23.気になる人の友達のバイト先に偶然行ったけど
水瀬と別れて下校したが、少し小腹が空いたな……。
最近、なんだかんだで疲れることが多いせいか、その分食べる量が増えた気がする。
太る心配はあまりしてないけど、気をつけた方が良いかもしれない。
「でも、やっぱりなんか食べたいな……」
俺はしょうがないな、と自分に軽く言い訳しつつ、近くにあったマク●ナルドに入った。
お、全然混んで無い。良かった。
「いらっしゃいませー……ってあれ? 高瀬くんではないかな? さっき振りー」
「え? 三井さん?」
水瀬の友人で隣のクラスの三井さんだった。
そういえばバイトに行くとかいってたな。ここだったのか。
「いやー、良いところに来たねぇ、高瀬くん! 実はさっきからお客さんが来なくて暇だったんだよー」
「そういうことを客に堂々と言うなよ……」
「まぁまぁまぁ。それで? あの後どうだったんだい? 詩織とはどうなったのかな? キスぐらいしたのかな?」
「きっ……、な、何にも無いよ!」
「あれれー? 本当かなぁー?」
聞き方がおっさんくさいぞ。
「何にも無かったって。明日、水瀬に聞けば分かるだろ?」
「ふーん? まぁ、そういうことにしておきますかー」
「やれやれ……。で、注文良い?」
「あいあいさー。せいぜいいっぱい買っていくっすよー。まぁ、友達割引とかは無いのでご理解くださいねー」
別にそんな期待はしてなかったが。
「えーと、とりあえずチーズバーガーを一つ」
「チーズバーガーをお一つ。こちら、チーズ抜きもできますがいかがしましょうか?」
「それは入れようよ!? 無かったらただのハンバーガーじゃん! そうしたければ最初からハンバーガー頼んでるわ! ていうか、『ピクルス抜く?』みたいな感じで聞かないでもらえません!?」
なんでいきなりボケるのさ!?
「あっはっはっ! いいねぇ! 中々、キレキレな反応だねー! お姉さん嬉しくなっちゃうよー」
「だから、あんた同級生でしょ!?」
「はいはいー。チーズバーガーをお一つ、もちろんチーズあり! 承りました!」
そう言って、ケラケラと笑う三井さん。あ、遊ばれてるな……俺。
「えーと、でもまぁ、ちょっと小腹が空いたぐらいだから他に注文するものはないんだけど……」
「では、ご一緒にファ●チキはいかがですか?」
「話聞いてました!? あと、それコンビニの惣菜でしょ!? マックで売ってちゃいけないやつじゃん!」
「あれ、もしかしてL●キの方が宜しかったでしょうか?」
「そこの違いはすこぶるどうでも良いよ! どっちにしろ大手コンビニチェーンの惣菜でしょ、それ!」
「あ、おでんをご所望でしたか!」
「全然望んで無いよ! 誰がハンバーガーショップでおでんを買うんだよ!? コンビニのレジの周りで売っているものからいい加減離れて!」
「それでしたら、アップルパイはいかがでしょうか?」
「あ、一応ちゃんとしたサイドメニューが……」
「こちらワンホール3000円になります」
「ガチのアップルパイじゃん!? ファーストフード店でホール単位のもの売るんじゃねえ!」
「でしたら、フライドポティトォはいかがでしょうか?」
「やっと定番のポテト出てきた! でも何で急にネイティブな発音するの!? やめてよ!」
「買いますか? 買いませんか?」
「分かったよ! フライドポテト買うよ!」
くそう! 三井さんの怒涛の押しに屈してしまった!
「フライドポティトォの注文ありがとうございます!」
「その喋り方気に入ったの?」
「サイズはどうされますか?」
「んー、じゃあ、Mで」
「かしこまりました。高瀬くんは、Mなんですね?」
「人の性癖みたいに言わないでもらえませんかねぇ!?」
ただでさえ、あなたの友達がSで困っているのに、M扱いしないで!
あなたの友達が喜んじゃうよ!
