは……そうだけど……」

「それに考えても見ろ。お前が高瀬くんと結婚したら、結菜ちゃんはお前の義妹(いもうと)になるんだぞ?」

「義妹……はぁはぁ……結菜ちゃんが義妹……。あ、いやいや、それは確かに魅力的ですけども!」


一瞬、心惹かれてたよね、梨乃ちゃん。


「なら良いんじゃないか?」

「いえ、でも、私はまだ結菜ちゃんと……。結菜ちゃんのことを……ぁ……」


珍しく梨乃ちゃんの歯切れが悪い。

梨乃ちゃんの言葉の最後の方が聞こえない。


「でも、まぁ、お父さん。梨乃にとっても急な話でしたからね」


梨乃ちゃんの暗い雰囲気を察したのか、梨乃ちゃんのお母さんが場を落ち着かせようとお父さんに一声かけた。


「確かにそうだが……。ふむ……。時に高瀬くんの方はどうだい? 親バカかもしれないが梨乃は良い子だぞ? 成績は良いし、見た目も結菜ちゃんに負けないくらい可愛いし、料理もまずまず、おまけに撮影機器を使った様々な工作活動も得意だ。嫁には最高だと思うが?」


とりあえず最後のは花嫁にするのに嬉しい項目だとは思えないのだけれど。

確かに梨乃ちゃんは可愛い方だと思うし、結菜のことが関わらなければ実は礼儀正しい良い子だ。

でも、結婚となると……。


それにさっきから俺の頭には水瀬の顔がちらついている。

水瀬とも色々あったけど、やっぱり俺の中で気になるのは水瀬なんだよ。

こんな状況では、梨乃ちゃんのご両親の期待には応えられない。


「あの、俺は……」


俺がきっぱりとお断りの意思を告げようとしたところで、梨乃ちゃんが突然大声をあげた。


「ダメ!! やっぱりまだダメなの!!!!」


そう言うと梨乃ちゃんは俺の手を取って、勢いよく部屋から飛び出した。

ちなみに、部屋のドアは、梨乃ちゃんが部屋から出る気配を察した八代さんが予めスッと開けていた。


「ちょっと、梨乃! 待ちなさい!」


梨乃ちゃんのお父さんとお母さんが呼び止める声が聞こえたが、梨乃ちゃんはそれを無視して再び離れの方に突き進んでいった。

なんか色々ややこしくなってきたけど、大丈夫なんだろうか……。


前回分の小説の内容を書いている時に、やむを得ず「中学生 ブラ」で検索して少し調べてたのですが、そのせいで色んなWebページの広告で若い子向けのブラの写真が表示されるようになって困ってます。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  何でこんなに社会道徳置いてきた人が多いんだろう.やはり,義務教育は改めるべきか.  何で頭のネジ外れてる人たちって一つ画面を挟んでから見るとこんなに面白いんでしょうね?   [一言] も…
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