「お飲み物はいかがされますか?」
「もともと頼む気なかったけど、もういいや。頼むよ。コーラを一つ」
「こちらホットでよろしかったでしょうか?」
「全然よろしくないよ!? なんで炭酸飲料をホットにするんだよ!? ちゃんとアイスにして!」
「わがままですね……」
「え、この流れで俺が悪いの!? おかしいのはそっちだからね!? それとも三井さんは普通ホットでコーラを飲むわけ?」
「普通に考えてアイスで飲みますよ。決まっているんじゃないですか?」
「おかしな人を見る目で見ないで! 今のは明らかにそっちの責任だからね!?」
「コーラのアイスをお一つ。サイズはいかがされますか?」
「え、じゃあ今度はSで!」
また、M扱いされちゃたまらない。まだS扱いの方がマシだ。
「余計なお言葉かと存じますが、高瀬くんに S は似合わないと思いますよ?」
「本当に余計なお言葉だよ! その言葉は心の中にしまっておいて欲しかった!」
「ご注文以上でよろしいでしょうか?」
「ああ、いいよ!」
疲れた……。3つ品を注文しただけでこんなに疲れるとは……。
「では、ご注文を繰り返します」
「うん」
「死んだ牛の肉をミンチにして固めて焼いたものと、牛の乳を搾って発酵させた上で固めたものと、葉っぱとトメィトォを重ねて……」
「ストップ! それチーズバーガーの説明のつもりなんですかね!?」
「高瀬くんにもわかりやすいようにどのように作られたかを詳細に言ったのですが、何か問題ありましたか?」
「大ありだよ! まず全然美味しそうに聞こえないし、レタスのことを葉っぱっていうのは説明が雑すぎるし、トマトだけまたなぜか発音良くしたり、そもそも一言で『チーズバーガー』って言えば良いんじゃんとか、ツッコミどころが多すぎるよ! せめてツッコミどころは絞って!」
「おお、高瀬くんはお笑いに厳しいね!」
「こっちはマク●ナルドでお笑いをする気なんて全然無いんですけどねぇ!?」
あぁ、なんか叫びすぎて酸素が足りなくなってきた。
ぜぇぜぇ言っちゃってるもん。
「あ、こちらでお召し上がりになられますか? それともテイク・オフですか?」
「離陸しちゃった! テイク・アウトだからね!?」
「存じております」
「じゃあ、最初からそう言ってよ!?」
「いやー、ツッコミどころを作った方がよろしいかと思いまして」
「いらないよ、そんな配慮! いい加減にしろォ!」
「あーいやはや、ごめんごめん。高瀬くんが面白いからつい調子に乗っちゃった」
「……」
「あはは。本当にごめんねー。フライドポテトの分、私が払っておくから許してよ、ね?」
「あぁ、もう分かったよ。それで良いよ!」
三井さんはすまなそうにしながら、でもやっぱりまだ楽しそうな顔で俺に謝った。
まぁ、フライドポテトももらえたから許すけど……。
三井さんは注文通りの品を紙袋にまとめた後、俺に渡しながらつぶやく。
「ここだけの話、多分詩織はあんたのこと好きだよ」
「え!?」
突然何を言うんだ。
水瀬が俺のことを好き? いや、好感度は上がったけど、まだすごく高いわけでも無いし……。確か梨乃ちゃんの方が好感度高くなかったか?
「ま、女の勘だけど」
「勘かよ……」
「あの元来内気な詩織が、放課後に男と二人っきりになろうとするなんて、絶対脈アリだって!」
「そうか?」
水瀬はただ俺のことを踏みたがっていただけだと思うが?
「そうなんだって! お姉さん、面白そうだから応援しちゃうよー」
「だから、自分のことをお姉さんって言うのはやめておけよ」
『ポッ』
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三井 亜里沙
現在の心境:いやー、詩織にも春が来たかー! 楽しみ楽しみー!
リアルな高校生の恋愛模様とか小説のネタにもなりそうだし、一石二鳥!
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あ、そういう魂胆あるのね。
「ま、何にせよ! 屋形船に乗った気分でお姉さんに任せておきな!」
「そこは大船にしておこうよ!? なんかただ浮かれているだけじゃん、それ!?」
「あはは、良いツッコミだねー! やっぱ高瀬くんは面白いなぁー!」
『リンッ』
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三井 亜里沙
結樹への評価:ツッコミの人
- 好感度 0→6 (パラメータが更新されました)
- 信頼度 0→12 (パラメータが更新されました)
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あ、これまで三井さんからの評価見てなかったけど、大幅に更新されたようだ。
これまでまったく無関係だったから好感度も信頼度もゼロだったみたいだけど、良い感じの値になっている。俺の第一印象は悪く無いらしい。
三井さんは悪い人じゃなさそうだし、応援してくれるってのは本当なんだろう。
まぁ、なんかよく分からないお節介とかになりそうな予感もするけど……。
そんなことを考えてながら豪快に笑う三井さんを見ていたが、その背後に突如大柄の男性店員がぬっと現れた。
うおっ、びっくりした。
「三井くんー? またお客さんとおしゃべりしているのかなぁー?」
「あ……店長……。いやー、これはですねー、学校の友人殿がいらしたからでありまして……」
「例え知り合いでも、レジで長話するのが良くないってことは、分かるよねぇ……?」
「ご、ごめんなさいであります!」
「ふーん? 反省している?」
「しているであります! もうしないであります!」
「あれれー? この前、もうしませんって言ったよねぇ?」
「ひぃぃぃぃ!?」
あ、三井さん、この後こってり絞られるんだろうな。
自業自得だがちょっとかわいそうだ。
俺は巻き込まれないように、受け取った品物を手に、そっと店を後にすることにする。
あの快活な三井さんでも店長に怒られてあせっちゃうんだなぁ、と思いながら最後に三井さんの心境を見た。
『ポッ』
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三井 亜里沙
現在の心境:オワタ\(^o^)/
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いや、意外と余裕あるな、三井さん。




